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三木秀夫法律事務所
このページは最近話題になったニュースを題材にして、そこに関係する各種法令もしくは
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2009年12月から、このページは休止とさせていただきました。
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ニュース六法目次
イラクでの人質邦人3人解放(2004年04月15日)       自己責任の原則
○イラクで武装グループに拘束されていた日本人3人が15日、無事解放された。しかし、新たに日本人2人が拉致されたとの情報もあって、政府や与野党には、危険地域への入国について、国民に「自己責任」を求めるべきだとの意見が強まっている。川口外相は15日夜の人質解放に関する緊急記者会見で、「退避勧告を発してきた中で事件が発生したことは誠に遺憾だ」と述べたうえで、「『自らの安全は自ら責任を持つ』との自覚をもって行動を律してほしい」と強い口調でクギを刺した。(16日読売新聞)

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○拘束されていた最初の3人と、あとの2人も無事解放され、本当に喜ばしい。
しかし気になるのは、その後、政府・与党筋から「自己責任」論が出ている点である。なかには、救済作業にかかった費用(中には10億円、20億円がかかったという意見まで出ている)を3人に請求したらどうか、と言う意見まで報道されている。この議論は、「自己責任」との関係を整理する必要がある。
 
自己責任とは、「各人は、自己の行為についてだけ責任を負い、他人の行為については責任を負わないという近代法の原則で、過失責任主義とともに、個人の活動の自由を保障する機能を営んでいる」(有斐閣・法律学小辞典第4版から)というのが、原初的なところでの法的な意味である。
これは、古代や中世においては、一族の者が何か問題を起こした場合に、同じ一族の者が連座して責任を負わされたりした過去を改め、人は一人一人独立した主体で、他人が行った行為については責任を負わなくてよいというもので、これによって、たとえ親や兄弟が他人の財産身体に損害を与えたにしても法的な責任は負わないという考え方である。
 
昨年の7月にある大臣が長崎市での少年犯罪に対して「親なんか市中引き回しの上、打ち首にすればいいんだ」と発言したが、これこそこの自己責任原則に真っ向から逆らう発言で、社会から猛反発を生んだことは記憶に新しい。
 
○いずれにせよ、自己責任という本来の法的意味はこのような場合に使用するものであって、今回は、「自己責任だから救わなくてよい」とか、「自己責任だから費用を弁償すべきである」とかの議論は、用語の使用においては正確では無い。前者は、自己責任という言葉を不当に拡大解釈して、政府による邦人保護の義務を免除させるという驚くべき飛躍がある。後者は、一見もっともに聞こえるが、自己責任と弁償義務とは必ずしも一致するものではなく、法的に支払い義務が存在するか否かは本来別の次元の話であるにもかかわらず、これを無理から接続してしまっている点に問題がある。

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○今回拘束された5人に日本政府が救済費用を請求する法的な根拠はあるのかどうか、検証する必要がある。
 
○まず、基本的には、在外邦人の保護は、政府が負うべき最重要な責務のうちの一つであり、外務省設置法第4条9号でも明確に外務省の役割として明記されている。これは、日本国籍を有する者が保護を要する事態に至った場合に全て適用になるものであり、その者が、たとえ政府の意図に沿う人物であったかどうかなどは一切問うべきものではない。この点は、その地域が退避勧告の出ている地域であっても、政府はその義務を免れるものではない。そして、国家が海外で拘束された邦人の救済に要した費用を請求する特別な法規定はない。
 
○次に、邦人の救済に要した費用を請求できる可能性としてまず挙げられるのは、3人に故意または過失で他人の生命財産に損害を与えた場合、そのものに対して賠償義務を定めた民法709条の不法行為による損害賠償責任の規定であろう。
 
