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三木秀夫法律事務所
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ニュース六法目次
対馬海上の韓国漁船逃走事件(2005年06月02日) 継続追跡権/EEZ漁業法
○第7管区海上保安本部(北九州)によると、31日午後11時半ごろ、対馬の北東約50キロで、対馬海上保安部の巡視艇「たつぐも」が、アナゴ漁をする韓国漁船「シンプン」(10人乗り組み)を発見、立ち入り検査をしようと近づいたところ、漁船は逃走した。約10分後、海上保安官2人が乗り込んで停船させたが、保安官を乗せたまま再び逃走。約2時間後の1日午前1時55分ごろ、漁船は対馬の北東約60キロの韓国のEEZ内の公海上で、海保の要請で出動した韓国海洋警察庁の警備艦に自ら接触、止まった。保安官2人は巡視艇に戻った。海保によると、漁船に乗り込む際に保安官1人が海に転落、巡視艇に救助された。保安官2人は漁船の乗組員に羽交い締めにされたり体当たりされたりしたという。一方、韓国の聯合ニュースは保安官との小競り合いで韓国人1人が頭にけがをしたと伝えた。(2005.06.01共同)

○長崎県・対馬(対馬市)沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、対馬海上保安部の立ち入り検査を受けた韓国のアナゴ漁船「シンプン号」が海上保安官2人を乗せて逃走した事件で、対馬海保は2日、漁船の船長(36)が漁業法違反(立ち入り検査忌避)容疑を認める書類と、50万円の担保金を支払う保証書を提出したことから、同日午後5時半ごろ船長を釈放し、漁船を韓国側に引き渡した。日韓のにらみ合いが続いた事態は、5月31日午後11時半の韓国漁船発見以来、42時間ぶりに収束に向かった。

第7管区海上保安本部(北九州市)によると、海上保安庁と韓国海洋警察庁が協議し、担保金の支払いを確約することなどを条件に、容疑者を早期に釈放することで合意した。これを受け、対馬海保は2日午後3時ごろから、韓国の警備艦内でシ号船長の事情聴取やシ号での実況見分を行った。このあと、警戒に当たっていた7管の巡視船艇8隻も、午後6時15分から順次、現場を離れた。

対馬海保は近く、同容疑で船長を長崎地検厳原支部に書類送検する。船長は出頭しない公算が大きい。その場合は、担保金が国庫に没収される。

発端は、対馬海保の巡視艇「たつぐも」が31日夜、EEZ内で韓国漁船3隻を発見したこと。ここでは、韓国によるアナゴ漁が認められていないため、海保が立ち入り検査しようとしたところ逃走し、シ号は約2時間半後、韓国のEEZ内で停船し、事態が行き詰まっていた。7管の檜垣幸策・警備救難部企画調整官は「日本の司法権に基づいて捜査が行われ、主権は守られた」と強調したうえで、「身柄の引き渡しを巡って紛糾するなど、多くの課題を残した。必ずしも前例とはしたくない結果であり、今後、韓国側と協議したい」と述べた。(2005.06.03 読売新聞)

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○今回の海上保安庁の命がけの勇気ある行動は敬意を表したい。

長崎県・対馬沖の日本海で5月31日から6月3日にかけて、日本の排他的経済水域(EEZ)内での違法操業の疑いがある韓国漁船が、海保の巡視艇の立ち入り検査を拒否、海上保安官2人を乗せたまま韓国のEEZ内に逃走した後、海上保安庁の巡視艇と韓国・海洋警察庁の警備艦が長時間にわたって対峙する事態が起きた。現場では、両国の艦船が漁船にロープをくくりつけ、10隻を超える艦船も駆けつけて対峙した。最終的に、漁船が事実上、違法行為を認める文書を提出し、担保金の日本への支払いを確約することなどで日韓両国が合意し、事態の収拾が図られた。両国の海上警察が約40時間もにらみ合ったことは、異常な事態である。再発防止策が必要であろう。

○事態がこじれた原因は、日本側の報道を見る限りでは、明確である。国際法に基づいた日本側の行動に対して、韓国側が漁船の船長の引き渡しなどを拒否したためである。韓国側の対応には冷静さが欠けていたと非難されても仕方がないであろう。特に漁船への立ち入り検査の拒否は、海保の捜査妨害であるし、漁船が海上保安官を乗せたまま逃亡したこと自体もかなり悪質な犯行である。韓国側では違う報道もなされているようであるが、それを前提にして考えても、この事件の本質や国際法の基本的知識を欠いた非難としか見えないように感じる。

