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三木秀夫法律事務所
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ニュース六法目次
西武鉄道上場廃止へ(2004年11月16日)  個人株主と証券取引法の改正 
○東証、西武鉄道株の上場廃止を決定 12月17日に
東京証券取引所は16日夕、西武鉄道株を12月17日に上場廃止にすると発表した。西武が40年間以上も大株主の持ち株比率を過少記載していたことが証券市場の信頼を著しく傷つける行為と判断。投資家保護上、同社の上場維持が適当でないとし、厳罰で臨むことにした。西武鉄道株は現在、監理ポストだが、17日から整理ポストでの売買になる。投資家に1カ月間の取引機会を与えた後、東証での売買はできなくなる。証券会社によっては売買に応じる可能性も残る。
(2004年11月16日 日経新聞)

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○やはり、こうなったか。
西武鉄道は、大株主で非上場のコクドの持ち株比率を過少記載し、大株主の持ち株比率が80%を超えてはならないという上場廃止基準を長期間逸脱していたことを、先月明らかにした。さらに上場維持のために、この過少記載問題を告げずに、西武グループが多くの企業や個人に西武株を売却していた事実が発覚した。東京証券取引所は、これが上場廃止基準の上場企業が財務諸表等に虚偽記載があり、影響が重大であると認め、公益性の観点や投資者保護のため上場継続が適当でないと判断したものである。(ニュース六法2004年10月22日版「西武鉄道株の大騒動」を参照)

○今回の西武鉄道事件において、多くの教訓が生じている。投資家は開示書類を手がかりに西武鉄道株を買っている。西武鉄道は、その投資家への情報開示や説明責任の視点が完全に抜け落ちていたと指弾されてもしかたがない。

特に近時は「虚偽記載」についてその罪を重くみて、証券取引法等の一部を改正する法律案が本年6月2日に参議院において可決成立するなど、企業に対する民事責任を強化する動きが起きていたが、そのさなかの事件である。 

堤義明コクド会長の言:「会社としての体質が古かった。悪意はなかった」。同社では、身内の株主で固めたいとの思惑があったのであろうが、今回のようなリスクは予知しなかったのであろうか。今後、証券取引法違反で刑事告発される可能性もある。

西武鉄道が上場廃止になれば、市場では同社株の売買が不可能となる。結果として、西武鉄道の株主は多大な損害を被ることになる。 

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○個人株主の損害賠償請求の道
ここでは、株式市場から西武鉄道株を購入していたであろう多数の個人株主の問題を取り上げて検討してみたい。これについては、メールやニュー六法掲示板などを通じて個別に質問を受けた。

結論から言えば、株式市場から西武鉄道株を購入していたであろう個人株主は、西武鉄道が有価証券報告書に大株主の持ち株比率を過少に記載していた問題で、この報告書を出した堤義明コクド前会長を含む当時の役員ら、及び虚偽ではないとの意見を出していた公認会計士に、これによって生じた損害の賠償を、証券取引法24条の4で請求する道はある。

○証券取引法には不実の有価証券報告書に関する責任規定がある。

現行証券取引法の規定では、会社の役員が不実開示に関して損害賠償責任を負うが、無過失の立証責任は役員側に転換されている。このため、民法709条の不法行為の規定よる請求よりも、請求者側にとって有利な規定となっている。また、現行法規定には、損害の額については規定を欠いている。このため、その部分に関しては、請求する側(原告)による立証が必要となる。この場合、解釈上は、その株式を購入した際の株価から、請求時の株価との差額(つまり株価の下落分となろう)と考えられる。

○ただし、有価証券報告書の虚偽記載で損害を請求できる者として規定されているのは、「有価証券報告書の記載が虚偽であり又は欠けていることを知らないで、当該有価証券報告書の届出者が発行者である有価証券を取得した者」、つまりは不実の有価証券報告書をみて株式を取得した者である(同法24条4、22条)。このため、これに該当しない者は請求できず、その意味で、この規定で請求しようとする者は、その点の確認が必要となる。

