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三木秀夫法律事務所
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ニュース六法目次
日本プロ野球史上初のスト突入(2004年09月17日)同盟罷業(ストライキ) 
○労使交渉決裂、球界が最悪の1日を迎えた。
労働組合・日本プロ野球選手会(古田敦也会長=ヤクルト)と日本プロ野球組織(NPB)の代表者による協議・交渉委員会が17日、東京・港区の高輪プリンスホテルで行われた。来季からの新規参入の確約という「最大限の努力」を求めた選手会側と、来季参入は確約できないが「誠意」で応えようとした機構側の溝は埋まらなかった。4時間延長の10時間に及ぶ協議の末、18日と19日の1、2軍17試合で、日本プロ野球史上初となるストに突入することとなった。(スポーツニッポン) 

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○ストライキとは
ストライキ(strike)とは、労働者が共同して労働をやめて使用者に対抗すること。正式な法律用語としては「同盟罷業」という。種類としては、職場から退去する型と、職場に滞留する型とがある。本来、労働契約に従って労働者は使用者に対して労働を提供する義務があり、その義務を履行しないのは、違法な「債務不履行」として、本来は損害賠償義務を負うことになる。しかし、憲法28条で、労働者の「争議権」が保障された結果、違法性が阻却されることとなる。そのため、争議権の行使としてのストライキ(同盟罷業)、すなわち「正当な争議行為」の場合には適法となり(労働組合法1条2項、8条)、損害賠償責任は生じない。

○労働基本権とは
団結権、団体交渉権、団体行動権を労働基本権という。団結権とは、労働者が労働組合を結成したり、自ら選んだ労働組合に入ったり、企業から妨害されず組合活動をおこなう権利をいう。団体交渉権とは、労働者が、労働条件の決定などで、団結して企業(使用者)と交渉する権利のことをいう。団体行動権とは、労働者が労働組合の方針にしたがって集団行動をおこなう権利のことで、具体的にその中心をなすのは争議権である。同盟罷業(ストライキ)や労働の能率を低下させる怠業などがその典型である。

○争議権は、労働組合法の保護を受けることができる。争議行為が正当であるかどうかは、具体的に個々の争議行為について、次のような基準に従って判断される。 
(1)目的の正当性 
争議行為の目的が正当であるか否かが判断基準の一つ。労働条件の維持や向上を目的とするものには何ら問題がない。   
(2)手段・方法の正当性 
労働組合の統制の下に労働力の提供を集団的に拒否する同盟罷業(ストライキ)や労働の能率を低下させる怠業などは通常問題はない。 ピケッティング(争議中の労働組合が組合員の争議からの脱落や争議に不参加の労働者の就労などを防ぐために行うもの)は、原則として平和的説得に限り正当であるとされている。 しかし、どのような場合でも、暴力の行使は正当な行為とは認められない。

○労働組合法の保護を受ける争議に対しては、民事免責がある。つまり、ストライキなど正当な争議行為で損害を受けても、企業側は、労働組合や労働者に賠償を請求できない。(労働組合法8条)

○労働組合法の保護を受ける争議に対しては、刑事免責もある。つまり、ストライキなど正当な行為については刑法35条(法令や正当な業務による行為は罰せられない)が適用される。(労働組合法1条2項)

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○いよいよ、ストライキ突入となった。流れからすればやむをえない、という印象が強い。
近鉄・オリックス合併で、プロ野球球団は1球団減ることとなる。ところが、球団数は偶数でなければならないのに、日本プロ野球組織(NPB)は、特に理由を示すこともなく、新規参入企業2社の意思を黙殺し、説明責任を逃れてきた感が強い。選手会は、ファンが知りたいことを求めて闘っているにもかかわらず、球団側はそれに応じていない。ファンの怒りは頂点に達している。ただ、一方で、球団経営が難しくなった原因に、選手年俸の高騰も挙げられる。選手会側も、サラリーキャップ制度の導入や、年俸の一定金額以上の返上などの厳しい処置を申し出るべき時でもある。その覚悟の上で、選手会側は、ドラフト制度、FA制度、マイナーリーグ制度まで含んだ、抜本的な改革案を出しながら、未来のプロ野球界のために、実のある交渉をすべきであろう。

