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ニュース六法目次
夕張市が財政再建団体に(2006年06月20日)地方財政再建促進特別措置
○北海道夕張市が、金融機関からの「一時借入金」をはじめとする500億円以上の巨額負債を抱え、自治体の倒産にあたる「財政再建団体」に移行する問題で、総務省は20日、全国の自治体を対象に一時借入金の残高を調査する方針を固めた。一時借入金は、予算書や決算書では表面化しないため、道が夕張市の巨額負債をチェックできなかったとされる。同省は同様の危険性がある自治体を早期に把握する必要があると判断した。

夕張市の後藤健二市長は20日午前、開会した市議会の冒頭で、財政再建団体への移行を正式に表明した。今後は、国に対して財政再建団体の指定を申請し、北海道や総務省の指導のもと財政健全化計画を策定することになる。一時借入金は、税収の確定時期と入金の時期がずれた際などに、当座の資金繰りのために金融機関から受ける短期の融資。年度内に返済することになっているため、予算書や決算書には記載されない。限度額は自治体の予算額とされる。 夕張市は、この仕組みを「悪用」。一時借入金を返済するために、別の金融機関から借りるという「自転車操業」を繰り返し、02年3月末からの4年間で約112億円も残高が増えた。 
 
総務省は、夕張市のようなケースを想定しておらず、都道府県を対象にした財政状況調査では一時借入金の残高を調べていない。しかし、地方交付税の削減などで全国の自治体の財政は疲弊しており、多額の一時借入金を抱える自治体もあり得ると判断。都道府県を通じて、全国の自治体の実態を把握し、「破綻(はたん)の芽」をつみ取る考えだ。 (asahi.com 2006年6月20日)

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○北海道夕張市が財政再建団体に転落することになった。巨額の赤字を出し自力で立て直せないというもので、国の監視の下で財政再建計画を立てることになる。企業でいえば「倒産」と一緒で、会社更生法の適用に相当する。しかし、会社更生と言えば聞こえはいいが、聞いていると、赤字を短期借入を繰りかえしつつ発覚を遅らせ、自転車操業になっていたというから、むしろカードローンの多重債務者である。

実質収支が赤字の地方自治体が財政再建を行う場合、自力で赤字解消を図る自主再建があるが、「地方財政再建促進特別措置法(再建法)」を準用して行う方法があり、今回の夕張市が取ったのは後者の方法である。

○夕張市の負債は、なんと600億円にも上り、市の財政規模の13倍に達していたというから、開いた口がふさがらない。

市町村の場合、赤字額が20%を超えると再建団体の対象になる。そうだとしたら、この市の場合、なぜに発覚が遅れたのか、という疑問がわくが、その理由がすごい。市の赤字を、金融機関からの「一時借入金」で埋め合わせ、黒字決算を装っていたというのである。およそ、なりふり構わず法の隙間をついた処理をしていたと言える。

自治体の収支は4月から3月末までの年度ごとに帳尻を合わせる単年度主義である。しかし、4月と5月は「出納整理期間」とされて、年度末の急な金銭移動を整理する期間とされている。新年度が動いているのにもかかわらず、前年度の会計が閉鎖されていないため、出納整理期間中に銀行などから借りた資金で、前年度の赤字を埋めていたようである。

さらに、この操作を隠すために、一般会計と特別の事業会計との間で資金の貸し借りを繰り返して、この巨大な借入金を見えなくしていたのである。本来、一時借入金というのは補助金などが入らないときなどに、短期的に金融機関から借りるものであって、年度内返済の場合、決算書には出ないようになっていて、一見してはその存在が分からなかったようである。

夕張市は10年ほど前からこの方法で赤字隠しを行ってきたと言うのであるから、悪質とののしられても仕方がないのではないか。

○今回の夕張市の場合は、地方財政再建促進特別措置法を準用(再建法第22条2項に基づくもの)するため、正確には「準用財政再建団体」という。赤字額が標準財政規模の5%(都道府県)または20%(市区町村)を超えた自治体が、総務大臣に対して地方財政再建促進特別措置法の「財政再建団体」の指定申請を行い、その指定を受けると、そこから晴れて(?)「財政再建団体」となる。

