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三木秀夫法律事務所
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ニュース六法目次
ダイエーが産業再生機構の活用応諾(2004年10月13日)産業再生機構法 
○再生機構に支援要請 ダイエー、自主再建を断念
経営再建中の大手スーパー、ダイエーは13日、民間主導の自主再建を断念し、公的機関の産業再生機構を活用することを決断した。ダイエーはUFJ銀行など主力取引行3行とともに、同日、再生機構に支援要請した。主力3行は、再生機構なしにダイエー再建は困難として機構活用を強く要求。融資など支援の打ち切りを持ち出し、監査法人が中間決算を承認しない恐れが強まったため、ダイエーは方針転換せざるを得なかった。日本経済の低迷の象徴とも言われた同社が再生機構の支援下で抜本的再生に乗り出すことで、小泉内閣の重要課題である「金融と産業の一体的再生」が前進する。(共同通信)

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○ついに、ダイエーは再生機構の活用を応諾した。
産業再生機構が入ることで、全国の店舗数266店、アルバイト・パート労働者を含む従業員数3万9342人(平成16年2月末現在)、関連会社101社におよぶ企業群が切り売りされバラバラになってしまうことを懸念し、自主再建として民間の力で何とかしようとして、最後まで抵抗していたが、ついに折れた形である。最後の決め手は、監査法人が自主再建に反対する金融機関の支援なしには中間決算の内容に同意できないことであったらしい。

○中内功氏創業のダイエーが、株式上場以来初めて赤字に転落したのが1998年で、同年2月期には258億円の経常赤字となった。 「低価格・多店舗展開」で多額の負債を重ね、店舗を過剰に増やしたことが要因となっていた。さらにカード事業の行き詰まりも経営悪化を加速し、ピーク時2兆4000億円もの負債となっていた。

○2001年と2002年の2回、金融機関側が債権放棄や優先株の引き受けなどの支援が講じられ、あわせて店舗撤退や従業員削減などが進められた結果、負債は約1兆円にまで減少したが、売上高の減少傾向は続き、低迷を続けていた。

○本年8月20日に、自力再建を基本にした再建計画修正案を、主力3行(UFJ、みずほ、三井住友銀行)に提出したが、この3行は、自力での再建計画は難しいとして産業再生機構に支援要請する方針を固めた。特にUFJ側が、三菱東京ファイナンシャルグループとの経営統合を前に不良債権の一気減少を狙っており、不良債権の最大口たるダイエーを一気に追い込んだものといえよう。特に、期限が迫っていた事情もある。産業再生機構は期限付きの会社で、銀行からの貸し出し債権を買い取るのは2005年3月までとなっている。ダイエーのような大型案件は、早くても半年はかかることを見込むと、もはやタイムリミットは過ぎようとしていた。

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○「株式会社産業再生機構法」とは 
同法(略称:産業再生機構法)は、不良債権を買い取って企業再建を後押しする産業再生機構の設置を規定した法律で、2003年4月2日に成立し、同月10日から施行された。支援の是非を決定する産業再生委員会の設置や、債権の買い取り期間は最長3か月、買い取った債権は3年以内の売却を目指すことなどが明記されている。有用な経営資源を有する企業の再建と、金融機関の不良債権処理の加速化を同時に行おうとするものである。日本では、企業再生ファンドなどの事業再生マーケットがまだ十分に発達していないため、公的機関たる機構が行うことで、メインバンクと非メインバンクの利害対立で再生が進まない場合にも、中立的立場で複数の非メインバンクから債権を買い取ることで再生が促進されることが大きなメリットとなっている。

○株式会社産業再生機構とは、経営困難な企業の債権を銀行から買い取り、企業再生を図るために「産業再生機構法」に基づいて設立された株式会社である。不良債権処理を加速しつつ、経営不振の企業を立て直し、金融と産業を一体として再生することを目指す。

支援の判断は、産業再生機構に設けられる産業再生委員会が判断する(15条)。

支援基準は事業所轄大臣の意見を聞いて主務大臣(内閣総理大臣、財務大臣、及び経済産業大臣)が定める(21条)。

支援になった場合の機構の業務は、主に非主力銀行などの金融機関が有する債権を買取り、融資、債務保証、出資、不採算部門の縮小・営業譲渡などにより企業を健全化し、その後に債権譲渡や債権の株式化などでの譲渡などによって、投下資本を回収することである(19条)。債権等の譲渡処分は、買取決定から3年以内にしなければならない(29条3項)。