民法第七百九条  
故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス
 
この規定での損害賠償請求ができるための要件としては、@加害者に故意・過失があること、A加害者の行為に権利侵害(違法性)があること、B加害行為と損害との間に因果関係が存在していること、C加害者に責任能力があること、が必要である。今回、この3人は、故意に政府に損害を与えたものではない。過失で損害を与えたといえる可能性は無いではないが、今回の3人の行為は、海外渡航の自由が保障されている以上、そこに違法性は無いといえよう。また、因果関係もあるかどうかは議論の余地がある。
 
○もうひとつ、政府が費用請求をするとしたら、その根拠として検討しうる根拠は、民法697条、702条に規定された「事務管理にもとづく費用償還請求」である。

民法でいう「事務管理」というのは、分かりやすい例を出して言えば、特に頼まれたわけでもないのに、道で倒れていた急病人を保護して自分の金でタクシーを呼んで病院に連れて行って入院費用も出した場合や、たまたま家に迷い込んできた他人の飼い犬について飼い主が見つかるまでの間に餌などを与えて保護した場合など、法律上の義務が無いのに他人のために一定の事務作業を行うことをいう。
こういう行為を「余計なお節介」として何らの保護をしないという制度設計もありえるが、日本では民法で一定の場合にその費用(前述の例で言えば、タクシー代や治療費、犬の尅繧ネど)の償還を請求できるものとした。これが、「事務管理にもとづく費用償還請求」である。この事務管理にもとづく費用償還請求ができる要件は、@義務なくして他人の為に事務の管理を始めた場合で、かつA本人の為に有益なる費用を出した場合、である。
 
今回の、日本政府の邦人保護活動は、政府としての当然の義務であり、そうなれば、上記の要件である「義務なくして他人の為に事務の管理をした」とは言えず、費用償還請求はできない。ただ、最低限の必要経費はともかくとして、政府の行う義務を越えるような部分で、政府が立て替えたような範囲は、本人に求償しうることはありうる。例えば、日本への帰国旅費や、家族が迎えに行く旅費などであり、本来は邦人保護のために出費すべき範囲を超えたものである。今回、外務省は、高遠さんら3人について、バグダッドからドバイへのチャーター機費用の一部(同区間を商用機で飛んだ場合のエコノミー料金)と、ドバイの病院で行った健康診断の実費分、ドバイからの帰国費用を本人負担として、請求することになったそうであるが、費目の範囲に関しては、妥当なところではないか。ただ、請求金額の根拠については、個別事情に応じて検証は必要であろう。
 
民法第六百九十七条  
義務ナクシテ他人ノ為メニ事務ノ管理ヲ始メタル者ハ其事務ノ性質ニ従ヒ最モ本人ノ利益ニ適スヘキ方法ニ依リテ其管理ヲ為スコトヲ要ス
2 管理者カ本人ノ意思ヲ知リタルトキ又ハ之ヲ推知スルコトヲ得ヘキトキハ其意思ニ従ヒテ管理ヲ為スコトヲ要ス

第七百二条  
管理者カ本人ノ為メニ有益ナル費用ヲ出タシタルトキハ本人ニ対シテ其償還ヲ請求スルコトヲ得 
 
○この点に関し、一部世論や一部マスコミなどでは、「危険なイラクに出向いた被害者たちにあり自己責任を負うべきである」「政府が支出した救援費や外務省などの職員人件費などは税金での支出なのであるから、自己責任からして全額を本人らに請求すべきである」という意見が横行している。しかし、この「自己責任」論は、自律した個人が自らの責任で社会活動をするという本来の意味をすりかえている。また、邦人保護は政府の義務であって(このことは、ニュース六法4月13日版参照を)、その義務遂行に税金を使用することはある意味当然であり、感情的な(なぜ感情的になるのか分からないが)意見の横行はおかしいといえる。
 
むしろ私は、ニュース六法4月13日版でも述べたが、日本の政府や自衛隊関係者以外の純粋民間人が、イラクに入国して報道のための取材活動やイラク国民のための援助活動を行うこと自体は、単なる国益を超えた大きな重要性があると考えるだけの度量を日本国民が持つべきではないかと考えている。
 
