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三木秀夫法律事務所
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ニュース六法目次
日本司法支援センターが業務を開始(2006年10月02日)   総合法律支援
○市民に総合的な法律サービスを提供する日本司法支援センター(愛称・法テラス)が業務を開始した2日、全国からの相談電話を引き受ける東京都中野区のコールセンターには午後8時現在で、計2296件の相談が寄せられた。テラスでは年間約120万件の相談件数を見こんでいる。

内訳は、多重債務など金銭トラブルが最も多く338件、次いで夫婦問題193件、相続問題186件、借地借家問題80件だった。また、犯罪被害者支援ダイヤルには105件の相談が寄せられた。コールセンターでは、トラブル解決のための法律情報を提供したり、利用者の事情に合わせて最適な相談窓口を紹介したりした。
 
また、法テラスの業務開始とともに、被告だけでなく、起訴前の容疑者にも国選弁護人を付けられるようになり、東京地裁管内ではこの日、2人の容疑者に国選弁護人が選任された。

法テラスの利用方法や事務所所在地は、ホームページ(http://www.houterasu.or.jp/)で紹介されている。 (2006年10月2日 読売新聞)

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○「日本司法支援センター」が10月2日、いよいよ業務を開始した。愛称を「法テラス」といい、「法で社会を照らす」の意味が込められている。「弁護士過疎」の解消を目指し、全国各地で気軽に法律サービスを利用できることを目的とした組織である。

○この司法支援センターの出発点は、司法改革にある。

もともと日本ではトラブルが生じた際に、誰にも相談しなかったり、役場や警察などに相談することが多く、弁護士などの法律専門職に相談したりすることが多いとはいえない現状があった。特に人口の少ない地域などでは、法律専門職が極めて少ないことも多く、トラブルの処理が力の強いものだけが勝つような不公平な結果に泣き寝入りする人も多かった。これでは、法の支配の理念をないがしろにし、公平な裁判を受ける権利を保障した日本国憲法にも反することになる。こういうことがないよう、司法の基盤整備を進め、裁判や調停といった公正・公平なルールに基づく紛争解決を日本に行き渡らせることが必要とされたが、そのためにはまず弁護士などの法律専門職への相談が容易にできる体制づくりが必要であった。その対策として言われたのが「敷居の高さ」という表現で言われる相談機関までのアクセスの悪さの改善であった。

そこで、このような問題点を解消し、法律専門職のサービスをより身近に受けられるようにするための「総合法律支援」を推進するため制定されたのが総合法律支援法(平成16年法律第74号)で、2004年6月2日に公布された。日本司法支援センター(法テラス)は、同法に関する事業を迅速かつ適切に行うことを目的として2006年4月10日に設立された独立行政法人に準じた法人である。その特徴は、法務省(行政機関)と最高裁判所(司法機関)のみならず、日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会などの法律専門職の職能団体も運営に携わる。主たる事務所は東京に置かれ、資本金は政府が出資する。理事長には元東京都副知事の金平輝子氏が就任した。

○法テラスでは、東京のコールセンター(0570-078374)で全国の相談を受け付け、消費者センターや警察などに分散していた法律相談をコールセンターで集約し、弁護士会や専門機関を紹介するほか、全国78の地方・地域事務所と支部が設けられた。大阪でも、大阪弁護士会館地下1階に置かれた大阪地方事務所(佐伯照道所長)が、この日午前9時にオープンし、電話(050-3383-5425)が相次ぎ、受付窓口にも相談が相次いだようである。 

