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三木秀夫法律事務所
このページは最近話題になったニュースを題材にして、そこに関係する各種法令もしくは
判例などを解説したものです。事実関係は,報道された範囲を前提にしており、関係者の
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2009年12月から、このページは休止とさせていただきました。
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ご関心のある方は、そちらをご覧ください。

ニュース六法目次
最高裁判所裁判官会議で裁判員規則を決定(2007年06月13日)裁判員制 
○2009年に始まる裁判員制度を前に、最高裁は13日、裁判官会議を開き、裁判員裁判の実施場所や裁判員の選任手続き、日当など、制度の細則を定めた「裁判員規則」を制定した。7月上旬に公布され、来秋までに施行される。

裁判員裁判が行われるのは、全国50か所の地裁本庁に、八王子(東京)や堺(大阪)、小倉(福岡)など10支部を加えた計60か所。裁判員が裁判所に出向く負担などを考慮し、支部にも拡大した。今後、専用法廷の整備や、裁判官の配置などの準備が進められる。
 
裁判員の選任手続きは、毎年10月ごろに始められる。翌年1年間で裁判員に選ばれる可能性がある候補者(全国で約36万人)を、選挙人名簿から抽選で選ぶ。実際の事件で、候補者に呼び出し状を送るのは初公判の6週間前。呼び出し状には、審理にかかる日数が記載され、同封の質問票に書いた理由が認められれば、出頭が免除されることもある。(読売新聞2007.06.13)

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裁判員制度の開始が近づきつつある。
基本となる「裁判員法」(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律)(平成16年法律第63号)は、司法改革の一環として協議がされ、平成16年5月に可決成立している。この法律は、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)及び刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の特則で、裁判員裁判に関する必要な事項を定めるものとする。同法が施行されるのは、平成21年5月までの間とされていて、あと2年を切った。今回は主として裁判員の選出方法を中心とした手続きたる最高裁判所による裁判員規則が制定された。

○裁判員制度とは、一般国民から無作為に選ばれた裁判員6名が、裁判官3名と一緒に刑事裁判をする制度である。国民の司法参加により市民が持つ日常感覚や常識といったものを裁判に反映することが主たる目的である。いわゆる「参審制」で、有罪・無罪だけでなく、刑罰まで裁判員が裁判官と協議して決める。
これによって、国民の量刑感覚も反映されることになる。一生のうち、裁判員に選ばれる確率は67人に一人といわれている。市民が裁く刑事裁判が、日本の社会に受け入れられるか、司法改革の成否を計る指標ともなり、法曹の一員としては、非常に心配である。

○裁判員制度導入までの経過は、背景に戦後の刑事司法の大きな二つの対立があった。一つは日弁連が警鐘を鳴らしていた「人質司法」、「調書裁判」、「有罪推定」という司法の現実である。これは刑事司法の理想と程遠いものであり、これを抜本的に変革するためには、司法に国民が直接に参加する以外にはないという意見が強かった。他方、法務・検察庁は治安のよさを売り物にして、職業裁判官で十分であるという主張で、国民の司法参加に反対していた。また、戦前の「陪審制」復活論者からは、裁判員制度は中途半端との反対意見も強くあった。このように、裁判員制度は前面からも、後面からも攻撃を受け続けたが、しかし、司法改革の必要性は、次第に認知されるようになって、ようやく導入に至ったものである。

○裁判員制度導入の目的はともかく、問題点の指摘が多い。
まずは、誤判が多くなるのではないかという心配がある。国民に参加が強制されることからの反発が最も多く、この点での国民の理解が成功の可否を決めるように思う。また、市民の量刑感覚は、感情に流され一般に重罰化傾向が生じないか、場合によっては公開処刑的な恐ろしさも生じかねない、という不安感がある。さらに、裁判員の時間的負担を軽減するために、短期間での終結が必要となるが、それで適正な裁判となるのかどうか。被告人の防御権が本当に守られるのかどうか。公判前整理によって争点や証拠調べを予め絞るため、現行裁判と比べて、時間をかけての真相究明や動機に立ち至った審理が難しくなるのではないかとの不安も大きい。法曹内部でも、こういったことから、根強い反対意見が強く、少しでも失敗との評価が出ると、一挙に廃止の声も出るほどの状況でもある。しかし、司法の抱える構造的な問題点を変革するためには、是非に国民の司法参加は実現しないとならない。課題の克服は、そのための試練ではないか。

