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ニュース六法目次
金融庁がUFJに業務改善命令(2004年06月18日) 早期健全化法・銀行法
○金融庁、UFJに改善命令・検査忌避など4項目
金融庁は18日、UFJホールディングスとUFJ銀行に対し、同庁の検査を通じて貸出先に関する資料を組織的に隠ぺいしていたなどとして、検査への対応など4項目で業務改善命令を発動した。7月下旬までにそれぞれの改善計画を作るよう求め、四半期ごとに進み具合を点検する。銀行に四つの改善命令が同時に出るのは初めてで、異例の重い行政処分。2004年3月期に大幅赤字を計上したUFJは経営の健全化に加え、信頼回復も急務となる。

金融庁が最も深刻にみているのは銀行法上の違反行為であり、意図的に検査を受けるのを避ける「検査忌避」。竹中平蔵経済財政・金融担当相は18日、罰則規定もある検査忌避に絡んで刑事告発に踏み切るかどうかについて「行為がどれぐらい悪質か、いかに検査に影響を与えたかなどを総合的に判断しなければならない。それはそれとして検討する」と述べた。

改善命令では検査忌避のほか、(1)公的資金による資本注入を受けた銀行が2年連続で収益目標を大幅に下回った業績の悪化(2)中小企業向け融資の水増しなど不適切な対応――などを問題視した。(日経新聞) 

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○金融庁の出す業務改善命令とは、銀行など金融機関の経営の健全性を確保するために、金融庁が銀行法にもとづいて実施する行政処分のことで、内部管理体制の強化や経営責任の明確化を命じることが多い。同法で、金融庁は、金融機関に対して、報告または資料の提出を求めることができ、さらに、業務や財務の状況について質問し、帳簿書類や物件を検査する立ち入り検査権が認められている。 かかる調査の結果、必要と認めれば、金融機関に業務改善計画の提出などの措置を命じることができ、期限つきでの業務の全部又は一部停止を命令することができる。この業務改善命令に従わない場合は、銀行業の免許取消という権限もある。

○今回の金融庁の処分は、腹に据えかねてのことであろう。かなり厳しい処分である。処分内容を金融庁のホームページで見ると、「多数の役職員によって組織的に行われた」とされる行為が複数あったとも認定している。UFJ側は、債務者区分の判定に重大な影響を与える資料を隠し、「そのような(隠してある)場所は存在しない」と検査官にウソをつき、検査官がいる部屋で資料を破り捨てたこともあったというが、これが本当ならば由々しき事態である。大口融資先に対する行内審査の議事録で、財務状況の問題点などを指摘した部分を削除するなど資料の改ざんもあったとも指摘されており、根は深い。中小企業貸し出しのかさ上げと、短期間に業績予想を2回下方修正したことで銀行が改善命令を受けたのは、今回初めてとのことである。

○この日、竹中平蔵経済財政・金融担当相は、罰則規定もある検査忌避に絡んで刑事告発に踏み切るかどうかについて「行為がどれぐらい悪質か、いかに検査に影響を与えたかなどを総合的に判断しなければならない。それはそれとして検討する」と述べたとのことである。


○この同じ日の18日に会見したUFJ銀行の沖原頭取は謝罪する一方で、検査忌避は意図的ではなかったと述べ反論したようである。しかし、報道された言い方を読めば、「意図したものではないとはいえ、外形上、法令違反の疑いを抱かれても仕方ない」「組織的だったという認識はない」などと微妙なニュアンスである。これは、組織的違法行為の存在を全面的に認めるわけにはいかない事情があるからと思われる。つまり、故意性を認めれば、場合によっては刑事処分などの事態に発展するからであり、万一そのような事態になれば、役員個人の刑事責任問題はもちろんであるも、銀行自体の資本増強に支障が出て、破綻へと進む可能性も出てくるからである。

○個人的には、UFJは、今から30年位前に、生まれ育った地元の三和銀行の支店で初めて口座を開設した以来の取引であり、その意味で個人的な親しみは持っている。厳しい金融の荒波の中で、かなり姿勢の変動が見られるものの、はやく健全な銀行へと生まれ代わって欲しいと考えるのは私だけではないと思う。ここで変わらなければ、社会からの退場を命じられらかねない。

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今回の金融庁の行政処分をみると、宛先と根拠法は下記の通りである。
@検査対応に関する行政処分
宛先⇒UFJ銀行(根拠法令:銀行法第26条第1項)

A資本増強行に対するフォローアップルール(いわゆる3割ルール)に関する行政処分
宛先⇒UFJホールディングス(根拠法令:早期健全化法第20条第2項、銀行法第52条の33第1項)

B中小企業向け貸出に関する行政処分
宛先⇒UFJホールディングス(根拠法令:早期健全化法第20条第2項、銀行法第52条の33第1項)
宛先⇒UFJ銀行(根拠法令:銀行法第26条第1項)

C業績予想修正と決算短信の計数が大幅に異なったことに関する行政処分 
宛先⇒UFJホールディングス(根拠法令:銀行法第52条の33第1項)
宛先⇒UFJ銀行(根拠法令:銀行法第26条第1項)
 
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○この改善命令において、金融庁が認定した事実と処分内容をかみ砕くと以下の通り。

@検査忌避
(担当部署)金融庁監督局銀行第一課、検査局総務課
(認定事実)
1 UF J銀行に対する検査(平成16年5月31日通知)及び銀行法第24条第1項の規定に基づく報告によると、同行の多数の役職員らにより以下のような行為が組織的に行われた事実が認められた。
(1) 債務者区分や償却・引当の判定等に重大な影響を与える重要な資料を執務室以外の場所へ移動・隠蔽する行為が行われた。また、同様の重要なデータ等を廃止された部署のサーバに移動し、さらに、事実上その存在が探知できない状態に置くなどの行為が行われた。これらの行為は、検査に先立ち、累次の部内会議における指示等の下、組織的に行われている。
 さらに、立入検査において、検査官が執務室以外の書類保管場所の存否について質問したのに対し、そうした場所は存在しない旨の虚偽の回答を行うなどの対応が行われた。また、検査官の傍らで一部の資料について破損等が行われた。
(2) 大口先などみこ関し経営陣等が審査を行った際の議事録について、債務者企業の業容や財務状況に係る懸念が表明された部分等を削除するなど、多数の改ざん行為が行われた。これらの行為は、検査に先立ち、経営陣の関与の下、組織的に行われている。
 また、検査官の特定債務者に係る資料要求に対し、関係資料のうち債務者区分の判定に重大な影響を及ぼす事実の記載を削除する改ざん行為が行われた。この行為も、経営陣の関与の下、組織的に行われている。さらに、立入検査において、これら改ざん後の議事録等が真正なものとして検査官に提出された。
(3) 上記資料・データ等の隠蔽等を前提に、個別債務者の業客や財務状況に関して、検査官に対し虚偽の説明が行われている。

2.当該行為は、銀行法第63条第3号及び第64条第1項第2号の検査忌避等(同法第63条第3号に規定する「当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又は同法第25条第1項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避」することに該当する行為をいう。以下同じ。)に該当するものと思料される。また、上記1の行為以外にも、検査忌避等に該当すると思料される行為及び多数の不適切な検査対応が認められた。
 これらの行為ないし検査対応により、検査における債務者区分や償却引当の判定等に困難が生じ、また、検査の効率的な実施が妨げられた結果、立入検査期間が大幅に長期化する等の影響があった。

(処分内容)
(1) 適切な受検態勢を確立し、資料及びデータの隠蔽、資料の改ざん並びに虚偽説明等、検査にあたっての不適切な対応の再発防止を確保するため、以下の観点から業務運営及び内部管理態勢を確立・強化すること。
@ 検査の効果的・効率的実施を確保するための検査対応業務の適正な管理
A 内部監査及び監査役監査の充実・強化
B 関係する役職員の責任の所在の明確化

(2) 法令等遵守態勢を確立し、適正な業務運営を確保するため、以下の観点から、内部管理態勢を充実・強化すること。
@ 法令等遵守に対する経営姿勢及び経営責任の明確化
A 本部における相互牽制機能強化による法令等遵守態勢の確立
B 役職員の法令等遵守意識の向上

(3) 上記(1)及び(2)に関する改善計画を平成16年7月 20 日(火)までに提出し、着実に実施すること。
(4) 改善計画の実施状況等について、改善計画の実施完了までの間、平成16年9月期を初回として、四半期ごとの実施状況等を1ヶ月以内に報告すること。


Aフォローアップルール(3割ルール)
(1999年に、公的資金を注入された銀行などについて、フォローアップルール(いわゆる「3割ルール」)が適用されることとなった。金融庁のガイドラインによるもので、「3割ルール」とは、公的資金投入行が、提出した経営健全化計画を3割以上、下回ると、金融庁が業務改善命令が出せるというルールをいう。この3割ルールに基づき、みずほフィナンシャルグループ、UFJホールディングス、三井住友フィナンシャルグループ、三井トラスト・ホールディングス、住友信託銀行の大手5大グループのほか、地方銀行などに対して、抜本的な収益向上を求める業務改善命令が発動されている。UFJホールディングスは、2回目の命令となる。)

(担当部署)金融庁監督局総務課金融危機対応室
(認定事実)
株式会社UF Jホールディングスについて、15年3月期において、金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律(以下「早期健全化法」という。)第20条第2項及び銀行法第52条の33第1項に基づく業務改善命令(平成15年8月1日付金監第2495号)を受けたにも拘らず、経営健全化計画に係る平成16年3 月期の収益目標と実績とが大幅に垂離しているなど、なお経営の改善が見られないことから、早期健全化法第20条第2項に定めるところにより、経営健全化計画の履行を確保するための措置を講ずる必要があると認められ、早期健全化法第20条第2項及び銀行法第52条の33第1項に基づき業務改善命令を発出した。

(業務改善命令の内容)
(1)早期健全化法第20条第2項及び銀行法第52条の33第1項に基づく業務改善命令(平成15年8月1日金監第2495号)に基づき提出された業務改善計画を見直し、新たに、経営の改善に向けた責任ある経営体制の確立、抜本的な収益改善のための方策を織り込んだ業務改善計画を平成16 年 7 月 26日(月)までに提出すること。(注)上記の業務改善計画の策定にあたっては、「公的資金による資本増強行(主要行)に対するガバナンスの強化について」(平成15年4月 4 日、金融庁)1.(2)に留意すること。
(2)業務改善計画を着実に実施すること。
(3)上記業務改善計画提出後、同計画の履行が確保されていると認められるまでの間、平成16年9月期を初回として、四半期ごとの実施状況を2 ヶ月以内に報告すること。


B中小企業貸し出しのかさ上げ
(UFJは、「年度末に貸し出して翌年度初めに回収する」など、実際の資金需要のない融資を多数行っうことで、意図的に融資残高を「かさ上げ」していたというもの。)

(担当部署)金融庁監督局総務課金融危機対応室、監督局銀行第一課
(認定事実)
株式会社UF Jホールディングスにおいては、中小企業向け貸出に係る実態確認・計数管理等に関し、取組態勢が不十分であったと認められ、「資本増強行に対するフォローアップに係る行政上の措置について」(平成11年9月 30 日金融再生委員会)において示されている「経営健全化計画を自ら的確に履行しようとしていないと認められた場合」に当たると認められることから、金融機能の早期健
全化のための緊急措置に関する法律第20条第2項及び銀行法第52条の33第1項の規定に基づき業務改善命令を発出した。なお、株式会社UFJ銀行に対しても銀行法第26条第1項の規定に基づき、同様に業務改善命令を発出した。

(業務改善命令の内容)
(1)中小企業向け貸出に関する取組態勢の改善のための具体的方策(責任の所在の明確化を含む)を織り込んだ業務改善計画を平成16 年7月26 日(月)までに提出すること。
(2)業務改善計画を着実に実施すること。
(3)業務改善計画提出後、改善計画の実施完了までの間、平成16年9月期を初回として、四半期毎の実施状況等を1ヶ月以内に報告すること。


C度重なる下方修正
(「2004年4月28日に十分に慎重な見通しをもって経営判断を行わなかった」と指摘し、UFJの内部管理態勢に問題があるため、業績予想の相次ぐ下方修正につながったと認定した。)

(担当部署)金融庁監督局銀行第一課
(認定事実)
株式会社ユーエフジェイホールディングスは、4 月28日に業績予想修正(平成16年4月 28 日付「平成L6年3月期業績予想および連結業績予想の修正に関するお知らせ」)を発表したが、その後、5月 24 日の決算短信(平成16年5月 24 日付「平成16年3月期決算短信」)において、大幅に異なった決算計数を発表した。これを受け、銀行法第52条の31第1項及び第24条第1項の規定に基づき、同社及び株式会社ユーエフジェイ銀行に対して、その原因等について報告を求めたところ、4月 28 日の時点で十分に慎重な見通しをもって経営判断を行わなかった結果、決算短信においては貸倒引当金繰入額が約5,000億円増加しており、適切な信用リスク管理態勢の確保、相互牽制機能の発揮が不十分であるなど内部管理態勢に重大な問題が認められた。

(行政処分内容)
このため、株式会社ユーエフジェイホールディングスに対して銀行法第52条の33第1項の規定に基づき、及び株式会社ユーエフジェイ銀行に対して銀行法第26条第1項の規定に基づき、下記の行政処分を行った。
(1) 将来のリスク要因を適時適切に把握・管理することしこより、信用リスク管理機能を一層向上する観点から、以下の点を含め内部管理態勢を充実・強化すること。
@ 信用リスク管理に対する経営姿勢及び経営責任の明確化
A 取締役会及び本部の機能強化により、引当額の水準が信用リスクιこ見合った十分なものとなっているかの検証態勢の確立(各役員の職務上の責任分担の明確化を含む)
G 信用リスク管理態勢にかかる相互牽制機能の確立
(2) 上記(1)に関する改善計画を平成16年7月 20 日(火)までに提出し、着実に実施すること。
(3) 改善計画の実施状況等について、改善計画の実施完了までの間、平成16年9月期を初回として、四半期ごとの実施状況等を1ヶ月以内に報告すること。


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○今回の改善命令の法律条文は次の通り。

@検査対応に関する行政処分
(銀行法第24条第1項の規定に基づく報告)
(報告又は資料の提出) 
第二十四条  内閣総理大臣は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、銀行(代理店を含む。)に対し、その業務又は財産の状況に関し報告又は資料の提出を求めることができる。 

(銀行法第63条第3号及び第64条第1項第2号の検査忌避等)
第六十三条  次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。 
・・・・
三  第二十五条第一項(第四十三条第三項において準用する場合を含む。)、第二十五条第二項、第五十二条の八第一項、第五十二条の十二第一項若しくは第五十二条の三十二第一項若しくは第二項の規定による当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者 

(罰則)
第六十四条  法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。 
二  前条第一号から第四号まで、第七号又は第八号 二億円以下の罰金刑 

(立入検査) 
第二十五条  内閣総理大臣は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該職員に銀行(代理店を含む。)の営業所その他の施設に立ち入らせ、その業務若しくは財産の状況に関し質問させ、又は帳簿書類その他の物件を検査させることができる。 

(銀行法第26条第1項)
(業務の停止等) 
第二十六条  内閣総理大臣は、銀行の業務若しくは財産又は銀行及びその子会社等の財産の状況に照らして、当該銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該銀行に対し、措置を講ずべき事項及び期限を示して、当該銀行の経営の健全性を確保するための改善計画の提出を求め、若しくは提出された改善計画の変更を命じ、又はその必要の限度において、期限を付して当該銀行の業務の全部若しくは一部の停止を命じ、若しくは当該銀行の財産の供託その他監督上必要な措置を命ずることができる。 

@@@@
A資本増強行に対する3割ルールに関する行政処分
(早期健全化法第20条第2項、銀行法第52条の33第1項)〜既述

(早期健全化法第20条第2項)
(経営健全化計画の履行を確保するための措置等) 
第二十条  
2  内閣総理大臣は、協定銀行が取得株式等又は取得貸付債権の全部につきその処分をし、又はその返済を受けるまでの間、当該取得株式等又は取得貸付債権に係る金融機関等に対し、第五条第一項の規定により提出を受けた計画の履行を確保するため、銀行法 その他これに類する法令の定めるところにより、業務の一部の停止その他の監督上必要な措置を命ずることができる。 

(銀行法第52条の33第1項)
(銀行持株会社に対する改善計画の提出の求め等) 
第五十二条の三十三  内閣総理大臣は、銀行持株会社の業務又は銀行持株会社及びその子会社等の財産の状況に照らして、当該銀行持株会社の子会社である銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該銀行持株会社に対し、措置を講ずべき事項及び期限を示して、当該銀行の経営の健全性を確保するための改善計画の提出を求め、若しくは提出された改善計画の変更を命じ、又はその必要の限度において監督上必要な措置を命ずることができる。 