例えば、3月期決算の会社の株式を今年の4月1日に購入したAさんは、それまでは正確であった有価証券報告書について、10月になって、最新の報告書に虚偽の記載があったことが分かり、株価が急落したとしても、その損害は請求できない。なぜかといえば、有価証券報告書は事業年度後3ヶ月以内に提出すればよいので、3月期決算の会社の場合においては、4月1日の株式購入時点で、Aさんは、その虚偽の有価証券報告書が出ていないために「不実の有価証券報告書をみて株式を取得した」者とは言えないからである。この場合も、もしその前年度の有価証券報告書の記載も虚偽であったとしたら、Aさんは請求できることとなる。

○ただ、西武鉄道の今回のケースは、堤会長が「30年程度はこの状態が続いていたと思う」と発言したことが報道されている。つまり、かなり前から有価証券報告書での虚偽記載が続いていたものと考えられる。したがって、かなり前からの株式購入で購入した者も、「不実の有価証券報告書をみて株式を取得した」者となる可能性があると言えよう。ちなみに、西武鉄道は、4年前の平成12年3月に遡って虚偽内容を訂正したということであり、それからすれば、平成12年3月期終了後に出された有価証券報告書が見れる状態になった以降の株式購入者は、間違いなく該当者となろう。

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○ちなみに、下記のような報道が毎日新聞でなされていた。

損害賠償を求め、個人株主初提訴 東京簡裁
西武鉄道が有価証券報告書に大株主の持ち株比率を過少に記載していた問題で、個人株主の東京都内の弁護士が4日、この報告書を出した堤義明コクド前会長ら昨年6月当時の役員13人と公認会計士2人に60万9000円の損害賠償を求め、東京簡裁に提訴した。西武鉄道によると、この問題を巡る個人株主の提訴は初めてという。訴状によると、弁護士は西武鉄道株1000株を保有。「役員らが重大な過失により不実記載を見過ごした結果、1株当たり609円の損害を受けた」と、証券取引法に基づき、問題が公表された10月13日以前と現在の株価水準の差額の賠償を求めている。公認会計士について「報告書を虚偽ではないとする監査を行っており連帯責任がある」と主張している。西武鉄道総務部の話 「訴状を見ていないのでコメントは差し控えたい。」
(毎日新聞 2004年11月4日)

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○参考
法律第97号 証券取引法等の一部を改正する法律 (平成16年(2004年)6月9日 金融庁)

証券取引法等の一部を改正する法律案が6月2日に参議院において可決成立した。その主な内容は、いくつかあるが、今回のような虚偽記載に関連するものとして、民事責任規定の見直しがある。(第20条、第21条の2及び第21条の3)

これは、有価証券報告書等の虚偽記載による損害賠償請求権の規定を整備し、虚偽記載等の公表日前後の平均価額の差額を一定の範囲内で損害額と推定することとしたものである。虚偽記載によって投資家が損害を被った場合には、その企業に直接に損害賠償を請求できることが法律で定められた。企業の責任を厳しく問う方法が新設されたものである。

これは、開示書類に虚偽情報を記載することで投資家が損害を被り、市場全体の信用を損ねる可能性があるため。また、投資家は一定の方法で計算した金額を損害額として企業に請求できる規定も設けられた。今年12月以降に提示された開示書類について適用され、平成17年4月1日から施行される。

この改正が、虚偽記載をしている企業が、この改正規定を前にして、いくつかあぶり出されるように思う。

今回改正の証券取引法第21条の2第2項では、有価証券報告書等の「虚偽記載等の事実の公表」が行われたとき、虚偽記載の事実が公表される前1年以内にその有価証券を募集または売出しによらずに取得し、かつ、公表日に引き続き保有する者は、公表前1ヶ月間のその有価証券の市場価額(市場価額がないときは処分推定価額)の平均額からその公表日後1ヶ月間のその有価証券の市場価額の平均額を控除した金額を、虚偽記載により生じた損害の額とすることができる、とした。
 