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○陪審制と裁判員制度
よく混同されるが、裁判員制度は、アメリカやイギリスの「陪審制」とは違う。

陪審制は、一般市民の陪審員が、有罪か無罪かをきめる制度で、刑罰は裁判官が決める。日本の裁判員制度は、フランス、ドイツ、イタリアで行われている、いわゆる「参審制」で、有罪・無罪だけでなく、刑罰まで裁判員が裁判官と協議して決める。日本も戦前に、15年間だけ陪審制が導入されていた時期があり、484件おこなわれて81件が無罪とされたという。戦後も沖縄では陪審裁判が行われていた。そういった意味で、国民の司法参加は日本にとって全く初めての制度というわけではない。

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○対象事件(裁判員法2条1項)
(1)死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件 
(2)裁判所法第二十六条第二項第二号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。) 

これを分かりやすくいえば、法律上合議体で裁判することが必要とされている重大事件(法定合議事件)であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に関するもので、例えば、外患誘致罪、殺人罪、強盗致死傷罪、傷害致死罪、強姦罪、現住建造物等放火罪などが該当する。民事事件に適用されない。 

○例外(裁判員法3条)
対象事件であっても、例外的に、被告人の言動、被告人がその構成員である団体の主張等の事情から、裁判員等や、その親族等の生命・身体・財産に危害が加えられる恐れ等があり、そのため裁判員候補者又は裁判員が畏怖し、裁判員候補者の出頭を確保することが困難な状況にあり又は裁判員の職務の遂行ができずこれに代わる裁判員の選任も困難であると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、これを裁判官の合議体で取り扱う決定をして、対象事件から除外される。報復の予期される暴力団関連事件などが想定されている。

○裁判所の構成(裁判員法2条2項、3項)
裁判官と裁判員の人数は、原則として裁判官は3人、裁判員は6人となる。
例外的に、被告人が事実関係を争わない事件について裁判官が1人、裁判員が4人とすることもできる。

○裁判官と裁判員の権限(裁判員法6条)
裁判官と並んで裁判員の関与する判断は、@事実の認定、A法令の適用、B刑の量定に及ぶ。 
しかし、以下に掲げる判断は、構成裁判官のみの合議による。 
(1)法令の解釈に係る判断 
(2)訴訟手続に関する判断
(3)その他裁判員の関与する判断以外の判断 

もう少し分かりやすく言えば、裁判員は審理に参加して、有罪か無罪かの判断と、有罪の場合の量刑の判断を行う。しかし、法律の解釈や訴訟手続きなど法律に関する専門知識が必要な判断事項は裁判官が担当する。裁判員は、証人や被告人に質問することができる。

○評決(判断)(裁判員法67条)
構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む(裁判員と裁判官のそれぞれ1名は賛成しなければならないことをいう)合議体の員数の過半数(つまり多数決)で決する。

刑の量定について意見が分かれ、その説が各々、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見にならないときは、その合議体の判断は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見になるまで、被告人に最も不利な意見の数を順次利益な意見の数に加え、その中で最も利益な意見による。 

○裁判員の選任の流れ
衆議院議員の選挙権を有する者の中から選任される。
まず、地方裁判所は、毎年9月1日までに、次年に必要な裁判員候補者の員数をその管轄区域内の市町村に割り当て、これを市町村の選挙管理委員会に通知する。市町村の選挙管理委員会は、衆議院議員の公職選挙人名簿登録者から「くじ」で翌年度の裁判員候補予定者を選んで、その氏名・住所・生年月日を記載した「裁判員候補予定者名簿」として地方裁判所に送付する。地方裁判所は、この名簿を元に、毎年度、「裁判員候補者名簿」を作成し、これに記載された者にその旨が通知される。
 
実際の具体的事件で誰を選任するかであるが、各事件ごとに、地方裁判所において「裁判員候補者名簿」の中から「呼出すべき裁判員候補者」を「くじ」で選定する(この「くじ」に際しては、検察官及び弁護人は立ち会うことができる。)

その後、「呼出すべき裁判員候補者」となった者に「質問票」と「呼出状」が送付され、送付された者は質問票に回答し裁判所に返送する。この質問票で、以下の欠格事由・禁止事由・辞退事由・不適格事由の有無が調べられる。

(欠格事由〜裁判員となることができない者)
@義務教育を終了しない者(義務教育を終了した者と同等以上の学識を有する者はこの限りでない)、A禁錮以上の刑に処せられた者、B心身の故障のため裁判員の職務の遂行に著しい支障がある者 

