秘密の自分史 その2

暗黒時代〜現在

暗黒時代

 めでたく就職したものの、聞いたこともない僻地の小学校に赴任。生まれて初めて一人暮らしをすることになる。(ところで、教員住宅はボロだけど一戸建て。家賃は月千円。信じられます〜?)仕事はわけがわからないことばかりだし、日曜日に行事が入ることも多かった。御津吹の練習や行事も休みがち。

 就職2年目の秋には、結婚した。私は、単身赴任である。ストレスから円形脱毛症になった。これは、本当の話である。次の異動では地元に帰れたが、妊娠、出産、育児・・・とフルートからは遠ざかるばかり。笛の暗黒時代に突入である。御津吹には一応在籍し、ステージにも出られるものには出ていたが、合奏に数回出ただけで本番・・・なんて、ひどい状態だった。

 それでも、子どもはだんだん大きくなり、少しは自分の時間もとれるようになった。でも、フルートは惰性で続けているような状態で、この程度で一生終わってしまうんだろうな・・・と、なんとなく思っていた。しかし、そんな私にも転機は訪れたのである。

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覚醒

 目覚めのきっかけは、ランパル、自動車事故、最悪上司・・・まるで落語の三題咄である。

 まずは、ランパル。たいして立派でもない隣市のホールにランパルが来ることになった。私は、「何があっても行く!」と宣言。チケットを購入した。ランパルのリサイタルには、大学生の頃行ったことがある。その時、ランパル氏はひどい鼻風邪をひいていて、絶好調とはいえなかった。久しぶりに聞いた生のランパルは、さすがに全盛期ほどの輝きはなかったが、70歳!現役!この演奏!!!という事実に、私はひどくショックを受けた。60歳で退職したとしても、10年間勉強できる。70歳になったときにこんなふうにフルートが吹けるんだったら、私はなんでもする、と思った。

 フルートに対する気持ちが燃え上がってきたものの、(とりあえず仕事も育児もあるし、もうちょっと自分の時間が持てるようになってから勉強して・・・)などと、まだまだのんきなことを考えていた。そんなことを言っている場合ではない、と思い知らされたのは、車をぶつけたことがきっかけである。当時、仕事でちょっと大変なことが重なり、ぼんやりしていたのだと思う。自分が悪いのだが、朝、職場に向かう途中で、橋の欄干に思いっきりぶつけてしまった。車は廃車になったものの、本人は信じられないほどの軽傷。ところが私にとって不幸なことに、唯一の怪我らしい怪我というのが下唇の真ん中!5針ほど縫う羽目になってしまった。抜糸がすんでも、アンブシュアが微妙に変わってしまったらしく、しばらくは全然音が出なくなってしまった。(私のフルート暦20年は何だったの!?)というくらいの大ショック!!!このまま音が出なかったら、打楽器に転向しようかと真剣に考えたりもした。それでも、次第に音が出るようになり、笛人生を続けられることになった。しかし、元通りではない。前より悪い、という意味ではないが。

 この事故で私が学んだことは、明日なんて来るか来ないかわからない、運良く来たとしても笛が吹けるかどうかわからない、やりたいことはできるうちにやらなけらばダメだ!ということであった。私の人生観は、ちょっぴり変わった。

 さて、ここだけの話だが、当時の上司は最悪であった。自分が登校拒否になりそうだった。思いも寄らなかったポストに抜擢され・・・というと聞こえはいいが、誰もやりたがらなかったポストにつくはめになった。会議は多いし、上司には泣かされるし・・・辞めてしまう大義名分はないものかと、真剣に考えたこともあった。そんなある日、よく行く楽器店でフルート・クリニックがあり、出かけてみた。そして、そこで出会った9KGOLDのモデルにひと目ぼれ、ひと吹きぼれ。私は、考えた。(もしも、今年1年間、自律神経も肝臓もやられずに無事に過ごすことができたら、自分にごほうびをあげよう!)と。精神的健康を保つためなら、140万円は高くないと思ったのだ。

 その後、いろいろあったものの、私は9Kをめでたくゲット♪上司は、ご栄転である。これだけ出資した以上、フルートにかなりの時間とエネルギーをかけないわけにはいかず、現在に至る。

 

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