なあ、とアイツが言った。
いつもの調子で、いつもの距離で。
どうしても変わらない関係に、イライラしていたアタシは。
ムカツいて 「アホ」 と怒鳴りつけた。
そのままアタシは逃げて。
アイツがいないところまで。
アイツに見つからないところまで。
ようやく見つけた空き教室の隅まで。
そこでアタシは泣いてしまった。
涙を落として。
嗚咽を殺して。
「泣くなや」
いつの間にかアイツが教室の入り口に立っていて。
困ったようにそう言うから。
涙は止まってしまったけれど。
悔しいから 「泣いてやる」 と笑ってやった。
鞄はアイツが2つもって。
アタシは手ぶらで。
下駄箱で靴を履き替えたら。
手間取ってるアイツをそこに残して。
昇降口と外との境界線をジャンプで飛び越えた。
なあ、とアイツが言って。
いつもと同じ、いつもの距離で。
ふと見上げると。
晴れた空がどこまでもどこまでも続いていて。
思わず小さく 「アホ」 と呟いた。
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