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三木秀夫法律事務所
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ニュース六法目次
大阪市三セク特定調停成立(2004年02月12日)           特定調停
○破たん状態に陥った大阪市の第三セクター3社が申し立てた特定調停の第5回調停が12日、大阪地裁で開かれ、大阪市や金融機関など24債権者が地裁の調停委員会の示した調停案に同意、調停が成立した。3社はいずれも巨大ビルを経営するアジア太平洋トレードセンター(ATC)、大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC)、湊町開発センター(MDC)。株式会社の三セクで特定調停の成立は全国初という。

(特定調停の経過)
15.06.20  3社が裁判所に特定調停の申し立て 
15.08.21  第1回調停期日 
15.10.30  第2回調停期日 
15.12.02  第3回調停期日 
16.01.13  第4回調停期日 
16.01.31  大阪市会に調停案受諾の議案の上程・可決(附帯決議) 
16.01.12  調停成立

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○特定調停とは、特定調停法(正式名称:特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律)による手続き。この法律は、2000年2月17日に民事調停法の特例として施行された。金融再生トータルプランの一環で議員立法により作られた法律。

この法律による救済は、今回のような巨額債務の事例というよりも、むしろ、多重債務に苦しむ個人や中小業者による活用が多い。

金融機関に公的資金を投入するのだから、金融機関が債務者に対して返済計画の組み直し等に協力させなくてはいけないため、裁判所による債権債務の調整の仕組みとして作られた。債権放棄・債務免除を進めることを目的に作られた法律とも言える。

民事再生法では無担保債権者の全員が対象となるが、特定調停法では任意の相手だけを対象にできる。実質は私的で任意の債権放棄だが、特定調停の場を使うことで、金融機関の稟議が通りやすくなり、また、税務上の貸倒処理がしやすくなる。

法の目的は「経済的に破綻するおそれのある債務者(特定債務者)の経済的再生に資するため、民事調停法の特例として特定調停の手続きを定めることにより、特定債務者が負っている金銭債務に係る利害関係の調整を促進する」というもの。 

適用されるのは、@支払い不能に陥るおそれのあるもの、A事業の継続に支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することが困難であるもの、B債務超過に陥るおそれのある法人。

裁判所は、民事執行手続きの停止を所定の要件のもとで命じることができる。

個人について言えば、多重債務者や住宅ローンを抱えた者が、破産を回避して、再生を図ろうとする場合に有効。法人に関しても、債権者が比較的少ない場合などに有効な債務調整手段。

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○特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律 (抄)
公布:平成11年12月17日法律第158号
施行:平成12年2月17日

(目的)
第一条 この法律は、支払不能に陥るおそれのある債務者等の経済的再生に資するため、民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)の特例として特定調停の手続を定めることにより、このような債務者が負っている金銭債務に係る利害関係の調整を促進することを目的とする。

(定義)
第二条 この法律において「特定債務者」とは、金銭債務を負っている者であって、支払不能に陥るおそれのあるもの若しくは事業の継続に支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することが困難であるもの又は債務超過に陥るおそれのある法人をいう。

(特定調停手続)
第三条 特定債務者は、特定債務等の調整に係る調停の申立てをするときは、特定調停手続により調停を行うことを求めることができる。
2 特定調停手続により調停を行うことを求める旨の申述は、調停の申立ての際にしなければならない。
3 前項の申述をする申立人は、申立てと同時に(やむを得ない理由がある場合にあっては、申立ての後遅滞なく)、財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料及び関係権利者の一覧表を提出しなければならない。

第五条 簡易裁判所は、特定調停に係る事件がその管轄に属する場合においても、事件を処理するために相当であると認めるときは、申立てにより又は職権で、事件をその所在地を管轄する地方裁判所に移送することができる。

(民事執行手続の停止)
第七条 特定調停に係る事件の係属する裁判所は、事件を特定調停によって解決することが相当であると認める場合において、特定調停の成立を不能にし若しくは著しく困難にするおそれがあるとき、又は特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがあるときは、申立てにより、特定調停が終了するまでの間、担保を立てさせて、又は立てさせないで、特定調停の目的となった権利に関する民事執行の手続の停止を命ずることができる。ただし、給料、賃金、賞与、退職手当及び退職年金並びにこれらの性質を有する給与に係る債権に基づく民事執行の手続については、この限りでない。

(当事者の責務)
第十条 特定調停においては、当事者は、調停委員会に対し、債権又は債務の発生原因及び内容、弁済等による債権又は債務の内容の変更及び担保関係の変更等に関する事実を明らかにしなければならない。

(調停委員会が提示する調停条項案)
第十五条 調停委員会が特定調停に係る事件の当事者に対し調停条項案を提示する場合には、当該調停条項案は、特定債務者の経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものでなければならない。

(調停条項案の書面による受諾)
第十六条 特定調停に係る事件の当事者が遠隔の地に居住していることその他の事由により出頭することが困難であると認められる場合において、その当事者があらかじめ調停委員会から提示された調停条項案を受諾する旨の書面を提出し、他の当事者が期日に出頭してその調停条項案を受諾したときは、特定調停において当事者間に合意が成立したものとみなす。

(調停委員会が定める調停条項)
第十七条 特定調停においては、調停委員会は、当事者の共同の申立てがあるときは、事件の解決のために適当な調停条項を定めることができる。
2 前項の調停条項は、特定債務者の経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものでなければならない。
3 第一項の申立ては、書面でしなければならない。この場合においては、その書面に同項の調停条項に服する旨を記載しなければならない。
4 第一項の規定による調停条項の定めは、期日における告知その他相当と認める方法による告知によってする。
5 当事者は、前項の告知前に限り、第一項の申立てを取り下げることができる。この場合においては、相手方の同意を得ることを要しない。
6 第四項の告知が当事者双方にされたときは、特定調停において当事者間に合意が成立したものとみなす。
                                            弁護士 三木秀夫

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