TED+Talkies メルマガ 第73号 2018.11.18 |
こんにちは みなさん 秋も深まり さわやかな風を楽しめる季節ですね。 今回のメルマガでは、映画コーパスとeラーニングを取り上げました。 ━ もくじ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1. 映画で英語 25作目 仔鹿物語 Yearling まもなく公開 その魅力と言語的注目点 2. 精読とアクティブ・ラーニングは両立できるか? 日英対訳eラーニングで反転授業に挑戦した発表会 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1. 映画で英語 25作目は 仔鹿物語 Yearling まもなく公開 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 映画の対訳字幕を作り続けて10数年。Seleaf 映画コーパス収録25作目として「仔鹿物語 Yearling」を選んだ。南北戦争から逃れて開拓移民として 厳しい自然と闘いながら育っていく子供を中心とした家族ストーリーもさることながら、話す言葉が一風変わっていることに注目したい。一緒に対訳作りをする英語母語話者のマイクさんをして「自分の英語が壊れそうだ」と嘆かせたほどの代物だった。 万民のエンタメとして作られる映画なので、言葉遣いはおのずと無難なところに落ち着くものだとしても、この映画は飛びぬけている。「風と共に去りぬ」の南部黒人英語や、「ラッシー」のヨークシャー訛りや、「カサブランカ」の大陸系英語など、地方や階層や出自が言葉に現れるバリエーションがSeleafの魅力のひとつなのだが、この「仔鹿物語」は「非文法英語 broken English」の宝庫だった。 子供の成長過程で話す言葉や、外人の変な日本語を「片言」と言うけれど、この「仔鹿物語」の面白さは、一家そろって、子供から大人まで「broken English」なことだ。つまり broken English が標準なのだ。 たとえば 数キロは慣れた隣家を訪れて声をかけたのに誰も出てこないので ポツリとひとこと。 Maybe they is all asleep. また I see'd him. や I ever knowed. のような規則活用が次々出てくる。 こうした方面に興味のある方には もってこいの映画だ。 音声に忠実を心がけ、聴き取って書き起こすので時間がかかってしまう。夏の初めの6月からはじめて、ようやく9割方が終わったところ。年内には公開の予定である。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2. 精読とアクティブ・ラーニングは両立できるか? 日英対訳eラーニングで反転授業に挑戦 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 試験で点を取ったり、文章を書けるようになるには「精読」授業は欠かせない。「精読」授業の魅力は、辞書には出てこない場面表現の語感を、教師の知見と体験を交えて豊かに伝授できるチャンスがあるからだ。 しかし、アクティブ・ラーニングの流行で押され気味の「精読」の良さを確保しつつ、時流に乗った「アクティブ」的要素も取り入れたい。そうした欲張った授業運営を可能にする方法として反転授業が取り上げられて久しい。 反転授業成功の鍵のひとつとして「日英対訳eラーニング」に挑戦した実践研究をおこなった。その研究授業の発表会を来週の土曜日に行う。 ━━━━━━━ 発表者: 田淵龍二(ミント音声教育研究所) 池山和子(首都大学東京) 表題: 教科書添付音声副教材をウェブ化した CALL 教材による教授法研究 日時: 2018年 11月 24日(土) 10:00 〜 10:30 教室: 3 号棟 3204 教室 備考: 2016年度関東支部研究支援プログラム最終報告 ━━━━━━━ 主催: 外国語教育メディア学会(LET)関東支部 名称: LET関東支部 第141回(2018 年度秋季)研究大会 日時: 2018年 11月 24日(土) 会場: 城西大学 東京紀尾井町キャンパス 3号棟 住所: 〒102-0093 東京都千代田区平河町 2-3-20 交通: 東京メトロ半蔵門線 半蔵門駅1番出口 徒歩約3分 東京メトロ有楽町線 麹町駅1番出口 徒歩約3分 東京メトロ南北線 永田町駅9番出口 徒歩約5分 大会プログラム: http://www.kanto.j-let.org/wp/wp-content/uploads/2018/11/141program.pdf ━━━━━━━ 望めば誰でも大学に入れるほど進んだ社会にもかかわらず、そしてまもなくAIが人に取って代わると言われるほどIT全盛の時代にもかかわらず、ひとりの教育者が自分のクラスの生徒に教科書の対訳を使ってeラーニングをすることの困難さが浮き彫りとなった。 来年の4月からは改正著作権法によってeラーニングの自由化が一気に進むと予見される。しかしその反面では、著作権に対する教育機関の理解不足と萎縮が懸念されており、教育をめぐる社会環境の整備が急がれていることを実感した実践教育研究であった。 ・・・ 本文は ここまで ・・・ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Talkies 最新版の入手と確認方法 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ブラウザ(推奨はクロム Google Chrome)で以下のアドレスにアクセスします。 http://www.mintap.com/talkies/talkies.html Mac や iPhone、iPad の場合は Safari でも動きますが、不具合が出ることもあります。そのような時は Google Chrome をお使いください。 * 最新版は バージョン 1.81.117 です。 バージョンの確認は トーキーズの menuボタンからポップアップするメニューで、「トーキーズについて/バージョン」で表示される小窓にあります。 バージョンが古い(番号が小さい)ときには、トーキーズに再アクセスします。再アクセスするには、(シフトキーを押しながら)アドレスバーのすぐ左(Safari では右)にある「リロード」ボタンをクリックあるいはタップします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Talkies 利用規約について ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ご利用の方は、必ず「Talkies の利用規約」をお読みください。よくあるナガナガしいものではなく、A4の裏表ほどに短く簡潔にまとめています。 利用規約は、Talkies の [menu] ボタンからポップアップするメニューで、「トーキーズについて/利用規約」で開きます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ メールマガジン 購読中止の手続き ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ このメールは トーキーズのワークショップに参加された方や、会合などでお話をさせていただいた方に お送りしています。 購読中止をご希望の方は このメールへの返信のタイトルに「購読中止希望」とお書き込みください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ メールマガジン バックナンバーのお知らせ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 前号のメルマガは次のページです。 * http://www5b.biglobe.ne.jp/~mint_hs/tmail/talkies_mm_0072.html その他のバックナンバーは次のサイトに公開しています。 http://www5b.biglobe.ne.jp/~mint_hs/tmail/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 先日、ある科学哲学者の本を読んでいて incommensurability と言う単語があることを初めて知った。その本では「通約不可能性」と説明していたのだが、「通約」と言う言葉も初めて聞いた気がした。辞書で引くと「同じ標準で計れない; けた違いの; 公約数のない(プログレッシブ英和中辞典)」とあった。数学専攻を目指していた者として恥ずかしいが「通約する」と言う漢語混じり表現を使った記憶がないのだ。 「二つの科学理論体系は通約不可能だ」みたいに使うそうだ。Aと言う理論体系とBと言う理論体系があれば、お互いに通約できないことをその科学哲学者が始めて明確にしたそうなのだ。つまり理論体系が違えば、Aの理論体系の言葉でBの内容を説明したり比較することはできないと言う趣旨だそうだ。「近代西洋文明はギリシャから発展した・・・」みたいな主張は「フェイク」だとの結論になる。 この科学哲学者は、この考えを敷衍して、ヨーロッパでの産業革命と連動した学術団体の社会制度化をみごとに説明していた。学術団体には固有の理論体系があり、それを共有する者たちが集まっていて、それが産業社会の発展につながったと言うことである。ここで言う「理論体系」とは、例えばニュートン力学(ちょっと古いか?)だとか、AIの深層学習手法だとか、遺物の年代測定法だとかのことで、それを学会内で共有して議論しながら発展させる事になるという。「基準とする○○氏の論文」とも言い換えられる。 翻って日本の学会に思いを馳せてみた。一番ピンと来たのは言語処理学会(NLP)である。そこでは常に具体的な数式(処理方法)と解析結果および応用をめぐって具体的な議論が活発に行われているのを見てきたからだ。では、私が10年以上在籍している外国語教育メディア学会(LET)はどうだろうかと目を転じてはたと困ってしまった。思い当たる「共有している理論」がないのだ。簡単に言えば「この学会では○○を前提に議論を深めよう」と言うのを聞いたことがないのだ。しばらく考えて二つ思い至った。 1つ目は論文の引用文献書式である。「○○学会が公開しているAPAに従え」と言う基準だ。2つ目は「統計処理には平均値だけでなく標準偏差や効果量も必ず添えよ」である。この2つはどう贔屓目に見ても「教育メディア」とは程遠い。つまりLETには「議論の土台とする共通論文」がないのだろうか? LETは学術団体ではなく同業者組合なのだろうか? ここまで書いてふと思い出した。私が始めてLETでワークショップをしたとき、先輩に言われた「明日からすぐに授業で使えることをするのがLETのワークショップだ」との教えだ。それ以来毎年のようにワークショップをしてきたが、この教えを常に念頭に行ってきた。私のサイトが基本オープンである出発点のひとつとなっている。しかしこれは個人的経験であって、このような経験をたくさんしてきたが、共通理論として議論を深めることはなかったし、他の会員からその話を聞いたこともない。やはり、同業者組合なのだろうか? 深まる秋とともに、疑問も深まってしまった今日この頃である。 2018年11月18日 戌年 しもつき 十八日 申の刻 田淵 龍二 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ □ ■ Spread your idea through TED+Talkies group! □ ■ http://www.mintap.com/talkies/talkies.html □ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ |