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ニュース六法目次
新球団で参入のライブドアと加盟料(2004年08月19日) 独禁法(カルテル) 
○新球団で参入目指す 近鉄買収名乗りライブドア<8月19日>(共同通信)
プロ野球、近鉄球団の買収に名乗りを上げているインターネット関連サービスのライブドアが、新球団を設立してプロ野球参入を計画していることが18日、明らかになった。近鉄とオリックスの球団合併が明らかになり、ライブドアは6月末に近鉄買収に名乗り出たが、近鉄に拒否された。ただ、ライブドアが新球団を設立してプロ野球に加わるためには、実行委員会と、オーナー会議で4分の3以上の賛成を得なければいけない。パ・リーグ各球団は1リーグ制移行を希望しておりこの計画が実現する可能性は極めて薄い。また野球協約では加盟料60億円が課される。

○公取委「加盟料は独禁法抵触も」 <8月4日> (日刊スポーツ九州)
企業がプロ野球球団の経営に新たに参入、参加する場合、日本プロ野球組織への支払いが規定されている加盟料(60億円)や参加料(30億円)が、独占禁止法に抵触する可能性があることが4日、衆議院文部科学委員会で取り上げられた。民主党の笠浩史衆院議員が「60億円の加盟料は、法律的に独占禁止に抵触しないのか」と質問。答弁した公正取引委員会側が「一般論」としながらも「新規参入者を不当に排除するというものなら、私どもも関心を持たざるを得ない」との見解を示した。笠議員は「抵触する可能性があるのだと解釈しました」と述べた。
公正取引委員会側は「プロ野球は複数の球団で成立しており、さまざまな取り決めがあると思う」と前置きしながらも「加盟料の目的と手段を考えると、合理的かどうなのか、関係事業者が検討してもいいのではないか」とも述べ、参加料も含めて新規参入者に「障壁」を設けている球界側をけん制した。
 
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○今年の6月に急に持ち上がってきた近鉄とオリックスの合併話以降、さまざまな話し合いが進められているが、報道を聞く限りでは、一部の球団のオーナー側の論理だけで物事が進められている感が強い。本来は、国民に広く浸透しているプロ野球のこれからの姿について、一部の者の話だけで進んでいくことには問題が多いと言わざるを得ない。野球協約には、「野球が社会の文化的公共財となるよう努めることによって、野球の権威および技術にたいする国民の信頼を確保する。」とも規定されている。この視点こそが、今回の議論の柱にならなければならないと思う。

○今回、ライブドアの堀江社長が、当初は近鉄バッファローズの買収がもし困難になるならば新規球団の立ち上げを発言しているが、その際に必要になる日本プロ野球組織への支払いが規定されている加盟料(60億円)や参加料(30億円)が、独占禁止法に抵触する可能性の問題が浮上している。公正取引委員会が何らかの措置を取れば、参入障壁が低くなる可能性があり、ライブドアなどの新規参加に道を開くことになる。これは、場合によっては、球団数縮小の歯止めになる可能性もある。この独禁法の規定と適用の可否などを少し整理してみたい。

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○独占禁止法とは何か
独占禁止法の正式名称は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(昭和二十二年四月十四日法律第五十四号)という。略称して「独禁法」ともいう。

この法律は、カルテルなどの競争制限行為や、事業活動を不当に制限する行為を取り除き、事業支配力の過度の集中を防止して、公正かつ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的としている(同法1条)。

○独占禁止法
第一条  この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。 

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○この目的からも分かるように、同法はわが国の経済秩序の基本を定めた経済法の一つであって、「競争」の維持を通じて、資源の適正配分などの望ましい経済的成果の確保と、反独占ないし分権的経済体制下での経済民主化を実現し、行き着くところとして、消費者の利益を確保する重要な法律である。
この独占禁止法を最初に制定した国はアメリカで、1890年に,シャーマン反トラスト法によって、取引制限と独占行為を禁止した。さらに1914年に、クレイトン法・連邦取引委員会法が制定され、価格差別・不公平な競争方法の禁止や、資産・株式の取得などに関する制限が設けられた。わが国の独占禁止法は、このアメリカの反トラスト法を基本として制定されたものである。第二次世界大戦後の農地改革や労働運動の解放並びに財閥解体という経済民主化政策のあとを受けて制定されたものである。