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○日本司法支援センターの業務は、次の5つとされている。

@情報提供業務(第3条)
法による紛争の迅速かつ適切な解決に資するよう、裁判その他の法による紛争の解決のための制度を有効に利用するための情報及び資料のほか、弁護士、弁護士法人及び隣接法律専門職者の業務並びに弁護士会、日本弁護士連合会及び隣接法律専門職者団体の活動に関する情報及び資料の提供。この情報提供サービスは全国どこからでもコールセンター(0570-078374)(お悩みなし)への電話で受けることができる。全国50カ所(都道府県庁所在地と函館、旭川、釧路)の地方事務所の窓口に出向いてもいい(予約優先制)。センター職員は、相談内容に応じて、最も適した機関や団体(弁護士会や司法書士会、地方公共団体など)を紹介する。なお、個別の事案に関する具体的なアドバイスなどの法律相談とは異なり、あくまでも紹介だけである。 

A民事法律扶助業務(第4条)
資力の乏しい方に対する無料の法律相談や、民事裁判等手続の利用をより容易にするために弁護士や司法書士に支払う裁判代理費用や書類作成費用の立て替えを行う民事法律扶助事業。これを受け、長年にわたって財団法人法律扶助協会が行ってきた民事法律扶助事業は、法テラスのスタートに伴って、2006年10月2日から日本司法支援センターに引き継がれた。今年度の予算規模は約54億円で、事業経費の約9割に及ぶとのことである。「法テラス」の中期計画によると、決定の迅速化を図るため、審査方法をこれまでの合議制方式の審査から新しい決裁方式を導入するなどの合理化を進める予定とのことである。さらに、遠隔地からの申し込みには書面審査を活用する方針で、利用者本位の運営体制が図られる。 

B国選弁護関連 (第5条)
国選弁護人の適任者推薦や報酬支払いなどを担当し、捜査段階での被疑者弁護から、起訴後の公判弁護までの一貫した刑事弁護体制が整備される。特に、捜査段階での被疑者弁護は、えん罪の温床と批判されてきた警察や検察による自白の強要を防ぐことにもつながり、人権保障の観点からは大きな進展である。ただ、この捜査弁護においては、当初は殺人など重大事件に限られ、法テラスが契約している弁護士(約8300人)の中から指名して裁判所が選任する。2009年からは、その対象を必要弁護事件(弁護士抜きで審理できない事件)全てに広げる予定である。中期計画によると全国的に均質な弁護人を確保するめ、弁護士が少ない地域については「法テラス」の常勤弁護士を常駐させることになっている。

この業務に課題が極めて多い。最大の問題は被疑者・被告人の国選弁護を引き受ける契約を法テラスと結ぶ契約弁護士の確保である。日本弁護士連合会によると、被疑者国選弁護の対象事件は年間推定7400件であるが、3年後には国選弁護の対象事件が拡大されるため、一気に年間9万件に増えると見込んでいる。全国の弁護士数は約2万2000人であるが、法テラスとの契約弁護士は現在のところ約8300人程度であり、しかも、国選弁護人名簿にも登録しているのは5300人程度でしかない。国選弁護の報酬アップを含め、契約弁護士の確保が今後の大きな課題となる。

これについて、国選弁護人推薦を司法支援センターの業務にしたことについて、今なお弁護士会内で根強い反対意見があることも不安材料ともなっている。国選弁護人は弁護士会推薦だったのが法テラス指名に変わったことから、弁護活動の独立性確保を懸念する声である。今後、この弁護活動の独立性確保をより確固としたものにしていくことが、最も重要な対策であろうと思う。
 
C犯罪被害者支援業務(第6条)
被害者(被害者遺族を含む)の支援に通じた弁護士や支援NPO等の紹介や情報提供など、被害者が刑事手続に適切に関与するとともに、被害者等が受けた損害又は苦痛の回復軽減を図るなどの援助活動を行う。刑事司法の中で「忘れ去られた存在」とされてきた犯罪被害者支援を位置付けた点で、新しい司法を特徴付ける業務である。 