この規定が虚偽記載によって損害を被った投資家被害者にとって有利なのは、次の2点になろう。

@この賠償責任は無過失責任であること。したがって、投資家被害者は発行会社の故意または過失を立証する必要がない。さらに、発行会社が故意または過失がないことを立証しても免責されないことになる。

Aさらに、通常は有価証券の取得価額から損害賠償請求時の市場価額もしくは処分価額の差損が損害限度額となるが(同法21条の2第1項)、損害限度額に拘らず一律に損害額の認定を受けられる。

ただ、ここで言う「虚偽記載等の事実の公表」が、今後の損害賠償請求の際にネックとなるのではないかと、少し気にはなる。これは、虚偽記載を企業がその訂正報告書等を公式に開示するか、もしくは記者会見等により周知させることをいう(同法21条の2第3項)。もし、虚偽記載企業が正式な公表をする前に何らかの事由で虚偽内容が発覚するなどして株価が大暴落をしたような場合は、その時点では当該企業は正式に「虚偽記載等の事実の公表」をしていないとの解釈が成り立ちうる。それでは、虚偽事実等の正式公表前に株価が下落して売却を余儀なくされ損害を受けた者は保護されない可能性が無いではない。

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○証券取引法(昭和二十三年四月十三日法律第二十五号)
平成17年4月1日から施行される改正後規定を掲載

第四条
有価証券の募集又は売出し(次項に規定する適格機関投資家向け証券の一般投資者向け勧誘に該当するものを除く。以下この項において同じ。)は、発行者が当該募集又は売出しに関し内閣総理大臣に届出をしているものでなければ、することができない。ただし、次の各号のいずれかに該当するものについては、この限りでない。
一  その有価証券に関して開示が行われている場合における当該有価証券の売出し
二  その発行の際にその取得の申込みの勧誘が第二条第三項第二号イに掲げる場合に該当するものであつた有価証券の売出しで、適格機関投資家のみを相手方とするもの(前号に掲げるものを除く。)
三  発行価額又は売出価額の総額が一億円未満の有価証券の募集又は売出しで内閣府令で定めるもの(前二号に掲げるものを除く。)

2  その発行の際にその取得の申込みの勧誘が第二条第三項第二号イに掲げる場合に該当するものであつた有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込みの勧誘で、適格機関投資家が適格機関投資家以外の者に対して行うもの(以下「適格機関投資家向け証券の一般投資者向け勧誘」という。)は、発行者が当該適格機関投資家向け証券の一般投資者向け勧誘に関し内閣総理大臣に届出をしているものでなければ、することができない。ただし、当該有価証券に関して開示が行われている場合及び内閣府令で定めるやむを得ない理由により行われることその他の内閣府令で定める要件を満たす場合は、この限りでない。

3  有価証券の募集又は売出し(第一項第二号に掲げる有価証券の売出しを除くものとし、適格機関投資家向け証券の一般投資者向け勧誘(有価証券の売出しに該当するものを除く。)を含む。次項及び第五項を除き、以下この章及び次章において同じ。)が一定の日において株主名簿(優先出資法 に規定する優先出資者名簿を含む。)に記載され、又は記録されている株主(優先出資法 に規定する優先出資者を含む。)に対し行われる場合には、当該募集又は売出しに関する前二項の規定による届出は、その日の二十五日前までにしなければならない。ただし、有価証券の発行価格又は売出価格その他の事情を勘案して内閣府令で定める場合は、この限りでない。

4  第一項第一号若しくは第三号に掲げる有価証券の募集若しくは売出し若しくは第二項ただし書の規定により同項本文の規定の適用を受けない適格機関投資家向け証券の一般投資者向け勧誘のうち、有価証券の売出しに該当するもの若しくは有価証券の売出しに該当せず、かつ、開示が行われている場合に該当しないもの(以下この項及び次項において「特定募集等」という。)をし、又は当該特定募集等に係る有価証券を取得させ若しくは売り付ける場合に使用する目論見書には、当該特定募集等が第一項本文又は第二項本文の規定の適用を受けないものである旨を記載しなければならない。