○同法では、@私的独占、A不当な取引制限、B不公正な取引行為の禁止が、中心となっている。

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○今回のライブドアのケースにおいて問題となっている巨額な加盟料規定は、ここでいう「不当な取引制限」(カルテル)禁止の規定が最も問題となろう。

○「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう(同法2条6項、3条)。 

このように、不当な取引制限は、一般に「カルテル」と呼ばれ、複数の同業者が市場支配を目的として、互いに協定を結んで、競争行動を回避することによって、価格を引き上げたり、維持したり、あるいは生産量の制限などを行うことで、これによって競争が無くなり、ひいては市場メカニズムが働かなくなり、消費者を害する結果となる。その合意内容によって、価格カルテル、数量カルテル、市場分割カルテル、入札談合などとも呼ばれる。

○事業者および事業者団体は、こういった不当な取引制限をしてはならない(同法3条、8条)。

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○日本のプロ野球興行において、この独禁法の規制は適用があるのであろうか。

○まず、プロ野球興行会社が、独禁法2条1項で言う「事業者性」を有することには問題は無いと言うべきである(独禁法で言う事業者でなければ、そもそも独禁法の問題は生じない)。プロ野球興行を行う会社というのは、プロ野球球団を運営して競技を行わせることで、観客やファンなどからの入場料収入やグッズ販売、テレビ放映権料収入、各種スポンサー収入などで、巨額な売り上げが得られる、立派な娯楽事業者である。(ただ、高額な選手報酬や運営経費で、多くの球団が赤字で苦しんでいるが)。

○それでは、今回問題となっている日本プロフェッショナル野球協約は、独禁法で問題の対象としうるものであろうか。これを考えるには、各球団とリーグ並びに野球機構との関係を考える必要がある。

現在のプロ野球は、言うまでも無く12球団があり、セントラルリーグとパシフィックリーグの2つに分かれて、それぞれセントラル野球連盟とパシフィック野球連盟を構成している。

そして、この両連盟に所属する球団と関係者を構成員(社団の社員)とした社団法人日本野球機構という社団法人(主務官庁は文部科学省)が存在している。

しかしながら、以外に知られていないことであるが、実際のプロ野球の運営や日本プロフェッショナル野球協約の作成実施は、この社団法人が行っているのではない。すなわち、セントラル野球連盟とパシフィック野球連盟の2連盟及び12球団が、日本プロフェッショナル野球協約を締結した上で、社団法人とは別の組織たる「日本プロフェッショナル野球組織」という任意団体(権利能力なき社団)が構成されている(野球協約第1条)。私たちが日々観戦している実際のプロ野球の運営は、この任意団体たる日本プロフェッショナル野球組織が運営しているのである。このように、野球協約は、この日本プロフェッショナル野球組織の規約であることから、そこに規定された機関であるコミッショナー、セントラル野球連盟会長、パシフィック野球連盟会長なども、すべてはこの日本プロフェッショナル野球組織の役職である。

今回のこの二重構造に関しては、8月4日の衆議院文部科学委員会での質疑でも議論がなされている(末尾参照)。

以上のことからして、今回の問題となっている日本プロフェッショナル野球協約は、プロ野球事業者の集まりである任意団体での決め事であり、独禁法2条2項並びに8条にいう「事業者団体」に他ならない。

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○日本のプロ野球においては、日本プロフェッショナル野球協約第36条の6において、球団譲渡を受けるには加盟料30億円を収めなければならず、新規参入となると同協約第36条の5により60億円となる。これはプロ野球の伝統を守るための措置とされ、品格に欠ける企業の参入阻止や安易な転売阻止のための制度といわれている。

