2018/10/13 第24回映像メディア英語教育学会全国大会(予告)
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10 月 27 日(土)に第24回映像メディア英語教育学会全国大会が京都外国語大学で開催される。
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名称: 第24回映像メディア英語教育学会全国大会
日時: 2018 年 10 月 27 日(土)
会場: 京都外国語大学
受付: 9:15 〜
開始: 10:00 〜
プログラム: ⇒http://www.atem.org/images/program/program_2018.pdf
主催: 映像メディア英語教育学会 ATEM
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ミントの田淵は、2つの研究発表を行う
- 対訳コーパスで語彙習得
- 映画の名セリフと俳優コーパス
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もくじ |
- 対訳コーパスで語彙習得
- 映画の名セリフと俳優コーパス
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題名: 映画映像対訳コーパスによる語彙習得
時間: 14:30-14:55 Session 4
会場: 164 教室
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概要: 会話やプレゼンでの英語運用能力向上が望まれている。本研究では、日本人英語学習者が苦手とする語彙習得のためのコーパス利用を提案する。
コーパス: 日英対訳コーパス CORPORA
URL: ⇒http://www.mintap.com/talkies/pac/corpora.html
学会新名称を祝し、映画と講演動画の対訳コーパス研究発表を行う。
会話やプレゼンでの英語運用能力向上が望まれている。本研究では、日本人英語学習者が苦手とする語彙習得のためのコーパス利用を提案する。
藤本(2005)は、Pinker(1999)の「言語は語彙記憶と規則獲得の相互作用で成り立っている」(筆者要約)とする“words and rules”理論を敷衍し、「第2言語学習は語形成規則習得と暗記が必要」で「暗記には、重複学習によるリスト化が必要」(筆者要約)と述べる。例えば“come up with”で「追いつく、思いつく、提案する、工面する」などを「come=来る」から理解することは困難であることから、文脈に応じた意味を個別に記憶することが要求される。
筆者は、こうした課題を解決するひとつの道具として映画映像対訳コーパスを構築し、検索エンジンとして対訳コーパス・コーポラ(⇒http://www.mintap.com/talkies/pac/corpora.html)を開発した。文脈の中での語彙習得を促進する狙いである。コーポラは映画26万単語とスピーチ500万単語を収録したコーパスの検索サイトである。主な特徴の第一は、対象を会話(dialog)とスピーチ(monolog)の2本立てとしたことで、用法の相違を比較学習できること。第二は、検索キーを含むフレーズ一覧を結果として返すことで、用法を素早く総覧できること。第三は、選択したフレーズを含む20秒前後の音映像と字幕を視聴可能としたことで、文脈の中での意味理解を促進することである。
こうした特徴は、自然素材から多様な用例を大量に提供している点で利点が高い反面、取捨選択の困難さをもたらす欠点ともなることから、学びやすくする工夫が必要である。そこで、2つのフィルターを設置した。適応学年フィルターと入力補完フィルターである。適応学年フィルターはヒット項目を文レベルと語彙レベルの適応学年で中学・高校・大学の3つに区分する。入力補完は、英字の打ち込みに応じて語句候補リストを表示し選択可能にする仕組みである。これは、初級者ほど検索語彙の知識不足やスペルミスが発生しやすいことに配慮したものである。映像素材を映画からスピーチを含むメディア一般に広げた学習利用についてともに議論を深めたい。また、対訳コーパスは自動翻訳にも活用されることから、日本語字幕の検索についても今後の課題としたい。
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題名: 名セリフと物語展開と俳優コーパス
― 君の瞳に乾杯、おうちが一番など ―
時間: 12:00-14:00 Poster Sessions
会場: 165 教室
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概要: 映画で印象に残ったシーンやセリフは人によってさまざまだろう。しかし、多くの人に共通する場合もある。名訳「君の瞳に乾杯」で有名なセリフが 4 つの場面で使われていることは知られていない。セリフと場面がどのように物語の中で印象付けられているのか。語彙習得の視点からも探求した。
コーパス 1: 俳優コーパス Seleaf Casts / Casablanca / Rick
URL: ⇒http://www.mintap.com/ns/z8/c-01-rick.html
コーパス 2: 俳優コーパス Seleaf Casts / The Wizard of OZ / Dorothy
URL: ⇒http://www.mintap.com/ns/z8/b-01-dorothy.html
映画で印象に残ったシーンやセリフは人によってさまざまだろう。しかし、多くの人に共通する場合もある。そうしたセリフを集める企画がアメリカでは盛んにおこなわれている。
本研究では名セリフと物語との関係を調べた。調査対象は名セリフベスト100(AFI 2005)のうち映画コーパス Seleaf に収録しているものに限定した。Seleaf は筆者が構築した映画映像コーパスで、1940年代を中心にした24本の米国映画を収録している。ここでは(A)“Here's looking at you, kid.”(カサブランカ)と(B)“There's no place like home.”(オズの魔法使い)を取り上げる。
(A)は名訳「君の瞳に乾杯」で有名だが4つの場面で使われていることは知られていない。詳しく調べると、物語の節目節目で使われていることがわかった。4つの「乾杯」はすべて意味合いが異なるのだ。しかも4回のうち実際にグラスを傾けるのは最初の2回だけ。最初は戦時下のパリでの再開を祝した乾杯。2回目は一緒にパリを脱出する前日で、女の方が別離の決意をにじませた乾杯。3回目は亡命途中のカサブランカでの再開だが、企みがある女は拳銃を忍ばせている。最後の4回目は、女とその彼氏を米国行きの飛行機で逃がし、自分は身を引くことを告げる別れの挨拶。蜜月-二心-再開-別離を同じセリフで象徴させ、表情と身振りで意味合いを使い分ける名演である。名セリフとしてトップ入りする所以であろう。
(B)の映画の冒頭は白黒なのだが、オズの国に入るとカラーになり、最後の家のシーンは再び白黒になる。こうして現実への回帰を印象付けているのだが、オズの国から現実に戻る呪文が「おうちが一番」なのだ。ところでこの映画の冒頭近くで歌われる“Somewhere, over the rainbow”は白黒の世界から外の世界へのあこがれである。「虹の彼方」と「おうち」の対比がこの映画のテーマで、“There's no place like home.”がドロシーの最後のセリフとして再び語られて幕となる。
名セリフは物語を象徴する場面やテーマと一体になることで初めて心に刻まれ、記憶にしっかりと残っていくことが見て取れた。こうした名セリフを文脈つきのスキットとして視聴できるサイトが俳優コーパス(⇒http://www.mintap.com/ns/z8/)である。映画24本の主な登場人物123人の発話シーンを日英対訳字幕として俳優ごとの時系列順に一覧できる。
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2018.10.13 田淵龍二 TABUCHI, Ryuji
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