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三木秀夫法律事務所
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ニュース六法目次
カネボウが産業再生法申請(2004年02月16日)  産業活力再生特別措置
○経営再建中のカネボウは、2004年2月16日、花王への化粧品事業売却を白紙撤回して、経済産業省に産業活力再生特別措置法(略称:産業再生法)の適用を申請する方向で検討を始めた。成長性の見込める事業を有効に活用するための経営資源再活用計画を経産省に提出し、認定を受けたい意向。再生法の申請は、化粧品事業を継承する新会社が行う見通し。

その計画によれば、2004年5月末をめどに化粧品事業を本体から切り離して別会社とし、産業再生機構に50%超の出資を仰ぐ方針。カネボウの化粧品事業は、花王への売却交渉が行われていたが合意に至らなかった。再生機構は支援に前向きな姿勢を示している。

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○産業再生法は、過剰な設備や債務を抱えた企業の経営再建を支援する目的で、1999年に施行された「産業活力再生特別措置法」の略称。企業が不採算部門からの撤退など事業再構築計画を所管官庁に提出して認定を受ければ、設備廃棄に伴う欠損金の繰越期間の延長、登録免許税や不動産取得税の軽減、日本政策投資銀行の低利融資などを受けられる。

さらに、2003年の同法改正で、総資産の20%以下の部門を対象に会社分割する場合や、株主に実質的損害を与えない減資をする場合に、取締役会で決定すれば株主総会の議決がなくても認められるようにした。取締役会と株主総会の機能は商法で定められているが、企業が改正産業再生法の適用を受けることを条件に、例外的に商法の規定を免除する。

○産業活力再生特別措置法
(目的)
第1条  この法律は、内外の経済的環境の変化に伴い我が国経済の生産性の伸び率が低下している現状にかんがみ、我が国に存する経営資源の効率的な活用を通じて生産性の向上を実現するため、特別の措置として、事業者が実施する事業再構築、共同事業再編及び経営資源再活用を円滑化するための措置を雇用の安定等に配慮しつつ講ずるとともに中小企業の活力の再生を支援するための措置を講じ、併せて事業者の経営資源の増大に資する研究活動の活性化等を図ることにより、我が国産業の活力の再生を速やかに実現することを目的とする。

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○産業再生機構は、株式会社産業再生機構法(平成十五年四月九日法律第二十七号)にもとづいて設立されたもので、過剰債務に苦しむ企業の再生と、その過剰債務に対応する銀行の不良債権処理を一体的に進める役割を有している。債務超過で苦しむ企業の中から再建可能な企業を見極め、その企業に対する主力銀行以外からの不良債権を買い取り、主力銀行と共同で企業再建を達成する。つまり、産業と金融の一体再生を図るのが業務である。

○株式会社産業再生機構の概要
英語名:Industrial Revitalization Corporation of Japan(略称:IRCJ) 
設立:平成15年4月16日 
本店所在地:東京都千代田区丸の内3丁目3番1号新東京ビル 
資本金: 505億7百万円(増資完了時) 
株主: 預金保険機構、農林中央金庫 

○今回の申請は、新たにつくられるカネボウの別会社に、産業再生機構が株式の過半数を取得して子会社化することで、改革が徹底できると期待するもので、企業再生のモデルケースとなると見られている。産業再生機構側も、これまでに手掛けた小規模な企業支援ではなく、消費者にも知名度の高いカネボウの再建を手掛けることで、その存在をアピールできると乗り気の様子。
 
しかし、今回のカネボウの計画は、国民の血税を利用した企業救済を期待しているだけ、という意見も言われている。産業再生機構が債権買取等の支援に乗り出した場合、将来、債権や持ち株を売却して投資の回収を図るが、企業再生に失敗して最終的に損失が出た場合は、税金で穴埋めすることになる。

もし、本来ならば退場すべきであった企業を、いたずらに生き長らえさせてしまう企業救済と、本当に国民のために乗り出さねばならない企業再生とは、十分に区分されなければならない。

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○株式会社産業再生機構法
第1条  株式会社産業再生機構は、最近における経済の停滞、物価、地価及び株価の下落等の経済情勢の変化に我が国の産業及び金融システムが十分対応できたものとなっていない状況にかんがみ、雇用の安定等に配慮しつつ、我が国の産業の再生を図るとともに、金融機関等の不良債権の処理の促進による信用秩序の維持を図るため、有用な経営資源を有しながら過大な債務を負っている事業者に対し、過剰供給構造その他の当該事業者の属する事業分野の実態を考慮しつつ、当該事業者に対して金融機関等が有する債権の買取り等を通じてその事業の再生を支援することを目的とする株式会社とする。

第19条  機構は、その目的を達成するため、次に掲げる業務を営むものとする。
一  第二十三条第一項の対象事業者に対して金融機関等が有する債権の買取り又は同項の対象事業者に対して金融機関等が有する貸付債権の信託の引受け(以下「債権買取り等」という。)
二 債権買取り等を行った債権に係る債務者に対する次に掲げる業務
   イ 資金の貸付け
   ロ 金融機関等からの資金の借入れに係る債務の保証
   ハ 出資
三  債権の管理及び譲渡その他の処分(債権者としての権利の行使に関する一切の裁判上又は裁判外の行為を含む。)
四  出資に係る持分の譲渡その他の処分
五  前各号に掲げる業務に関連して必要な交渉及び調査
六  第二十三条第一項の対象事業者に対する助言
七  前各号に掲げる業務に附帯する業務
八  前各号に掲げるもののほか、機構の目的を達成するために必要な業

第21条  主務大臣は、機構が、第19条第1項に規定する業務の実施による事業の再生の支援(以下「再生支援」という。)をするかどうかを決定するに当たって従うべき基準及び債権買取り等をするかどうかを決定するに当たって従うべき基準(以下「支援基準」と総称する。)を定めるものとする。
                                            弁護士 三木秀夫

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