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○継続追跡権とは
今回の海上保安庁の行動は、国際法上で認められた「継続追跡権」の行使である。

ある海上での沿岸国は、外国船舶がその沿岸国の法令に違反したと信ずるに足りる十分な理由がある場合に、その船舶を捕えるために、領海や接続水域から公海へと追跡を継続することができる(国連海洋法条約111条、公海条約23条)。これを「継続追跡権」という。接続水域から追跡することについては、以前はこれを認めるか否かについて争いがあったが、公海に関する条約は、この場合にも追跡権を認めた。

○2001年12月22日に、奄美大島沖約240キロの東シナ海で、日本の排他的経済水域内で、国籍不明の不審船(後に北朝鮮の工作船と判明)を海上保安庁が発見し、漁業法違反容疑で停船を命令したが逃走したため、検査忌避罪(漁業法141条2号)違反の容疑で威嚇射撃を実施して強行接舷を試みた。しかし、不審船は一旦は停船したものの再逃走を開始し、巡視船に対して自動小銃、機関銃、携帯対戦車ロケット砲で攻撃し、日中中間線(日本が事実上、中国の排他的経済水域とみなす海域線)を越えたところで、巡視船「いなさ」の正当防衛射撃が行われ、奄美大島の西北西約390キロの海域で爆発・自沈した。この際の追跡行為も、この「継続追跡権」の行使になる。

○追跡の開始
追跡は、外国船舶が沿岸国の法令に違反したと信ずるに足りる十分な理由のある場合に行なうことができる。その追跡は、外国船舶が追跡国の内水・領海または接続水域にあるときに開始されなければならない。

外国船舶が「接続水域」にあるときの追跡は、その接続水域の設定によって保護しようとする権利の侵害があった場合に限られる。例えば、関税のための接続水域が設けられているときは、関税に関する法令違反が行なわれた場合に限って追跡権が発生する。

今回のケースでは、国連海洋法条約で、日本が領海の基線から200カイリの排他的経済水域(EEZ=Exclusive Economic Zone)において、以下@ないしCの主権的権利が認められていて、これには水産業や鉱業等の経済的権利に関する管轄権も含まれる。したがって領海外であってもそれらを保護する国内法令を制定し、違反外国船舶を取り締ることが出来る。韓国漁船はこの国内法を侵害したことになり、追跡権が発生する。
@天然資源の開発等に係る主権的権利
A人工島、設備・構築物の設置・利用に係る管轄権
B海洋の科学的調査に係る管轄権
C海洋環境の保護及び保全に係る管轄権

○法令違反の疑いのある外国船舶を発見したときは、まず停船命令を発し、臨検するのが順序である。もし、停船命令や臨検に応じずに逃走を始めた場合は、追跡を開始することになる。

○追跡の継続と終止
追跡は、その開始後は、中断されないかぎり、領海や接続水域外においても引き続き行なうことができる。領海外でも継続できるということは、公海で継続することができることを意味し、公海であるかぎり、どこまででも継続することができる。ただし、中断されたときは、終了する。天候や燃料その他の理由で追跡が中断したときは、その後に公海でその船舶を発見しても、もはや追跡はできない。

追跡権は、相手船舶が、その旗国または第三国の領海に入ってしまうと同時に消滅し、追跡を終止しなければならない。領海の外に待機し、その船舶が領海外に出て来た場合でも、追跡を再開することはできないし、後に公海上で発見した場合でも、もはや追跡することはできない。

○追跡権を行使する船舶等
追跡権は、軍艦・軍用航空機・政府の公務に使用されている船舶または航空機であって、特にその権限を与えられたものだけが行使できる。今回の対馬海上保安部の巡視艇はこれに該当する。

追跡は航空機でも可能であるが、追跡の開始・継続・終止は、船舶による場合と同じである。停船命令を発した航空機は、呼び寄せた沿岸国の船舶または航空機が到着して追跡を引き継ぐまで、その船舶を自ら追跡しなければならない。

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○排他的経済水域(EEZ=Exclusive Economic Zone)とは
国連海洋法条約によって設定される経済的な主権がおよぶ水域のことで、領海を超えて、これに接する区域で、基線から200海里までの範囲をいう(同条約55、57条)。沿岸国は同条約に基づいた国内法を制定することで、自国の沿岸から200海里 (約370km)の範囲内の水産資源および鉱物資源などの探査と開発に関する権利を持ち違反した外国船舶を取締ることが出来る代わりに、資源の管理や海洋汚染防止の義務を負う。

