リーディング教材の提示法が読解速度と理解に及ぼす影響に関する研究


湯舟 英一(東洋大学)
神田 明延(首都大学東京)
田渕 龍二(ミント学習教室)

キーワード: e-learning、提示法、リーディング、wpm、チャンク

 e-learning教材としてマルチメディア型リーディング教材が広く普及しているが、PC画面におけるテキスト提示法は多種多様である。しかし、それらの提示法が学習者の認知的負荷や動機付けにおいて最適化されたものであるという実証は乏しい。
 本研究では、英文速読スキルの学習法として普及するスラッシュ・リーディングをPC画面で行う際、チャンクの提示法の違いが学習者の読解速度と内容理解に与える影響について、計量的データに基づき分析した。さらに、実験後のアンケートを基に、提示法の違いがリーディング学習時に及ぼす心理的負荷と学習意欲について計量的データとの相関を検証した。
 実験では、テキストの難易度、分量、文字種、ポイント数、その他のインターフェイス等、提示法以外のパラメータを統一するため、教材提示ソフトMultimedia Player Mint(東通産業、開発者:田渕龍二、特許第3549195号)を用い、同一のテキスト(300字程度の英文4題と内容を問う問題20問)を用いながら、英文チャンクが順次に現れたり、読んだ直後に消えていく方式を採用し、提示法だけをダイナミックに変化させる実験を行った。また、これらの実験群に加え、従来の紙テキストによる統制群とスラッシュのみを挿入した実験群を配置した。実験は首都大学東京の教養英語クラス(1クラス20名程度)のうち、G-TELPの成績が同一レベルの上位4クラス、下位4クラスを対象に実施した。
 2005年10月に行ったパイロット実験では、とりわけ上位クラスにおいて、読解速度の速い学習者ほど、従来の紙テキストによるスラッシュ・リーディング課題を嫌う傾向が見られたが、同一のチャンクをPC画面で順次提示させた実験群では高い学習意欲が認められた。なお、本実験の詳細および考察は発表当日に報告したい。

* 本研究は、平成18〜19年度東洋大学特別研究(教材開発共同研究、研究代表者:湯舟英一、「英語学習者に最適な英文提示法を実現する e-learning 教材の開発」)の一部である。