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○なお、特に法律家の一員として残念な気がするのが、根来泰周コミッショナーの動きである。
選手会がストライキ権を確立した時か、合併凍結を求めて東京地裁に仮処分が申請された時か、もしくは協議・交渉委員会が開かれた時にこそ、コミッショナー提案があれば、両者歩み寄りの契機になったのではなかろうか。

確かに、コミッショナーのこのような権限については、日本プロ野球協約に明記されていないことから、介入してはいけないとう思い込みがあったのかもしれない。しかし、紛争時の介入は、まさに法律家たるコミッショナーに期待された役割といえたかもしれず、少し残念である。

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○アメリカのメジャーリーグでのストライキ
日本プロ野球界では70年の歴史上初のストライキということであるが、アメリカのメジャーリーグではたびたび行われているようである。第一回目の1972年のシーズン前のストライキでは、シーズン開始が10日遅れたことがあったそうである。初めてシーズン中にストライキが実施されたのが1981年ということである。このときは、フリーエージェントの補償問題に関してストライキを断行した。

特に大きな話題になったのが、1994年から1995年にかけて起きたストライキ。サラリーキャップ制度の導入に反対した選手会のストライキだが、中止となった試合数は1400と多く、第二次世界大戦でも中止にならなかったと言われるワールドシリーズまでが中止になった。このストライキは、アメリカ国民のベースボール離れを招き、人気の急降下が始まったと言われている。その理由は、「このストは何百人かの人達が30億ドルという大金の分け前をどのようにするかで争っているだけ」と評され、ファンにとっては興ざめ以外の何物でもなかったから、と言われている。今回のストライキは、各種メディアのアンケートからして圧倒的にファンや一般市民からの支持をえているため、アメリカの場合と同列に論じることはできないが、一つ間違えば同じ道を歩みかねないので、注意が必要と言えよう。

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○今回、特に気になったのが、9月19日の各新聞社の社説の内容であった。

朝日新聞社説「プロ野球――このストを生かせ」
毎日新聞社説「プロ野球スト突入 責任はNPBの怠慢にある」
産経新聞社説「球界再編 今からでも間に合うはず」
日経新聞社説「来季からの新規参入を認めるべきだ」

読売新聞社説「何が選手たちの真の望みなのか」 

これら社説のタイトルを読むだけで、この問題に対する各社の考え方の違いがよく分かる気がした。

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○朝日新聞は、「これまでの動きを振り返れば、今回のストはやむをえないと考える。」と言いつつ次のように述べている。 
⇒『時間延長を重ねたぎりぎりの労使交渉が決裂し、プロ野球の選手会が史上初のストライキに突入する。この週末に予定されていた試合は中止になる。観戦を楽しみにしていたファンにとっては残念な結果だ。だが、これまでの動きを振り返れば、今回のストはやむをえないと考える。 
近鉄とオリックスの統合話が出たあと、経営側はもうひとつの合併をすることによって、1リーグをめざした。選手会は合併球団の選手の雇用問題だけでなく、球界の縮小につながると反発した。それをおおかたのファンが支持した。 経営側は、そんな声に耳を傾けようともしなかった。経営難の近鉄を買ってもいいという会社が出てきたのに、門前払いにした
先週の労使交渉で、選手会は近鉄とオリックスの合併を1年延期する可能性が残っていると判断し、ストの延期を決めた。しかし、経営側には合併を凍結するつもりはなかった。 ではどうするか。新規参入を認め、来季もパ・リーグの6チームを維持する。合併後に選手たちがどの球団に行くかを選べる。そう選手会は要求を変えた。 時間を延ばした交渉で、選手会は新規参入について、来季に向けて最大限努力してもらいたいとまで譲歩した。選手会の古田敦也会長は「セ・パ11球団は本来の姿ではない。新規参入をうながすよう交渉してきた」という。 だが、経営側はこれを認めれば、合併の意味がなくなると考えたのだろう。新規参入について「最大限努力する」という約束さえも拒んだ。 これは理解できない。あまりにもかたくなではないか。 
状況はパ・リーグ5球団を決めたオーナー会議のころとは変わっているはずである。早くから参入をめざしていたライブドアに続いて、同じインターネット業界の楽天が新球団をつくることを明らかにした。 経営側も、根来泰周コミッショナーの「私の見解」という形で新規参入の壁を低くする策を打ち出した。加盟料60億円を撤廃し、預かり保証金を導入する、外部の有識者が審査をする委員会を新設する、などだ。 ここまで言うのならば、来季からの新たな参入も、やる気があればできるはずだ。改革機運が盛り上がっているせっかくのチャンスを逃してはならない。改めて気になるのは、根来コミッショナーの言動だ。選手たちに会って話をすることもしないまま、今日の事態を招いたのは野球関係者すべての責任であるとして、選手会にストを自重するよう求めていた。しかし、混乱を招いた大きな責任が、長いこと事態収拾に積極的に動かなかったコミッショナーにあるという自覚はうかがえなかった。 
ストを続けるのは選手もファンも望まない。経営側はこれまでのいきががりを捨て、早く歩み寄るべきだ。』(朝日新聞社説)