しかし、これを独禁法という観点から見れば、プロ野球という市場から新規参入者を締め出す、新規参入行為を規制する不当な取引制限(カルテル)そのものと言われても否定しにくいのではないか。
つまり、日本プロフェッショナル野球組織は、独禁法8条の「事業者団体」とを解することができるが、その場合、野球協約第36条の6の参加料30億円や、新規参入時の同協約第36条の5による60億円の加盟金というものは、まさに同法8条の1号ないし3号に抵触してくる可能性が強い。

これでは、今回のように、球団減少という事態において、その補充が難しく、結果的にプロ野球界そのものの縮小に向かわざるをえなくなってしまう。

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○日本プロフェッショナル野球協約(http://jpbpa.net/convention/11.pdf)

第31条 (新たな参加資格の取得、または譲渡、球団保有者の変更) 
新たにこの組織の参加資格を取得しようとする球団は、その球団が参加しようとする年度連盟選手権試合の行なわれる年の前年の11月30日までに実行委員会およびオーナー会議の承認を得なければならない。(以下略)

第36条の4 (新参加球団) 
新たにこの組織の参加資格を取得する連盟または球団は、野球協約および既に存在する連盟とその構成球団を一方の当事者とし、コミッショナーを他の一方の当事者として契約されたすべての約定事項を承認し、または継承し、かつこれを遵守しなければならない。

第36条の5 (新参加球団にたいする加盟料) 
新たにこの組織の参加資格を取得した球団は、参加する連盟選手権試合年度の1月末日までに加盟料を支払うものとする。支払方法については実行委員会の議決により延納あるいは、分割による支払いも可能とする。
新参加球団の加盟料の金額は60億円とし、日本野球機構および同機構に既に属している全球団に分配され、各球団への分配金額は均等とする。

第36条の6 (既存球団の譲り受けまたは実際上の球団保有者変更にともなう参加料) 
この組織に加盟している球団の株式の過半数を有する株主、または過半数に達していなくても事実上支配権を有すると見なされる株主から経営権を譲り受けた法人あるいは個人は、参加する連盟選手権試合年度の1月末日までに参加料を支払うものとする。支払い方法については、実行委員会の議決により、延納あるいは分割による支払いも可能とする。その参加料の金額は30億円とし、当該球団を除く日本野球機構および同機構に既に属している他の全球団に分配され、各球団への分配金額は均等とする。

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○独禁法適用否定論について
こういった「独禁法違反」という意見に対して、そもそも「プロ野球には独占禁止法の適用は無い」という根強い意見も存在しているのも事実である。その意見の根拠は、@プロスポーツの市場は一つの競技団体に独占されているのが一般的であること、Aリーグ戦というものは、そもそもが事業者が任意に集まって行う共同事業であること、B類似の共同事業を別個に立ち上げることの自由は何ら阻害されていないこと、Cアメリカでは連邦最高裁の判決で、プロ野球でのトレードの自由をめぐって争われた事件で、プロ野球には独禁法の適用が無いという判例があること、などである。

○確かに、以上の根拠はそれぞれに説得力のあるものと言えそうである。事実、この点について、根来コミッショナーが「加盟料60億円は独禁法に抵触せず」と話したという報道があった(スポニチ8月6日)。それによれば、元公正取引委員会委員長でもある同コミッショナーは「(プロリーグが)1つしかないのか、複数できるのか。ここでやらなくても外でできる。だから参入阻害に当たらないのではないか」と語ったということである。これは、60億円は日本野球機構に加盟する球団に課せられるものであり、新たなプロリーグ設立や別リーグへの加盟を阻害するものではないとの見解といえよう。

○しかし、私の意見としては、今回の問題状況を前にしたならば、独禁法適用否定説には疑問が多い。実質的な観点からして、新たなプロリーグ設立や別リーグへの加盟ということはおよそ実現不可能なことであり、新規参入阻止の口実に過ぎないのではないかと思う。また、プロスポーツの市場は一つの競技団体に独占されているのが一般的であり、リーグ戦というものは、そもそもが事業者が任意に集まって行う共同事業であることは確かにそうではあるが、その事業者が減少しようとしている際に新たに参入しようとしている者を排除するのは、その行動に特段の合理性も無い。
また、アメリカにおいても、従来は判例上、プロ野球に対して反トラスト法を適用除外してきたが、適用を認める判決も多く出始めているようである。

