「陰陽師」映画      10月10日   自由が丘武蔵野館

この映画は面白い。とにかく面白いんでお勧めです。
左の絵はですね〜天野喜孝様の阿部の晴明様です。
私の大好きな、画家さんなのですが、この映画では、衣装なんかを
担当されてます。
衣装のデッサン的な絵は、プログラムに沢山載ってます。

でも、平安の晴明様や、殿上人、お姫様方は、衣冠束帯、直衣、十二単は
動かせませんので、有職故実にのっとった衣装。
天野様の本領発揮は、小泉今日子さんの青音と元スピード今井絵里子さんの
密虫ですね。

青音は、150年も生きていたお方なので、まだ天平時代の風俗。
要するに、唐衣ですから、日本人がアクセサリーをいっぱいつけていた時代
なのです。この、お話にも重要になる、首飾りは素敵でした。
密虫も、この世のものでない、式神ですから、少々変わってても良い。
髪型から、もう、フアンタジック・・・歴史的にそんな人は居ないよ〜ってな
感じに、遊んでるな〜と・・・ハイ、お人形衣装の参考にしたいようでした。 
、物語なんですが、もうご存知の通り、平安時代の中頃のお話です。
都に、鬼ですとか魑魅魍魎が跋扈した時代・・・陰陽師の晴明様(野村万斎さん)と、やはり陰陽師の道尊(真田広之さん)
の戦いがテーマです。
お話筋は書けない・・・見てない方は「見ろ!」と言いたいので、これは喋ると楽しみが半減してしまいます。
原作のお話4つくらいを、上手く一つのお話にまとめてあります。
「白比丘尼」「鉄輪」とか・・・原作読まれた方は他にも、ああ〜これは・・・が色々あります。

平安時代は、今昔物語なんかでも、大江山の鬼だの羅生門の鬼だの、なんか都は暗くて恐ろしいな〜のお話があります。
菅原道真の悪霊・・・とか、「祟り」の話も多い。
確かに、夜道は暗いし、貴族のお家は広い。広いけど、灯りは手元ばかりですから、
廊下や天井や、色々「闇」があります。
蛍光灯でどこもかしこも明るい現代には棲めない、様々なお化けがいっぱい居たのですね〜
それに、医学も今とは違う。
病気の原因なんかに、「祟り」だの「呪い」だのを持って来ないと納得できなかったんだね。

このお話の一番怖い怨霊・・・鬼は、桓武天皇の兄君の早良親王様・・・ハイ、謀反の濡れ衣を着せられて
自殺してしまった方ですね。実在の方です。
平安京は、桓武天皇・・・と歴史の授業で習いましたが、それ以前は都は長持ちしていない。
すぐに、「縁起が悪い」とかで移転の繰り返しでした。
当時の方々は、なにしろ「祟り」が怖い・・・で、仏教文化が今に残るみごとな世界遺産級のものを現代に
残した・・・と言っても良いのでは・・・と私は思います。

聖徳太子様のころから、平安京に遷都するまでの間は、暗殺時代だなと思う。
聖徳太子様も、忙殺された疑いがあるし、そのご一族は蘇我氏に全員殺されてる・・・マア、自殺だけど。
その蘇我氏・・・蝦夷さんは二人の皇子に殺された・・ああ〜大化の改新ですな〜
散々、殺しておいて「祟り」に悩む。
法隆寺は色々と不思議なお寺なのですが、梅原猛様のご説ですと、お寺自体が鎮魂のためのものとか・・・
殺してから、お寺建てれば良いわさ〜の発想はたまらんですが・・・