機構への債権買取申込み期限は2005年3月31日(法成立後2年)とされている(23条3項)。

29条3項によって債権等の処分期限は3年のため、機構は原則として5年以内に業務が終了して解散することになる(11条3項、43条)。 

債権の買取資金には10兆円の政府保証がつけられており、債権買取価格が高すぎて、解散時に損失が出てしまえば、国民負担が発生しうることとなる。

○再生が順調に進まない場合、機構の買取対象になる債務者を再生させていく上で適当と考えられる場合には、民事再生法や会社更生法といった枠組みが活用されることもある。

○産業再生委員会とは、上記のとおり、産業再生機構に設置された組織。産業再生機構法では、3人以上7人以内で組織することが明記されており、現在、高木新二郎教授(弁護士出身)委員長、斉藤惇産業再生機構社長のほか、公認会計士や金融専門家、産業人など7人で構成。

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○ダイエー球団の行方
ダイエー球団はどうなるのか。産業再生機構の支援となれば、『再生機構ホークス』となって、政府が間接的に球団を所有することにもなるが、大臣発言によれば、球団保有は認めない考えを示している。そのうち、売却されるのだろうが、球団再編問題と絡んで、どうなるのだろうか。おりしも、ダイエーとパリーグ優勝を争って勝ち取った西武の堤オーナーが、辞任を表明したこととも併せて、先行きはますます不透明になってきたのは、気がかりである。

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株式会社産業再生機構法(平成十五年四月九日法律第二十七号)(抄)

(機構の目的) 
第一条  株式会社産業再生機構は、最近における経済の停滞、物価、地価及び株価の下落等の経済情勢の変化に我が国の産業及び金融システムが十分対応できたものとなっていない状況にかんがみ、雇用の安定等に配慮しつつ、我が国の産業の再生を図るとともに、金融機関等の不良債権の処理の促進による信用秩序の維持を図るため、有用な経営資源を有しながら過大な債務を負っている事業者に対し、過剰供給構造その他の当該事業者の属する事業分野の実態を考慮しつつ、当該事業者に対して金融機関等が有する債権の買取り等を通じてその事業の再生を支援することを目的とする株式会社とする。 

(数) 
第三条  株式会社産業再生機構(以下「機構」という。)は、一を限り、設立されるものとする。 

(定款)
第十一条  機構の定款には、商法第百六十六条第一項 各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。 
一  株式の譲渡に関する事項 
二  解散に関する事項 
2  前項第一号に掲げる事項については、株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨を定めなければならない。 
3  第一項第二号に掲げる事項については、第四十三条に規定する事由を解散事由として定めなければならない。(以下略)

(設置) 
第十四条  機構に、産業再生委員会(以下「委員会」という。)を置く。 

(権限) 
第十五条  委員会は、次に掲げる事項の決定を行う。 
一  第二十二条第三項前段の再生支援をするかどうかの決定(同項後段の規定により支援決定と併せて行う選定及び決定を含む。) 
二  第二十五条第一項の債権買取り等をするかどうかの決定 
三  第二十七条第一項の買取申込み等期間の延長の決定 
四  第二十三条第一項の対象事業者に係る債権又は持分の譲渡その他の処分(債権の処分にあっては、債務の免除を含む。以下同じ。)の決定 
五  第三十一条第一項の確認の決定 
六  前各号に掲げるもののほか、商法第二百六十条第二項第一号 及び第二号 に掲げる事項のうち取締役会の決議により委任を受けた事項の決定 
2  委員会は、前項第一号から第五号までに掲げる事項の決定について、取締役会から委任を受けたものとみなす。 

(組織) 
第十六条  委員会は、取締役である委員三人以上七人以内で組織する。 

(業務の範囲) 
第十九条  機構は、その目的を達成するため、次に掲げる業務を営むものとする。 
一  第二十三条第一項の対象事業者に対して金融機関等が有する債権の買取り又は同項の対象事業者に対して金融機関等が有する貸付債権の信託の引受け(以下「債権買取り等」という。) 
二  債権買取り等を行った債権に係る債務者に対する次に掲げる業務 
イ 資金の貸付け
ロ 金融機関等からの資金の借入れに係る債務の保証
ハ 出資
三  債権の管理及び譲渡その他の処分(債権者としての権利の行使に関する一切の裁判上又は裁判外の行為を含む。) 
四  出資に係る持分の譲渡その他の処分 
五  前各号に掲げる業務に関連して必要な交渉及び調査 
六  第二十三条第一項の対象事業者に対する助言 
七  前各号に掲げる業務に附帯する業務 
八  前各号に掲げるもののほか、機構の目的を達成するために必要な業務 
2  機構は、前項第八号に掲げる業務を営もうとするときは、あらかじめ、主務大臣の認可を受けなければならない。 

