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ニュース六法目次
ライブドア社長無所属で出馬へ(2005年08月19日)  インターネットと公選
○堀江ライブドア社長無所属で広島6区出馬へ
自民党は19日、衆院選の公認候補調整をめぐって大詰めの調整を進め、夜にも4次公認を発表する。出馬問題をめぐって小泉純一郎首相(党総裁)とライブドア社長の堀江貴文氏が同日昼、党本部で会談。同氏は無所属で、郵政民営化法案に反対し、国民新党を結成した亀井静香氏と同じ広島6区から出馬することが決まった。午後には首相が記者会見してマニフェスト(政権公約)も発表。各党の候補者と政策がほぼ出そろい、30日公示、9月11日投票に向け、事実上の選挙戦が本格化する。(日経新聞2005.08.19)

○ネット選挙運動すれば公選法に抵触
ライブドアの堀江貴文社長(32)が19日、国民新党の亀井静香元自民党政調会長が出馬する広島6区から無所属で立候補することを表明した。IT業界から政界に殴り込みをかけたホリエモン。インターネットの"申し子"的な存在だけに、今後の選挙運動に注目が集まりそうだが、得意のネットを駆使した選挙活動はかなりの制限を受ける。
公選法上、ネット上での自由な選挙活動は認められていない。投票を呼びかける行為として可能なのは「一定量の選挙用ビラ・はがきの配布やポスター掲示」(総務省選挙課)といった、"アナログ"な行為のみ。当然、堀江氏が日々の生活をつづるブログ「社長日記」でも投票依頼はできない。候補者はもちろん、支持者や一般の個人がネット上で投票を呼びかけると、悪質な場合は摘発されることもある。
このため、堀江氏は「公選法に抵触する恐れのある行為を選挙期間を通じ、一切控える」と"脱デジタル"を発表。公示後はブログの更新を中止する。また、ライブドアのトップページのニュース欄で、政治や選挙関連の記事を掲載しないことや、自社の報道部門が特定の政党や候補を報じないとしている。得意技を封じられたホリエモンがどんな選挙戦を展開するか注目されそうだ。
今回は無所属での立候補を表明しており、政党候補よりも活動が制約される。初の選挙戦は"想定外"の「どぶ板選挙」となるのだろうか。(スポニチ2005.8.20) 

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○インターネットの旗手が、今度は政界に打って出ることとなった。お得意のインターネットで選挙活動か、と思われるところだが、実は現在の公職選挙法ではインターネットでの選挙活動は禁止である。このため、いくら超人的IT人間であっても、こと選挙になれば、選挙事務所開設、選挙カーでの手振りと連呼、選挙運動用はがき、新聞広告、ビラ配布、選挙公報、ポスター、街頭演説、個人演説会などの、およそ「アナログ」の典型的な選挙活動をすることとなろう。

○候補者はもちろん、一般のインターネットユーザーも気をつけないといけないのが「公職選挙法」違反である。政治家が政策などを掲げるホームページはかなり多くなったが、実は選挙が近づくと一斉に更新を止める。これは、公職選挙法のためである。

すなわち、総務省が2002年にまとめた「IT時代の選挙運動に関する研究会報告書」では、HPによる選挙運動(特定の候補者に投票させる運動)は、選挙運動期間(公示後から投票まで)は公職選挙法142条の「法定外の文書図画の頒布」に当たり禁止対象であることを明確にした。最近はやりの「ブログ」についても、HPと同じ解釈になるとの見方も総務省から示されている。窮屈な話である。

○今のようなIT時代で、しかも、世界で一番進んだIT国家にするという国家戦略を立てている国が、こと選挙になれば、昔ながらの運動形態にしがみついているのは、どう考えてもおかいしい感じがする。今回は、このインターネット選挙運動と公職選挙法を整理してみた。

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○公職選挙法で定められた「選挙運動」とは
まず区別しないといけないのは、「選挙運動」と「政治活動」の違いである。政治上の目的をもって行われるいっさいの活動が「政治活動」であり、「選挙運動」も政治活動の一部であるが、公職選挙法では、「特定の選挙に、特定の候補者の当選をはかること又は当選させないことを目的に投票行為を勧めること」と定義している。