○地方財政再建促進特別措置法(再建法)
(財政再建債を起さないで行う財政の再建)
第22条  
2  昭和30年度以降の年度において、歳入が歳出に不足するため翌年度の歳入を繰り上げてこれに充て、又は実質上歳入が歳出に不足するため当該年度に支払うべき債務の支払を翌年度に繰り延べ、若しくは当該年度に執行すべき事業を翌年度に繰り越す措置を行つた地方公共団体で既に財政再建団体となつているもの以外のもの(以下「歳入欠陥を生じた団体」という。)は、当分の間、第2条第1項の規定により財政の再建を行うことを申し出ることができる。この場合において、同項中「自治庁長官」とあるのは、「総務大臣」として、同項の規定の例による。
3  第2条第2項及び第3項(第4号を除く。)、第3条(第4項及び第5項後段を除く。)、第4条から第11条まで、第18条並びに第19条の規定は、前項の規定によりその例によることとされた第2条第1項の規定により財政の再建を行うことを申し出た歳入欠陥を生じた団体が行う財政の再建について準用する。(以下略)

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○夕張市は、今後、正式に指定を受けると、「財政再建計画」を作成して、議会の議決と総務大臣の承認を受けた上で予算が編成される。地方債の発行の制限は解除され、赤字は起債で埋め、国が利子補給を行う方法で財政再建を行う。独自事業などは原則廃止され、歳出に厳しい制限が設けられるために、学校などの施設や道路整備など、生活に欠かせない施設などの改修・整備についても、ほとんどできなくなる。一方で、歳入増を図るために、保育料などの各種使用料や証明書申請料が引き上げられるなど、住民サービスが大きく後退するのは必至である。一番の負担がかかるのは、ほかならぬ夕張市民なのである。

○夕張と言えば、夕張メロンのブランド化が有名である。また、国際映画祭の開催も成功と言えよう。しかし全国的に見られる典型的なハコモノ行政がこの市ではかなりの数があるようで、これによっても借金が膨れていったようである。

○ただ、夕張市の場合、単に無節操なハコモノ行政のつけと言うだけでは、気の毒な面もある。夕張炭鉱の閉山という日本のエネルギー政策の転換の流れの中で、生き残るために必死となって観光産業に力を入れてきた歴史がある。しかも、そこでの手法は、一時期は「まちづくりの見本」ともてはやされてきた事実もある。ただ、そこでの成功体験が、ストップする判断力を減退させてきたのであろうか。夕張市の成功例に追随した他の多くの類似の市町村も、今、同じような状況になっているのではないか。

○いずれにせよ、さすがに夕張市は、市役所や議会が大騒ぎをしていると思い、同市のホームページを覗いてみたが、意外や、ホームページ上からは、危機感や反省姿勢などがほとんどみられない。市や市議会の思考停止が極限まで来ている感がしないでもない。

外部人間の目からして、この姿勢自体が「再建以前の問題」であって、抜本的かつ大胆な手術が必要ではなかろうか、と思ってしまった。

しかし、このような自治体は全国に数多くあり、他人事ではない。みんなで、自分の町の行財政を、今一度見つめ直さないと、明日はわが身の問題である。

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○財政再建団体制度は、もともと昭和29年に、朝鮮戦争後の反動不況のために、多くの自治体が財政危機に直面し、8割ほどの自治体が赤字に陥ったことから、その赤字を「財政再建債」という特例の赤字地方債によって自主再建が困難となった自治体を救済する目的で作られたものである。自治体から財政再建計画を出させる代わりに財政再建債の発行を認め、赤字の繰り延べを許すものであった。昭和32年以降に財政再建団体となった地方自治体は288団体あるようである。都道府県では青森県と和歌山県が財政再建団体となった。

そしてこの制度は、昭和29年当時の時代背景が消えた以降も活用が図られ、昭和30年以降の赤字自治体に対しても、22条2項の準用という方法が編み出されて活用されてきた。これが、準用財政再建である。この場合は、財政再建団体の基準となる赤字比率に至っていなくても申請は可能なようである。

一時借入金への政府資金融資斡旋、退職手当債の発行許可など多くの措置が用意されている。最近では、福岡県の赤池町(現在の福智町)が平成4年度に準用財政再建団体となった(平成13年に指定解除)。

