映像メディア外国語教育学会 研究発表


映画まるごとデータベース
── その理論と応用
2006年11月
ミント学習教室 田淵龍二

今回の研究発表の目的は、音声と文字と映像を同期的に提示する技術(特許3549195)に基づいて、映画(映像)を丸ごとデータベースとすることにより、英語教育を始めとしたさまざまな分野での活用に道を開くことにある。
ここでは、ミント学習教室がこの春に制作し、英会話授業で利用している、映画「オズの魔法使い」(1939年公開)を使って、その理論と応用を明らかにする。

もくじ
  1. データベース化された映画「オズの魔法使い」
  2. 映画データベースの活用事例
  3. まとめ

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映画には、大きく分けて2系列の情報がある、それは
  1. 会話(音声=聴覚情報)
  2. 動作(映像=視覚情報)

であり、このことは、映画製作時の脚本が
  1. 台詞
  2. ト書き

から構成されることからも理解される。そこで、映画をデータベース化するに当たっては、大きくこの2系列で行なうことにした。@ひとつめは、「字幕」として表現されるもので、俳優の発話を単位としており、Aふたつめは、「カット(ショット)」として表現されるもので、場面を単位としている。また特に@の台詞には、
  • 音声そのもの
  • 音声の文字表現(この場合は英語)
  • 音声の意味表現(この場合は日本語)
  • 発話者情報(配役の名前)
が含まれており、しかも、音声の意味表現は
  • 英語表現の直訳
  • 字幕表現用の意訳(鑑賞時に、映画の流れを伝える最小限の文字情報)
の二重構造となる。
こうして、収録時間102分の映画「オズの魔法使い」は、以下のようなデータベースとなった。
  1. 台詞をベースとした本編: 2,018 項目(1項目平均3秒)
  2. ト書き: 868 項目(1項目平均7秒)


台詞をベースとした本編の項目例

映像開始時間5893
映像終了時間5965
英文Zeke, what am I going to do about Miss Gulch?
和訳ジーク、どうしましょ? ガウチさんにね。
字幕ガウチさんとのこと、どうしたらいい?
話者Dorothy
映像


ト書きの項目例

映像開始時間5837
映像終了時間5918
ト書きZeke comes forward with bucket --
Dorothy grabs his left arm
映像
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マイイングリッシュは、ミント学習教室と提携して、2006年4月から映画「オズの魔法使い」を使った英語の授業を行なっている。それは、
  1. 映画を使った英会話学習
  2. 映画を使った英語表現学習
  3. 映画を使った歌唱
  4. 動画フラッシュカードによる語彙表現学習

の4種類である。

@ 映画を使った英会話学習

@ 映画を使った英会話学習では、まず、10分間の映画鑑賞を行なった後に若干の解説をする。その後、あらかじめ準備しておいた20秒前後のシーンを利用して、会話の練習を行なう。最初は、リピートアフターなどで慣れ親しんだ後、配役を決め、俳優になったつもりで発話練習を行なう。映画鑑賞を通して筋を理解し、スクリーンで俳優の動きを見ながらの発話なので、比較的楽に発話の動機付けが可能となっている。
授業風景

字幕タイトルの再生例

発話練習用タイトルの再生例

A 映画を使った英語表現学習

A 映画を使った英語表現学習では、あらかじめ準備しておいた20秒前後のシーンを利用して、そのシーンに現れた動作や情景を、英語でどのように表現するかを学習する。「ト書き」として模範解答が準備されているので、それに近い表現ができたときの充実感は大きく、また、その模範解答にとらわれることなく、各人ごとの表現を、互いに批評しあうことも楽しい。映画の中の俳優の動作や情景なので、印象が強く、ストーリーの中でメリハリが効いたシーンなので、楽しく表現を学ぶことができる。
ト書きタイトルの再生例

B 映画を使った歌唱

B 映画を使った歌唱では、あらかじめ準備してある歌のシーンを使う。映画「オズの魔法使い」では15曲16場面の歌が準備されている。俳優の歌や身振り(踊り)にあわせながら、しかも、プレーヤーミントによるフレーズ再生(オートポーズ機能)を使って1フレーズずつていねいに反復練習できるので、初学者でも、雰囲気に浸りながら、無理なく歌唱できるようになる。
授業風景

C 動画フラッシュカードによる語彙表現学習

C 動画フラッシュカードによる語彙表現学習では、プレーヤーミントのデータベース検索機能を使って収集した単語カードを利用し、ある語彙(単語や表現)で表される状態や動作を学習する。たとえば「run」という単語を提示した後で「run」と表現できる場面を、次々と提示する。この方法により、語彙の学習を、学習者の母語に頼らないで行なうことができるようになることから、語彙の表現をネイティブの感覚により近づけることが期待される。

授業風景

提示される「run」のシーン
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映画(映像)の教育利用については、大きな期待を寄せられながらも、実際の教育現場での利用においては、さまざまな困難があって、なかなか十分な成果を上げていない状況の中で、プレーヤーミントによる映画丸ごとデータベース化の実現は、大きな展望を開きつつある。今後さらに、多くの方々や団体の協力を得て、コンテンツの確保(作成)や利用方法(教授法)の開発を行なっていきたい。






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