おまけ。またの名を蛇足。





「でも、どうして言ってくれなかったの? 今日ずっと一緒にいたのに」
 エリーの問いかけにダグラスがため息をついた。
「あれは一緒にって言うか?」
 その答えにエリーは首を傾げる。
「だって、朝起きて、一番にダグラスのところ行ったんだよ?」
 1番に会いたくて、飛翔亭にも行かずに城門へ行ったのだ。それなのに言ってくれないなんて、と少し拗ねてみる。
「……第一声は『早くしないと、ドンゲルハイト採り逃がしちゃうよ』だったけどな」
 ため息とともにダグラスは言った。
 少しの間。
「そうだっけ?」
「そうだった」
 気を取り直して、エリーは口を開いた。
「でも、近くの森に行くのにも、ずっと2人きりだったじゃない」
 お金に余裕もあったのだが、ダグラスと2人きりになりたくて、護衛は彼にしか頼まなかった。それなのに、と少し拗ねてみる。
「…………お前、ドンゲルハイトの生えている位置をずっとシミュレーションしてただろ」
 再び、ため息とともにダグラスは言う。
 先ほどよりも長い沈黙。
「そうだっけ?」
「そうだった」
 気を取り直し、再度エリーは口を開く。
「お昼ご飯の時とか」
 お弁当まで作ってしまったのだ。たいしたものではなかったけど、頑張ったのに。少し拗ねてみる。
「………………別々に食った」
 ため息をしっかりついてから、ダグラスは言った。
 エリーの額から、一筋の汗が零れ落ちる。
「そうだっけ?」
「そうだった」
 とりあえず、今までの問いかけをリセットして、エリーは口を開いた。
「帰り道とか」
 ダグラスはすでにエリーを見ていない。
「……………………ドンゲルハイト9個の使い道をあれこれ考えて」
 今度は途中でエリーがさえぎった。
「そうだったね」
「だろう?」
 2人の間に何とも言えない空気が流れる。
 ダグラスの言う通り、『一緒に』という言葉があまりにも似合わない一日だったことをエリーは悟った。それなのに、誕生日なのを思い出した途端、ダグラスがお祝いしてくれないと1人で拗ねていたのを思い出す。
「………来年は」
 苦々しく口を開いた。
「来年は?」
 拗ねません、と言おうとしてやめる。絶対にできるとは到底思えないから。
「善処させて頂きます」
 ダグラスがエリーを見て一言。
「期待しないでおくな」
「………ハイ」
 ダグラスの言葉に、エリーは素直に返事をしておくしかない。


 今年は、最上マイナス1くらいのバースデイ。



END