今回の夕張市は、これに続くものである。後に続くかもしれない自治体は多くあると言われている。

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○問題点
今回の夕張市の問題は、この財政再建制度の問題点もあぶり出したと言っていいのではないか。一時借入金を繰り返しながら資金をやり繰りし、自治体本体の赤字が見えないように工夫してきたが、この制度の抜け穴が、結果的に巨額負債の出現をもたらした。企業会計の貸借対照表の発生主義を見慣れている側からしたら、自治体財政の単式簿記による現金主義(現金で入るものは、たとえそれが借金でも全てが歳入)という会計は、およそ理解しにくい。

東京新聞の記事(6月21日・宮崎美紀子・吉原康和記者)によると、地方自治総合研究所研究員の菅原敏夫氏の次のような談話を紹介している。
[「出納整理期間を利用した一時借入金による会計処理はよく使われる手口」と指摘。そのうえで「実質収支の赤字幅が財政再建団体の指定を決める唯一の尺度となっているが、自治体の財政破たんの正確な指標と言えるのか。自治体の財政はいまだに単式簿記による現金主義のため、現金で入ってくるものは借金だろうが何だろうがすべて歳入となる。借金によって意味を変えられた実質収支で財政破たんの有無を測るという手法は正確ではない」と批判する。]
[「民間企業の倒産と一番違う点は債務免除が認められない点だ。つまり、夕張市は五百億円の債務を返済しながら、再建の道を模索することになるが、歳入、歳出の両面にわたって厳しい見直しを迫られる。」]

また、同記事は同志社大学の新川達郎教授(地方自治論)の次のような談話も紹介している。
[「夕張市の事例は氷山の一角だ。人口一万人未満の自治体のいくつかでは同様の問題を抱え、今後、問題が噴出する」と予測する。「財政再建団体の指定は、民間の破産法制とは異なり、この巨額債務を帳消しにする効果はない。国の援助があるとしても、いまや従来の再建団体以上に厳しい将来となる。」]

参考になる意見だと思う。何らかの法制度の改善が必要であろう。竹中総務大臣の私的諮問機関である「地方分権21世紀ビジョン懇談会」では、本年5月に自治体の再生型破綻法制を提言しているが、もっともな提言だと思う。7月に閣議決定された骨太の方針でも、再建法制の見直しが盛り込まれたが、早急な検討が必要であろう。

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○地方財政再建促進特別措置法
(昭和三十年十二月二十九日法律第百九十五号)
最終改正:平成一八年三月三一日法律第八号

