鳥ちゃんと僕。
ジェイフンは憔悴していた。
彼の眼前の敵――グリフォンマスクは、あまりにも勝手が違いすぎた。
少々の技を叩き込んだ所でびくともしないだけならまだしも、間合いを詰められれば瞬く間に投げられてしまう。
ジェイフンは防戦一方に回ってしまい、敗北は時間の問題であった。
だが彼は――決して勝利を諦めたという訳ではなかった。
『グリフォンさんが、僕を投げる間合いに入った時がチャンスだ…!』
グリフォンがジェイフンを投げに入った瞬間。ジェイフンは、その瞬間に全てを賭けた。
逆に、ジェイフンがグリフォンを投げてしまおうというのだ。
今まで散々投げを食らった事が幸いし、投げの間合いは完全に掴めている。これを利用すれば、あるいは…。
問題は、どこを掴むかだ。まさか肉やらパンツを掴むわけにもいかない。
『待てよ…あの羽毛を掴めば…!』
そして次の瞬間。グリフォンは一気にジェイフンとの間合いを詰めてきた。一気に片をつけるつもりだ。
「させるかあ!」
ジェイフンは臆することなく、グリフォンめがけて真っ直ぐ突っ込んで行った。
怯んだのはグリフォンの方だった。そしてその刹那に生まれた隙を、ジェイフンは見逃さなかった!
「そこだぁ!!」
グリフォンの羽毛を、ジェイフンは一気に掴んだ。そこから一気に体落としが決まる――筈が。
掴みに成功した事で彼の心に緩みが生まれ、ジェイフンの心はたった今掴んだばかりの羽毛の触感に奪われてしまった。
『こ…これは…』
それは紛れも無い、100%の羽毛だった。
アクリルやポリエステルの混じりけが一切無い、水鳥のそれだった。
『この感触は…韓国に置いてきた…文鳥のポッピちゃんみたいだ…』
何時の間にかジェイフンは、無意識の内に羽毛を引き寄せ、その中に顔を埋めてしまっていた。
そして彼はフェイクファーにはない「おひさまの匂い」の染み着いた羽毛の触感に完全に酔いしれていた。
『気持ちいい…もう何もかも………どうでもいいや〜…。』
グリフォンが、羽毛から離れてくれないジェイフンを引き剥がせたのは、それから5時間後の事だったそうな。
どっとはらい。