○選挙運動の期間
告示(公示)日の立候補届出後から投票日の前日までに限り行うことができる。立候補届出前にする選挙運動は「事前運動」として禁止されている。 

○主な「選挙運動」(許される行為)
公職選挙法で認める候補者が行う選挙運動は、主なものは次のとおりとされている(選挙の種類によって、その方法や数量、規格などが異なる)。
・ 選挙事務所の設置
・ 選挙運動用自動車の使用
・ ビラの頒布(衆議院議員及び参議院議員選挙に限る)
・ ポスターの掲示
・ 選挙運動用葉書の頒布
・ 新聞広告
・ 政見放送(衆議院議員、参議院議員及び知事選挙に限る)
・ 街頭演説
・ 個人演説会
・ 選挙公報(衆参議院議員及び知事選挙以外は、条例が制定されている場合のみ)

○禁止される「選挙運動」とは
他方で公職選挙法では、次のような選挙運動を禁止している。
・ 買収
・ 戸別訪問
・ あいさつを目的とする有料広告
・ 飲食物の提供
・ 署名運動
・ 気勢を張る行為

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○インターネットでの治活動と「選挙運動」 選挙運動に該当しない純粋な政治活動としては、憲法上、当然にインターネットのホームページを利用することは自由にできる。 

しかし、選挙運動中のホームページ利用については、公職選挙法では極めて曖昧である。しかし、今のところの解釈上は、これを選挙運動に利用するのは「公職選挙法第142条・第143条の選挙運動用文書図画の規制対象にホームページを含まれるため違反となりうる」とされている。このため、選挙運動期間中に新たにホームページを開設したり、書き換えしたりすることは、新たな「文書図画の頒布」とみなされる余地があるため、公職選挙法違反になることがある。実際に選挙管理委員会のホームページでは、注意を喚起しているところも多い。

○例えば函館市選挙管理員会のホームページでは次のように記載されている。

「公職選挙法では、「文書図画による選挙運動」は法律で認められた手段(選挙用ポスターや葉書など)以外は一切使用できないと包括的に規制されています。パソコンのディスプレーに表示される文字等は、公職選挙法に規定する「文書または図画」に該当すると解されているため、選挙運動に使用することはできないことになっています。」

「インターネットを使用して選挙運動を行うことは、上記のとおり禁止されますが、選挙運動にわたらない純粋な政治活動として使用することは基本的に規制されませんので、立候補予定者や政党などがホームページを開設し、選挙運動性のない政見などをそのホームページに載せることは可能です。ただ、たとえそのような純粋な政治活動用の文書図画であっても、現職の政治家や立候補予定者および後援団体の政治活動のために「掲示」するものについては、公職選挙法の規制を受けます。※この「掲示」とは、画面に表示された内容を一定の場所に掲げて不特定の人に見えるようにすること等をいいます。」

「なお、純粋な政治活動として使用するホームページであっても、選挙運動期間中に開設または書き換えすることは、選挙運動の禁止を免れる目的と認められる場合には公職選挙法第146条違反となります。」

「また、そのように認められない場合であっても、政党その他の政治活動を行う団体が開設または書き換えをするホームページに、その選挙区の特定候補者の氏名または氏名類推事項が記載されている場合には公職選挙法第201条の13違反となります。立候補に向けての決意などは、選挙運動性のある文言とされ違反となります。」

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○インターネットが普及し始めたのはそれほど古い話ではないため、当然に昔からある公職選挙法はその存在を念頭に置かずに作られ、いまだにインターネットと選挙運動の関係の条項は設けられていない。

このため、インターネットが普及した1996年の衆議院総選挙の際に、その利用が公職選挙法に触れるのかどうかに疑問が多くあったことから、かなり混乱が生じ、各選挙管理委員会の解釈もまちまちであった。このため、この点を明確にしようとした新党さきがけが、1996年に自治省に質問を行い、その回答がなされている(平成8年10月28日自治省行政局選挙部選挙課回答)。これが、現時点での行政解釈の指針となっていると思われる。

その際の質問内容と回答は新党さきがけのホームページに掲載されていたようであるが、今はそのホームページが残っていないのか、探しても見当たらない。(しかし、江田五月参議院議員のホームページや、茨城県議会の井手よしひろ議員のホームページに掲載されているので、参照されたい。)