(支援基準)
第二十一条  主務大臣は、機構が、第十九条第一項に規定する業務の実施による事業の再生の支援(以下「再生支援」という。)をするかどうかを決定するに当たって従うべき基準及び債権買取り等をするかどうかを決定するに当たって従うべき基準(以下「支援基準」と総称する。)を定めるものとする。 
2  主務大臣は、前項の規定により支援基準を定めようとするときは、あらかじめ、再生支援の対象となる事業者の事業を所管する大臣(以下「事業所管大臣」という。)の意見を聴かなければならない。 
3  主務大臣が第一項の規定により支援基準を定め、及び事業所管大臣が前項の規定により意見を述べるに当たっては、産業活力再生特別措置法 (平成十一年法律第百三十一号)第二条の二第一項 の基本指針及び同法第二条の三第一項 の事業分野別指針との整合性に配慮しなければならない。 
4  主務大臣は、第一項の規定により支援基準を定めたときは、これを公表するものとする。 

(支援決定) 
第二十二条  過大な債務を負っている事業者であって、その債権者である一以上の金融機関等と協力してその事業の再生を図ろうとする者は、当該金融機関等と連名で、機構に対し、再生支援を申し込むことができる。 
2  前項の申込みは、当該申込みをする事業者の事業の再生の計画(以下「事業再生計画」という。)を添付して行わなければならない。 
3  機構は、第一項の申込みがあったときは、遅滞なく、支援基準に従って、再生支援をするかどうかを決定するとともに、その結果を当該申込みをした事業者及び金融機関等に通知しなければならない。この場合において、機構は、再生支援をする旨の決定(以下「支援決定」という。)を行ったときは、併せて、次条第一項前段の関係金融機関等の選定及び買取申込み等期間の決定、第二十四条第一項の一時停止の要請をするかどうかの決定並びに第二十五条第二項の必要債権額の決定を行わなければならない。 
4  機構は、再生支援をするかどうかを決定するに当たっては、第一項の申込みをした事業者における事業再生計画についての労働者との協議の状況等に配慮しなければならない。 
5  機構は、第一項の申込みをした事業者が中小規模の事業者である場合において再生支援をするかどうかを決定するに当たっては、当該事業者の企業規模を理由として不利益な取扱いをしてはならない。 
6  機構は、再生支援をするかどうかを決定しようとするときは、あらかじめ、主務大臣の意見を聴かなければならない。 
7  主務大臣は、前項の規定により意見を聴かれたときは、遅滞なく、その内容を事業所管大臣に通知するものとする。 
8  事業所管大臣は、前項の通知を受けた場合において、過剰供給構造その他の当該事業者の属する事業分野の実態を考慮して必要があると認めるときは、機構に対して意見を述べることができる。 

(買取申込み等の求め) 
第二十三条  機構は、支援決定を行ったときは、直ちに、その対象となった事業者(以下「対象事業者」という。)の債権者である金融機関等のうち再生支援の申込みをしたものその他事業再生計画に基づく対象事業者の事業の再生のために協力を求める必要があると認められるもの(以下「関係金融機関等」という。)に対し、支援決定の日から起算して三月以内で機構が定める期間(以下「買取申込み等期間」という。)内に、当該関係金融機関等が対象事業者に対して有するすべての債権につき、次に掲げる申込み又は同意をする旨の回答(以下「買取申込み等」という。)をするよう求めなければならない。この場合において、関係金融機関等のうち再生支援の申込みをした金融機関等以外の金融機関等に対する求めは、支援決定を行った旨の通知及び事業再生計画を添付して行わなければならない。 
一  債権の買取りの申込み 
二  事業再生計画に従って債権の管理又は処分をすることの同意(対象事業者に対する貸付債権を信託財産とし、当該同意に係る事業再生計画に従ってその管理又は処分を行わせるための信託の申込みを含む。) 
2  前項第一号の債権の買取りの申込みは、価格を示して行うものとする。 
3  機構は、買取申込み等期間の末日を、平成十七年三月三十一日以前の日としなければならない。 