(禁止事由〜裁判員の職務に就くことができない者)
@国会議員、A国務大臣、B国の行政機関の職員、C裁判官及び裁判官であった者、D検察官及び検察官であった者、E弁護士及び弁護士であった者、F弁理士、G司法書士、H公証人、I司法警察職員としての職務を行う者、J裁判所の職員、K法務省の職員、L国家公安委員会委員及び都道府県公安委員会委員並びに警察職員、M判事、判事補、検事又は弁護士となる資格を有する者、N大学の学部、専攻科又は大学院の法律学の教授又は准教授、O司法修習生、P都道府県知事及び市町村長、Q自衛官、R禁錮以上の刑に当たる罪につき起訴され、その被告事件の終結に至らない者、逮捕又は勾留されている者 

(辞退事由〜辞退の申立てをすることができる者)
@70歳以上の者、A地方公共団体の議会の議員(会期中の者のみ)、B学生又は生徒(常時通学を要する課程に在学する者のみ)、C過去5年以内に裁判員又は補充裁判員の職にあった者、D過去1年以内に裁判員候補者として裁判員等選任手続の期日に出頭したことがある者(不選任の決定があった者を除く)、E過去5年以内に検察審査員又は補充員の職にあった者、F次に掲げる事由その他政令で定めるやむを得ない事由があり、裁判員の職務を行うこと又は裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難な者 
イ 重い疾病又は傷害により裁判所に出頭することが困難であること。
ロ 介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族の介護又は養育を行う必要があること。
ハ その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあること。
ニ 父母の葬式への出席その他の社会生活上の重要な用務であって他の期日に行うことができないものがあること。

(不適格事由〜事件の関係者)
@被告人又は被害者、A被告人又は被害者の親族又は親族であった者、B被告人又は被害者の法定代理人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人、C被告人又は被害者の同居人又は被用者、D事件について告発又は請求をした者、E事件について証人又は鑑定人になった者、F事件について被告人の代理人、弁護人又は補佐人になった者、G事件について検察官又は司法警察職員として職務を行った者、H事件について検察審査員又は審査補助員として職務を行い、又は補充員として検察審査会議を傍聴した者、I事件について原判決又はこれらの裁判の基礎となった取調べに関与した者(受託裁判官として関与した場合は除く) 
(その他の不適格事由)
裁判所がこの法律の定めるところにより不公平な裁判をするおそれがあると認めた者は、当該事件について裁判員となることができない。 

○呼出し後の絞り込み
呼出されて出頭した「裁判員候補者」の中から、「裁判員」と「補充裁判員」が選任されることになる。裁判長は、裁判員候補者に、欠格事由等の有無や、辞退の申立てがあった場合において辞退事由にあたるかどうか、さらに不公平な裁判をするおそれがないかどうかの判断をするため、必要な質問をすることができる。陪席の裁判官、検察官、被告人又は弁護人は、裁判長に対し、判断をするために必要と思料する質問を裁判長が裁判員候補者に対してすることを求めることができる。裁判所は、この質問の回答に基づいて選任しない者を決定する。

さらに、検察官及び被告人は、裁判員候補者について、それぞれ4人(補充裁判員を置く場合はこれより多くなる)を限度に理由を示さず不選任請求できる。これらの手続を経て、裁判員と補充裁判員が決定される。裁判員選定が終わったら、ようやく公判に入ることになる。