(この法律の趣旨)
第一条  この法律は、地方公共団体の財政の再建を促進し、もつて地方公共団体の財政の健全性を確保するため、臨時に、地方公共団体の行政及び財政に関して必要な特別措置を定めるものとする。
(財政再建計画の策定)
第二条  昭和二十九年度において、歳入が歳出に不足するため昭和三十年度の歳入を繰り上げてこれに充て、又は実質上歳入が歳出に不足するため昭和二十九年度に支払うべき債務の支払を昭和三十年度に繰り延べ、若しくは昭和二十九年度に執行すべき事業を昭和三十年度に繰り越す措置を行つた地方公共団体(以下「昭和二十九年度の赤字団体」という。)で、この法律によつて財政の再建を行おうとするものは、当該昭和二十九年度の赤字団体の議会の議決を経て、その旨を政令で定める日までに自治庁長官に申し出て、自治庁長官が指定する日(以下「指定日」という。)現在により、財政の再建に関する計画(以下「財政再建計画」という。)を定めなければならない。
2  前項の歳入又は歳出は、当該昭和二十九年度の赤字団体の一般会計及び特別会計のうち次の各号に掲げるもの以外のものに係る歳入又は歳出で、これらの一般会計及び特別会計相互間の重複額を控除した純計によるものとする。
一  地方公営企業法 (昭和二十七年法律第二百九十二号)第二条第一項 に規定する地方公営企業及び同条第二項 又は第三項 の規定により同法 の規定の全部又は一部を適用する地方公営企業以外の企業に係る特別会計
二  前号に掲げるもののほか、地方財政法 (昭和二十三年法律第百九号)第六条 に規定する公営企業に係る特別会計
三  前各号に掲げるもののほか、政令で定めるもの
3  財政再建計画は、指定日の属する年度及びこれに続くおおむね七年度以内に歳入と歳出との均衡が実質的に回復するように、次の各号に掲げる事項について定めるものとする。ただし、第二号ニに掲げる事項については、財政の再建のため特に必要と認められる昭和二十九年度の赤字団体に限る。
一  財政の再建の基本方針
二  次に掲げる財政の再建に必要な具体的措置及びこれに伴う歳入又は歳出の増減額
イ 第十二条の規定による地方債の償還を含めて、毎年度実質上歳入と歳出とが均衡を保つことを目標とする経費の節減計画
ロ 指定日の属する年度以降の年度分の租税その他の収入について、その徴収成績を通常の成績以上に高めるための計画及びその実施の要領
ハ 指定日の属する年度の前年度以前の年度分の租税その他の収入で滞納に係るものの徴収計画及びその実施の要領
ニ 地方税法 (昭和二十五年法律第二百二十六号)第四条第二項 各号若しくは第五条第二項 各号に掲げる普通税について標準税率をこえる税率で課し、又は同法第四条第三項 若しくは第五条第三項 の規定による普通税を課することによる租税の増収計画
三  指定日の属する年度以降第十二条の規定による地方債の償還を完了する年度までの間における各年度ごとの歳入及び歳出に関する総合的計画
四  第十二条の規定による地方債の各年度ごとの償還額
五  前各号に掲げるもののほか、財政の再建に必要な事項
(財政再建計画の承認及び予算の調製)
第三条  前条第一項の規定による財政再建計画は、昭和二十九年度の赤字団体の長が作成し、当該昭和二十九年度の赤字団体の議会の議決を経て、自治庁長官の承認を得なければならない。この場合において、自治庁長官は、その財政再建計画による財政の再建が合理的に達成できるように、当該財政再建計画に必要な条件を付けて、当該財政再建計画を承認することができる。
2  昭和二十九年度の赤字団体の長は、財政再建計画を作成しようとする場合においては、あらかじめ、当該昭和二十九年度の赤字団体に執行機関として置かれる委員会及び委員並びに委員会の管理に属する機関の意見を聞かなければならない。
3  自治庁長官は、第一項の規定により財政再建計画を承認しようとする場合において、当該財政再建計画のうちに、各省各庁の長(財政法 (昭和二十二年法律第三十四号)第二十条第二項 に規定する各省各庁の長をいう。以下同じ。)が所掌する事業で国が負担金、補助金その他これに類するもの(以下「負担金等」という。)を支出するものに係る部分が含まれているときは、あらかじめ、当該負担金等に係る事業を所掌する各省各庁の長に協議しなければならない。
4  前三項の規定は、財政再建計画について承認を得た昭和二十九年度の赤字団体(以下「財政再建団体」という。)が当該財政再建計画について変更(政令で定める軽微な変更を除く。)を加えようとする場合について準用する。
5  災害その他緊急やむを得ない理由により異常の支出を要することとなつたため、財政再建計画を変更する必要を生じたが、あらかじめその変更について自治大臣の承認を得るいとまがないときは、財政再建団体は、事後において、遅滞なく、その変更について自治大臣の承認を得なければならない。第一項後段及び第三項の規定は、この場合について準用する。