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○毎日新聞は、「プロ野球スト突入 責任はNPBの怠慢にある」というタイトルで、次のように強くNPBを批判し、選手側にも自重を促している。
⇒『ペナントレースが大詰めを迎えたプロ野球なのに、18日からストライキに突入することが決まった。18、19日はセ・パ両リーグとも1位と2位チームの直接対決のカードが組まれていただけに、ファンの失望は、計り知れない。日本のプロ野球の歴史に、悲しい1ページが書き加えられることになった。17日に行われた日本プロ野球組織(NPB)と労働組合・日本プロ野球選手会(古田敦也会長=ヤクルト)の交渉は、最終期限に設定した午後5時を4時間以上も上回る長時間に及んだが、ついに妥結に至らなかった。最後まで平行線をたどったのは、新規参入の時期をめぐる攻防だったようだ。
来シーズンに間に合うように認めるべきだと求めた選手会に対して、NPB側は「9月8日のオーナー会議で、来季はセ6、パ5でいく」と決めたことをタテに、新規参入は早くても06年シーズンからと譲らなかった。野球協約によれば、新たに参加しようという球団は、前年の11月30日までに実行委員会、オーナー会議の承認を得なければならない(第31条)とされ、実行委員会及びオーナー会議は、新たな球団設立の申請があった場合、30日以内に受け入れるかどうか決定する(第35条)と定めている。これから新規参入を希望する企業を募るならともかく、すでに参入希望社が名乗りを上げている。新興の情報技術(IT)関連企業、ライブドアと、インターネット上でショッピングモール(電子商店街)を運営している楽天の2社である。ライブドアは仙台市を本拠地とすることで、すでに地元宮城県、仙台市の了解を得ており、16日に日本プロ野球組織に加盟申請の手続きをとった。楽天もプロサッカー、Jリーグ1部のヴィッセル神戸を経営する実績を持ち、来週中に正式申請する予定だ。カレンダーに照らし合わせてみるまでもなく、来春に間に合うだけの十分な時間はある。「公正な審査をするには、時間がない」というNPB側の言い分には協約上、説得力はない。時間があるのに1年後回しにするのは、NPB側の職務怠慢である。その結果、ストが行われるのだから、「どっちが悪い」と聞くまでもなくストの責任はNPB側にある。損害賠償など、論外の話だ。今回の選手会の構えたストをめぐっては、驚くほど若いファンの動きは機敏だった。ストを支援する集会は、若者たちで埋め尽くされていた。サッカーと比べ「おじさん世代の娯楽」と思われてきたプロ野球が、これほど若いファンにも支持されていたのかと認識を新たにした。いずれにせよ、一日も早くファンを悲しませるストに終止符を打たなければならない。NPB側も選手会も、可能な限り話し合いを継続し、国民の目に分かりやすく解決策を提示すべきだ。せっかく若いファンがプロ野球に目を向けた絶好のチャンスを無駄にしてはならない。』(毎日新聞社説)