D司法過疎対策(第7条)
司法過疎地域(法律専門職の少ない地域)での法律サービスを行う。具体的には、民事法律扶助の担い手となる弁護士や司法書士が足りない地域では、日本弁護士連合会、各地の弁護士会、地方公共団体などと連携協力しながら、常勤弁護士による法律サービスが可能になるような体制づくりを進め、必要な地域には地域事務所の設置も進め、常勤弁護士を常駐または巡回させて対応する。これが、実は「法テラス」が最も必要とされる業務分野といわれている。地方裁判所支部管轄の単位で見た場合、実働弁護士が不在か1人だけという「ゼロ・ワン地域」が存在するが、これは「法化社会」にとっては最大の問題だからである。ただ、この点も、今のところ直属のスタッフ弁護士はまだ21人とのことで、当初計画大幅に下回っている。2009年までに300人にする計画が予定通り進むかに不安は大きい。

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○総合法律支援法(平成十六年六月二日法律第七十四号)

第一章 総則
(目的)
第一条  この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、法による紛争の解決が一層重要になることにかんがみ、裁判その他の法による紛争の解決のための制度の利用をより容易にするとともに弁護士及び弁護士法人並びに司法書士その他の隣接法律専門職者(弁護士及び弁護士法人以外の者であって、法律により他人の法律事務を取り扱うことを業とすることができる者をいう。以下同じ。)のサービスをより身近に受けられるようにするための総合的な支援(以下「総合法律支援」という。)の実施及び体制の整備に関し、その基本理念、国等の責務その他の基本となる事項を定めるとともに、その中核となる日本司法支援センターの組織及び運営について定め、もってより自由かつ公正な社会の形成に資することを目的とする。
   
第二章 総合法律支援の実施及び体制の整備
(基本理念)
第二条  総合法律支援の実施及び体制の整備は、次条から第七条までの規定に定めるところにより、民事、刑事を問わず、あまねく全国において、法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会を実現することを目指して行われるものとする。

(情報提供の充実強化)
第三条  総合法律支援の実施及び体制の整備に当たっては、法による紛争の迅速かつ適切な解決に資するよう、裁判その他の法による紛争の解決のための制度を有効に利用するための情報及び資料のほか、弁護士、弁護士法人及び隣接法律専門職者の業務並びに弁護士会、日本弁護士連合会及び隣接法律専門職者団体(隣接法律専門職者が法律により設立を義務付けられている法人及びその法人が法律により設立を義務付けられている法人をいう。以下同じ。)の活動に関する情報及び資料が提供される態勢の充実強化が図られなければならない。

(民事法律扶助事業の整備発展)
第四条  総合法律支援の実施及び体制の整備に当たっては、資力の乏しい者にも民事裁判等手続(裁判所における民事事件、家事事件又は行政事件に関する手続をいう。以下同じ。)の利用をより容易にする民事法律扶助事業が公共性の高いものであることにかんがみ、その適切な整備及び発展が図られなければならない。

(国選弁護人の選任態勢の確保)
第五条  総合法律支援の実施及び体制の整備に当たっては、迅速かつ確実に国選弁護人(刑事訴訟法 (昭和二十三年法律第百三十一号)の規定に基づいて裁判所若しくは裁判長又は裁判官が被告人又は被疑者に付する弁護人をいう。以下同じ。)の選任が行われる態勢の確保が図られなければならない。

(被害者等の援助等に係る態勢の充実)
第六条  総合法律支援の実施及び体制の整備に当たっては、被害者等(犯罪により害を被った者又はその者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)が刑事手続に適切に関与するとともに、被害者等が受けた損害又は苦痛の回復又は軽減を図るための制度その他の被害者等の援助に関する制度を十分に利用することのできる態勢の充実が図られなければならない。

(連携の確保強化)
第七条  総合法律支援の実施及び体制の整備に当たっては、国、地方公共団体、弁護士会、日本弁護士連合会及び隣接法律専門職者団体、弁護士、弁護士法人及び隣接法律専門職者、裁判外における法による紛争の解決を行う者、被害者等の援助を行う団体その他の者並びに高齢者又は障害者の援助を行う団体その他の関係する者の間における連携の確保及び強化が図られなければならない。