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裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
(平成十六年五月二十八日法律第六十三号)
 第一章 総則(第一条―第七条)
 第二章 裁判員
  第一節 総則(第八条―第十二条)
  第二節 選任(第十三条―第四十条)
  第三節 解任等(第四十一条―第四十八条)
 第三章 裁判員の参加する裁判の手続
  第一節 公判準備及び公判手続(第四十九条―第六十三条)
  第二節 刑事訴訟法等の適用に関する特例(第六十四条・第六十五条)
 第四章 評議(第六十六条―第七十条)
 第五章 裁判員等の保護のための措置(第七十一条―第七十三条)
 第六章 雑則(第七十四条―第七十六条)
 第七章 罰則(第七十七条―第八十四条)
 附則
   第一章 総則
(趣旨)
第一条  この法律は、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)及び刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の特則その他の必要な事項を定めるものとする。
(対象事件及び合議体の構成)
第二条  地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第二十六条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
一  死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
二  裁判所法第二十六条第二項第二号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)
2  前項の合議体の裁判官の員数は三人、裁判員の員数は六人とし、裁判官のうち一人を裁判長とする。ただし、次項の決定があったときは、裁判官の員数は一人、裁判員の員数は四人とし、裁判官を裁判長とする。
3  第一項の規定により同項の合議体で取り扱うべき事件(以下「対象事件」という。)のうち、公判前整理手続による争点及び証拠の整理において公訴事実について争いがないと認められ、事件の内容その他の事情を考慮して適当と認められるものについては、裁判所は、裁判官一人及び裁判員四人から成る合議体を構成して審理及び裁判をする旨の決定をすることができる。
4  裁判所は、前項の決定をするには、公判前整理手続において、検察官、被告人及び弁護人に異議のないことを確認しなければならない。
5  第三項の決定は、第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日までにしなければならない。
6  地方裁判所は、第三項の決定があったときは、裁判所法第二十六条第二項の規定にかかわらず、当該決定の時から第三項に規定する合議体が構成されるまでの間、一人の裁判官で事件を取り扱う。
7  裁判所は、被告人の主張、審理の状況その他の事情を考慮して、事件を第三項に規定する合議体で取り扱うことが適当でないと認めたときは、決定で、同項の決定を取り消すことができる。
(対象事件からの除外)
第三条  地方裁判所は、前条第一項各号に掲げる事件について、被告人の言動、被告人がその構成員である団体の主張若しくは当該団体の他の構成員の言動又は現に裁判員候補者若しくは裁判員に対する加害若しくはその告知が行われたことその他の事情により、裁判員候補者、裁判員若しくは裁判員であった者若しくはその親族若しくはこれに準ずる者の生命、身体若しくは財産に危害が加えられるおそれ又はこれらの者の生活の平穏が著しく侵害されるおそれがあり、そのため裁判員候補者又は裁判員が畏怖し、裁判員候補者の出頭を確保することが困難な状況にあり又は裁判員の職務の遂行ができずこれに代わる裁判員の選任も困難であると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、これを裁判官の合議体で取り扱う決定をしなければならない。
2  前項の決定又は同項の請求を却下する決定は、合議体でしなければならない。ただし、当該前条第一項各号に掲げる事件の審判に関与している裁判官は、その決定に関与することはできない。
3  第一項の決定又は同項の請求を却下する決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
4  前条第一項の合議体が構成された後は、職権で第一項の決定をするには、あらかじめ、当該合議体の裁判長の意見を聴かなければならない。
5  刑事訴訟法第四十三条第三項及び第四項並びに第四十四条第一項の規定は、第一項の決定及び同項の請求を却下する決定について準用する。
6  第一項の決定又は同項の請求を却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。この場合においては、即時抗告に関する刑事訴訟法の規定を準用する。
(弁論を併合する事件の取扱い)
第四条  裁判所は、対象事件以外の事件であって、その弁論を対象事件の弁論と併合することが適当と認められるものについては、決定で、これを第二条第一項の合議体で取り扱うことができる。
2  裁判所は、前項の決定をした場合には、刑事訴訟法の規定により、同項の決定に係る事件の弁論と対象事件の弁論とを併合しなければならない。
(罰条変更後の取扱い)
第五条  裁判所は、第二条第一項の合議体で取り扱っている事件の全部又は一部について刑事訴訟法第三百十二条の規定により罰条が撤回又は変更されたため対象事件に該当しなくなったときであっても、当該合議体で当該事件を取り扱うものとする。ただし、審理の状況その他の事情を考慮して適当と認めるときは、決定で、裁判所法第二十六条の定めるところにより、当該事件を一人の裁判官又は裁判官の合議体で取り扱うことができる。
(裁判官及び裁判員の権限)
