稲垣元北海道・沖縄開発庁長官ら逮捕(2004年06月10日) 出資法違反 |
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○稲垣元北海道・沖縄開発庁長官ら逮捕 出資法違反容疑 「キャピタルインベストジャパン」事件
稲垣実男元北海道・沖縄開発庁長官(76)が社長を務めていた投資会社「キャピタルインベストジャパン」(東京都新宿区)による出資法違反事件で、警視庁は10日、稲垣容疑者や同社幹部ら計6人を同法違反(預かり金の禁止)の疑いで逮捕した。警視庁は稲垣元長官が10億円を超える借金を抱えているとみており、動機を調べている。 ほかに逮捕されたのは同社の現社長西野日出夫(65)、元取締役関智美(49)の各容疑者ら。
生活経済課の調べでは、稲垣元長官らは金融機関ではないのに、02年5月中旬から12月下旬までの間、毎月配当金を支払うほか満期時に元本を償還することを約束して、板橋区の無職女性(79)ら24人から約2400万円を集めた疑い。 稲垣元長官は容疑を認めたうえで「相当額の借金があり、これを返してもう一花咲かせたかった」と供述。西野社長は「稲垣元長官との共謀はないし金を集めたこともない」と否認している。
稲垣元長官は同社の社長に就いた02年1月、金融庁を訪れて事業として資金を集めることが違法かどうかを尋ね、「出資法に触れる」との回答を得ていた。にもかかわらず02年4月から勧誘を始めたという。集めた約6億7500万円のうち約5000万円だけが頓挫した仙台市の老人ホーム新設事業に充てられた。ほかは運用された実態はなく、約9000万円は配当や途中解約金に、西野社長が借金返済に充てるなどした金も約3億3000万円あった。このほか使途不明金も約1億6000万円あり、同課は西野社長らがここからも私的に流用した疑いがあるとみて調べている。
(朝日新聞)
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○相変わらず、このような事件はあとを絶たない。今度も政治家がらみの事件。この件が本当であるならば、このような人物が北海道・沖縄開発庁長官になっていたことが不思議でならない。
○「出資法」とは、「出資取締法」との呼ばれ、正式名称を「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(昭和二十九年六月二十三日法律第百九十五号)という。
この法律では、不特定且つ多数の者に対して後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示・暗黙のうちに示して、出資金を受入れることの禁止、業として行う預り金の禁止、浮貸し等の禁止、金銭貸借の媒介手数料の制限、高金利の処罰(現在は上限年29.9%)などを定めている。
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○この法律は、昭和20年代に匿名組合に似た形態を利用して、一般公衆約15万人から約44億円の出資金を集め、返済不能になって社会問題を引き起こした、いわゆる「保全経済会事件」がきっかけになって制定された。当時は、このような行為を直接に罰する規定がなく、詐欺罪での立件しかできないものであったため、結果的にほとんどの同会による出資金集めの行為は犯罪の対象に当たらないものとして処理されたためである。
○「出資金受け入れの制限」と「預かり金の禁止」
出資法1条は、一般大衆が不測の財産的損害を被ることを防止する目的で、あたかも出資金が返ってくるかのような誤解を招くような誇大な広告などの方法による出資金の受け入れを禁止したものである。これに対して、同法2条は、法律で特に認められた銀行などの金融機関以外の者が預金・貯金・定期積金などの預かり金を受け入れることを禁止するものであるが、これは預金等をする一般大衆の地位を保護し、社会の信用制度と経済秩序の維持と発展を図る(最高裁大法廷判決昭和36年4月26日)ために制定されたものである。
いずれも、違反すれば、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(または併科)となっている。
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○出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)
(出資金の受入の制限)
第一条 何人も、不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、又は暗黙のうちに示して、出資金の受入をしてはならない。
(預り金の禁止)
第二条 業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない。
2 前項の「預り金」とは、不特定かつ多数の者からの金銭の受入れであつて、次に掲げるものをいう。
一 預金、貯金又は定期積金の受入れ
二 社債、借入金その他何らの名義をもつてするを問わず、前号に掲げるものと同様の経済的性質を有するもの
(その他の罰則)
第八条 何らの名義をもつてするを問わず、また、いかなる方法をもつてするを問わず、第五条第一項から第三項までの規定に係る禁止を免れる行為をした者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第一条、第二条第一項、第三条又は第四条第一項の規定に違反した者
・・・(以下略)
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○「出資金」と「預り金」の区別について
両者の区別は以外に難しい。
理論的には、前者は元本の返還が保障されないのに対して、後者はそれが保障される点にある。また、前者は、契約締結時点での返還請求権は事業の成功を停止条件としたものであるのに対して、後者の元本返還請求権は契約締結時点ですでに発生している。
しかし、実際のケースでこのどちらが該当するかの判断は微妙な場合が多く、その割には罰則の適用においては同じであることや、資産の提供者はほとんどの場合において元本が必ず帰ってくるか、さらには利益配当が確実であると考えていることなどから、実際の実務ではほとんど全てが2条の預り金事犯として処理がされている。今回のキャピタルインベストジャパンの事例でも、同様である。
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○過去の事例
保全経済会事件後に制定された出資法による出資金預かり金違反事件の主要な事例について、「出資法」(斎藤正和著・青林書院)に記載されている。ここでは、同書から事件名を引用させていただく。詳細は同書を参照されたい。(カッコは、犯罪期間もしくは検挙年)
①倫蔵の宮事件(昭和29~36年)
②佐賀県退職公務員連名事件
③北日本相互経済互助会事件(昭和48~49年)
④商品展示用ケース事件
商品展示用ケースを賃貸し、賃借客であるテナントが展示した商品を
⑤マンション共同経営事件
⑥株式会社コスモス事件(昭和59~61年、63年検挙)
⑦株式会社ベストアイ事件(昭和62~63年、平成3年)
⑧エンドレスクラブ株式会社事件(昭和62~63年、平成元年検挙)
⑨日本証券委託株式会社事件(昭和59~平成元年、平成2年検挙)
⑩株式会社ティピーシー事件(昭和60~平成2年検挙)
⑪ユニオン情報サービス株式会社事件(昭和61~62年、平成2年検挙)
⑫宗教法人「再起会」事件(平成3年検挙)
⑬株式会社プロスペリティージャパン事件(昭和63~平成3年、平成4年検挙)
⑭株式会社ジャシージャパン事件(昭和59~平成3年、平成5年検挙)
⑮東海勧業株式会社事件(昭和36~平成5年、平成5年検挙)
⑯経済革命倶楽部(KKC)事件(平成7年~8年、平成9年2月起訴)
⑰オレンジ共済組合事件(平成9年2月起訴)
⑱和牛オーナー事件(平成7年~8年、平成9年7月起訴) |
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