(国の責務)
第八条  国は、第二条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、総合法律支援の実施及び体制の整備に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第九条  地方公共団体は、総合法律支援の実施及び体制の整備が住民福祉の向上に寄与するものであることにかんがみ、その地域における総合法律支援の実施及び体制の整備に関し、国との適切な役割分担を踏まえつつ、必要な措置を講ずる責務を有する。

(日本弁護士連合会等の責務)
第十条  日本弁護士連合会及び弁護士会は、総合法律支援の意義並びに弁護士の使命及び職務の重要性にかんがみ、基本理念にのっとり、会員である弁護士又は弁護士法人による協力体制の充実を図る等総合法律支援の実施及び体制の整備のために必要な支援をするよう努めるものとする。
2  弁護士及び弁護士法人は、総合法律支援の意義及び自らの職責にかんがみ、基本理念にのっとり、総合法律支援の実施及び体制の整備のために必要な協力をするよう努めるものとする。
3  隣接法律専門職者及び隣接法律専門職者団体は、総合法律支援の意義及び自らの職責にかんがみ、基本理念にのっとり、総合法律支援の実施及び体制の整備のために必要な協力をするよう努めるものとする。

(法制上の措置等)
第十一条  政府は、第八条の施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
(職務の特性への配慮)
第十二条  この法律の運用に当たっては、弁護士及び隣接法律専門職者の職務の特性に常に配慮しなければならない。
   
第三章 日本司法支援センター
第一節 総則
第一款 通則
(この章の目的)
第十三条  日本司法支援センター(以下「支援センター」という。)の組織及び運営については、この章の定めるところによる。
(支援センターの目的)
第十四条  支援センターは、総合法律支援に関する事業を迅速かつ適切に行うことを目的とする。
(法人格)
第十五条  支援センターは、法人とする。
(事務所)
第十六条  支援センターは、主たる事務所を東京都に置く。
2  支援センターは、前項の主たる事務所のほか、地域の実情、業務の効率性その他の事情を勘案して必要な地に、事務所を置くことができる。
(資本金)
第十七条  支援センターの資本金は、設立に際し、政府が出資する金額とする。
2  支援センターは、必要があるときは、法務大臣の認可を受けて、その資本金を増加することができる。
3  政府及び地方公共団体(以下「政府等」という。)は、前項の規定により支援センターがその資本金を増加するときは、支援センターに出資することができる。
4  政府等は、前項の規定により支援センターに出資するときは、土地、建物その他の土地の定着物(以下「土地等」という。)を出資の目的とすることができる。
5  前項の規定により出資の目的とする土地等の価額は、出資の日現在における時価を基準として評価委員が評価した価額とする。
6  前項の評価委員その他評価に関し必要な事項は、政令で定める。
7  政府等以外の者は、支援センターに出資することができない。
(名称の使用制限)
第十八条  支援センターでない者は、日本司法支援センターという名称を用いてはならない。
     
第二款 日本司法支援センター評価委員会
(日本司法支援センター評価委員会)
第十九条  法務省に、支援センターに関する事務を処理させるため、日本司法支援センター評価委員会(以下「評価委員会」という。)を置く。
2  評価委員会は、次に掲げる事務をつかさどる。
一  支援センターの業務の実績に関する評価に関すること。
二  その他この法律によりその権限に属させられた事項を処理すること。
3  評価委員会の委員には、少なくとも最高裁判所の推薦する裁判官一人以上が含まれるようにしなければならない。
4  前二項に定めるもののほか、評価委員会の組織、所掌事務及び委員その他の職員その他評価委員会に関し必要な事項については、政令で定める。
     
