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三木秀夫法律事務所
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ニュース六法目次
自衛隊のイラク派遣承認(2004年02月09日)  イラク復興支援特別措置法
○国会は2004年2月9日の参議院本会議で、イラク復興支援特別措置法に基づく自衛隊のイラク派遣承認案を自民、公明両党の賛成多数で可決した。これによって、同年1月31日未明の衆議院本会議に続き、戦闘が続く外国領土への初の自衛隊派遣に関する国会の事後承認手続きが完了した。 

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○このイラク復興支援特別措置法は、正式名称は、「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」という。

同法は、2003年7月26日未明の参議院本会議で、与党3党の賛成多数で可決、8月1日に公布、施行された。

同法はイラク復興支援に自衛隊を活用するための法律で、4年の時限立法となっている。

内容は、イラク国民への医療活動、被災民への食糧、医療、医薬品などの援助、輸送、補給活動などの『人道復興支援活動』と、治安維持活動を行う米英軍を後方支援する『安全確保支援活動』の2つが活動の柱となっている。

自衛隊の活動を現に戦闘が行われておらず、今後も戦闘行為が行われないと認められる『非戦闘地域』に限定し、武力行使や武力による威嚇は行わないことを基本原則としている。ただし、自己または現場に所在する者、自己の管理下に入った者の生命・身体防衛のために武器使用を可能している。 

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○同法4条により、政府は自衛隊のイラク派遣の基本計画を正式決定した。
その内容は、イラク南部で医療や給水、学校の復旧・整備など人道支援活動と、米英軍の安全確保支援活動に従事するというもの。イラクに派遣する自衛隊の規模等は、陸上自衛隊が600人以内、車両200両以内、海上自衛隊が輸送艦2隻、航空自衛隊はC130輸送機など8機以内で、派遣想定期間は「12月15日から1年間」とした。

○今回の国会承認は、同法6条1項の「内閣総理大臣は、基本計画に定められた自衛隊の部隊等が実施する対応措置について、防衛庁長官が第八条第二項の規定により当該対応措置の実施を自衛隊の部隊等に命じた日から20日以内に国会に付議して、当該対応措置の実施につき国会の承認を求めなければならない。」という規定によるもの。もし不承認の議決がなされていた場合は「速やかに命令を終了させなければ」ならなかった(同条2項)。   

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○イラク復興支援特別措置法
(目的)
第一条 この法律は、イラク特別事態(国際連合安全保障理事会決議第六百七十八号、第六百八十七号及び第千四百四十一号並びにこれらに関連する同理事会決議に基づき国際連合加盟国によりイラクに対して行われた武力行使並びにこれに引き続く事態をいう。以下同じ。)を受けて、国家の速やかな再建を図るためにイラクにおいて行われている国民生活の安定と向上、民主的な手段による統治組織の設立等に向けたイラクの国民による自主的な努力を支援し、及び促進しようとする国際社会の取組に関し、我が国がこれに主体的かつ積極的に寄与するため、国際連合安全保障理事会決議第千四百八十三号を踏まえ、人道復興支援活動及び安全確保支援活動を行うこととし、もってイラクの国家の再建を通じて我が国を含む国際社 会の平和及び安全の確保に資することを目的とする。

(基本原則)
第二条 政府は、この法律に基づく人道復興支援活動又は安全確保支援活動(以下「対応措置」という。)を適切かつ迅速に実施することにより、前条に規定する国際社会の取組に我が国として主体的かつ積極的に寄与し、もってイラクの国家の再建を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に努めるものとする。
2 対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。
3 対応措置については、我が国領域及び現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域において実施するものとする。
 一 外国の領域(当該対応措置が行われることについて当該外国の同意がある場合に限る。ただし、イラクにあっては、国際連合安全保障理事会決議第千四百八十三号その他の政令で定める国際連合の総会又は安全保障理事会の決議に従ってイラクにおいて施政を行う機関の同意によることができる。)
 二 公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。第八条第五項及び第十四条第一項において同じ。)及びその上空
4 内閣総理大臣は、対応措置の実施に当たり、第四条第一項に規定する基本計画に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。
5 関係行政機関の長は、前条の目的を達成するため、対応措置の実施に関し、内閣総理大臣及び防衛庁長官に協力するものとする。

(基本計画)
第四条 内閣総理大臣は、対応措置のいずれかを実施することが必要であると認めるときは、当該対応措置を実施すること及び当該対応措置に関する基本計画(以下「基本計画」という。)の案につき閣議の決定を求めなければならない。
2 基本計画に定める事項は、次のとおりとする。
 一 対応措置に関する基本方針
 二 対応措置を実施する場合における次に掲げる事項
  イ 当該対応措置に係る基本的事項
  ロ 当該対応措置の種類及び内容
  ハ 当該対応措置を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項
  ニ 当該対応措置を自衛隊が外国の領域で実施する場合には、当該対応措置を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等(自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八条に規定する部隊等をいう。以下同じ。)の規模及び構成並びに装備並びに派遣期間
  ホ 国際連合、人道復興関係国際機関又は国際連合加盟国(第十八条において「国際連合等」という。)に無償又は時価よりも低い対価で譲渡するために関係行政機関がその事務又は事業の用に供し又は供していた物品以外の物品を調達する場合には、その実施に係る重要事項
  へ その他当該対応措置の実施に関する重要事項
 三 対応措置の実施のための関係行政機関の連絡調整に関する事項
3 第一項の規定は、基本計画の変更について準用する。
4 対応措置を外国の領域で実施する場合には、当該外国(イラクにあっては、第二条第三項第一号の政令で定める国際連合の総会又は安全保障理事会の決議に従ってイラクにおいて施政を行う機関を含む。)及び人道復興関係国際機関その他の関係機関と協議して、実施する区域の範囲を定めるものとする。

(国会への報告)
第五条 内閣総理大臣は、次に掲げる事項を、遅滞なく、国会に報告しなければならない。
 一 基本計画の決定又は変更があったときは、その内容
 二 基本計画に定める対応措置が終了したときは、その結果

(国会の承認)
第六条 内閣総理大臣は、基本計画に定められた自衛隊の部隊等が実施する対応措置については、当該対応措置を開始した日(防衛庁長官が第八条第二項の規定により当該対応措置の実施を自衛隊の部隊等に命じた日をいう。)から二十日以内に国会に付議して、当該対応措置の実施につき国会の承認を求めなければならない。ただし、国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合には、その後最初に召集される国会において、速やかに、その承認を求めなければならない。
2 政府は、前項の場合において不承認の議決があったときは、速やかに、当該対応措置を終了させなければならない。

附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(この法律の失効等)
第二条 この法律は、施行の日から起算して四年を経過した日に、その効力を失う。ただし、その日より前に、対応措置を実施する必要がないと認められるに至ったときは、速やかに廃止するものとする。
第三条 前条の規定にかかわらず、施行の日から起算して四年を経過する日以後においても対応措置を実施する必要があると認められるに至ったときは、別に法律で定めるところにより、同日から起算して四年以内の期間を定めて、その効力を延長することができる。     (以下略)
                                            弁護士 三木秀夫

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