その理由は、ひとつには、民間援助活動の重要性である。海外援助には、国家間援助が多くなされているが(今回の自衛隊派遣はそのひとつとも言える)、これとは別に国家政府とは異なる立場で、市民が市民のために市民の目線で行う民間援助活動は、国家政府の価値観とは異なる価値観での援助の「存在自体の価値」があると考えるからである。政府の行う援助活動には、当然に国民の多数意思を背景に行われるものであるが、それ自体が唯一絶対のものではなく、ひとつの選択肢として行われているものである。その選択肢とは異なる観点での援助活動は、それ自体が、ある部分では現地のニーズに合致するところもありえ、また、多数の意見のみでは吸い上げれないニーズや知識なども、これによって知りえることは、大きな観点で公益性が認められるからである。
また、取材活動に関して言えば、イラクの現地で行われている多くの生の事態を直接に見て記録としてとどめ、これをひろく日本国民や世界中の人々に知らせることは、非常に重要だからである。軍隊に守られた従軍記者や一部マスコミの特派員の限られた範囲での取材活動だけでは読み取れない草の根的な事実報道は、人々の知る権利につながり、さまざまな情報チャンネルを得ることになり、正しい判断を導く手がかりになるといえるからである。もし、従軍記者のみの情報であった場合、外部やイラク国民の目から見た情報に欠けることになる可能性があり、極端な話、非人道的行動がそこで行われても知りえないことも生じうる。いまこそ、イラク内部では外国人としての第3者の複数の目、特に自衛隊を送った日本の国民の草の根的な目は非常に貴重なものである。
 
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○米国パウエル国務長官の次の発言や、仏ルモンド紙に載った次の言葉は、欧米のNGOなどに対する心の広さ・度量を感じることができた。

「3人を誇りに思うべき」[TBS]2004.4.16
パウエル国務長官は、日本の一部で、人質になった民間人に対して、「軽率だ、自己責任をわきまえろ」などという批判が出ていることに対して、「全ての人は危険地域に入るリスクを理解しなければなりません。しかし、危険地域に入るリスクを誰も引き受けなくなれば、世界は前に進まなくなってしまう。彼らは自ら危険を引き受けているのです。ですから、私は日本の国民が進んで、良い目的のために身を呈したことをうれしく思います。日本人は自ら行動した国民がいることを誇りに思うべきです。また、イラクに自衛隊を派遣したことも誇りに思うべきです。彼らは自ら危険を引き受けているのです。たとえ彼らが危険を冒したために人質になっても、それを責めてよいわけではありません。私たちには安全回復のため、全力を尽くし、それに深い配慮を払う義務があるのです。彼らは私たちの友人であり、隣人であり、仲間なのです。」と述べた。
 
○自己責任論を批判 「若者誇るべき」と仏紙【パリ20日共同】
20日付フランス紙ルモンドは、イラク日本人人質事件で、日本政府などの間で「自己責任論」が台頭していることを紹介、「日本人は人道主義に駆り立てられた若者を誇るべきなのに、政府や保守系メディアは解放された人質の無責任さをこき下ろすことにきゅうきゅうとしている」と批判した。
 東京発の「日本では人質が解放費用の支払い義務」と題した記事は、解放された人質が「イラクで仕事を続けたい」と発言したことをきっかけに、「日本政府と保守系メディアの間に無理解と怒号が沸き起こった」と指摘。「この慎みのなさは制裁まで伴っている」とし、「人質の家族に謝罪を要求」した上に、健康診断や帰国費用の負担を求めたと批判した。記事は、「(人質の)若者の純真さと無謀さが(結果として)、死刑制度や難民認定などで国際的に決してよくない日本のイメージを高めた」と評価。パウエル米国務長官が人質に対して、「危険を冒す人がいなければ社会は進歩しない」と慰めの言葉を贈ったことを紹介した。  (2004年04月21日goo ニュース))