第三款 設立
(理事長及び監事となるべき者)
第二十条  法務大臣は、支援センターの長である理事長となるべき者及び監事となるべき者を指名する。
2  法務大臣は、前項の規定により理事長となるべき者及び監事となるべき者を指名しようとするときは、あらかじめ、最高裁判所の意見を聴かなければならない。
3  法務大臣は、第一項の規定により理事長となるべき者及び監事となるべき者を指名したときは、遅滞なく、その旨を最高裁判所に通知しなければならない。
4  第一項の規定により指名された理事長となるべき者及び監事となるべき者は、支援センターの成立の時において、この法律の規定により、それぞれ理事長及び監事に任命されたものとする。
5  第二十四条第一項の規定は、第一項の理事長となるべき者の指名について準用する。
(設立委員)
第二十一条  法務大臣及び最高裁判所は、それぞれ設立委員を命じて、支援センターの設立に関する事務を処理させる。
2  最高裁判所の命ずる設立委員は、裁判官でなければならない。
3  設立委員は、支援センターの設立の準備を完了したときは、遅滞なく、その旨を法務大臣及び最高裁判所に届け出るとともに、その事務を前条第一項の規定により指名された理事長となるべき者に引き継がなければならない。
    
第二節 組織
第一款 役員及び職員
(役員)
第二十二条  支援センターに、役員として、理事長及び監事二人を置く。
2  支援センターに、役員として、理事三人以内を置くことができる。
3  支援センターに、役員として、前項の理事のほか、非常勤の理事一人を置くことができる。
(役員の職務及び権限)
第二十三条  理事長は、支援センターを代表し、その業務を総理する。
2  理事は、理事長の定めるところにより、理事長を補佐して支援センターの業務を掌理する。
3  監事は、支援センターの業務を監査する。
4  監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、理事長又は法務大臣に意見を提出することができる。
5  法務大臣は、前項の規定による監事の意見の提出があったときは、遅滞なく、その内容を最高裁判所に通知しなければならない。
6  理事は、理事長の定めるところにより、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。ただし、理事が置かれていないときは、監事とする。
7  前項ただし書の場合において、同項本文の規定により理事長の職務を代理し又はその職務を行う監事は、その間、監事の職務を行ってはならない。
(役員の任命)
第二十四条  理事長は、支援センターが行う事務及び事業に関して高度な知識を有し、適切、公正かつ中立な業務の運営を行うことができる者(裁判官若しくは検察官又は任命前二年間にこれらであった者を除く。)のうちから、法務大臣が任命する。
2  監事は、法務大臣が任命する。
3  法務大臣は、前二項の規定により理事長又は監事を任命しようとするときは、あらかじめ、最高裁判所の意見を聴かなければならない。
4  理事は、第一項に規定する者のうちから、理事長が任命する。
5  理事長は、前項の規定により理事を任命したときは、遅滞なく、法務大臣に届け出るとともに、これを公表しなければならない。
6  法務大臣は、第一項又は第二項の規定により理事長又は監事を任命したときは、遅滞なく、その旨を最高裁判所に通知しなければならない。
(役員の任期)
第二十五条  理事長の任期は四年とし、理事及び監事の任期は二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2  役員は、再任されることができる。
(役員の解任)
第二十六条  法務大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が準用通則法(第四十八条において準用する独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)をいう。以下同じ。)第二十二条の規定により役員となることができない者に該当するに至ったときは、その役員を解任しなければならない。理事長又は理事が裁判官又は検察官となったときも、同様とする。
2  法務大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号のいずれかに該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一  心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認められるとき。
二  職務上の義務違反があるとき。
3  前項に規定するもののほか、法務大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員(監事を除く。)の職務の執行が適当でないため支援センターの業務の実績が悪化した場合であって、その役員に引き続き当該職務を行わせることが適切でないと認めるときは、その役員を解任することができる。
4  法務大臣は、前二項の規定により理事長又は監事を解任しようとするときは、あらかじめ、最高裁判所の意見を聴かなければならない。
5  法務大臣は、第一項から第三項までの規定により理事長又は監事を解任したときは、遅滞なく、その旨を最高裁判所に通知しなければならない。
6  理事長は、第二項又は第三項の規定により理事を解任したときは、遅滞なく、法務大臣に届け出るとともに、これを公表しなければならない。
(役員及び職員の秘密保持義務)
第二十七条  支援センターの役員及び職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
(役員及び職員の地位)
第二十八条  支援センターの役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
     