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○産経新聞は、「球界再編 今からでも間に合うはず」というタイトルで、経営者側の対応を促すとともに、選手側にも自重を促している。
⇒『プロ野球は再編問題で史上初めてストに突入するが、歓迎すべき変化球も出てきた。インターネット関連企業のライブドアと楽天が相次いでプロ野球への加盟を申請、またはその意向を表明した。根来泰周コミッショナーも辞意を表明したが、新規加入球団の審査委員会の設置などを提案し、十二球団維持や増加の見とおしも出てきた。しかし経営者側は新規加入は再来年以降との主張を変えず、選手側の不信感は解消していない。せっかく見え始めてきた再活性化の光明を消さぬために経営者側に歩み寄りを求めたい。新球団創設が、近鉄・オリックス合併によるさまざまな障害を解消する一番の方法であるにもかかわらず、経営者側は、(1)来季は十一球団でいくことをすでにオーナー会議で決めている(2)審査など手続き的に間に合わない−という理由で来年からの参入に強く抵抗している。しかし、一度決めたことでも状況が変われば変更するのは当然だ。また昭和二十九年、パ・リーグの七球団という変則を解消するため結成された高橋ユニオンズの場合、オーナーの高橋龍太郎氏が設立を宣言したのは前年の十二月末、わずか三カ月余りで開幕に間に合わせている。周囲の協力や既成球団側の受け入れの気持ちさえあれば時間はさほど問題ではない。特にライブドアの場合、すでに宮城県の協力をとりつけており、あとは選手の確保だけだ。新球団の受け入れを再来年以降に先送りにすると、せっかく盛り上がってきた企業のベンチャー精神をしぼませる恐れがある。むしろ、再編に揺れているこの時期にこそ決断すべきだ。問題は、経営者側がチーム数を少しでも減らし、互いに「縄張り」を守りながら共存共栄をはかる、という縮小再編の基本方針から一歩も出ようとしていないことである。ここは、新規参入を可能なかぎり受け入れ、互いにファンを呼ぶための競争をする気概をもってほしい。そうしない限りプロ野球はどんどんファンから見はなされていくだろう。選手の側も、新球団発足となれば、球界改革という大義のもと、自己中心的な考えを捨て協力すべきことは言うまでもない。』(産経新聞社説)

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○日経新聞は、「来季からの新規参入を認めるべきだ」というタイトルで、経営者側の対応を促すとともに、選手側にも自重を促している。
⇒『プロ野球が史上初めてのストライキに突入した。残念でならない。この週末、セ・リーグは中日―巨人の最後の首位攻防戦が行われ、パ・リーグはプレーオフ進出を賭けた大詰めの攻防戦が繰り広げられるはずだった。選手会側が要求した「来季からの新規参入」がなぜ認められないのか、日本プロ野球組織(NPB)と球団側が明確な説明をしない限り、ファンも納得しないだろう。プロ野球ストの影響はペナントレースの球趣を損ない、球団や選手に実害を与えることにとどまらない。前売り入場券を持っていたファンの落胆は大きいし、球場内の売店やアルバイト、球場周辺の商店や交通機関にも実害を及ぼす。その影響の大きさを考えれば、球団側も選手会側もスト回避にもっと全力を尽くすべきだった。
不可解なのはNPB・球団側の対応である。新規参入を妨げていた加盟料60億円、参加料30億円を撤廃し、新たに保証金制度を導入して新規参入を促すとしながら、選手会側が求めた「来季からの新規参入」を「審査に時間がかかる」という理由で拒否したのは説得力に乏しい。すでにIT企業のライブドアが宮城県の支援を得て加盟申請し、近日中には同じIT企業の楽天が加盟申請する予定だ。このほかにも手を挙げる企業が取りざたされている。プロ野球を担うにふさわしいかどうかを十分に審査する必要はあるが、はじめから「来年はダメ」と決めつけるのはおかしい。表向きは新規参入を促す制度に変えて、実際は審査の段階で新規参入を排除するようなことがあってはならない。来季のセ6球団、パ5球団の体制では交流戦を導入しても日程の編成に無理が生じ、特にパ・リーグの運営は相当困難になることが予想される。にもかかわらず、NPB・球団側が「来季パ5球団」にこだわるのは理解に苦しむところである。再来年はもう1球団削減して10球団体制にすることをめざす一部球団の思惑に振り回された結果だとしたら実に残念である。選手会側もそうした疑念をぬぐいきれなかったのだろう。親会社の経営不振や球団経営の行き詰まりで撤退を余儀なくされ、新たな買い手が見つからなければ、合併で球団数が減るのも仕方のないことである。しかし、新規参入を意図的に妨げ、当該球団の意思を無視した強引な合併で球団数を減らすような不透明なやり方は好ましくない。NPB・球団側はファンの視線を意識し、公明正大な手法でプロ野球の改革に取り組むべきである。 』(日経新聞社説)