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(以下からの部分は、当初発表文に加筆をして、8月9日に追加登載しました)

○本件に関して、後日にいたって、国会の質問書に対しての政府答弁が公表されたので、ここに参考の資料として追加で付加した。

【後日資料1 政府答弁書】 
内閣参質一五九第二八号 平成十六年六月二十九日 
「参議院議員紙智子君提出イラクにおいて拘束された邦人三名の解放から現在に至るまでの政府の対応に関する質問に対する答弁書」より抜粋

(質問)政府はこの三名の解放のためにどのような活動を行い、その活動にどれだけの経費を要したのか、それらの全容を時系列で明かにされたい。また、その活動の位置付けについて、政府の見解を示されたい。 

(回答)イラクにおいて人質として拘束された邦人三名の解放のため、政府は、当初から正確な事実関係の確認のための情報収集に努め、また、イラクの関係当局、関係国政府等とあらゆる経路を通じた緊密な連携に努めるなど、一刻も早く人質の方々が無事に解放されるよう、全力を挙げて取り組んだ。政府の対応経過は、次のとおりである。なお、時刻はいずれも日本時間である。
平成十六年四月八日夕刻、イラクにおいて三名の邦人が人質となったことを示す映像が存在するとの情報を外務省が受け、確認を急いだ結果、中東の衛星テレビ局アル・ジャジーラが同日午後九時にこの映像を放送する予定であり、その映像に映る邦人が高遠菜穂子さん、郡山総一郎さん及び今井紀明さんの三名である模様であった。事件の一報を受け、すぐに、外務省緊急対策本部、警察庁対策室及び官邸対策室を設置した。映像放送後、福田内閣官房長官が、緊急記者会見において、事件の槻要及び政府の対応などを説明した。

同月九日午前、小泉内閣総理大臣の判断により、内閣官房長官を本部長とする在イラク邦人人質事件対策本部(以下「対策本部」という。)を設置し、事件の迅速な解決等に向け、関係省庁が一致協力して必要な施策を強力に推進するため政府が一体となって取り組むこととした。その直後に第一回対策本部会議を開催し、また、同日午後、関係省庁の局長等を構成員とする対策本部幹事会の第一回会議を開催し、人質解放までに対策本部幹事会の会議を計十回開催した。

また、逢沢外務副大臣一行が同日、ヨルダンに向け出発し、同月十日ヨルダンに到着後、在ヨルダン日本国大使館に外務省現地緊急対策本部を設置した。逢沢外務副大臣一行には警察庁国際テロ緊急展開チームが同行した。逢沢外務副大臣は、ヨルダン公安関係者やファーイズ・ヨルダン首相と会談するなど、現地機関と緊密に連携して情報収集に当たった。

さらに、同月十一日、川口外務大臣が人質の安全かつ速やかな解放を求める内容のビデオを、衛星テレビ放送局を通じて、全世界に向けて発信した。同月十二日、小泉内閣総理大臣は、来訪したチェイニー米国副大統領及びエルドアン・トルコ首相と会談し、人質解放の協力を要請した。

同月十五日、三名の人質がバクダッド市内アミリーア地区のクベイシー・モスクで解放されたとの情報を受け、同日午後八時三十分、在イラク日本国大使館館員がモスクに赴き、三名の無事を確認し、その身柄を保護した。同月十六日、三名は政府チャーター機でアラブ首長国連邦のドバイに向かい、健康状態の診断等を受けた後、同月十八日夕刻逢沢外務副大臣が同行して日本へ帰国した。

