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三木秀夫法律事務所
このページは最近話題になったニュースを題材にして、そこに関係する各種法令もしくは
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【お知らせ】
2009年12月から、このページは休止とさせていただきました。
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ご関心のある方は、そちらをご覧ください。

ニュース六法目次
元プロボクサーが示談屋稼業で逮捕(2004年02月10日)   弁護士法違反
○弁護士資格がないのにトラブルの和解などを行って報酬を受け取っていたとして、警視庁少年事件課は、2004年2月10日、元プロボクサーの自称探偵業M容疑者、を弁護士法違反容疑で逮捕した。Mは、都内の繁華街の飲食店経営者などの間で示談屋として知られ、7年間に約200人の依頼をこなし総額3億円近くの報酬を受け取っていたという疑い。

M容疑者は元プロボクサーで、1986年には日本ライト級2位になったことがある。

報道の範囲では、M容疑者は2002年12月、不倫相手の30歳代の男性との間にできた子供を中絶した都内の女性の依頼で、男性と慰謝料や休業補償について交渉。男性が100万円を支払うとする示談をまとめ、弁護士資格がないにもかかわらず、報酬として50万円を受け取った疑い。少年事件課が摘発担当となったのは、東京都内で、昨年8月、中学生5人を含む少年少女6人が、18歳の少女を監禁し、暴行を加えたり服を脱がせて写真を撮影したりした事件を同課が捜査中、被害少女が、M容疑者を通じて加害者側に慰謝料の支払いを求めていたことを突き止めたことが発端となったためのようである。

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○弁護士の資格のない者が、報酬を得る目的で、法律事件に関して法律事務を取り扱うことやその周旋を業とすることは、非弁活動(非弁護士活動)という。これは、弁護士法第72条によって禁止され、罰則もある(2年以下の懲役又は300万円以下の罰金)。

たとえば、弁護士の資格のない者が、依頼する者から報酬を受け取って、交通事故の損害賠償に関して加害者や損害保険会社と示談交渉をしたり(いわゆる示談屋)、債権取立を業とする場合や、民事事件に巻き込まれた当事者から報酬をもらって弁護士等の代理人を紹介(周旋)することを業とするような場合が、この非弁活動にあたる。 

禁止の理由は、弁護士資格のない者が利益を得る目的で事件に介入してくれば、法律秩序が乱れ、国民の法律に関する生活が円滑に営めなくなるからである。暴力団などが介入することによって、相手方になる者はもちろん、依頼者にとっても、適正な権利は守られないことは、過去の教訓から明らかである。

この種の「示談屋」は、よく「弁護士に依頼したら莫大な費用がかかる」と言って寄ってくるが、弁護士にかかる経費は言うほど高いものではない。逆に、示談屋の債権取立てなどの場合は、通常取り立て金の50%を取るし、場合によっては全額を持ち逃げされることが度々にあるし、恐喝などの犯罪行為を起こすなどして、事件に巻き込まれるので要注意。

○この法律の趣旨について、最高裁判所大法廷は、下記の通り判示している。
 「弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし、ひろく法律事務を行なうことをその職務とするものであって、そのために弁護士法には厳格な資格要件が設けられ、かつ、その職務の誠実適正な遂行のため必要な規律に服すべきものとされるなど、諸般の措置が講ぜられているのであるが、世上には、このような資格もなく、なんらの規律にも服しない者が、みずからの利益のため、みだりに他人の法律事件に介入することを業とするような例もないではなく、これを放置するときは、当事者その他の関係人らの利益をそこね、法律生活の公正かつ円滑な営みを妨げ、ひいては法律秩序を害することになるので、同条は、かかる行為を禁圧するために設けられたものと考えられるのである。」(最高裁昭和46年7月14日判決)

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○知り合いの弁護士がいない場合には、各地の弁護士会に法律相談窓口をおいて弁護士紹介を行っているので、ご相談を。 

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○弁護士法
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第72条 
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。だし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。 

(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)
第73条 
何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によつて、その権利の実行をすることを業とすることができない。

(非弁護士の虚偽標示等の禁止)
第74条 
弁護士又は弁護士法人でない者は、弁護士又は法律事務所の標示又は記載をしてはならない。
2 弁護士でない者は、利益を得る目的で、法律相談その他法律事務を取り扱う旨の標示又は記載をしてはならない。3 弁護士法人でない者は、その名称中に弁護士法人又はこれに類似する名称を用いてはならない。

(非弁護士との提携等の罪)
第77条 
次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。
1.第27条(第30条の20において準用する場合を含む。)の規定に違反した
2.第28条(第30条の20において準用する場合を含む。)の規定に違反した
3.第72条の規定に違反した者
4.第73条の規定に違反した者

(虚偽標示等の罪)
第77条の2 第74条の規定に違反した者は、100万円以下の罰金に処する。
                                            弁護士 三木秀夫

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