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三木秀夫法律事務所
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ニュース六法目次
有栖川宮偽装詐欺被疑事件の初公判(2004年02月20日)       偽皇
○断絶した皇族「有栖川(ありすがわ)宮家」の後継者を装って結婚披露宴を開き、祝儀をだまし取ったとして詐欺罪に問われた有栖川識仁(さとひと)ことK被告(42)は,2004年2月20日、東京地裁の初公判で「金をだまし取る気はなく、皇族を装ってもいない」と起訴事実を全面的に否認した。
妻として振る舞ったS被告(45)も「皇族を装っていない」と無罪を主張。
披露宴を企画したイベント会社役員(42)は「騒がせて申し訳ないが、仕事でやっただけ」と述べた。

検察側は、冒頭陳述などで、2002年8月、K被告は「私は有栖川宮家の継承者ではない」と告白したが、S被告は金もうけをするため皇族の血縁者として装い続けるよう求め、詐欺を発案した。2人は03年4月、イベント会社役員に協力させて東京都内のホテルで披露宴を開き、320人以上から総額約1200万円の現金と絵(約1500万円相当)をだまし取ったと主張している。

この事件の真相はこれからの裁判で審理されるが、争点としては、「詐欺の故意」の有無、が重要な争点になると解される。

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○詐欺罪
刑法第246条 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

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○今回クローズアップされたのは、有栖川宮家という皇族の存在。天皇の流れを汲む宮家で、戊辰戦争の時に東征大総督となった九代目の有栖川宮熾仁(たるひと)親王が有名。 世継ぎの無かった十代目で断絶。祭祀(さいし)は高松宮家が継いでいる。

皇室は,天皇陛下と皇族で構成されている。さらに、内廷にある方と,それ以外の宮家の皇族方とに分かれている。 
皇族については、皇室典範に規定されていて、皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃、女王を皇族としている(5条)。天皇は含まない。天皇の嫡出の皇子及び嫡男系嫡出の皇孫のうち、男を親王、女を内親王とし、3世以下の嫡男系嫡出の子孫は、男を王、女を女王という(6条)。特に皇位継承者となる皇子を皇太子という。皇太子のないときは、皇嗣たる皇孫を皇太孫という(8条)。 

江戸期までは、皇族の宮家は四親王家(幕末期には伏見宮、桂宮、有栖川宮、閑院宮)だけであった。明治になって皇室強化のため、 次々と宮家が創設されていった。今は、秋篠宮、常陸宮、高松宮、三笠宮、桂宮、高円宮家がある。現在は、戦後生まれの宮家は秋篠宮様のみ。

○現在,内廷にある方々は,天皇陛下,皇后陛下,皇太子殿下,皇太子妃殿下,敬宮殿下,紀宮殿下の6方。 

○また,宮家の皇族方は,秋篠宮(4方),常陸宮(2方),高松宮(1方),三笠宮(2方),ェ仁親王(4方),桂宮(1方),高円宮(4方)の各宮家の18方。 

○皇室の構成図は宮内庁のホームページ参照。

○なお,ご結婚により,皇族の身分を離れられた内親王で,現在おいでになる方は,池田厚子様,島津貴子様,近衞ィ子様,千容子様の4方。 

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○内廷皇族
今上天皇(明仁) 【継宮(つぐのみや)】
皇后    美智子(みちこ)
皇太子   徳仁(なるひと) 【浩宮(ひろのみや)】 (皇位継承順位1位)
皇太子妃 雅子(まさこ)
内親王   愛子(あいこ) 【敬宮(としのみや) 】
内親王  清子(さやこ) 【紀宮(のりのみや) 】

○宮家皇族
秋篠宮家 
親王    文仁(ふみひと) 【礼宮(あやのみや)】 (皇位継承順位2位)
親王妃   紀子(きこ)
内親王   眞子(まこ)
内親王   佳子(かこ)

常陸宮家
親王    正仁(まさひと) 【義宮(よしのみや)】(皇位継承順位3位)
親王妃   華子(はなこ)

高松宮家
親王妃  喜久子(きくこ)