5  特定募集等が行われる場合においては、当該特定募集等に係る有価証券の発行者は、当該特定募集等が開始される日の前日までに、内閣府令で定めるところにより、当該特定募集等に関する通知書を内閣総理大臣に提出しなければならない。ただし、開示が行われている場合における第三項に規定する有価証券の売出しでその売出価額の総額が一億円未満のもの及び第一項第三号に掲げる有価証券の募集又は売出しでその発行価額又は売出価額の総額が内閣府令で定める金額以下のものについては、この限りでない。

6  第一項第一号、第二項、第四項及び前項に規定する開示が行われている場合とは、次に掲げる場合をいう。
一  当該有価証券について既に行われた募集若しくは売出し(適格機関投資家向け証券の一般投資者向け勧誘に該当するものを除く。)に関する第一項の規定による届出又は当該有価証券について既に行われた適格機関投資家向け証券の一般投資者向け勧誘に関する第二項の規定による届出がその効力を生じている場合(当該有価証券の発行者が第二十四条第一項ただし書(同条第五項において準用し、及びこれらの規定を第二十七条において準用する場合を含む。)の規定の適用を受けている者である場合を除く。)
二  前号に掲げる場合に準ずるものとして内閣府令で定める場合

第十七条
第四条第一項本文若しくは第二項本文の規定の適用を受ける有価証券又は既に開示された有価証券の募集又は売出しについて、重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な事実の記載が欠けている第十三条第一項の目論見書又は重要な事項について虚偽の表示若しくは誤解を生ずるような表示があり、若しくは誤解を生じさせないために必要な事実の表示が欠けている資料を使用して有価証券を取得させた者は、記載が虚偽であり、若しくは欠けていること又は表示が虚偽であり、若しくは誤解を生ずるような表示であり、若しくは表示が欠けていることを知らないで当該有価証券を取得した者が受けた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、賠償の責めに任ずべき者が、記載が虚偽であり、若しくは欠けていること又は表示が虚偽であり、若しくは誤解を生ずるような表示であることを知らず、かつ、相当な注意を用いたにもかかわらず知ることができなかつたことを証明したときは、この限りでない。
 
第十八条
有価証券届出書のうちに、重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けているときは、当該有価証券届出書の届出者は、当該有価証券を当該募集又は売出しに応じて取得した者に対し、損害賠償の責めに任ずる。ただし、当該有価証券を取得した者がその取得の申込みの際記載が虚偽であり、又は欠けていることを知っていたときは、この限りでない。

2  前項の規定は、第十三条第一項の目論見書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている場合に準用する。この場合において、前項中「有価証券届出書の届出者」とあるのは「目論見書を作成した発行者」と、「募集又は売出しに応じて」とあるのは「募集又は売出しに応じ当該目論見書の交付を受けて」と読み替えるものとする。

第十九条
前条の規定により賠償の責めに任ずべき額は、請求権者が当該有価証券の取得について支払った額から次の各号の一に掲げる額を控除した額とする。
一  前条の規定により損害賠償を請求する時における市場価額(市場価額がないときは、その時における処分推定価額)
二  前号の時前に当該有価証券を処分した場合においては、その処分価額

2  前条の規定により賠償の責めに任ずべき者は、当該請求権者が受けた損害の額の全部又は一部が、有価証券届出書又は目論見書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けていたことによつて生ずべき当該有価証券の値下り以外の事情により生じたことを証明した場合においては、その全部又は一部については、賠償の責めに任じない。

第二十条
第十八条の規定による賠償の請求権は、請求権者が有価証券届出書若しくは目論見書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けていたことを知った時又は相当な注意をもつて知ることができる時から三年間、これを行わないときは、消滅する。当該有価証券の募集若しくは売出しに係る第四条第一項若しくは第二項の規定による届出がその効力を生じた時又は当該目論見書の交付があつた時から七年間(第十条第一項又は第十一条第一項の規定による停止命令があつた場合には、当該停止命令があつた日からその解除があつた日までの期間は、算入しない。)、これを行わないときも、また、同様とする。