6  自治大臣は、前二項の規定により財政再建計画の変更について承認を求められた場合においては、当該変更に係る財政再建計画が当該財政再建団体の財政の合理的な再建の達成に支障がないと認められる限り、その行政について合理的かつ妥当な水準が維持されるよう配慮するものとする。
7  財政再建団体の長は、財政再建計画に基いて予算を調製しなければならない。
(財政再建計画の公表)
第四条  財政再建団体は、財政再建計画の承認があつた場合においては、その要領を住民に公表しなければならない。財政再建団体が自治大臣の承認を得て財政再建計画を変更した場合においても、また同様とする。
(財政再建計画の承認の通知)
第五条  自治庁長官は、財政再建計画を承認した場合においては、遅滞なく、当該財政再建計画に含まれている国が負担金等を支出する事務に関する部分を当該負担金等に係る事務を所掌する各省各庁の長に通知しなければならない。
2  自治庁長官は、市町村に係る財政再建計画を承認した場合においては、その旨及び当該財政再建計画の要旨を、遅滞なく、関係都道府県知事に通知しなければならない。
(国、他の地方公共団体及び公共的団体等の協力)
第六条  国、他の地方公共団体及び公共的団体その他これに準ずる団体は、財政再建計画の実施について、当該財政再建団体に協力しなければならない。
(国の直轄事業の実施に関する自治大臣への通知)
第七条  各省各庁の長は、土木事業その他の政令で定める事業を財政再建団体に負担金を課して国が直轄で行おうとするときは、当該事業の実施に着手する前(年度を分けて実施する場合にあつては、年度ごとの事業の実施に着手する前)に、あらかじめ、当該事業に係る経費の総額及び当該財政再建団体の負担額を自治大臣に通知しなければならない。当該事業の事業計画の変更により財政再建団体の負担額に著しい変更を生ずる場合においても、また同様とする。
(長と委員会等との関係)
第八条  財政再建団体に執行機関として置かれる委員会及び委員並びに委員会の管理に属する機関は、その所掌事項のうち、財政再建計画の達成に著しい障害を与えると認められる予算の執行その他政令で指定する事項の執行については、あらかじめ、当該財政再建団体の長に協議しなければならない。
第九条  削除
(事務局等の組織の簡素化)
第十条  財政再建団体は、他の法令の規定にかかわらず、財政再建計画で定めるところにより、それぞれ条例、規則、当該財政再建団体に置かれている委員会若しくは委員の定める規則その他の規程で、議会、長又は当該委員会若しくは委員若しくは委員会の管理に属する機関(以下本条中「委員会等」という。)の事務局、局部その他の事務部局(以下本条中「事務局等」という。)の部課の数を減ずることができる。
2  財政再建団体は、財政再建計画で定めるところにより、当該財政再建団体の長の事務を補助する職員を議会の議長若しくは委員会等の命を受けて議会若しくは委員会等の事務局等の所掌する事務に従事させ、又は当該財政再建団体の長の事務を補助する職員を議会若しくは委員会等の事務に従事する職員と兼ねさせることができる。
(長と議会との関係)
第十一条  昭和二十九年度の赤字団体の議会の議決が第一号若しくは第二号に該当し、又は財政再建団体の議会の議決が第三号若しくは第四号に該当すると認められる場合においては、当該昭和二十九年度の赤字団体又は財政再建団体の長は、それぞれ当該議決があつた日から起算して十日以内に、理由を示してこれを再議に付することができる。
一  第二条第一項の規定による財政の再建の申出に関する議案について否決したとき。
二  第三条第一項の規定による財政再建計画に関する議案を否決したとき。
三  第三条第四項の規定による財政再建計画の変更に関する議案を否決したとき。
四  自治大臣の承認を得た財政再建計画の達成ができなくなると認められる議決をしたとき。
2  昭和二十九年度の赤字団体の議会が第一号又は第二号に掲げる議案について、財政再建団体の議会が第三号又は第四号に掲げる議案について、それぞれ当該昭和二十九年度の赤字団体又は財政再建団体の長が当該議案を提出した日から起算して三十日以内に議決しない場合又は当該議案を提出した議会の会期中に議決しない場合においては、当該昭和二十九年度の赤字団体又は財政再建団体の長は、当該議案を提出した日から起算して三十日を経過した日又は当該議会の会期が終了した日の翌日から起算して十日以内に、当該議案を再提出することができる。この場合において、議会が閉会中であるときは、当該議案が提出された議会の会期が終了した日の翌日から起算して十日以内に議会を招集しなければならない。