三笠宮家
親王    崇仁(たかひと)【澄宮(すみのみや) 】(皇位継承順位4位)
親王妃  百合子(ゆりこ)

親王    寛仁(ともひと) (皇位継承順位5位)
親王妃  信子(のぶこ)
女王   彬子(あきこ)
女王   瑶子(ようこ)

桂宮家
親王    宜仁(よしひと) (皇位継承順位6位)

高円宮家
親王妃  久子(ひさこ)
女王    承子(つぐこ)
女王    典子(のりこ)
女王    絢子(あやこ)
        
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○宮家とは
女子の皇族は婚姻により皇籍を離れねばならず(12条)、宮家創設はできない。このため皇室の存続が危ぶまれるようにもなっている。皇室典範を改正して女子の継承も認める議論もある。

○皇室典範
第2章 皇族 
第5条 皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃及び女王を皇族とする。 
第6条 嫡出の皇子及び嫡男系嫡出の皇孫は、男を親王、女を内親王とし、三世以下の嫡男系嫡出の子孫は、男を王、女を女王とする。 

第7条 王が皇位を継承したときは、その兄弟姉妹たる王及び女王は、特にこれを親王及び内親王とする。 

第8条 皇嗣たる皇子を皇太子という。皇太子のないときは、皇嗣たる皇孫を皇太孫という。 

第9条 天皇及び皇族は、養子をすることができない。 

第10条 立后及び皇族男子の婚姻は、皇室会議の議を経ることを要する。 

第11条 年齢15年以上の内親王、王及び女王は、その意思に基き、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。
2 親王(皇太子及び皇太孫を除く。)、内親王、王及び女王は、前項の場合の外、やむを得ない特別の事由があるときは、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。 

第12条 皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる。 

第13条 皇族の身分を離れる親王又は王の妃並びに直系卑属及びその妃は、他の皇族と婚姻した女子及びその直系卑属を除き、同時に皇族の身分を離れる。但し、直系卑属及びその妃については、皇室会議の議により、皇族の身分を離れないものとすることができる。 

第14条 皇族以外の女子で親王妃又は王妃となつた者が、その夫を失つたときは、その意思により、皇族の身分を離れることができる。
2 前項の者が、その夫を失つたときは、同項による場合の外、やむを得ない特別の事由があるときは、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。
3 第1項の者は、離婚したときは、皇族の身分を離れる。
4 第1項及び前項の規定は、前条の他の皇族と婚姻した女子に、これを準用する。 
第15条 皇族以外の者及びその子孫は、女子が皇后となる場合及び皇族男子と婚姻する場合を除いては、皇族となることがない。

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【おまけ】
○自称天皇騒動
偽皇族と言っていいのかどうか分からないが、「自称天皇」というものが、戦後の一時期、世の中を賑わしたようである。

有名なところでは、「熊沢天皇」がある。

昭和21年、米国紙「ライフ」に、「熊沢天皇」の紹介記事が載った。それによると、名古屋市千種区で雑貨商を営んでいた熊沢寛道という人物(56歳)が、マッカサーあてに陳情書を出し、「自分は南朝最後の後亀山天皇から18代目にあたる子孫であり、正統の天皇である」、「現在の天皇は、足利義満の策謀によって皇位を略奪した子孫で、皇位を捨てなければならない」「GHQは天皇の地位を自分に返すよう命令を発してもらいたい」というものであったという。この人物は、「お前は南朝の天皇の子孫だ」という養父の教育を信じ込んでいたようである。

当時、天皇の戦争責任問題での退位論議ともからんで、世の好奇心を誘ったようであるが、GHQが天皇の戦争責任追求を中止したことから、忘れ去られようとしていた。そのとき、熊沢側は、1946年1月に東京地裁に「現天皇不適格確認訴訟」を提起したが、「天皇は裁判権に服しない」という理由で却下されている。

その後、熊沢天皇のほかに、当時、名乗りを上げた自称天皇たちは、外村天皇、三浦天皇(いずれも愛知県)、酒本天皇(岡山県)、長浜天皇(鹿児島県)、佐渡天皇(新潟県)、横倉天皇(高知県)など、知られているだけで19人に及んだとのことである。 
                                            弁護士 三木秀夫

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