君づけ、さんづけ

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 3年前だったかな。
 職員会議で、児童を呼ぶときにさんづけで統一しましょうという提案があった。日本語の特徴は、敬語表現にある。目下の児童を呼ぶのに君づけで呼ぶのが日本語の敬語表現である。ただ、男女の区別を付けるため女児はさんづけで呼んできた経緯があるので、さんづけが一部あるというわけだ。
 だから君づけに統一するという提案なら理解できるが、さんづけに統一するという提案には同意できない。異議を唱えたのだが、
「ご意見として伺っておきます。」
の一言で却下されてしまった。
 それからうちの職場では、どの先生もさんづけで児童を呼んでいる。がんこに男児を君づけで呼んでいる教師は自分だけだ。
 でもこの事で首になることはあるまい。第一、社会常識に合致しているのは、自分の方である。
 きっと、大人も子どもも平等という理念の生み出した運動なのだろうが、社会常識に合致しない事を学校の中だけで押し通しても、混乱し、損害を受けるのは子どもたちである。出所が文部省なのか、著名な教育学者か、ジェンダー主義者かどうかは自分は知らない。全国の小学校が児童をさんづけで呼ぶようになろうが、自分は君づけを頑固に続けるつもりだ。

 「何々さん、静かにしてください。話を聞いてください。」
という児童に理解と承諾を求めるのが民主主義教育と誤解しているまちがった教育理念の生み出した産物である。
 まあ、「話を聞いてください。」という言い方がまちがっているとは思わないが、相手は子どもである。
「静かにしなさい。黙りなさい。」
と言っていい相手なのだ。
それとも人間として対等な児童に対して命令をしちゃいけないって事なのかね。
 小学生はまだ人間として半端物である。だから、納税の義務もないし(消費税は払っているがね)投票の権利もない。
 理屈で通らない相手に対し、なぜ命令しちゃいけないのか。もう号令もいけないのかね。
「前にならってください。」
「気をつけてください。」
て言わなくっちゃいけないのかね。
 まったく変な世の中になってしまったものだ。

 ぼくのような教師は変わり者、過去の遺物としてお払い箱になるのは、時間の問題なのだろうか。