第二款 審査委員会
(審査委員会)
第二十九条  支援センターに、その業務の運営に関し特に弁護士及び隣接法律専門職者の職務の特性に配慮して判断すべき事項について審議させるため、審査委員会を置く。
2  審査委員会の委員(以下この条において「委員」という。)は、次に掲げる者(支援センターの役員及び職員以外の者に限る。)につき理事長が任命する。
一  最高裁判所の推薦する裁判官 一人
二  検事総長の推薦する検察官 一人
三  日本弁護士連合会の会長の推薦する弁護士 二人
四  優れた識見を有する者 五人
3  委員の任期は、二年とする。
4  第二十五条第一項ただし書及び第二項、第二十六条第二項並びに前二条の規定は、委員について準用する。
5  理事長は、委員が支援センターの役員若しくは職員となったとき又は第二項第一号から第三号までに規定する資格を失ったときは、当該委員を解任しなければならない。
6  理事長は、第四項において準用する第二十六条第二項の規定により裁判官、検察官又は弁護士である委員を解任しようとするときは、あらかじめ、それぞれ最高裁判所、検事総長又は日本弁護士連合会の会長の意見を聴かなければならない。
7  理事長は、第四項において準用する第二十六条第二項の規定により裁判官、検察官又は弁護士である委員を解任したときは、遅滞なく、その旨をそれぞれ最高裁判所、検事総長又は日本弁護士連合会の会長に通知しなければならない。
8  理事長は、次に掲げる事項について決定をしようとするときは、審査委員会の議決を経なければならない。
一  契約弁護士等(支援センターとの間で、次条に規定する支援センターの業務に関し、他人の法律事務を取り扱うことについて契約をしている弁護士、弁護士法人及び隣接法律専門職者をいう。以下同じ。)の法律事務の取扱いについて苦情があった場合の措置その他の当該契約に基づき契約弁護士等に対してとる措置に関する事項(あらかじめ、審査委員会が軽微なものとしてその議決を経ることを要しないものとして定めたものを除く。)
二  第三十五条第一項に規定する法律事務取扱規程の作成及び変更に関する事項
9  審査委員会に委員長を置き、委員の互選によってこれを定める。
10  委員長は、審査委員会を主宰する。
    