(一時停止) 
第二十四条  機構は、関係金融機関等が対象事業者に対し債権の回収その他主務省令で定める債権者としての権利の行使(以下「回収等」という。)をすることにより、買取申込み等期間が満了する前に対象事業者の事業の再生が困難となるおそれがあると認められるときは、すべての関係金融機関等に対し、前条第一項前段の求めに併せて、買取申込み等期間が満了するまでの間、回収等をしないこと(以下「一時停止」という。)を要請しなければならない。 
2  機構は、前項の場合において、買取申込み等期間が満了する前に、次条第一項に規定する買取決定を行い、又は第二十八条第一項第三号の規定により支援決定を撤回したときは、直ちに、一時停止の要請を撤回し、その旨をすべての関係金融機関等に通知しなければならない。 

(買取決定) 
第二十五条  機構は、買取申込み等期間が満了し、又は買取申込み等期間が満了する前にすべての関係金融機関等から買取申込み等があったときは、速やかに、それぞれの買取申込み等(第二十三条第一項の債権の買取りの申込み又は信託の申込みをする旨のものに限る。第三項において同じ。)に対し、支援基準に従って、債権買取り等をするかどうかを決定しなければならない。この場合において、債権買取り等をする旨の決定(以下「買取決定」という。)をするときは、一括して行わなければならない。 
2  前項の場合において、機構は、買取申込み等に係る債権のうち、買取りをすることができると見込まれるものの額及び同意に係るものの額の合計額が、対象事業者の事業の再生に必要と認められる額としてあらかじめ機構が定めた額(以下「必要債権額」という。)に満たないときは、買取決定を行ってはならない。 
3  第一項の場合において、関係金融機関等が一時停止の要請に反して回収等をしたときは、機構は、当該関係金融機関等からの買取申込み等に対し、買取決定を行ってはならない。 
4  機構は、買取決定を行おうとするときは、あらかじめ、主務大臣の意見を聴かなければならない。 

(買取価格) 
第二十六条  機構が債権の買取りを行う場合の価格は、支援決定に係る事業再生計画を勘案した適正な時価を上回ってはならない。 

(買取申込み等期間の延長) 
第二十七条  機構は、買取申込み等に係る債権のうち、買取りをすることができると見込まれるものの額及び同意に係るものの額の合計額が、買取申込み等期間が満了しても必要債権額に満たないことになると見込まれるときは、当該買取申込み等期間の延長を決定することができる。この場合において、当該延長する買取申込み等期間の末日は、支援決定の日から起算して三月以内でなければならない。 
2  機構は、前項の規定により買取申込み等期間の延長を決定したときは、直ちに、その旨をすべての関係金融機関等に通知するとともに、いまだ買取申込み等をしていない関係金融機関等に対し、当該延長した買取申込み等期間内に買取申込み等をするよう求めなければならない。 
3  (略)

(債権又は持分の譲渡その他の処分の決定等) 
第二十九条  機構は、対象事業者に係る債権又は持分の譲渡その他の処分の決定を行おうとするときは、あらかじめ、主務大臣の意見を聴かなければならない。 
2  第二十二条第七項及び第八項の規定は、経済情勢の変化等に伴い、機構が支援決定に係る事業再生計画に予定していない債務の免除を行う必要が新たに生じた場合における当該債務の免除に係る前項の決定に関し、同項の規定により主務大臣が意見を聴かれた場合について準用する。 
3  機構は、経済情勢、対象事業者の事業の状況等を考慮しつつ、買取決定の日から三年以内に、当該買取決定に係る対象事業者につき、すべての債権及び持分の譲渡その他の処分を行うよう努めなければならない。 
4  機構が貸付債権の信託の引受けを行う場合における信託契約の期間は、三年を超えてはならない。 
5  機構が債務の保証を行う場合におけるその対象となる貸付金の償還期限までの期間は、買取決定の日から三年を超えてはならない。 

(決定の公表) 
第三十条  機構は、次に掲げる決定を行ったときは、速やかに、その旨及びその他主務省令で定める事項を公表しなければならない。 
一  支援決定又はその撤回 
二  買取決定 
三  対象事業者に係る債権又は持分の譲渡その他の処分の決定 

(機構の解散) 
第四十三条  機構は、第十九条第一項に規定する業務の完了により解散する。 

(政府の補助) 
第四十六条  政府は、機構が解散する場合において、その財産をもって債務を完済することができないときは、予算で定める金額の範囲内において、機構に対し、当該債務を完済するために要する費用の全部又は一部に相当する金額を補助することができる。  
                                            弁護士 三木秀夫

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