第六条  第二条第一項の合議体で事件を取り扱う場合において、刑事訴訟法第三百三十三条の規定による刑の言渡しの判決、同法第三百三十四条の規定による刑の免除の判決若しくは同法第三百三十六条の規定による無罪の判決又は少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第五十五条の規定による家庭裁判所への移送の決定に係る裁判所の判断(次項第一号及び第二号に掲げるものを除く。)のうち次に掲げるもの(以下「裁判員の関与する判断」という。)は、第二条第一項の合議体の構成員である裁判官(以下「構成裁判官」という。)及び裁判員の合議による。
一  事実の認定
二  法令の適用
三  刑の量定
2  前項に規定する場合において、次に掲げる裁判所の判断は、構成裁判官の合議による。
一  法令の解釈に係る判断
二  訴訟手続に関する判断(少年法第五十五条の決定を除く。)
三  その他裁判員の関与する判断以外の判断
3  裁判員の関与する判断をするための審理は構成裁判官及び裁判員で行い、それ以外の審理は構成裁判官のみで行う。
第七条  第二条第三項の決定があった場合においては、構成裁判官の合議によるべき判断は、構成裁判官が行う。
   第二章 裁判員
    第一節 総則
(裁判員の職権行使の独立)
第八条  裁判員は、独立してその職権を行う。
(裁判員の義務)
第九条  裁判員は、法令に従い公平誠実にその職務を行わなければならない。
2  裁判員は、第七十条第一項に規定する評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。
3  裁判員は、裁判の公正さに対する信頼を損なうおそれのある行為をしてはならない。
4  裁判員は、その品位を害するような行為をしてはならない。
(補充裁判員)
第十条  裁判所は、審判の期間その他の事情を考慮して必要があると認めるときは、補充裁判員を置くことができる。ただし、補充裁判員の員数は、合議体を構成する裁判員の員数を超えることはできない。
2  補充裁判員は、裁判員の関与する判断をするための審理に立ち会い、第二条第一項の合議体を構成する裁判員の員数に不足が生じた場合に、あらかじめ定める順序に従い、これに代わって、裁判員に選任される。
3  補充裁判員は、訴訟に関する書類及び証拠物を閲覧することができる。
4  前条の規定は、補充裁判員について準用する。
(旅費、日当及び宿泊料)
第十一条  裁判員及び補充裁判員には、最高裁判所規則で定めるところにより、旅費、日当及び宿泊料を支給する。
(公務所等に対する照会)
第十二条  裁判所は、第二十六条第三項(第二十八条第二項、第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含む。)及び第四十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定により選定された裁判員候補者又は裁判員若しくは補充裁判員について、裁判員又は補充裁判員の選任又は解任の判断のため必要があると認めるときは、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
2  地方裁判所は、裁判員候補者について、裁判所の前項の判断に資するため必要があると認めるときは、公務所に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
    第二節 選任
(裁判員の選任資格)
第十三条  裁判員は、衆議院議員の選挙権を有する者の中から、この節の定めるところにより、選任するものとする。
(欠格事由)
第十四条  国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第三十八条の規定に該当する場合のほか、次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員となることができない。
一  学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に定める義務教育を終了しない者。ただし、義務教育を終了した者と同等以上の学識を有する者は、この限りでない。
二  禁錮以上の刑に処せられた者
三  心身の故障のため裁判員の職務の遂行に著しい支障がある者
(就職禁止事由)
第十五条  次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員の職務に就くことができない。
一  国会議員
二  国務大臣
三  次のいずれかに該当する国の行政機関の職員
イ 一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)別表第十指定職俸給表の適用を受ける職員(ニに掲げる者を除く。)
ロ 一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成十二年法律第百二十五号)第七条第一項に規定する俸給表の適用を受ける職員であって、同表七号俸の俸給月額以上の俸給を受けるもの
ハ 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)別表第一及び別表第二の適用を受ける職員
ニ 防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和二十七年法律第二百六十六号。以下「防衛省職員給与法」という。)第四条第一項の規定により一般職の職員の給与に関する法律別表第十指定職俸給表の適用を受ける職員及び防衛省職員給与法第四条第二項の規定により一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律第七条第一項の俸給表に定める額の俸給(同表七号俸の俸給月額以上のものに限る。)を受ける職員
四  裁判官及び裁判官であった者
五  検察官及び検察官であった者
六  弁護士(外国法事務弁護士を含む。以下この項において同じ。)及び弁護士であった者
七  弁理士
八  司法書士
九  公証人
十  司法警察職員としての職務を行う者
十一  裁判所の職員(非常勤の者を除く。)
十二  法務省の職員(非常勤の者を除く。)
十三  国家公安委員会委員及び都道府県公安委員会委員並びに警察職員(非常勤の者を除く。)