その後も長屋王も殺されてるし・・・もういっぱい殺人は起きています。
時代、適当ですが、有馬の皇子、大津の皇子・・・と悲劇の皇子様もたくさん居る。
聖武天皇と言う方は、人一倍「祟り」を怖れた方らしいですね。
マア、奥方光明子様は藤原不比等様の娘さんで、腹違いのお兄様方が相次いでのご病没・・・で怯えたのかね。
東大寺大仏なんて、デカイもんを考えましたな〜
それからも、事件は起こる・・・ワサワサ起こる・・・
光明子の母親は橘の三千代・・・かなりなやり手のオバサンで出戻り・・・藤原さんと離婚して橘さんに行ったんだけど、
そこでも子供がいます。橘の諸兄・・・その子の橘奈良麿は乱を起しています。
この三千代さんも色々お寺を作っていますね。

お寺建てれば、陰謀もチャラになる・・・とか考えたのかな〜安易だな〜

光明子の娘が聖武天皇の後の天皇なんですが、弓削の道鏡やら、藤原薬子やら、面白いお話がたくさんある。
恵美の押勝さんもこのころの人ですね〜
で、怨霊もたくさん・・・ハア、凄い時代ですね〜
で、平安時代には、もう怨霊が蔓延してる・・・飢饉やなんやで、死体もゴロゴロ・・・

平安時代は、やたら、お公家さんは「殺人」なんてことは忌み嫌い、優雅に生活することばかりを願う。
着物も、動きやすい、唐衣ではなく、やったらゾベゾベと動きにくい物に変わり、
お家はやったら大きくなってます。
だから、陰陽師の出番なんですな〜呪いには「呪」を、悪い事が起こらぬように「占い」を・・・
怨霊、鬼には「結界」を・・・ともてはやされたのでしょう。

蛇足続きですが・・・アクセサリーですが、平安時代には、およそアクセサリーは無くなっていますね。
緋扇くらい・・・髪の毛には紙だしな〜なんか他にある?
桓武天皇から、嵯峨天皇、壇林皇后くらいまでは、お椅子に座り、なにやらジャラジャラ付けていたらしい
ですが、中期・・・源氏物語のころには、床に座ってるし、アクセサリーも消え、その後の日本の
風景に近いものになってる。
気候が寒くなったんで、着重ねたのだ・・・とかの説もありますが、なんで、椅子生活が床生活・・・に
最後には、正座なんてことになって行ったんだろうな〜不便だし、辛いジャン。
奈良時代・・・600年〜790年ころまでは、お仕事なんかもテーブルと椅子だったし、ベッドだったのに・・・
何故に、不便な方向へ行ったのかな〜とこれは個人的な疑問。

この映画、怖い場面なんですが、コンピューターで良く出来てるな〜と感心したのは、どうやら仇野の風景。
野ざらし骸骨がゴロゴロしてるのですが、その場面、妙に今の念仏寺あたりにかぶる。
背景の山とか、斜面の感じが、今の建物とかがなければ、こんなかな〜と思えるように出来てます。
無論、念仏寺あたりをよ〜く見て、コンピューターで作った画面なのでしょう。
都の俯瞰図もなかなか見事です。
一条戻り橋も、こんなかな〜と・・・先日行って、記念写真も撮ってまいりましたが、
今は川は溝で、公園みたくなってます。
コンクリートで固めていなくて、でも水量はこのくらい・・・で昔・・・うん〜こんなかな〜と
一人で納得してしましました。

万斎さんは、やはり動きが綺麗ですね〜チョット人を舐めた感じの表情がなかなか良い。
源博雅の伊藤英明さんは、ハンサムなのですが、結構3枚目的な感じもあります。
平安時代の良いとこぼっちゃんなんで、品も良いし、合ってるな〜です。
NHKのでは、杉本哲太さんで、こちらも面白かった・・・
真田さんは、悪役が良いですね。
昔「必殺仕事人」の映画ので、とんでもない悪役がありました。
水もしたたる、蘭丸さまも真っ青な前髪の美青年・・・綺麗なお顔でシャラッと人を殺す。
で、喚き出したら、怖い・・・開き直るわ、暴れるわで、もう、「上手い!」と思いました。
今回も、これでもか〜の悪人です。
この道尊さんのお供の式神はカラスのお化け・・・・これ、可愛い〜!!欲しい!!!

と、なんか判りませんが、絶対見て損はないよ〜です。