○日本においても積極的に考える動きは見られる。
その一つが、近鉄とオリックスの合併を巡り、公正取引委員会が独占禁止法に基づき合併の是非を審査する可能性が8月7日に出てきたという報道である。 (日刊スポーツ九州)
その報道によれば、その問題の焦点は、合併によって自由な競争が制限されるかどうかとのことである。日刊スポーツ九州の記事によれば、「独禁法では、親会社を含めた総資産額がそれぞれ100億円と10億円を超す企業が合併する場合などには事前の届け出が必要で、昨年度も1年間で約300件あった。公取委が市場独占につながると判断した場合、排除勧告を出して合併にストップをかけることもできる。ただ、球団合併を扱った記録は残っておらず、公取委の幹部は「銀行は預金量や貸付残高、企業は売上高などで判断する。球団は何を基準に判断すればいいのか」と当惑している。」との内容である。

○根来コミッショナーは元公正取引委員会委員長である。独禁法の精神を知り尽くした人物として、その精神のプロ野球界への導入こそが、期待された本来の役割ではなかろうか。ぜひとも、今の球団経営者の閉鎖体質の組織改革にあたってほしい。

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○こういったカルテル禁止違反に対して、法的にはどのような救済がなされるか、整理してみた。
今回のライブドア加盟問題に関しては、このうち、公正取引委員会による排除措置命令がポイントではないか。(課徴金は価格カルテルゆえ、問題からははずれる)

○公正取引委員会による違反行為の防止策及び制裁
独占禁止法を運用する行政機関として、公正取引委員会が設置されており、同委員会において下記の通りの措置がなされる。
(1) 公正取引委員会による排除措置命令 
公正取引委員会は、独禁法の禁止規定の違反行為者に対して、その違反行為を排除する等の措置を採るよう命ずる排除措置命令を発することができる。この排除措置命令は、審決という形で行われる。
(2) 公正取引委員会による課徴金 
公正取引委員会は、価格に影響を与えるカルテルが行われた場合には、カルテルを行った事業者や事業者団体の構成事業者に対して、所定額の課徴金を国庫に納付すること命ずることができる。

○被害者による損害賠償
上記の公正取引委員会の措置以外にも、被害者は、独禁法で禁止されている私的独占、不当な取引制限(カルテル)、不公正な取引方法等を行った事業者及び事業者団体に対し、損害賠償の請求ができる。この損害賠償請求の場合、事業者及び事業者団体は、無過失損害賠償責任を負う。

○被害者による差止請求 
上記の公正取引委員会の措置や損害賠償以外にも、被害者は、不公正な取引方法によって著しい損害を受け、又は受けるおそれがある者は、侵害者等に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる(独禁法24条)。
これは私人にも直接の差止請求権を認めたものである。もともと、独禁法違反行為については、公正取引委員会のみがその差止めを行うことができるに留まっていた。しかし、不公正な取引方法による独占禁止法違反行為については、損害の発生が継続的なものとなる場合が多く、さらに、特定の市場から排除されようとしているものにとっては、事後的な金銭賠償だけでは被害者の救済が不十分となる場合が多い。このため、平成12年の独禁法改正(平成13年施行)で、独禁法違反行為(不公正な取引方法)による被害者は、自ら直接裁判所に対して同法違反行為の差し止めを命じることを求めることを可能とした。

○刑事罰
以上のほかに、独禁法違反行為に対しては、刑罰規定がある。また、両罰規定により、違反行為者のほか、事業者や事業者団体にも罰金が科される。更に、法人代表者に対する罰則もある。独禁法違反のうち重大な罪は、公正取引委員会による告発によって手続が開始される。

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○私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
(昭和二十二年四月十四日法律第五十四号)