第三節 業務運営
第一款 業務
第三十条  未施行
第三十一条  未施行
(支援センター等の義務等)
第三十二条  支援センターは、前条に規定する業務が、これを必要とする者にとって利用しやすいものとなるよう配慮するとともに、第三十条第一項第二号及び第三号の各業務については、その統一的な運営体制の整備及び全国的に均質な遂行の実現に努めなければならない。
2  支援センターは、前項に規定する者が高齢者及び障害者等法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供を求めることに困難がある者である場合には、前条に規定する業務が利用しやすいものとなるように特別の配慮をしなければならない。
3  支援センターは、第三十条第一項第一号、第四号及び第五号並びに同条第二項第一号の各業務の運営に当たっては、地方公共団体、弁護士会、日本弁護士連合会及び隣接法律専門職者団体、弁護士、弁護士法人及び隣接法律専門職者、裁判外における法による紛争の解決を行う者、被害者等の援助を行う団体その他の者並びに高齢者又は障害者の援助を行う団体その他の関係する者の総合法律支援に関する取組との連携の下でこれを補完することに意を用いなければならない。
4  支援センターは、地域における業務の運営に当たり、協議会の開催等により、広く利用者その他の関係者の意見を聴いて参考とし、当該地域の実情に応じた運営に努めなければならない。
5  地方公共団体は、支援センターに対して、その地域において行われる第三十条に規定する業務に関し必要な協力をすることができる。
6  支援センターは、業務の運営に当たり、弁護士会及び日本弁護士連合会並びに隣接法律専門職者団体に対して、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる。
第三十三条  未施行
(業務方法書)
第三十四条  支援センターは、業務開始の際、業務方法書を作成し、法務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2  前項の業務方法書には、次に掲げる事項その他法務省令で定める事項を記載しなければならない。
一  第三十条第一項第二号の業務及びこれに附帯する業務(以下「民事法律扶助事業」という。)に関し、民事法律扶助事業の実施に係る援助の申込み及びその審査の方法に関する事項、同号イ及びハに規定する立替えに係る報酬及び実費の基準並びにそれらの償還に関する事項並びに同号ロ及びニに規定する報酬及び実費に相当する額の支払に関する事項。この場合において、当該報酬は、民事法律扶助事業が同号に規定する国民等を広く援助するものであることを考慮した相当な額でなければならない。
二  第三十条第一項第三号の業務及びこれに附帯する業務に関し、弁護士との契約に関する事項、国選弁護人の候補の指名及び裁判所に対する通知に関する事項、第三十九条第四項に規定する協力に関する事項並びに第四十三条第一号に掲げる勘定の管理に関する事項
三  第三十条第二項の業務に関し、委託を受けて行う業務の内容に関する事項
3  法務大臣は、第一項の認可をしようとするときは、あらかじめ、最高裁判所及び評価委員会の意見を聴かなければならない。
4  法務大臣は、第一項の認可をしたときは、遅滞なく、その旨を最高裁判所に通知しなければならない。
5  支援センターは、第一項の認可を受けたときは、遅滞なく、その業務方法書を公表しなければならない。
6  法務大臣は、第一項の認可をした業務方法書が業務の適正かつ確実な遂行上不適当となったと認めるときは、その業務方法書を変更すべきことを命ずることができる。
(法律事務取扱規程)
第三十五条  支援センターは、第三十条に規定する業務の開始前に、契約弁護士等に取り扱わせる法律事務の処理に関する規程(以下「法律事務取扱規程」という。)を定め、法務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2  法律事務取扱規程には、契約弁護士等による法律事務の取扱いの基準に関する事項、契約弁護士等がその契約に違反した場合の措置に関する事項その他法務省令で定める事項を記載しなければならない。
3  前条第三項から第六項までの規定は、法律事務取扱規程について準用する。
(国選弁護人の事務に関する契約約款)
第三十六条  支援センターは、第三十条第一項第三号の業務の開始前に、国選弁護人の事務に関する契約約款を定め、法務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2  前項の契約約款には、国選弁護人の事務を取り扱う事件に関する事項、国選弁護人の候補の指名及び裁判所に対する通知に関する事項、報酬及び費用の請求に関する事項、報酬及び費用の算定の基準及び支払に関する事項、契約解除その他当該契約約款に基づく契約に違反した場合の措置に関する事項その他法務省令で定める事項を記載しなければならない。
3  前項に規定する報酬及び費用の算定の基準を定めるため必要な事項は、法務省令で定める。
4  第三十四条第三項から第六項までの規定は、第一項の契約約款について準用する。
5  支援センターは、弁護士と国選弁護人の事務の取扱いに関し、その取り扱う事件に対応して支給すべき報酬及び費用が定められる契約を締結するときは、第一項の認可を受けた契約約款によらなければならない。
第三十七条  未施行
第三十八条  未施行
第三十九条  未施行
     