○日本で、この排他的経済水域設定の根拠となっている国内法としては、下記のものがある。
@排他的経済水域及び大陸棚に関する法律
国連海洋法条約に基づき、排他的経済水域(200海里。相対国との間では中間線又は合意線)を設定するとともに、大陸棚(原則として排他的経済水域の範囲)について規定する。

AEEZ漁業法
(排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律)(漁業主権法)
国連海洋法条約に基づく排他的経済水域において、漁業等に関する主権的権利を行使することとし、外国人は、農林水産大臣の許可を受けなければ漁業等を行ってはならないこと等としている。

B海洋生物資源の保存及び管理に関する法律
国連海洋法条約上の沿岸国が行うべき措置の一環として、我が国周辺海域を対象として、魚種別の漁獲可能量(TAC)を定めるとともに、これに基づきTACを管理するために必要な措置等を講じている。

C水産資源保護法(一部改正法)
国連海洋法条約上の沿岸国が行うべき措置の一環として、水産種苗の輸入について、輸出国に特定の病原体に汚染されていないことの証明を求めることとしている。 

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○漁業法の検査忌避罪と担保金
漁業法はEEZや領海内で海保の立ち入り検査を拒否した場合の罰則として、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金と定めている(同法141条2号)。

担保金はEEZ内における外国船の操業について定めたEEZ漁業法(排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律)に規定があり、支払った場合は身柄拘束や証拠品の押収を免れることができる。今後の海保の取り調べに応じなければ没収される。 

検査忌避や無許可操業で拿捕された外国船長の大半は、この担保金を支払って釈放されるのが実務の現状である。

○EEZ漁業法とは
正式名称は「排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律」といい、「漁業主権法」ともいう。(平成八年六月十四日法律第七十六号)

この法律は、海洋法に関する国際連合条約に定める権利を的確に行使することにより海洋生物資源の適切な保存及び管理を図るため、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等について必要な措置を定めるもの(第1条)。 

○担保金等の提供による釈放
EEZ漁業法の規定に違反した罪その他の政令で定める罪に当たる事件に関して拿捕が行われた場合には、取締官は、拿捕に係る船舶の船長及び違反者に対し、@担保金又はその提供を保証する書面が主務大臣に対して提供されたときは、遅滞なく、違反者は釈放され、及び船舶その他の押収物は返還されること、A提供すべき担保金の額、を告知する。この担保金額は、事件の種別及び態様その他の情状に応じ、主務大臣の定める基準に従って、取締官が決定する。 

この告知した額の担保金(または保証書面)が主務大臣に提供されたときは、遅滞なく、その旨を取締官又は検察官に通知され、取締官は、その通知を受けたときは、遅滞なく、違反者を釈放し、及び押収物を返還する。

この担保金は、主務大臣が保管し、事件に関する手続において、違反者がその求められた期日及び場所に出頭せず、又は返還された押収物で提出を求められたものがその求められた期日及び場所に提出されなかったときは、一月後に国庫に帰属する。

今回の事件では、海上保安庁から、船長を長崎地検厳原支部に書類送検するであろうが、船長は出頭しないと推測される。その場合は、担保金が国庫に没収されることになる。

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○海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)
平成8年7月12日条約第6号 平成8年7月20日施行
(平成8年7月20日外務省告示309号)

第55条  排他的経済水域の特別の法制度
排他的経済水域とは、領海に接続する水域であって、この部に定める特別の法制度によるものをいう。この法制度の下において、沿岸国の権利及び管轄権並びにその他の国の権利及び自由は、この条約の関連する規定によって規律される。

第56条  排他的経済水域における沿岸国の権利、管轄権及び義務
1 沿岸国は、排他的経済水域において、次のものを有する。
a 海底の上部水域並びに海底及びその下の天然資源(生物資源であるか非生物資源であるかを問わない。)の探査、開発、保存及び管理のための主権的権利並びに排他的経済水域における経済的な目的で行われる探査及び開発のためのその他の活動(海水、海流及び風からのエネルギーの生産等)に関する主権的権
b この条約の関連する規定に基づく次の事項に関する管轄権
c 人工島、施設及び構築物の設置及び利用
d 海洋の科学的調査
e 海洋環境の保護及び保全
f この条約に定めるその他の権利及び義務
2 沿岸国は、排他的経済水域においてこの条約により自国の権利を行使し及び自国の義務を履行するに当たり、他の国の権利及び義務に妥当な考慮を払うものとし、また、この条約と両立するように行動する。
3 この条に定める海底及びその下についての権利は、第6部の規定により行使する。

