マイゼン氏公開レッスン

 

パウル・マイゼン氏帰国前のこれが本当に最後の講習会ということで、ムラマツから届いたお知らせ・・・(発表会の1週間前だし、仕事は忙しいし、行けないわ。)と思いつつ曲目をながめると、なんと私が発表会でやる「スペインのフォリア」とバッハのソナタBWV1030ではないですか!?(これは、何があっても行くしかない!)と、さっそくチケットを手配いたしました。

会場に行くと、一人目の受講生・・・去年音大を卒業したばかりのお嬢さんが、「フォリア」の練習をしている。気合の入った音!これが聴けるだけでも幸せだよなあ・・・と感動しつつ、一番前にしっかり席をとる。

どこかの掲示板で、外国人フルーティストは体が大きい人が多いという話題が出ていたように思いますが、マイゼンさんは大きくなかったです。普通の日本人と同じぐらいでした。2人目の受講生・NフィルのH氏(もちろん日本人男性)のほうが、頭ひとつ大きかったです。
体調があまりよくないというお話でしたが、1〜5時半までしっかりレッスンされて、途中休憩は30分もありませんでした。大変博学でエネルギッシュな方です。音は特に大きいわけではなく、セーブしておられるのか、小さめの音です。でも、しっかり鳴っていて、繊細な表現力!マイゼン氏の演奏を聴いてしまうと、音大出のお嬢さんもNフィルのプロもなんかあからさまというかあけすけな演奏に聴こえてしまうんで、不思議です。じゃあ、自分はどうだと言われちゃうと、沈黙するしかないですが。
フォリアでは、まずサラバンドの解説からされました。一時は禁止されたこともあったほどエロチックな要素を持った舞曲であること、その反面、誇り高く威厳に満ちたイメージも失わないように、というお話でした。「威厳に満ちたスペイン風」とか「誇り高く」ということは、この日何度も繰り返し言われました。
この曲、今度の琵琶湖コンクールの課題曲なんだそうですね。会場には、コンクールを受けるつもりの方々もちらほら。(私、なんて身の程知らずなんでございましょう。)受講者の方が選んだヴァリエーションと曲順は、T、U、]W、[、]U、]T、]Z、]X、]Y、Y、]]W、]\、Tです。この方、かなりグラーフ入ってるとお見受けしました。特に、[の装飾音と、最後に]\を持っていったあたり。

後は、細かいことはきりがないし、文章では書ききれないので、特に印象深かったことだけ書きます。

Tは、テンポ84ぐらい、と案外はやめのテンポ。最後から2小節目はクレッシェンド、デクレッシェンドをつけて、最後の小節の装飾音は分ける感じで。

Uは、80〜84。だいたい同じはやさだけど、少し引き締まった感じで。最後から4小節目、付点4分音符Hから続くプラルトリルは、Hの音からいくととらえて、Hをいくぶん長めに。最後から2小節目のトリルは前打音のF♯を強く、トリルよりはっきり出して。

]Wは、ガンヴァの原曲を聴くとバスパートがかなり激しい動きをしているので、その力強さを受けて立つように。同じように均等にアーティキレーションする必要はありません。1小節の中で2オクターヴ以上とぶところはスタカート気味に短く、そうでないところはテヌート気味に均等に。同じ音を繰り返すときは、前よりもはっきりと。前と同じでは、ぼやけてしまって、分からなくなります。 アウフタクト風にしてもいいでしょう。

]U、後半再現部はppで入って。32分音符の下降は、最後のところで下品なくらいのクレッシェンド。でも、その前で用意しすぎて見せないように。一番最後の32分音符は、シュミッツ氏のアレンジです。これもよくできていますが、オリジナル風に戻すのも、悪くないですよ。

]Xは、バロック・スタカートでテヌート風にやるか、2つずつスラーで。途中から切り替えてもいいですね。前半ディルディル(2つずつスラー)、後半ドゥグドゥグ(私は、これを「ぐしゅぐしゅスタカート」と呼んでいますが)でやってみましょうか。バロック時代には、きついスタカートはありませんでした。決して強いスタカートにならないように。

最後にテーマに戻ります。これはppで始めましょう。遠くから聴こえてくる感じで、繊細に。後半は開いた感じに。最後の装飾音は分けて。

休憩の後バッハなんですが、これが伴奏の問題もからんでくるので私には難解。おまけにかなり集中力も切れてきて朦朧としてるので、変なことを書くかもしれません。

テンポは全体が120ぐらいで。第1楽章と第2楽章は8分音符が120、第3楽章前半は2分音符が120、ジークは8分音符が120って感じです。

第1楽章出だしは、先に入った伴奏を聴きながら、さぐりながら入るように。32分音符はあまりぴったり数えなくてもいいです。(これは、何回も言われました。)硬い感じになってしまいます。4小節目、2回目の旋律は伴奏でオクターブ下のバスが入ってくるので、内面的な変化が出るように。7(以下、ただの数字は小節番号です。)、espressivoにしないで。フルートがエゴイストになってはいけません。吹きすぎないように。この「espressivoにしない」ということも、何回も繰り返し言われました。伴奏との調和がポイントのようです。21小節目、これがメイン・モティーフ、山場ですね。36のトリル、この時代のトリルは普通上の音からやりますが、ここは例外。Hから始めて、ゆっくりなプラルトリルか3連符のように。音の頭で小さな不協和音を作って、悲劇的要素を出してみましょう。58、rit.をかけて、しっかり終了。59からは間奏。緊張緩和。流すように。Espressivoしない。65、8分音符はあまり短くしない。精神的なスタカート。69、テーマですが、しっかり見せず、ほのめかす感じで。116の頭が到達点。川から海になるところです。118、高いEはとがらせず。119、rit.して終わり。

第2楽章、Gmollの楽譜には「シシリアーノ」と書かれているんですね。そこで、Largo e dolceをどうとるかが問題になってきますが、シシリアーノの要素を取り入れていくとよいでしょう。ゆったりと軽く、浮かぶように。

第3楽章、音を短くちぎりすぎないように。ハードなスタカートは、してはいけません。(これも繰り返し言われました。)7の装飾音、40で出てくる2回目にはつけるのをよしましょう。さて、この曲、テーマが何回出てくるか分かりますか?え?分からないの?コロシますよ!(もちろん、冗談よ。受講者の方、以前マイゼン氏のレッスンを受けてたそうで、旧知の間柄さんです。)6回です。フルートに2回、ピアノに四回。テーマが出てくるときは、それをきちんと聴いて。83のフェルマータ、テンポ120の4拍でとって、クレッシェンド。次に入れ込む感じで。

以上、5時半きっかりまで、しっかりレッスンを見せていただきました。マイゼンさん、どうもありがとうございました。でも、私、勉強しすぎで消化不良を起こしそうです。あと1週間で、どこまでものにできるのか・・・

 

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