第二款 中期目標等
(中期目標)
第四十条  法務大臣は、三年以上五年以下の期間において支援センターが達成すべき業務運営に関する目標(以下「中期目標」という。)を定め、これを支援センターに指示するとともに、公表しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
2  中期目標においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
一  中期目標の期間(前項の期間の範囲内で法務大臣が定める期間をいう。以下同じ。)
二  総合法律支援の充実のための措置に関する事項
三  業務運営の効率化に関する事項
四  提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項
五  財務内容の改善に関する事項
六  その他業務運営に関する重要事項
3  法務大臣は、中期目標を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、最高裁判所及び評価委員会の意見を聴かなければならない。
4  法務大臣は、第一項の規定により中期目標を定め又は変更したときは、遅滞なく、その旨を最高裁判所に通知しなければならない。
(中期計画)
第四十一条  支援センターは、前条第一項の指示を受けたときは、当該中期目標に基づき、法務省令で定めるところにより、当該中期目標を達成するための計画(以下「中期計画」という。)を作成し、法務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2  中期計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一  総合法律支援の充実のための措置に関する目標を達成するためとるべき措
二  業務運営の効率化に関する目標を達成するためとるべき措置
三  提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するためとるべき措置
四  予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画
五  短期借入金の限度額
六  重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、その計画
七  剰余金の使途
八  その他法務省令で定める業務運営に関する事項
3  法務大臣は、第一項の認可をしようとするときは、あらかじめ、最高裁判所及び評価委員会の意見を聴かなければならない。
4  法務大臣は、第一項の認可をしたときは、遅滞なく、その旨を最高裁判所に通知しなければならない。
5  法務大臣は、第一項の認可をした中期計画が前条第二項第二号から第六号までに掲げる事項の適正かつ確実な実施上不適当となったと認めるときは、その中期計画を変更すべきことを命ずることができる。
6  支援センターは、第一項の認可を受けたときは、遅滞なく、その中期計画を公表しなければならない。
(中期目標の期間の終了時の検討)
第四十二条  法務大臣は、支援センターの中期目標の期間の終了時において、その業務を継続させる必要性、組織の在り方その他その組織及び業務の全般にわたる検討を行い、その結果に基づき、所要の措置を講ずるものとする。
2  法務大臣は、前項の規定による検討を行うに当たっては、総合法律支援の実施及び体制の整備の重要性を踏まえるものとする。
3  法務大臣は、第一項の規定による検討を行うに当たっては、最高裁判所及び評価委員会の意見を聴かなければならない。
4  準用通則法第三十二条第三項に規定する審議会は、支援センターの中期目標の期間の終了時において、その主要な事務及び事業の改廃に関し、法務大臣に勧告することができる。
5  法務大臣は、前項の勧告を受けたときは、遅滞なく、その内容を最高裁判所に通知しなければならない。
    
第四節 財務及び会計 (略)
    
第五節 雑則(略)
 
第四章 罰則
第五十二条  第二十七条(第二十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反して秘密を漏らした者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第五十三条  準用通則法第六十四条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした支援センターの役員又は職員は、三十万円以下の罰金に処する。
第五十四条  次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした支援センターの役員は、二十万円以下の過料に処する。
一  この法律又は準用通則法の規定により法務大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかったとき。
二  この法律又は準用通則法の規定により法務大臣に届出をしなければならない場合において、その届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。
三  この法律又は準用通則法の規定により公表をしなければならない場合において、その公表をせず、又は虚偽の公表をしたとき。
四  未施行
五  第三十四条第六項(第三十五条第三項及び第三十六条第四項において準用する場合を含む。)又は第四十一条第五項の規定による法務大臣の命令に違反したとき。
六  第四十四条第四項の規定に違反して財務諸表、事業報告書、決算報告書若しくは監事及び会計監査人の意見を記載した書面を備え置かず、又は閲覧に供しなかったとき。
七  準用通則法第九条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠ったとき。
八  準用通則法第三十三条の規定による事業報告書の提出をせず、又は事業報告書に記載すべき事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をして事業報告書を提出したとき。
九  準用通則法第四十七条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
十  準用通則法第六十五条第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
第五十五条  第十八条の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する。

附 則(以下略)
                                            弁護士 三木秀夫

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