○ここでの質問の第1は、公職選挙法の第142条・第143条によるホームページ規制の合憲性についてであった。インターネットのホームページは極めて低廉な費用で開設・維持できる点で、他の選挙運動手段(ビラ・ポスター等)と格段に異なっており、公職選挙法の第142条・第143条等で選挙運動用の文書図画の頒布・掲示を制限しているのは、金のかからない選挙の実現のため必要やむを得ないものであるとしてその制限が合理性ありとされるからであることからして、仮にインターネットのホームページを同法142条・143条違反と解釈運用した場合、当該運用は憲法違反となるのではというものであった。

しかし、これに対する自治省の回答は、昭和39年11月18日最高裁判所判決等で文書図画の規制の合憲性は認められていると述べただけで、規制目的からの解釈には触れられなかった。

○第2(a)の質問としては「文書図画」に関する構成要件についてであった。

第142条・第143条の「文書図画」に関して、インターネットのホームページは電子的記憶としてサーバー上に保持されるものであり、通常の「文書図画」とは常識的には異なっており、果たして同法の「文書図画」に当たるのか否か、当たるとすればその理由は何か、また、同法143条2項で規制している「アドバルーン、ネオン・サイン又は電光による表示、スライドその他の方法による映写等の類」に当たるのか否か、当たるとすればその理由は何かを質問している。

自治省の回答は、公職選挙法の「文書図画」とは、文字若しくはこれに代わるべき符号又は象形を用いて物体の上に多少永続的に記載された意識の表示をいい、スライド、映画、ネオンサイン等もすべて含まれ、パソコンのディスプレーに表示された文字等は、公職選挙法の「文書図画」に当たるとした。

○第2(b)の質問としては「頒布・掲示」に関する構成要件についてであった。
第142条・第143条が規制しているのは、選挙運動用の文書図画の「頒布・掲示」であるところ、インターネットのホームページは、通常のビラ、ポスターの場合と異なり、相手方からアクセスして利用するものであり、候補者などの側が積極的に「頒布」又は「掲示」しているものではないが、これは「頒布・掲示」に当たるか否か、当たるとすればその理由は何か、を質問している。

自治省の回答は、「頒布」とは、不特定又は多数人に文書図画を配布することをいい、従来より、文書図画を置き、自由に持ち帰らせることを期待するような相手方の行為を伴う方法による場合も「頒布」に当たると解すること、また、「掲示」とは、文書図画を一定の場所に掲げ、人に見えるようにすることのすべてをいい、したがって、パソコンのディスプレーに表示された文字等を一定の場所に掲げ、人に見えるようにすることは「掲示」に、不特定又は多数の方の利用を期待してインターネットのホームページを開設することは「頒布」にあたると解するとした。

○第3の質問は、政党等の政治活動規制に関してであった。
インターネットのホームページは公職選挙法201条の5で規制している政治活動手段に当たらないと思われるがどうか、また、仮にインターネットのホームページは選挙運動に用いれば公職選挙法142条・143条違反となるが、それ以外の政治活動として用いれば、政党等が用いても、選挙期間中でも違反ではない(公職選挙法201条5の規制の範囲外)となった場合には、「選挙運動」と「政治活動」の区分けが極めて重要となり、「選挙運動」と「政治活動」の間の線引きはどのようになっているか、ということであった。

自治省の回答は、公職選挙法の「文書図画」の前述の解釈であるとした上で、文書図画として同法第201条の13の規制を受け、更に、立札及び看板の類としての態様において用いられれば、同法第201条の5の規制を受けるとした。
また、政治活動とは、一般的抽象的には、政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、若しくはこれに反対し、又は公職の候補者を推薦し、支持し、若しくはこれに反対することを目的として行う直接間接の一切の行為をさし、公職選挙法にいう「政治活動」とは、上述の一般的抽象的意味での政治活動のうちから選挙運動にわたる行為を除いた行為であると解するとし、したがって、選挙運動にわたる政治活動は、公職選挙法においては、政治活動としての規制ではなく、選挙運動としての規制を受けることとなるとした。