第二条
この法律において「事業者」とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいう。事業者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者は、次項又は第三章の規定の適用については、これを事業者とみなす。 

2 この法律において「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい、次に掲げる形態のものを含む。ただし、二以上の事業者の結合体又はその連合体であつて、資本又は構成事業者の出資を有し、営利を目的として商業、工業、金融業その他の事業を営むことを主たる目的とし、かつ、現にその事業を営んでいるものを含まないものとする。 
一  二以上の事業者が社員(社員に準ずるものを含む。)である社団法人その他の社団 
二  二以上の事業者が理事又は管理人の任免、業務の執行又はその存立を支配している財団法人その他の財団 
三  二以上の事業者を組合員とする組合又は契約による二以上の事業者の結合体 

4  この法律において「競争」とは、二以上の事業者がその通常の事業活動の範囲内において、かつ、当該事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく次に掲げる行為をし、又はすることができる状態をいう。 
一  同一の需要者に同種又は類似の商品又は役務を供給すること 
二  同一の供給者から同種又は類似の商品又は役務の供給を受けること 

6  この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。 

第三条  
事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。 

第七条  
第三条又は前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為の差止め、営業の一部の譲渡その他これらの規定に違反する行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。 
2  公正取引委員会は、第三条又は前条の規定に違反する行為が既になくなつている場合においても、特に必要があると認めるときは、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為が既になくなつている旨の周知措置その他当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることができる。ただし、当該行為がなくなつた日から当該行為につき勧告又は審判手続が開始されることなく一年を経過したときは、この限りでない。 

第八条  
事業者団体は、次の各号の一に該当する行為をしてはならない。 
一  一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。 
二  第六条に規定する国際的協定又は国際的契約をすること。 
三  一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること。 
四  構成事業者(事業者団体の構成員である事業者をいう。以下同じ。)の機能又は活動を不当に制限すること。 
五  事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること。 

第八条の二  
前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者団体に対し、届出を命じ、又は当該行為の差止、当該団体の解散その他当該行為の排除に必要な措置を命ずることができる。 
2  第七条第二項の規定は、前条第一項の規定に違反する行為に準用する。 
3  公正取引委員会は、事業者団体に対し、第一項又は前項において準用する第七条第二項に掲げる措置を命ずる場合において、特に必要があると認めるときは、第八章第二節に規定する手続に従い、当該団体の役員若しくは管理人又はその構成事業者(構成事業者が他の事業者の利益のためにする行為を行うものである場合には、その事業者を含む。第四十八条第一項及び第二項において同じ。)に対しても、第一項又は前項において準用する第七条第二項の措置を確保するために必要な措置を命ずることができる。 

第八条の三  
第七条の二の規定は、第八条第一項第一号又は第二号(不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定又は国際的契約をする場合に限る。)の規定に違反する行為が行われた場合に準用する。この場合において、第七条の二第一項中「事業者が」とあるのは「事業者団体が」と、「事業者に対し」とあるのは「事業者団体の構成事業者(構成事業者が他の事業者の利益のためにする行為を行うものである場合には、その事業者。以下この条において同じ。)に対し」と、同条第二項中「当該事業者が」とあるのは「当該事業者団体の構成事業者が」と読み替えるものとする。 

第七条の二  
事業者が、不当な取引制限又は不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定若しくは国際的契約で、商品若しくは役務の対価に係るもの又は実質的に商品若しくは役務の供給量を制限することによりその対価に影響があるものをしたときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為の実行としての事業活動を行つた日から当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間(当該期間が三年を超えるときは、当該行為の実行としての事業活動がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。以下「実行期間」という。)における当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に百分の六(小売業については百分の二、卸売業については百分の一とする。)を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、その額が五十万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。 

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衆議院文部科学委員会での会議録(抜粋) 平成16年8月4日(水曜日) 

○笠委員 
私も、今おっしゃったように、広がりを見せていく、地域を含めて。やはりそれが普及していってというようなことを今まさにここで考えていかなければいけないと。けれども、今伝えられているところでは、どうも方向性が縮小していく方向になっているんじゃないかというような懸念を私は個人的に持っているわけでございます。