第57条  排他的経済水域の幅
排他的経済水域は、領海の幅を測定するための基線から200海里を超えて拡張してはならない。

第111条  追跡権
1 沿岸国の権限のある当局は、外国船舶が自国の法令に違反したと信ずるに足りる十分な理由があるときは、当該外国船舶の追跡を行うことができる。この追跡は、外国船舶又はそのボートが追跡国の内水、群島水域、領海又は接続水域にある時に開始しなければならず、また、中断されない限り、領海又は接続水域の外において引き続き行うことができる。領海又は接続水域にある外国船舶が停船命令を受ける時に、その命令を発する船舶も同様に領海又は接続水域にあることは必要でない。外国船舶が第33条に定める接続水域にあるときは、追跡は、当該接続水域の設定によって保護しようとする権利の侵害があった場合に限り、行うことができる。
2 追跡権については、排他的経済水域又は大陸棚(大陸棚上の施設の周囲の安全水域を含む。)において、この条約に従いその排他的経済水域又は大陸棚(当該安全水域を含む。)に適用される沿岸国の法令の違反がある場合に準用する。
3 追跡権は、被追跡船舶がその自国又は第三国の領海に入ると同時に消滅する。
4 追跡は、被追跡船舶又はそのボート若しくは被追跡船舶を母船としてこれと一団となって作業する舟艇が領海又は、場合により、接続水域、排他的経済水域若しくは大陸棚の上部にあることを追跡船舶がその場における実行可能な算段により確認しない限り、開始されたものとされない。追跡は、視覚的又は聴覚的停船信号を外国船舶が規定し又は聞くことができる距離から発した後にのみ、開始することができる。
5 追跡権は、軍艦、軍用航空機その他政府の公務に使用されていることが明らかに表示されておりかつ識別されることのできる船舶又は航空機でそのための権限を与えられているものによってのみ行使することができる。
6 追跡が航空機によって行われる場合には、
a 1から4までの規定を準用する。
b 停船命令を発した航空機は、船舶を自ら拿捕することができる場合を除くほか、自己が呼び寄せた沿岸国の船舶又は他の航空機が到着して追跡を引き継ぐまで、当該船舶を自ら積極的に追跡しなければならない。当該船舶が停船命令を受け、かつ、当該航空機又は追跡を中断することなく引き続き行う他の航空機若しくは船舶によって追跡されたのでない限り、当該航空機が当該船舶を違反を犯したもの又は違反の疑いがあるものとして発見しただけでは、領海の外における拿捕を正当とするために十分ではない。
7 いずれかの国の管理権の及ぶ範囲内で拿捕され、かつ権限のある当局の審理を受けるためその国の港に護送される船舶は、事情により護送の途中において排他的経済水域又は公海の一部を航行することが必要である場合に、その航行のみを理由として釈放を要求することができない。
8 追跡権の行使が正当とされない状況の下に領海の外において船舶が停止され又は拿捕されたときは、その船舶は、これにより被った損失又は損害に対する補償を受ける。

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○公海に関する条約(公海条約)
昭和37年9月30日効力発生 昭和43年4月26日国会承認
昭和43年6月21日公布及び告示