一  第二条第一項の規定による財政の再建の申出に関する議案
二  第三条第一項の規定による財政再建計画に関する議案
三  第三条第四項の規定による財政再建計画の変更に関する議案
四  自治大臣の承認を得た財政再建計画の達成について欠くことができない事項に関する議案
(財政再建債)
第十二条  財政再建団体は、昭和二十九年度における歳入の不足に充てるため及び第三条第一項の規定による財政再建計画の承認があつた日から財政再建計画による財政の再建が完了する年度の前年度の末日までの間に、財政再建計画に基く職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により退職した職員(地方公務員法 (昭和二十五年法律第二百六十一号)第四条第一項 に規定する職員をいう。以下同じ。)又は市町村立学校職員(以下本条中「退職職員」という。)に支給すべき退職手当の財源に充てるため、地方財政法第五条第一項 ただし書の規定にかかわらず、地方債を起すことができる。
2  前項の規定による地方債(以下「財政再建債」という。)の額は、次の各号に掲げる金額の範囲内で当該財政再建団体の財政の再建のため必要と認められる額とする。
一  昭和二十九年度において歳入が歳出に不足するため、昭和三十年度の歳入を繰り上げて充用した額に相当する金額
二  実質上歳入が歳出に不足するため、昭和二十九年度に支払うべき債務でその支払を昭和三十年度に繰り延べた額又は昭和二十九年度に執行すべき事務に係る歳出予算の額で昭和三十年度に繰り越した額から当該支払又は事業の財源に充当することができる特定の歳入で昭和二十九年度に収入されなかつた部分に相当する額その他政令で定める額を控除した金額
三  退職職員に支給すべき退職手当の財源に充てるため必要な金額
3  国は、財政再建団体が第一項の規定により起した財政再建債のうち国以外のものが引き受けたものについて、昭和三十年度以降において当該財政再建債の債権者の申出があつたときは、資金運用部資金(資金運用部資金法(昭和二十六年法律第百号)第六条の資金運用部資金をいう。)又は簡易生命保険及郵便年金特別会計の積立金(以下本条中「政府資金」という。)の状況に応じ、百五十億円を限度として、なるべくすみやかに、当該財政再建団体が直ちに当該債権者に係る財政再建債の償還に充てることを条件として、政府資金を当該財政再建団体に融通するようにするものとする。
(財政再建債の償還)
第十三条  財政再建債は、前条第二項第一号又は第二号の規定によるものにあつては指定日の属する年度の翌年度以降おおむね七年度以内に、同条同項第三号の規定によるものにあつては当該財政再建債を起した日の属する年度の翌年度以降三年度以内に、それぞれ財政再建計画に基き償還しなければならない。
(財政再建債の許可等)
第十四条  財政再建団体が財政再建債を起し、並びに起債の方法、利息の定率及び償還の方法を変更しようとする場合においては、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十条の規定にかかわらず、自治大臣の許可を受けなければならない。この場合においては、自治大臣は、あらかじめ、大蔵大臣に協議しなければならない。
(財政再建債の利子補給)
第十五条  国は、毎年度予算の範囲内で、財政再建債で利息の定率が年三分五厘をこえるものにつき、政令で定める基準により、年五分の定率を乗じて得た額を限度として、当該財政再建債の当該年度分の利子支払額のうち、利息の定率を年三分五厘として計算して得た額をこえる部分に相当する金額を当該財政再建団体に補給することができる。
第十六条  削除
(国の負担金等を伴う事業に対する特例)
第十七条  財政再建団体(都道府県を除く。)のうち次の各号の一に該当するものが行う国の負担金等を伴う国の利害に重要な関係がある事業及び国が当該財政再建団体に負担金を課して直轄で行う事業で政令で定めるものについては、当分の間、政令で定めるところにより、当該事業に要する経費の負担割合について、特別の定をすることができる。
一  財政再建計画に基く財政の再建が完了するまでに五年度以上を要する財政再建団体
二  前号に掲げるもののほか、第二条第二項に規定する一般会計又は特別会計に係る当該年度の前年度末現在における地方債の現在高が地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)第十一条の規定により算定した当該年度の前年度の基準財政需要額に政令で定める率を乗じて得た額をこえる財政再建団
(助言その他の必要な援助の請求)
第十八条  昭和二十九年度の赤字団体又は財政再建団体は、財政再建計画を策定し、又はこれを実施するため必要があるときは、自治大臣その他関係行政機関の長に対し、助言その他必要な援助を求めることができる。