そこで、少し幾つか確認したいこと、あるいは今現在進められているこの状況の点についてちょっとお伺いをしたいわけでございます。

選手というのは、当然ながら、雇われている労働者という立場でもあるわけですね。そういう点からしますと、このプロフェッショナル野球協約、大臣もお持ちだと思いますけれども、この中で十九条というのがございます。この十九条の中に、実行委員会でこれを審議していくわけでございますけれども、「選手契約に関係ある事項については特別委員会の議決を経て、これを実行委員会に上程する。」つまりは、この特別委員会というのは、これは、セ・リーグ、パ・リーグの両連盟の会長、そして球団の代表、オーナーですね、それに選手も加わって、十名で構成される委員会で、そこでしっかり議論をしようよということを今選手会の方がオーナー側に求めているわけですね。

私は、今の、球団が合併するとかということは、あるいはなくなるということは、これは選手契約に関係のある事項であることは間違いないわけですから、これは当然開かれてしかるべきだと思っておるんですけれども、どうもなかなかそれに応じてこないというのが今の現状だというふうに認識しているわけでございます。この点については、大臣、いかがですか。

○素川政府参考人 
お答え申し上げます。日本プロ野球選手会、七月十日の臨時大会を開きまして、命名販売権を一年間認めて合併を凍結しようとか、協約上の特別委員会の開催とか、あと、また第三者機関の設置、そういったことを決議されまして、日本プロフェッショナル野球機構側に投げかけたということは承知しております。そして、七月の下旬に、選手会として日本プロフェッショナル野球組織の代表者との折衝の機会を持たれたとかというようなことでございまして、プロ野球界の大きな問題であるということは、選手会として要望を出すということは十分理解できるところでございます。

そして、今お話のございました野球機構の特別委員会の開催につきましては、現在、日本プロフェッショナル野球組織として検討中であるというふうに聞いているところでございます。この問題につきましては、野球協約の解釈にかかわる事項でございまして、私どもとしてこれを判断するということはなかなか難しいものかなというふうには承知しておるところでございます。

○笠委員 
確認なんですけれども、この開く開かないという決定というもの、判断、難しいのかもしれません。けれども、これはやはり選手の契約にまさに関係ある事項ですよね。合併という話はもう少なくとも発表されているんです、近鉄とオリックスの。ということは、やはりそこで、選手たちが全員再就職できるのかどうか、あるいは全員雇われることはないけれども、どこでその人たちが違う働き場所、チームを見つけるのか、それは別としましても、そういった意味で、これは契約にかかわってくること自体、間違いないですよね。ちょっと改めてお伺いします。

○素川政府参考人 
この野球協約、これは御案内のとおり、任意団体の日本プロフェッショナル野球組織の定めた協約であるわけでございます。そういうこともございまして、さらに加えまして、この野球協約を見てみますと、選手契約につきましては、この野球協約上、別途いろいろな規定というものが設けられているところでございますので、その辺の規定の相互の関係というものにつきましては、私ども聞いているところでは、日本プロフェッショナル野球機構側として検討しているというような状況であるというふうに聞いておりますので、私の立場で野球協約の解釈自体をこうだと申し上げるのはなかなか難しいかなというふうには感じている次第でございます。

○笠委員 
非常に難しいのはわかるんですけれども、そもそも、文部省の所管する社団法人の日本野球機構と、今まさに日本プロフェッショナル野球組織、この二重構造というのが非常にわかりにくくしているんですね。これは任意団体なんです、今大臣もうなずいていただいていますけれども。任意団体なので、実態がどうなんだというところを、ではどこがしっかりと把握をするのか、あるいはそこの不透明さというものがこれまでも指摘はされるものの、どういうふうに実際運用されているのか、これがなかなかわかりにくい。そして、一方、スポーツでも、後発となったJリーグなんかに関しては、ここはしっかりと組織がすっきりしているんですね、非常に透明な。そして、九二年に八チームでスタートしたJリーグが、今や二十八チームですか、そこまで伸びてきて、今しっかりとすそ野、底辺を広げている。