○第4の質問は、以下の選挙期間中の具体的事例を挙げて、それぞれ公職選挙法違反となるかどうかを問うたものであった。
1.候補者のホームページに以下の情報を掲載した場合
a)氏名、b)選挙区または活動中心地域、c)学歴・職歴などのプロフィール、d)立候補したことを示す記述、e)候補者自身の公約、f)所属政党の公約、
2.政党のホームページに以下の情報を掲載した場合
a)公認候補者等について、
(1)氏名、(2)選挙区、(3)学歴・職歴などのプロフィール、(4)政策主張、コメント、(5)前国会議員が候補者となる場合、議員在職時から掲載されていたその者のプロフィール・政策主張など
b)党の公約
3.その他
a)掲示板に貼るポスターや新聞広告、政見放送時の掲示等にURLを記載すること、b)海外のサーバーに、公職選挙法に抵触するホームページの素材をおくこと、c)電子メールによる投票依頼、d)各自治体やボランティアのホームページに、首長の写真を掲載すること、e)通信衛星を利用して演説会を複数の箇所に中継すること、f)インターネットを通じて演説会を中継すること、g)ホームページにおいて、人気投票の結果を公表すること(「世論調査」と「人気投票」の区分けは何か)、h)インターネット上の情報開示行為は、公選法142条1項の「散布」に該当するか、i)インターネット上の情報開示行為は、公選法151条の5の「放送」に該当するか。

これに対する自治省の回答は、具体的事案については時期、態様により判断すべきであり回答は一般論としてする旨を述べながらのものであったが、興味深いので以下に全文を引用した。

「2については、明確な投票依頼の文言がある場合はもちろん、選挙に立候補する旨、選挙区、選挙の公約等特定の選挙と結びつく記述をした場合においては、選挙運動と認定されるおそれが強いものと考えます。また、選挙と結びつく記述がない場合においても、選挙運動期間中に新たに公職の候補者の氏名を表示する場合には、公職選挙法第146条又は第201条の13の規制を受けます。」

「また、3については、
a 一般的には、直ちに選挙運動に当たるものとは思われません。
b 刑法の一般原則に係る問題ですが、行為地又は結果発生地の一部が国内であれば、国内法の罰則が適用されることとされております。
c 投票依頼であれば、選挙運動に当たります。
d 一般的には、直ちに選挙運動に当たるものとは思われません。
e・f 演説会の内容が不明ですので、お答えは控えさせていただきますが、上記1、2についての回答によりご理解下さい。
g 公職選挙法第138条の3に違反するおそれがあります。 「人気投票」とは、通常、葉書、紙片等に調査事項を記載する方法によるものをさしますが、必ずしもその方法のみに限らず、その形式が投票の方法と結果的に見て同じである場合は、すべてこれに当たります。なお、世論調査という用語は、公職選挙法上の用語ではないので、当省としては、その用語を解釈する立場にございませんが、調査員が被調査員に面接して調査をした場合は、公職選挙法上の「人気投票」には当たらないと解しております。
h 「散布」には当たりません。
i 一般的には、「放送」には当たらないと考えています。」

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○自治省の上記回答は、理論的な検討をどこまでして結論付けられたのか、疑問点が多い感じがある。理由を述べることなく、結論を押し付けているとしか感じられない。

自治省の解釈だと、ウェブ文書やメール文書も公選法が配布を禁じる「文書図画」に当たるという。しかし、メールのように一方的に送られる場合と、ホームページとは一緒に論じることに問題があろう。ホームページの場合は、見る側が必要に応じてアクセスしないことには読めないのである。「文書図画」を規制する根拠は、最高裁判所が合憲の理由とした金のかからない選挙の実現にあり、物量作戦・金権選挙のできる陣営だけが有利にならないようにするものである。しかし、インターネットでのホームページでの意見発表は全く金権政治とは違い、パソコンの使用環境さえあれば、老若男女、どんな一介の市民であろうが、情報発信できるのである。まさに草の根民主主義の最たる手法といえる。この点では郵便やビラとは全く違うホームページを、これと同列に論じる理由はない。

しかし、公選法違反は刑罰つきであり、当選無効にもつながる話なので、候補者が慎重にならざるを得ないのもいたし方ない。長いものには巻かれろ、である。インターネットの活用において濫用の危険性を唱える者がいるのは分かるが、単に濫用の可能性があるからといって、その有用性から考えて、単純に規制して良いとはいえない。少なくとも、表現の自由という民主主義にとって最も重要な基本的人権を制約するには、必要最小限度でなければならないことは言うまでもない。弊害が生じる場面においての最小限の規制をする必要はあろうが、そろそろ、解禁の方向に足を踏み出すべきではないか。