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○読売新聞は、他の4社と大きく異なり、「何が選手たちの真の望みなのか」というタイトルを掲げつつ、選手会側の動きを強烈に批判する内容となっている。
⇒『不毛なストに突入した。優勝やプレーオフ進出争いが山場に差し掛かっているペナントレースの、週末の熱戦に水を差されてしまった。 「来季から(球団を)増やす」「最大限努力する」。この文言を選手会は合意文書に入れたがった。経営側は、これでは来季に十二球団の態勢で臨むことが前提となってしまい、「新規参入球団の公正な審査にタガをはめてしまう」と、受け入れなかった。 この点を「かたくなだ」として、ストの責任を経営側に転嫁する声がある。そうだろうか。 新規参入を目指す球団の「審査」は、慎重の上にも慎重を期す必要がある。経営側がこだわるのは、過去にいくつもの失敗例を知っているからだ。 一九五四年、奇数球団を嫌ったパ・リーグは、財界に働きかけて、強引に「高橋ユニオンズ」を参入させ、八球団にした。手続きは三か月で完了させた。 しかし、経営難から同年暮れ、別会社の支援を受けるようになり、三年後には大映に吸収合併されてしまった。 その後も、一年で経営を放り出した日拓ホームの例や、太平洋クラブで四年、クラウンライターで二年と、目まぐるしくユニホームが変わったライオンズ(現西武)のケースなどがある。プロ野球界の一翼を担う責任感と自覚が経営者にあるのか、そのための経営基盤は盤石か、これらの点に、慎重な見極めが必要だ。 コミッショナーが提案した「新規加入球団審査委員会」に、来季から、公平で透明な審査を託そう。経営側の考えは一致していた。選手会の希望で“密室”の中、続けられた交渉は、時間切れ寸前に一度合意に近づいた。新規参入について「最大限誠意をもって審査する」という妥協案だった。だが、「二〇〇五年」の挿入にこだわる選手会の弁護士と一握りの選手によって、議論は振り出しに戻った。 「勝ったのは弁護士だけ。第三者を介在させたのは間違いだった」と、パの元球団代表が分析していた。選手一人一人に聞いてみたい。来季、絶対にパが六球団でないとダメなのか。それが実現しない限り、ストを続けるつもりなのか、と。交渉の後、横浜の三浦大輔選手が言っていた。「子供たちが将来、野球をやりたいと思うようにしていかないと」。同感だ。プロ選手が実現した夢を、野球少年たちにも追いかけてほしい。だからこそ、試合を拒む選手の背中など、子供たちに見せたくないのだ。 』(読売新聞社説)

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(参考)

○日本プロ野球選手会とは
「日本プロ野球選手会は、日本のプロ野球12球団に所属する日本人選手全て(一部の外国人選手を含む)が会員となっている団体です。プロ野球選手は選手寿命も短い上に社会保障も不十分であることなどの問題を受け、主にプロ野球選手の地位向上を目的として設立され、1980年に社団法人として法人格を取得した後、1985年には東京都地方労働委員会に労働組合としての認定を受け、労働組合となりました。現在は、社団法人日本プロ野球選手会と労働組合日本プロ野球選手会の2つが併存し、選手の地位向上に関する諸問題への取り組みのみならず、全国各地での野球教室や各種チャリティ活動など公益的な活動にも精力的に取り組んでいます。 」
(日本プロ野球選手会公式ホームページより)

○以上のように、「日本プロ野球選手会」は、「労働組合」である。正確には「社団法人日本プロ野球選手会」と「労働組合日本プロ野球選手会」の2法人になっている。1980年8月15日に社団法人として法人格取得し、1985年11月19日に労働組合として認定。 労働組合日本プロ野球選手会は選手の待遇改善、地位向上を目指し、社団法人日本プロ野球選手会は野球全体の発展を目的として、野球教室やチャリティ活動などを展開している。2004年4月1日現在、労働組合会長は古田敦也(ヤクルトスワローズ)、社団法人理事長は立浪和義(中日ドラゴンズ)が務める。なお、労働組合日本プロ野球選手会は、連合、全労連、全労協のいずれのナショナルセンターにも属しない純中立の労働組合である。

○「日本プロ野球選手会」が「労働組合」かどうかという問題の詳細は、ニュース六法2004年07月28日版「NPBが日本プロ野球選手会の要求拒否 ・労働組合法」の項を参照されたい。 
                                            弁護士 三木秀夫

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