文学の中の笛

 

タムナスさんの笛(「ナルニア国物語〜第1章・ライオンと魔女」C.S.ルイス)

ファンタジーの名作「ナルニア国物語」の冒頭には、空き部屋の衣装箪笥からナルニア国に迷い込んだルーシィが、フォーンのタムナスさんの家でお茶をごちそうになり、笛を聴かせてもらう場面がある。私が持ってる岩波少年文庫版では、「一本のわらでできているような、奇妙な小さい横笛」と訳してある。ところが、小さいからよくわからないが、ベインズの挿絵にはパン・フルートらしきものが描かれているのだ。本屋に英語版があったので、その部分をちらっと見てみた。原文は、“a strange little flute that looked as if it were made of straw"となっている。英語は得意じゃないが、fluteってのは確か横笛とは限らないのでは?ルイスがイメージしたのは、やっぱりパン・フルートじゃないのかな?でも、strawって複数形にはならないのか??よくわからないが、やっぱりこれは誤訳じゃないのか?

ところで話題のディズニー映画では、タムナスさんの笛は、ダブル・フラジオレットのような吹き口がひとつで管が2本に分かれたダブル・リードの笛になってました。暖炉の炎が踊りだす、幻想的な美しいシーンでしたが。

 

保昌と袴垂(「宇治拾遺物語」巻ニ第十話、「今昔物語集」巻二十五第7話)

古文の教科書によく出てくる話。袴垂(はかまだれ)という盗賊が、ある夜、一人で笛を吹きながらゆっくりと歩いていく男を見つける。襲い掛かって着物を剥ぎ取ってやろうと何度も近寄るのだが、なぜか恐ろしい気がして襲うことができない。男の方は、騒ぐ様子もなく、そのまま笛を吹き続けている。とうとう刀を抜いて走りかかると、男は笛を吹くのをやめて、「何者だ?」と問い掛けてきた。すっかり毒気を抜かれ、「袴垂という追いはぎです。」と名乗ると、男は「ついて来い。」と言って、また笛を吹き始める。観念してついていくと、男は自宅に呼び入れて着物を与え、「衣服の必要な時は、ここへ来て言え。気心もわからぬ者に襲い掛かって、しくじるなよ。」と言うのであった。この男は、藤原保昌(やすまさ)という人であった。

この話、好きなんだな。保昌はどんな曲を吹いていたんだろうと思う。岡野玲子氏の「陰陽師」では、博雅クンが笛を吹くシーンにこの話が使われているが、そこでは博雅クンのイノセントな感じというかおとぼけぶりを際立たせることになっている。

 

ハーメルンの笛吹き

ドイツの民間伝承。グリム兄弟によっても記録されている。

1284年、ネズミの被害に悩まされるハーメルンの街に、ひとりの男がやってきた。人々は、ネズミを退治すれば報酬を与えると約束する。男は笛の音でネズミを誘い出し、ヴェーザー川で溺死させた。ところが、人々は約束を破り、報酬を出し渋った。怒った笛吹き男は一旦はハーメルンの街を後にする。しかし、6月26日の朝(一説に、昼)に戻り、今度は笛で子供達を誘い出して連れ去った。130人もの子供達が洞窟の中に誘い入れられ、封印されて、二度と戻って来なかった。ただし、足が不自由で遅れた2人の子供、あるいは盲目と聾唖の2人の子供だけは残されたともいわれる。

この伝承に隠された歴史的事件につては諸説ある。
・子供達は、事故でヴェーザー川で溺死したか、土砂崩れで生き埋めになった。
・子供達は伝染病にかかり、他の住民を感染から守るために隔離された。
・子供達は、巡礼行為か軍事行動、少年十字軍運動のなどのために街から去った。
・子供達は東ヨーロッパの植民地へ両親共々移住した。  等

現在、可能性が高いと考えられているのは、植民説なんだそうである。

 

青葉の笛

ココペリ

芳休の笛

 

図書室入り口へ  私笛トップへ