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○マニフェストのインターネット掲載について
今回の総選挙に向けて5党のマニフェスト(政権公約)が出そろう。総選挙で各党がマニフェストを掲げて戦うのは、2003年の前回に続いて2回目となる。

マニフェストは、かつてはこれも公職選挙法で制限されていた。以前は、マニフェストを書いた文書を選挙公示前に配布するのは事前運動となり禁止対象であった。また、選挙期間中の配布も、公職選挙法で許される「文書図画」でないとして、やはり禁止されていた。この問題は、さすがに平成15年の改正で、公職選挙法142条の2が設けられ、一部解禁となった。しかし、かなり制限が多くある。衆参両院選挙では配布が可能であるが、補欠選挙や地方選挙は対象外で配布できない。冊子は2種類まで認められ、総務相への届け出が必要となる。このうち一種類はマニフェストの要旨を記したものとなる。政党の代表者を除き、候補者の氏名、写真などの掲載は禁止される。有料販売は認められている。冊子のページ数と部数の制限はないが、配布場所は公選法で規定する法定ビラと同じように、街頭演説会場や選挙事務所内などに限定された。新聞折り込みや戸別配布も禁止された。

問題はインターネットのホームページでの公表については、マニフェスト自体の掲載は認められていない。これでは、選挙において、誰に投票しようかを考える際の判断材料の入手に際して、かなり有力な方法となるであろうインターネットサイトからという方法が禁止されているわけである。このようなことで本当に真の民主主義が育つのであろうか。

マニフェストの積極的な導入を求める「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)は2004年(平成16年)5月28日に「政権公約(マニフェスト)選挙の一層の推進のためのさらなる公職選挙法改正に関する緊急提言」を公表しているが、そこでは、インターネットでのマニフェストの提供を解禁すべきであるなどの主張しているが、まことにもっともな主張であろう。

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公職選挙法(昭和二十五年四月十五日法律第百号)

(文書図画の頒布)
第百四十二条
衆議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号に規定する通常葉書及び第一号から第二号までに規定するビラのほかは、頒布することができない。この場合において、ビラについては、散布することができない。
一  衆議院(小選挙区選出)議員の選挙にあつては、候補者一人について、通常葉書 三万五千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 七万枚
一の二  参議院(比例代表選出)議員の選挙にあつては、公職の候補者たる参議院名簿登載者一人について、通常葉書 十五万枚、中央選挙管理会に届け出た二種類以内のビラ 二十五万枚
二  参議院(選挙区選出)議員の選挙にあつては、候補者一人について、当該都道府県の区域内の衆議院(小選挙区選出)議員の選挙区の数が一である場合には、通常葉書 三万五千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 十万枚、当該都道府県の区域内の衆議院(小選挙区選出)議員の選挙区の数が一を超える場合には、その一を増すごとに、通常葉書 二千五百枚を三万五千枚に加えた数、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 一万五千枚を十万枚に加えた数(その数が三十万枚を超える場合には、三十万枚)
三  都道府県知事の選挙にあつては、・・・(以下略)

2  前項の規定にかかわらず、衆議院(小選挙区選出)議員の選挙においては、候補者届出政党は、その届け出た候補者に係る選挙区を包括する都道府県ごとに、二万枚に当該都道府県における当該候補者届出政党の届出候補者の数を乗じて得た数以内の通常葉書及び四万枚に当該都道府県における当該候補者届出政党の届出候補者の数を乗じて得た数以内のビラを、選挙運動のために頒布(散布を除く。)することができる。ただし、ビラについては、その届け出た候補者に係る選挙区ごとに四万枚以内で頒布するほかは、頒布することができない。

3  衆議院(比例代表選出)議員の選挙においては、衆議院名簿届出政党等は、その届け出た衆議院名簿に係る選挙区ごとに、中央選挙管理会に届け出た二種類以内のビラを、選挙運動のために頒布(散布を除く。)することができる。

4  衆議院(比例代表選出)議員の選挙においては、選挙運動のために使用する文書図画は、前項の規定により衆議院名簿届出政党等が頒布することができるビラのほかは、頒布することができない。

