REASON。


左腕に鈍痛を感じ、私は目覚めた。
――またか。
傍らでは妻が、心配そうな顔で私を見ている。

30歳を幾許か過ごした頃だっただろうか。体力が格段に落ちた、そういう自覚が生まれてきた。
傍から見ればそんな事はないと言われるのが落ちだろう。
実際周りからの私の評価は未だに高い。
確かに寿命の短い選手生命というやつを今まで――36歳まで続けている事は、我ながら奇跡的だと思う。
大病こそ患わなかったものの、命に関わりかねない怪我の回数なら年齢の数を優に越えているからだ。
意識が数日戻らなかった事もあった。目覚めた時、久々に見た家族の顔は、一生忘れる事は無い。
そのつけというやつだろうか。かつて負った怪我が、今になって蘇ってきたのだ。

それは何時訪れるとも分からない。どんな形で表れるとも分からない。
先程のように痛みという形で出て来るならまだ良い。最悪の事態は――

先日の試合中、それは訪れてしまった。
試合開始の合図の直後、ふと私を襲った激しい目眩。残像を伴う対戦者の姿。縺れかけた片脚。
……試合内容は惨憺たる物だった。

時折思う事がある。このままで良いのかと。
有終の美などという柄ではないが、大人しく引退する事を考える事もある。

だが…それを思い止まらせてくれているのは。

「師範、この型の
「貴方、次の試合が済んだら
「親父、次の試験の事なんだけどさあ…」

私を慕ってくれている人たちの声。日常。

この日常がある限り。
私の周りの人たちがいる限り。
私はもう少しの間だけやっていける。そんな気がする。

―Fin―


高井悠樹ちゃんに捧げ…ていいのだろうかこれは。出来栄えと言い内容といい。
今のお父ん、というお題を頂いたら、何故か完成したのはロートルと化した父様…。
しかし書いてて思った事。「父上様なら36どころか、80超えても今の若さ+強さを維持すんじゃないのかなあ。」
殆ど「ファイブスター」の世界。…ひーごめんなさい!!!

頼む。帰らせてください。
もっと徹底的に帰りたいの。