(報告及び公表)
第十九条  財政再建団体は、毎年九月三十日までに、前年度における決算との関係を明らかにした財政再建計画の実施状況を自治大臣に報告するとともに、その要旨を住民に公表しなければならない。
(監査)
第二十条  自治大臣は、必要に応じ、財政再建団体について財政再建計画の実施の状況を監査するものとする。
(財政運営の改善のための措置等)
第二十一条  自治大臣は、財政再建団体の財政の運営がその財政再建計画に適合しないと認める場合においては、財政の運営を財政再建計画に適合させるため、当該財政再建団体に対し、予算のうちその過大であるため財政再建計画に適合しないと認められる部分の執行を停止することその他当該財政再建団体の財政の運営について必要な措置を講ずることを求めることができる。
2  自治大臣は、地方行政又は地方財政に係る制度の改正等の特別の理由により、財政再建団体の財政再建計画を変更する必要があると認める場合においては、当該財政再建団体に対し、当該財政再建計画の変更を求めることができる。
3  財政再建団体が前二項の規定による求めに応じなかつた場合においては、自治大臣は、第十五条の規定による財政再建債の利子の補給を停止することができる。
(財政再建債を起さないで行う財政の再建)
第二十二条  昭和二十九年度の赤字団体が第十二条の規定による財政再建債を起さないで財政の再建を行うこととした場合においては、第十二条から第十五条まで、第十七条及び前二条の規定は、当該昭和二十九年度の赤字団体については、適用しない。
2  昭和三十年度以降の年度において、歳入が歳出に不足するため翌年度の歳入を繰り上げてこれに充て、又は実質上歳入が歳出に不足するため当該年度に支払うべき債務の支払を翌年度に繰り延べ、若しくは当該年度に執行すべき事業を翌年度に繰り越す措置を行つた地方公共団体で既に財政再建団体となつているもの以外のもの(以下「歳入欠陥を生じた団体」という。)は、当分の間、第二条第一項の規定により財政の再建を行うことを申し出ることができる。この場合において、同項中「自治庁長官」とあるのは、「総務大臣」として、同項の規定の例による。
3  第二条第二項及び第三項(第四号を除く。)、第三条(第四項及び第五項後段を除く。)、第四条から第十一条まで、第十八条並びに第十九条の規定は、前項の規定によりその例によることとされた第二条第一項の規定により財政の再建を行うことを申し出た歳入欠陥を生じた団体が行う財政の再建について準用する。この場合において、次の表の上欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。
第二条第二項前項第二十二条第二項の規定によりその例によることとされた前
第二条第三項第二号イ第十二条の規定による地方債の償還を含めて、毎年度毎年度
第二条第三項第三号第十二条の規定による地方債の償還を完了する年度当該財政再建計画において歳入と歳出との均衡が実質的に回復するとされている年
第二条第三項第五号前各号第二十二条第三項において準用する第一号から第三号まで
第三条第一項前条第一項第二十二条第二項の規定によりその例によることとされた前条第一項
自治庁長官の承認総務大臣に協議し、その同意
自治庁長官は総務大臣は
を承認するに同意する
第三条第三項自治庁長官総務大臣
を承認しようとするに同意しようとする
第三条第五項前段自治大臣の承認総務大臣に協議し、その同意
財政再建団体第二十二条第四項に規定する準用財政再建団体
第三条第六項自治大臣総務大臣
前二項第二十二条第四項において準用する第一項又は同条第三項において準用する前項前段
承認同意
財政再建団体同条第四項に規定する準用財政再建団体
第三条第七項財政再建団体第二十二条第四項に規定する準用財政再建団体
第四条財政再建団体第二十二条第四項に規定する準用財政再建団体
承認があつた同意があつた
自治大臣の承認総務大臣に協議し、その同意
第五条自治庁長官総務大臣
を承認したに同意した
第六条財政再建団体第二十二条第四項に規定する準用財政再建団体
第七条財政再建団体第二十二条第四項に規定する準用財政再建団体
自治大臣総務大臣
第八条及び第十条財政再建団体第二十二条第四項に規定する準用財政再建団
第十一条財政再建団体第二十二条第四項に規定する準用財政再建団体
第二条第一項第二十二条第二項の規定によりその例によることとされた第二条第一項
第三条第一項第二十二条第三項において準用する第三条第一項
第三条第四項第二十二条第四項において準用する第三条第一項
自治大臣総務大臣
承認同意
第十八条及び第十九条財政再建団体第二十二条第四項に規定する準用財政再建団体
自治大臣総務大臣