@@@@
B中小企業向け貸出に関する行政処分
(早期健全化法第20条第2項、銀行法第52条の33第1項)〜既述

(銀行法第26条第1項)
(業務の停止等) 
第二十六条  内閣総理大臣は、銀行の業務若しくは財産又は銀行及びその子会社等の財産の状況に照らして、当該銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該銀行に対し、措置を講ずべき事項及び期限を示して、当該銀行の経営の健全性を確保するための改善計画の提出を求め、若しくは提出された改善計画の変更を命じ、又はその必要の限度において、期限を付して当該銀行の業務の全部若しくは一部の停止を命じ、若しくは当該銀行の財産の供託その他監督上必要な措置を命ずることができる。 

@@@@
C業績予想修正と決算短信の計数が大幅に異なったことに関する行政処分 
銀行法52条の31
(銀行持株会社等による報告又は資料の提出) 
第五十二条の三十一  内閣総理大臣は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該銀行を子会社とする銀行持株会社に対し、当該銀行の業務又は財産の状況に関し参考となるべき報告又は資料の提出を求めることができる。 

銀行法24条
(報告又は資料の提出) 
第二十四条  内閣総理大臣は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、銀行(代理店を含む。)に対し、その業務又は財産の状況に関し報告又は資料の提出を求めることができる。 

(銀行法第52条の33第1項)〜既述
(銀行法第26条第1項)〜既述

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○参考事項

1 今回の改善命令は金融庁の名で行われているが、本来、条文上は内閣総理大臣の『権限である。しかし、銀行法でこの権限が金融庁長官(現在は高木祥吉長官=私の従兄弟)に委任されている。

銀行法59条
(権限の委任) 
第五十九条  内閣総理大臣は、この法律による権限(政令で定めるものを除く。)を金融庁長官に委任する。 2  金融庁長官は、政令で定めるところにより、前項の規定により委任された権限の一部を財務局長又は財務支局長に委任することができる。 

2 早期健全化法は、正式には「金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律」という(平成十年十月二十二日法律第百四十三号)。この法律は、金融システムに対する内外の信頼を回復するために、金融機関等の不良債権の処理を速やかに進めるとともに、金融機関等の資本の増強に関する緊急措置の制度を設けること等により金融機能の早期健全化を図り、もって金融システムの再構築と経済の活性化に資することを目的とした法律である。 


3 検査忌避に対する罰則について 
検査忌避とは、金融監督当局が実施する検査に対して書類を隠すなどして不正に検査を免れることをいう。銀行法上の罰則は、法人は2億円以下の罰金、個人が1年以下の懲役、または300万円以下の罰金。

の検査忌避に対する処分の例としては、平成9年に、第一勧業銀行が検査で書類を隠したとして銀行法違反で略式起訴されたケースがある。また平成13年には、クレディ・スイス・ファイナンシャル・プロダクツ銀行が、検査妨害で罰金4000万円の判決を受けたケースがある。

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○銀行法
第六十三条  次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
一  第十九条若しくは第五十二条の二十七の規定による中間業務報告書若しくは業務報告書の提出をせず、又はこれらの書類に記載すべき事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をしてこれらの書類の提出をした者
・・・・・
二  第二十四条第一項(第四十三条第三項において準用する場合を含む。)、第二十四条第二項、第五十二条の七、第五十二条の十一若しくは第五十二条の三十一第一項若しくは第二項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者
三  第二十五条第一項(第四十三条第三項において準用する場合を含む。)、第二十五条第二項、第五十二条の八第一項、第五十二条の十二第一項若しくは第五十二条の三十二第一項若しくは第二項の規定による当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
四  第四十三条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反した者
五  第四十五条の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同条の規定による命令に違反した者
六  第四十六条第三項において準用する第二十五条第一項の規定による当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

第六十四条  法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
・・・・・
二  前条第一号から第四号まで、第七号又は第八号 二億円以下の罰金
三  第六十一条、第六十一条の二又は前条第五号若しくは第六号 各本条の罰金刑
                                            弁護士 三木秀夫

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