次に、お尋ねの経費について述べると、職員の給与にかかわる経費など、性格上各業務に区分し難いものがあるとともに、イラクに係る邦人保護業務については、邦人三名の拘束事件発生前から様々な作業を継続しており、当該事件発生後も新たに別の邦人二名の拘束情報の確認作業や邦人記者の国外退避支援作業など同時に多くの案件を処理していたため、邦人三名解放のための活動経費の全容を見積もることは困難である。

邦人三名解放のための経費として区別し得るものとしては、逢沢外務副大臣一行の出張関連費約八百八十七万二千円、川口外務大臣が人質の解放を求める内容のビデオの作成費十五万五千円等が挙げられる。また、邦人三名の輸送のためにヨルダンのアンマンからバグダッド経由でドバイまで借り上げた航空機の運航費は約六十五万六千円であり、そのうちバグダッドからドバイまでの一人当たり正規エコノミークラス料金に当たる約四万一千円の負担を三名にお願いしている。

このような政府の邦人保護活動は、外務省設置法(平成十一年法律第九十四号)第四条第九号に外務省の所掌事務として「海外における邦人の生命及び身体の保護その他の安全に関すること」が規定されているとおり、外務省の任務と位置付けられる。また、警察庁は国際テロ緊急展開チームを派遣して現地治安当局との連携や情報収集の強化を図ったところであるが、これは、国外において我が国国民の生命、身体及び財産並びに我が国の重大な利益を害し、又は害するおそれのある事案と認められたことから、警察においても情報収集を強化する必要があると判断し派遣したものである。

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【後日資料2 政府答弁書】
内閣衆質一五九第一四六号 平成十六年六月二十九日 
「衆議院議員山本喜代宏君提出イラクにおいて拘束された邦人三名に対する政府の対応に関する質問に対する答弁書」より抜粋

(質問)政府は右記三名の解放のためにどのような活動を行い、それにどれだけの経費を要したのか、その全容を時系列で具体的に明かにされたい。 

(回答)・・・(上記の【後日資料1】の回答と同じ)

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【後日資料3 政府答弁書】
内閣衆質一五九第一四五号 平成十六年六月二十二日 
「衆議院議員小林千代美君提出イラクにおいて拘束された邦人三名の解放から現在に至るまでの政府の対応時に関する質問に対する答弁書」より抜粋

(質問)海外において拉致あるいは拘束された邦人を救出し、帰国させるために要した経費のうち、政府の負担とする部分と当事者負担とする部分の範囲を画する基準(法的根拠、内規、先例等)を明かにされたい。 

(回答)海外における邦人の生命及び身体の保護等の事務の遂行に当たって政府が要する経費は、政府が負担することとしている。本人又はその家族(以下「本人等」という。) の航空費、滞在費等、本人等にかかわる経費については、本人等に負担してもらうこととしている。
このような基準について、特段の内規等は定めていないが、政府が海外において邦人の生命及び身体の保護等に当たる場合には、従来からこのような基準に基づいて対応してきているところである。

また、本人等が政府チャーター機を利用する場合については、外務省の内規である「緊急事態時における在外邦人等輸送のための政府チャーター機利用者よりの搭乗費用の徴収規程」(平成十一年六月三十日制定。以下「徴収規程」という。)に基づき国際航空運輸協会(IATA)が定める正規片道エコノミークラス料金分の負担をしてもらうこととしている。

(質問)イラクにおける今回の事件において、政府が右記一の経費負担のあり方を決するにあたって、参照もしくは適用した法規、内規、先例等を明らかにされたい。また、それらを参照もしくは適用するに至った根拠を説明されたい。     

(回答)お尋ねの今回の事件についても、従来の事案と区別して扱う理由がないので、一についてで述べた基準に従い対応した。また、拘束された邦人三名は、バグダッドからドバイへの移動に当たって政府チャーター機を利用したが、この政府チャーター機については、徴収規程に従い、国際航空運輸協会(IATA)が定めるその区間の正規片道エコノミークラス料金分の負担をお願いした。
                                            弁護士 三木秀夫

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