4  第三条第一項から第三項までの規定は、歳入欠陥を生じた団体でその財政再建計画について総務大臣の同意を得たもの(以下「準用財政再建団体」という。)が、当該財政再建計画について変更(政令で定める軽微な変更を除く。)を加えようとする場合について準用する。この場合において、同条第一項中「自治庁長官の承認」とあるのは「総務大臣に協議し、その同意」と、「自治庁長官は」とあるのは「総務大臣は」と、「を承認する」とあるのは「に同意する」と、同条第三項中「自治庁長官」とあるのは「総務大臣」と、「を承認しようとする」とあるのは「に同意しようとする」と読み替えるものとする。
5  第三条第一項後段及び同条第三項の規定は、第三項において準用する同条第五項前段の規定による総務大臣の同意について準用する。この場合において、同条第一項後段中「自治庁長官」とあるのは「総務大臣」と、「を承認する」とあるのは「に同意する」と、同条第三項中「自治庁長官」とあるのは「総務大臣」と、「を承認しようとする」とあるのは「に同意しようとする」と読み替えるものとする。
6  第三項に規定するもののほか、第三条第六項の規定は、第三項において準用する同条第一項の規定により総務大臣が財政再建計画について同意を求められた場合について準用する。この場合において、同条第六項中「自治大臣」とあるのは「総務大臣」と、「財政再建団体」とあるのは「第二十二条第四項に規定する準用財政再建団体」と読み替えるものとする。
7  総務大臣は、第三項において準用する第三条第一項若しくは第五項前段又は第四項において準用する第三条第一項の規定により財政再建計画又はその変更に同意しようとするときは、地方財政審議会の意見を聴かなければならない。
(歳入欠陥を生じた団体の地方債の制限等)
第二十三条  昭和三十六年度以降においては、歳入欠陥を生じた団体で政令で定めるものは、地方財政法第五条 ただし書の規定にかかわらず、前条第二項の規定によつて財政の再建を行う場合でなければ、地方債をもつて同法第五条第五号 に掲げる経費の財源とすることができない。ただし、政令で定める事業に要する経費の財源とする場合においては、この限りでない。
2  昭和二十九年度の赤字団体又は歳入欠陥を生じた団体は、当分の間、他の地方公共団体又は公共的団体その他政令で定める者に対し、寄附金、負担金その他これらに類するもの(これに相当する物品等を含む。)を支出しようとする場合においては、政令で定めるところにより、あらかじめ、都道府県及び地方自治法第二百五十二条の十九第一項 の指定都市(以下この項において「指定都市」という。)にあつては総務大臣、指定都市以外の市町村にあつては当該市町村を包括する都道府県の知事に協議し、その同意を得なければならない。
(国等に対する寄附金等)
第二十四条  地方公共団体は、当分の間、国(国の地方行政機関及び裁判所法 (昭和二十二年法律第五十九号)第二条 に規定する下級裁判所を含む。以下同じ。)、独立行政法人(独立行政法人通則法 (平成十一年法律第百三号)第二条第一項 に規定する独立行政法人であつて当該独立行政法人に対する国の出資の状況及び関与、当該独立行政法人の業務の内容その他の事情を勘案してこの項の規定を適用することが適当であるものとして政令で定めるものに限る。以下同じ。)若しくは国立大学法人等(国立大学法人法 (平成十五年法律第百十二号)第二条第一項 に規定する国立大学法人及び同条第三項 に規定する大学共同利用機関法人をいう。以下同じ。)又は日本郵政公社、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社、本州四国連絡高速道路株式会社、国民生活金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、公営企業金融公庫若しくは沖縄振興開発金融公庫(以下「公社等」という。)に対し、寄附金、法律又は政令の規定に基づかない負担金その他これらに類するもの(これに相当する物品等を含む。以下「寄附金等」という。)を支出してはならない。ただし、地方公共団体がその施設を国、独立行政法人若しくは国立大学法人等又は公社等に移管しようとする場合その他やむを得ないと認められる政令で定める場合における国、独立行政法人若しくは国立大学法人等又は公社等と当該地方公共団体との協議に基づいて支出する寄附金等で、あらかじめ総務大臣に協議し、その同意を得たものについては、この限りでない。
(都道府県が処理する事務)
第二十五条  この法律に規定する総務大臣の権限に属する事務のうち市町村に係るものの一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。
(政令への委任)
第二十六条  この法律に定めるもののほか、市町村の廃置分合又は境界変更があつた場合におけるこの法律の規定の適用その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
                                            弁護士 三木秀夫

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