5  第一項の通常葉書は無料とし、第二項の通常葉書は有料とし、政令で定めるところにより、日本郵政公社において選挙用である旨の表示をしたものでなければならない。

6  第一項第一号から第二号まで、第二項及び第三項のビラは、新聞折込みその他政令で定める方法によらなければ、頒布することができない。

7  第一項第一号から第二号まで及び第二項のビラは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(参議院比例代表選出議員の選挙については、中央選挙管理会。以下この項において同じ。)の定めるところにより、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会の交付する証紙をはらなければ頒布することができない。この場合において、第二項のビラについて当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会の交付する証紙は、当該選挙の選挙区ごとに区分しなければならない。

8  第一項第一号から第二号までのビラは長さ二十九・七センチメートル、幅二十一センチメートルを、第二項のビラは長さ四十二センチメートル、幅二十九・七センチメートルを、超えてはならない。

9  第一項第一号から第二号まで、第二項及び第三項のビラには、その表面に頒布責任者及び印刷者の氏名(法人にあつては名称)及び住所を記載しなければならない。この場合において、第一項第一号の二のビラにあつては当該参議院名簿登載者に係る参議院名簿届出政党等の名称及び同号のビラである旨を表示する記号を、第二項のビラにあつては当該候補者届出政党の名称を、第三項のビラにあつては当該衆議院名簿届出政党等の名称及び同項のビラである旨を表示する記号を、併せて記載しなければならない。

10  衆議院(小選挙区選出)議員又は参議院議員の選挙における公職の候補者は、政令で定めるところにより、政令で定める額の範囲内で、第一項第一号から第二号までの通常葉書及びビラを無料で作成することができる。この場合においては、第百四十一条第七項ただし書の規定を準用する。

11  選挙運動のために使用する回覧板その他の文書図画又は看板(プラカードを含む。以下同じ。)の類を多数の者に回覧させることは、第一項から第四項までの頒布とみなす。ただし、第百四十三条第一項第二号に規定するものを同号に規定する自動車又は船舶に取り付けたままで回覧させること、及び公職の候補者(衆議院比例代表選出議員の選挙における候補者で当該選挙と同時に行われる衆議院小選挙区選出議員の選挙における候補者である者以外のものを除く。)が同項第三号に規定するものを着用したままで回覧することは、この限りでない。

12  衆議院議員の総選挙については、衆議院の解散に関し、公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)の氏名又はこれらの者の氏名が類推されるような事項を表示して、郵便等又は電報により、選挙人にあいさつする行為は、第一項の禁止行為に該当するものとみなす。

(文書図画の掲示)
第百四十三条 
選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号のいずれかに該当するもの(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては、第一号、第二号、第四号及び第五号に該当するものであつて衆議院名簿届出政党等が使用するもの)のほかは、掲示することができない。
一  選挙事務所を表示するために、その場所において使用するポスター、立札、ちようちん及び看板の類
二  第百四十一条の規定により選挙運動のために使用される自動車又は船舶に取り付けて使用するポスター、立札、ちようちん及び看板の類
三  公職の候補者が使用するたすき、胸章及び腕章の類
四  演説会場においてその演説会の開催中使用するポスター、立札、ちようちん及び看板の類
四の二  個人演説会告知用ポスター(衆議院小選挙区選出議員、参議院選挙区選出議員又は都道府県知事の選挙の場合に限る。)
五  前各号に掲げるものを除くほか、選挙運動のために使用するポスター(参議院比例代表選出議員の選挙にあつては、公職の候補者たる参議院名簿登載者が使用するものに限る。)

2  選挙運動のために、アドバルーン、ネオン・サイン又は電光による表示、スライドその他の方法による映写等の類を掲示する行為は、前項の禁止行為に該当するものとみなす。
(3項以下略)

(文書図画の撤去義務)
第百四十三条の二  
前条第一項第一号、第二号又は第四号のポスター、立札、ちようちん及び看板の類を掲示した者は、選挙事務所を廃止したとき、第百四十一条第一項から第三項までの自動車若しくは船舶を主として選挙運動のために使用することをやめたとき、又は演説会が終了したときは、直ちにこれらを撤去しなければならない。