ですから、この際、野球機構の社団法人と任意団体のプロフェッショナル野球組織を一緒にして、やはり機構というものも、どこに責任の所在があるのか、あるいはどこで物事が決まっていくのかというようなあたりも、私は、これからのまず第一弾のプロ野球改革としては、構造改革としては必要なんじゃないかなと思っているわけでございますけれども、その点については、大臣、いかがでしょうか。

○河村国務大臣 
この両団体、目的も違うといいますか、どっちかというと、まさにビジネスの方からきた球団の合併等の問題、いわゆるプロ野球協約というのがあって、そこでやっておる。それから、こちらの社団法人日本野球機構、これは文部科学省所管の社団法人でございますから、これは機構として事業を進める基本的な目的をここにうたっている。

私は、御指摘は一つの卓見だと思うんですが、こういうものが一体となって透明化されるということになれば、もっと機動的な、選手の契約の問題等々もそう大きな問題にならないでいくのではないかと思います。確かにそういう意味で、この組織、日本プロフェッショナル野球組織が任意団体であるということがなかなか透明感のないものとして国民に映っているということがいろいろな話題を呼んでいる点があろうと思います。

これを一足飛びにこの時点において、今こういう問題が起きているときにすぐにというわけになかなかいかない問題ですが、これは課題として考えなければなりませんし、アメリカなんかのあり方とかそういうのも研究をしながら、これがどういうふうな方向であれば本当にプロ野球の繁栄につながっていくかということを考える時期に来ておるのではないかな。私も、今回のこうしたいろいろな動きを見ながら、やはり国民の声がもうちょっと反映しやすいといいますか、そういう組織というものがやはり今の時代必要ではないだろうか、このように思いますね。

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○笠委員 
今の点でもう一つちょっと確認をしておきたいんですけれども、これは法律的に、先ほどの六十億という高額な加盟料というものが、私、これは独禁法にある意味では抵触する可能性があるんじゃないかと。例えば、独禁法八条の事業者団体とこの日本プロフェッショナル野球組織を解することができるんじゃないか。そうなりますと、八条の三号に、加盟金制度というものがここに抵触してくる可能性があるのではないかと思っておるんですけれども、その点についていかがでしょうか。

○山木政府参考人 
お答えいたします。まず前提でございますけれども、プロ野球といいますものは、御案内のように一球団だけでは興行できませんので、複数の球団があって興行として成立するわけでございますので、関係の事業者でありますとか事業者団体がさまざまな取り決めをするということが当然あるわけでございまして、それ自体が独占禁止法上問題となるということはないということでございます。
 
それから、御指摘の加盟料、加入料につきましては、制定されました経緯が、球団経営者としてふさわしくない者が入ってほしくない、それから短期的にころころ経営者がかわるということは防止したいということから、こういう規定が設けられたというふうに聞いておるわけでございます。

なお、野球協約上は、加入または買収に際しましては、オーナー会議等の承認が必要だという規定がある上に、さらに六十億または三十億という加入料を徴収することにされております。これについては、先ほど申し上げました加入料の目的、加入料を取ると申しますか制定の目的と、それからその手段となっております六十億、三十億ということが、その目的に照らして合理的かどうかということについて、やはり関係事業者ないしは団体の方でさらに検討を加えられてしかるべきではないかというふうに思っておるところでございます。

なお、独占禁止法との関係では、これは全くの一般論でございますけれども、新規参入を不当に排除するということにつきましては、やはり私どもとしても関心を持たざるを得ない事柄だと考えておるところでございます。

○笠委員 
今まさに、反するとはおっしゃいませんでしたけれども、関心を持たざるを得ないということで、これはやはり抵触をする可能性もあるということで、きちんとここのところはまさに考えていただかなければいけないことだと私は思っております。 
                                            弁護士 三木秀夫

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