巡礼峠
 クリックすると表紙に戻ります

 
 退職まで後10年無い。仮に後10年働けたとしても、その後は急速に老いていくのだろう。このまま、教師として一生を終えるしかないのだろうか。今さら、この道以外に生きる道は無い事は重々承知の上で、何か自分の人生に焦りに似た物を感じる。

 

 自宅から車で5分もかからない所に、公園の駐車場がある。そこに車を止め、急な階段を上り詰めると、巡礼峠だ。そこから、森林公園に入るのではなく、白山を目指す。ここから白山までの道は、急な勾配が続く山道だ。足腰の弱った自分は、近頃では二本杖を愛用している。大げさではなく、この道は杖が無いと実にきついのだ。急な坂を登るのに、両手を使えるのはありがたい。険しい坂道を降りるとき、杖があると安心できるのだ。登山靴とゴアテックスのヤッケ、片肩掛けのリュックが旅の友である。

 片道1時間ほどだろうか。行きの方が登りが多く、きつい。従って、帰りは気持ち楽である。
落ち葉の絨毯を踏みしめて歩く。野生の猿が出る事も珍しくない。一度は鹿を見た事もある。時折、竹林の中も歩ける。すっぽりと山の中に入れるこの道が好きだ。
 興醒めな事は左手がゴルフ場、右手がお墓だ。「ファー!」というキャデイの大声や、「業務連絡です。○○さん、お墓に向かってください。」などのアナウンスが流れる。まあ、しかたない事だろう。時折ハンターのおじさんのライフルをぶっ放す音に驚かされる事もある。雉でもねらっているのだろうか。

 でもまあ、いつもいつもある事ではないし、どちらかと言うと人気の無い場所で、人通りも少なく一人になりたい自分には嬉しい場所なのだ。歩きながら、人生の事なぞいろいろ考えてみるのですね。ところどころにある見晴台からは、遠く湘南の海が見える。空気の澄んでいる時は、横浜も新宿のビル街も見えるのである。持参のコーヒーをポットから出し、一息入れるのは至福の時である。何の金もかからず暇つぶしのできる山行きは最高のレジャーであるし、不安定な山道を歩くのはぼけ防止にもなると思うのです。
 海の近くに住みたいという夢はあるのだが、この裏山のある生活も捨てがたいと思うのです。
以下は写真集です。
駐車場です
春は桜が満開です。
喫茶店みたいですが、焼き物施設です。
芝生の広場です。まわりがうっそうとした山々です。子供が小さい頃はよく遊んだけどね。
両側がアジサイです。季節の頃はきれいですよ。登るのはかなりしんどいです。
巡礼峠の地蔵様。以前カツラをかぶせている
ふとどき者がいたが、天罰は下ったのだろうか。
巡礼峠です
巡礼峠の階段を登り切った所です。もう息切れです。
竹林を過ぎて、急な登りを登り切った所にベンチがあり、いつも一休みです。お墓が見えるのがどうもね。裏側は大山が見えますが、木々がさえぎって、写真としてはうまく撮れません。
愛用の二本杖。向こうは鹿よけのフェンスだろうか。
自分としては一番気に入っている見晴らし台。
本日は見えないけど、湘南の海が見える時もあります。
物見峠に出るための、最も急な階段。最高の難所ですね。
物見峠から関東一円が眺望できます。
物見峠
むじな坂。動物のむじなとは関係ありませんという興醒めな説明があります。
白山頂上の展望。市内一円が見えます。
お気に入りの休憩場所。クヌギ、コナラの雑木林に包まれると、生き返る気がします。
愛用の山歩きグッズ。
追伸 2006.1.3
 この巡礼峠から白山へのハイキングコースは、近年ヒルの繁殖により夏場は楽しめなくなった。どうもあれは苦手なのですよ。痛みはないのだが、姿は不気味だし、出血も大量である。両足の至る所にかみついたヒルをやっとの思いではたき落とし、やれやれと車に乗り込んだら、なんと手のひらに吸い付いているのですね。あやうく交通事故を起こす所だった。これじゃ、B級のスリラー映画だよ。で、霜が降りる頃まで隣の森林公園を散歩道にし、霜が降りた所でこちらを楽しむ事にしている。
 このヒルを運んで来たのが、鹿やイノシシ、猿の類だと思われるが、この猿もまたやっかいなのですね。いきなり遭遇するとおっかないことにもなりかねない。熊よけの鈴をならすハイカーも見たが、始終鈴の音を聞くのはいやだ。それでラジオを携帯しているハイカーをまねてみる事にした。風の音、落ち葉を踏みしめる音、鳥の鳴き声、それらを楽しむのが山歩きの極意だと思い軽蔑していたラジオおじさんだったのですが、自分がそうなってしまった。
 で、これが結構楽しいのですよ。千円ぐらいでホームセンターに売っていた。単4電池2本で動くごくコンパクトな物です。充電用電池を使えば、もっとコストは安くなるしね。結構電池が持つのです。主にNHKAMを聞いているが、教育放送もおもしろい。FM横浜も聞けるので、時々楽しんでいる。今はやりの携帯音楽プレーヤーもいいが、あれは自分の趣味の範囲内に納まってしまう。言わば、想定内の楽しみですね。ラジオのいい所は想定外の音楽や話が聞けるという所です。感動的な私記を聞いて山の中で涙ぐんでしまった事もある。あぶないおじさんですね。ラジオってけっこういいメディアなんだと再認識してしまいました。
 子どもの頃は真空アンプというガラスの円柱形の物がいくつか入っている大型のラジオが家の真ん中にあり、夕方から始まるラジオドラマを聞くのが楽しみでしたね。なんせテレビがまだ無いから。言葉から想像するっていうのは、空想力をたくましくさせますね。長い髪、白い肌という表現で浮かぶ美人の図というものは、聞き手それぞれに違うでしょう。そこがラジオのおもしろい所なのです。頭を使う所ですね。テレビみたいに全部受動しておまかせっていうメディアじゃないんです。ひさしぶりに先日はNHKの落語放送をカセットテープに録音しました。これって何十年ぶりの作業だろう。けっこうラジオって楽しめるなあって思いましたよ。