(文書図画の頒布又は掲示につき禁止を免れる行為の制限)
第百四十六条
何人も、選挙運動の期間中は、著述、演芸等の広告その他いかなる名義をもつてするを問わず、第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為として、公職の候補者の氏名若しくはシンボル・マーク、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する文書図画を頒布し又は掲示することができない。
2  前項の規定の適用については、選挙運動の期間中、公職の候補者の氏名、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者の推薦届出者その他選挙運動に従事する者若しくは公職の候補者と同一戸籍内に在る者の氏名を表示した年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状その他これに類似する挨拶状を当該公職の候補者の選挙区(選挙区がないときはその区域)内に頒布し又は掲示する行為は、第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為とみなす。

(選挙運動放送の制限)
第百五十一条の五 
何人も、この法律に規定する場合を除く外、放送設備(広告放送設備、共同聴取用放送設備その他の有線電気通信設備を含む。)を使用して、選挙運動のために放送をし又は放送をさせることができない。

(総選挙における政治活動の規制)
第二百一条の五  
政党その他の政治活動を行う団体は、別段の定めがある場合を除き、その政治活動のうち、政談演説会及び街頭政談演説の開催、ポスターの掲示、立札及び看板の類(政党その他の政治団体の本部又は支部の事務所において掲示するものを除く。以下同じ。)の掲示並びにビラ(これに類する文書図画を含む。以下同じ。)の頒布(これらの掲示又は頒布には、それぞれ、ポスター、立札若しくは看板の類又はビラで、政党その他の政治活動を行う団体のシンボル・マークを表示するものの掲示又は頒布を含む。以下同じ。)並びに宣伝告知(政党その他の政治活動を行う団体の発行する新聞紙、雑誌、書籍及びパンフレットの普及宣伝を含む。以下同じ。)のための自動車、船舶及び拡声機の使用については、衆議院議員の総選挙の期日の公示の日から選挙の当日までの間に限り、これをすることができない。

(連呼行為等の禁止)
第二百一条の十三  
政党その他の政治活動を行う団体は、各選挙につき、その選挙の期日の公示又は告示の日からその選挙の当日までの間に限り、政治活動のため、次の各号に掲げる行為をすることができない。ただし、第一号の連呼行為については、この章の規定による政談演説会の会場及び街頭政談演説の場所においてする場合並びに午前八時から午後八時までの間に限り、この章の規定により政策の普及宣伝及び演説の告知のために使用される自動車の上においてする場合並びに第三号の文書図画の頒布については、この章の規定による政談演説会の会場においてする場合は、この限りでない。
一  連呼行為をすること。
二  いかなる名義をもつてするを問わず、掲示又は頒布する文書図画(新聞紙及び雑誌を除く。)に、当該選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)の特定の候補者の氏名又はその氏名が類推されるような事項を記載すること。
三  国、地方公共団体又は日本郵政公社が所有し又は管理する建物(専ら職員の居住の用に供されているもの及び公営住宅を除く。)において文書図画(新聞紙及び雑誌を除く。)の頒布(郵便等又は新聞折込みの方法による頒布を除く。)をすること。
2  第百四十条の二第二項の規定は、前項ただし書の規定により政治活動のための連呼行為をする政党その他の政治団体について準用する。

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【マニフェスト関係】
(パンフレット又は書籍の頒布)
第百四十二条の二  
前条第一項及び第四項の規定にかかわらず、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙においては、候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等は、当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等の本部において直接発行するパンフレット又は書籍で国政に関する重要政策及びこれを実現するための基本的な方策等を記載したもの又はこれらの要旨等を記載したものとして総務大臣に届け出たそれぞれ一種類のパンフレット又は書籍を、選挙運動のために頒布(散布を除く。)することができる。

2  前項のパンフレット又は書籍は、次に掲げる方法によらなければ、頒布することができない。
一  当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等の選挙事務所内、政党演説会若しくは政党等演説会の会場内又は街頭演説の場所における頒布
二  当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等に所属する者(参議院名簿登載者を含む。次項において同じ。)である当該衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙における公職の候補者の選挙事務所内、個人演説会の会場内又は街頭演説の場所における頒布

3  第一項のパンフレット又は書籍には、当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等に所属する者である当該衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙における公職の候補者(当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等の代表者を除く。)の氏名又はその氏名が類推されるような事項を記載することができない。

4  第一項のパンフレット及び書籍には、その表紙に、当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等の名称、頒布責任者及び印刷者の氏名(法人にあつては名称)及び住所並びに同項のパンフレット又は書籍である旨を表示する記号を記載しなければならない。
                                            弁護士 三木秀夫

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