 
第二十一条
有価証券届出書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けているときは、次に掲げる者は、当該有価証券を募集又は売出しに応じて取得した者に対し、記載が虚偽であり又は欠けていることにより生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、当該有価証券を取得した者がその取得の申込みの際記載が虚偽であり、又は欠けていることを知っていたときは、この限りでない。
一  当該有価証券届出書を提出した会社のその提出の時における役員(取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう。第百六十三条から第百六十七条までを除き、以下同じ。)又は当該会社の発起人(その提出が会社の成立前にされたときに限る。)
二  当該売出しに係る有価証券の所有者(その者が当該有価証券を所有している者からその売出しをすることを内容とする契約によりこれを取得した場合には、当該契約の相手方)
三  当該有価証券届出書に係る第百九十三条の二第一項に規定する監査証明において、当該監査証明に係る書類について記載が虚偽であり又は欠けているものを虚偽でなく又は欠けていないものとして証明した公認会計士又は監査法人
四  当該募集に係る有価証券の発行者又は第二号に掲げる者のいずれかと元引受契約を締結した証券会社又は登録金融機関

2  前項の場合において、次の各号に掲げる者は、当該各号に掲げる事項を証明したときは、同項に規定する賠償の責めに任じない。
一  前項第一号又は第二号に掲げる者 記載が虚偽であり又は欠けていることを知らず、かつ、相当な注意を用いたにもかかわらず知ることができなかったこと。
二  前項第三号に掲げる者 同号の証明をしたことについて故意又は過失がなかったこと。
三  前項第四号に掲げる者 記載が虚偽であり又は欠けていることを知らず、かつ、第百九十三条の二第一項に規定する財務計算に関する書類に係る部分以外の部分については、相当な注意を用いたにもかかわらず知ることができなかったこと。

3  第一項第一号及び第二号並びに前項第一号の規定は、第十三条第一項の目論見書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている場合に準用する。この場合において、第一項中「募集又は売出しに応じて」とあるのは「募集又は売出しに応じ当該目論見書の交付を受けて」と、「当該有価証券届出書を提出した会社」とあるのは「当該目論見書を作成した会社」と、「その提出」とあるのは「その作成」と読み替えるものとする。

4  第一項第四号において「元引受契約」とは、有価証券の募集又は売出しに際して締結する次の各号のいずれかの契約をいう。
一  当該有価証券を取得させることを目的として当該有価証券の全部又は一部を発行者又は所有者(証券会社及び登録金融機関を除く。次号において同じ。)から取得することを内容とする契約
二  当該有価証券の全部又は一部につき他にこれを取得する者がない場合にその残部を発行者又は所有者から取得することを内容とする契約

第二十一条の二
第二十五条第一項各号に掲げる書類(以下この条において「書類」という。)のうちに、重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けているときは、当該書類の提出者は、当該書類が同項の規定により公衆の縦覧に供されている間に当該書類(同項第八号に掲げる書類を除く。)の提出者又は当該書類(同号に掲げる書類に限る。)の提出者を親会社等(第二十四条の七第一項に規定する親会社等をいう。)とする者が発行者である有価証券を募集又は売出しによらないで取得した者に対し、第十九条第一項の規定の例により算出した額を超えない限度において、記載が虚偽であり、又は欠けていること(以下この条において「虚偽記載等」という。)により生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、当該有価証券を取得した者がその取得の際虚偽記載等を知っていたときは、この限りでない。

2  前項本文の場合において、当該書類の虚偽記載等の事実の公表がされたときは、当該虚偽記載等の事実の公表がされた日(以下この項において「公表日」という。)前一年以内に当該有価証券を取得し、当該公表日において引き続き当該有価証券を所有する者は、当該公表日前一月間の当該有価証券の市場価額(市場価額がないときは、処分推定価額。以下この項において同じ。)の平均額から当該公表日後一月間の当該有価証券の市場価額の平均額を控除した額を、当該書類の虚偽記載等により生じた損害の額とすることができる。