第23条
1 沿岸国の権限のある当局は、外国船舶が自国の法令に違反したと信ずるに足りる十分な理由があるときは、その外国船舶の追跡を行なうことができる。この追跡は、外国船舶又はそのボートが追跡国の内水、領海又は接続水域にある時に開始しなければならず、また、中断されない限り、領海又は接続水域の外において引き続き行なうことができる。領海又は接続水域にある外国船舶が停船命令を受ける時に、その命令を発する船舶も同様に領海又は接続水域にあることは、必要でない。外国船舶が領海及び接続水域に関する条約第24条に定める接続水域にあるときは、追跡は、当該接続水域の設定によつて保護しようとする権利の侵害があつた場合に限り、行なうことができる。
2 追跡権は、被追跡船舶がその旗国又は第三国の領海に入ると同時に消滅する。
3 追跡は、被追跡船舶又はそのボート若しくは被追跡船舶を母船としてこれと一団となつて作業する舟艇が領海又は場合により接続水域にあることを追跡船舶がその場における実行可能な手段により確認しない限り、開始されたものとみなされない。追跡は、視覚的又は聴覚的停止信号を当該外国船舶が視認し又は聞くことができる距離から発した後にのみ、開始することができる。
4 追跡権は、軍艦若しくは軍用航空機又は政府の公務に使用されているその他の船舶若しくは航空機で特にこのための権限を与えられたもののみが行使することができる。
5 追跡が航空機によつて行なわれる場合には、
(a) 1から3までの規定を準用する。
(b) 停船命令を発した航空機は、船舶を自ら拿捕することができる場合を除き、自己が呼び寄せた沿岸国の船舶又は航空機が到着して追跡を引き継ぐまで、その船舶を自ら積極的に迫跡しなければならない。当該船舶が停船命令を受け、かつ、当該航空機又は追跡を中断することなく引き続き行なう他の航空機若しくは船舶によつて追跡されたのでない限り、当該航空機がその船舶を違反を犯したもの又は違反の疑いがあるものとして発見しただけでは、公海における拿捕を正当とするために十分ではない。
6 いずれかの国の管轄区域内で拿捕され、かつ、権限のある当局の審理を受けるためその国の港に護送される船舶は、事情により護送の途中において公海の一部を航行することが必要である場合に、そのような公海の航行のみを理由として釈放を要求することができない。
7 追跡権の行使が正当とされない状況の下に公海において船舶が停止され、又は拿捕されたときは、その船舶は、これにより被つた損失又は損害に対する補償を受けるものとする。

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漁業法(昭和二十四年十二月十五日法律第二百六十七号)


第百四十一条  
次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一  第二十九条の規定に違反して漁業権を貸付けの目的とした者
二  第七十四条第三項の規定による漁業監督官又は漁業監督吏員の検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又はその質問に対し答弁をせず、若しくは虚偽の陳述をした者
三  第百二十四条第四項の規定に違反した者
四  第百三十四条第一項の規定による報告を怠り、若しくは虚偽の報告をし、又は当該官吏吏員の検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
五  第百三十四条第二項の規定による当該官吏吏員の測量、検査、移転又は除去を拒み、妨げ、又は忌避した者

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○排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律
(漁業主権法)(EEZ漁業法)(平成八年六月十四日法律第七十六号)


(担保金等の提供による釈放等)
第二十四条  この法律の規定に違反した罪その他の政令で定める罪に当たる事(以下「事件」という。)に関して拿捕(船舶を押収し、又は船長その他の乗組員を逮捕することをいう。以下同じ。)が行われた場合には、司法警察員である者であって政令で定めるもの(以下「取締官」という。)は、当該拿捕に係る船舶の船長(船長に代わってその職務を行う者を含む。)及び違反者に対し、遅滞なく、次に掲げる事項を告知しなければならない。ただし、事件が政令で定める外国人が行う漁業、水産動植物の採捕又は探査に係るものであるときは、この限りでない。
一  担保金又はその提供を保証する書面が次条第一項の政令で定めるところにより主務大臣に対して提供されたときは、遅滞なく、違反者は釈放され、及び船舶その他の押収物(以下「押収物」という。)は返還されること。
二  提供すべき担保金の額
2  前項第二号の担保金の額は、事件の種別及び態様その他の情状に応じ、政令で定めるところにより、主務大臣の定める基準に従って、取締官が決定するものとする。

第二十五条  前条第一項の規定により告知した額の担保金又はその提供を保証する書面が政令で定めるところにより主務大臣に対して提供されたときは、主務大臣は、遅滞なく、その旨を取締官又は検察官に通知するものとする。
2  取締官は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、違反者を釈放し、及び押収物を返還しなければならない。
3  検察官は、第一項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、違反者の釈放及び押収物の返還に関し、必要な措置を講じなければならない。

第二十六条  担保金は、主務大臣が保管する。
2  担保金は、事件に関する手続において、違反者がその求められた期日及び場所に出頭せず、又は返還された押収物で提出を求められたものがその求められた期日及び場所に提出されなかったときは、当該期日の翌日から起算して一月を経過した日に、国庫に帰属する。ただし、当該期日の翌日から起算して一月を経過する日までに、当該期日の翌日から起算して三月を経過する日以前の特定の日に出頭し又は当該押収物を提出する旨の申出があったときは、この限りでない。
3  前項ただし書の場合において、当該申出に係る特定の日に違反者が出頭せず、又は当該押収物が提出されなかったときは、担保金は、その日の翌日に、国庫に帰属する。
4  担保金は、事件に関する手続が終結した場合等その保管を必要としない事由が生じた場合には、返還する。
                                            弁護士 三木秀夫

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