3  前項の「虚偽記載等の事実の公表」とは、当該書類の提出者又は当該提出者の業務若しくは財産に関し法令に基づく権限を有する者により、当該書類の虚偽記載等に係る記載すべき重要な事項又は誤解を生じさせないために必要な重要な事実について、第二十五条第一項の規定による公衆の縦覧その他の手段により、多数の者の知り得る状態に置く措置がとられたことをいう。

4  第二項の場合において、その賠償の責めに任ずべき者は、その請求権者が受けた損害の額の全部又は一部が、当該書類の虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下り以外の事情により生じたことを証明したときは、その全部又は一部については、賠償の責めに任じない。

5  前項の場合を除くほか、第二項の場合において、その請求権者が受けた損害の全部又は一部が、当該書類の虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下り以外の事情により生じたことが認められ、かつ、当該事情により生じた損害の性質上その額を証明することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、賠償の責めに任じない損害の額として相当な額の認定をすることができる。

第二十一条の三
第二十条の規定は、前条の規定による賠償の請求権について準用する。この場合において、第二十条中「第十八条」とあるのは「第二十一条の二」と、「有価証券届出書若しくは目論見書」とあるのは「第二十五条第一項各号に掲げる書類」と、「三年間」とあるのは「二年間」と、「当該有価証券の募集若しくは売出しに係る第四条第一項若しくは第二項の規定による届出がその効力を生じた時又は当該目論見書の交付があつた時から七年間(第十条第一項又は第十一条第一項の規定による停止命令があつた場合には、当該停止命令があつた日からその解除があつた日までの期間は、算入しない。)」とあるのは「当該書類が提出された時から五年間」と読み替えるものとする。

第二十二条
有価証券届出書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けているときは、第二十一条第一項第一号及び第三号に掲げる者は、当該記載が虚偽であり、又は欠けていることを知らないで、当該有価証券届出書の届出者が発行者である有価証券を募集又は売出しによらないで取得した者に対し、記載が虚偽であり、又は欠けていることにより生じた損害を賠償する責めに任ずる。

2  第二十一条第二項第一号及び第二号の規定は、前項に規定する賠償の責めに任ずべき者について準用する。

第二十四条の四  
第二十二条の規定は、有価証券報告書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている場合に準用する。この場合において、同条第一項中「有価証券を募集又は売出しによらないで取得した者」とあるのは、「有価証券を取得した者」と読み替えるものとする。

第二十五条  内閣総理大臣は、内閣府令で定めるところにより、次の各号に掲げる書類を、これらの書類を受理した日から当該各号に定める期間を経過する日(当該各号に掲げる訂正届出書、訂正発行登録書又は訂正報告書にあつては、当該訂正の対象となつた当該各号に掲げる第五条第一項及び第五項の規定による届出書及びその添付書類、同条第四項の規定の適用を受ける届出書及びその添付書類、発行登録書及びその添付書類、有価証券報告書及びその添付書類、半期報告書、臨時報告書、自己株券買付状況報告書又は親会社等状況報告書に係る当該経過する日)までの間、公衆の縦覧に供しなければならない。
一  第五条第一項及び第五項の規定による届出書及びその添付書類並びにこれらの訂正届出書(同条第四項の規定の適用を受ける届出書及びその添付書類並びにこれらの訂正届出書を除く。) 五年
二  第五条第四項の規定の適用を受ける届出書及びその添付書類並びにこれらの訂正届出書 一年
三  発行登録書及びその添付書類、発行登録追補書類及びその添付書類並びにこれらの訂正発行登録書 発行登録が効力を失うまでの期間
四  有価証券報告書及びその添付書類並びにこれらの訂正報告書 五年
五  半期報告書及びその訂正報告書 三年
六  臨時報告書及びその訂正報告書 一年
七  自己株券買付状況報告書及びその訂正報告書 一年
八  親会社等状況報告書及びその訂正報告書 五年
                                            弁護士 三木秀夫

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