十四  判事、判事補、検事又は弁護士となる資格を有する者
十五  学校教育法に定める大学の学部、専攻科又は大学院の法律学の教授又は准教授
十六  司法修習生
十七  都道府県知事及び市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長
十八  自衛官
2  次のいずれかに該当する者も、前項と同様とする。
一  禁錮以上の刑に当たる罪につき起訴され、その被告事件の終結に至らない
二  逮捕又は勾留されている者
(辞退事由)
第十六条  次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員となることについて辞退の申立てをすることができる。
一  年齢七十年以上の者
二  地方公共団体の議会の議員(会期中の者に限る。)
三  学校教育法第一条、第八十二条の二又は第八十三条の学校の学生又は生徒(常時通学を要する課程に在学する者に限る。)
四  過去五年以内に裁判員又は補充裁判員の職にあった者
五  過去一年以内に裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭したことがある者(第三十四条第七項の規定による不選任の決定があった者を除く。)
六  過去五年以内に検察審査会法(昭和二十三年法律第百四十七号)の規定による検察審査員又は補充員の職にあった者
七  次に掲げる事由その他政令で定めるやむを得ない事由があり、裁判員の職務を行うこと又は裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難な者
イ 重い疾病又は傷害により裁判所に出頭することが困難であること。
ロ 介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族の介護又は養育を行う必要があること。
ハ その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあること。
ニ 父母の葬式への出席その他の社会生活上の重要な用務であって他の期日に行うことができないものがあること。
(事件に関連する不適格事由)
第十七条  次の各号のいずれかに該当する者は、当該事件について裁判員となることができない。
一  被告人又は被害者
二  被告人又は被害者の親族又は親族であった者
三  被告人又は被害者の法定代理人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人
四  被告人又は被害者の同居人又は被用者
五  事件について告発又は請求をした者
六  事件について証人又は鑑定人になった者
七  事件について被告人の代理人、弁護人又は補佐人になった者
八  事件について検察官又は司法警察職員として職務を行った者
九  事件について検察審査員又は審査補助員として職務を行い、又は補充員として検察審査会議を傍聴した者
十  事件について刑事訴訟法第二百六十六条第二号の決定、略式命令、同法第三百九十八条から第四百条まで、第四百十二条若しくは第四百十三条の規定により差し戻し、若しくは移送された場合における原判決又はこれらの裁判の基礎となった取調べに関与した者。ただし、受託裁判官として関与した場合は、この限りでない。
(その他の不適格事由)
第十八条  前条のほか、裁判所がこの法律の定めるところにより不公平な裁判をするおそれがあると認めた者は、当該事件について裁判員となることができない。
(準用)
第十九条  第十三条から前条までの規定(裁判員の選任資格、欠格事由、就職禁止事由、辞退事由、事件に関連する不適格事由及びその他の不適格事由)は、補充裁判員に準用する。
(裁判員候補者の員数の割当て及び通知)
第二十条  地方裁判所は、最高裁判所規則で定めるところにより、毎年九月一日までに、次年に必要な裁判員候補者の員数をその管轄区域内の市町村に割り当て、これを市町村の選挙管理委員会に通知しなければならない。
2  前項の裁判員候補者の員数は、最高裁判所規則で定めるところにより、地方裁判所が対象事件の取扱状況その他の事項を勘案して算定した数とする。
(裁判員候補者予定者名簿の調製)
第二十一条  市町村の選挙管理委員会は、前条第一項の通知を受けたときは、選挙人名簿に登録されている者の中から裁判員候補者の予定者として当該通知に係る員数の者(公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第二十七条第一項の規定により選挙人名簿に同法第十一条第一項若しくは第二百五十二条又は政治資金規正法(昭和二十三年法律第百九十四号)第二十八条の規定により選挙権を有しなくなった旨の表示がなされている者を除く。)をくじで選定しなければならない。
2  市町村の選挙管理委員会は、前項の規定により選定した者について、選挙人名簿に記載(公職選挙法第十九条第三項の規定により磁気ディスクをもって調製する選挙人名簿にあっては、記録)をされている氏名、住所及び生年月日の記載(次項の規定により磁気ディスクをもって調製する裁判員候補者予定者名簿にあっては、記録)をした裁判員候補者予定者名簿を調製しなければならない。
3  裁判員候補者予定者名簿は、磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物を含む。以下同じ。)をもって調製することができる。
(裁判員候補者予定者名簿の送付)
第二十二条  市町村の選挙管理委員会は、第二十条第一項の通知を受けた年の十月十五日までに裁判員候補者予定者名簿を当該通知をした地方裁判所に送付しなければならない。
(裁判員候補者名簿の調製)
第二十三条  地方裁判所は、前条の規定により裁判員候補者予定者名簿の送付を受けたときは、これに基づき、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判員候補者の氏名、住所及び生年月日の記載(次項の規定により磁気ディスクをもって調製する裁判員候補者名簿にあっては、記録。第二十五条及び第二十六条第三項において同じ。)をした裁判員候補者名簿を調製しなければならない。
2  裁判員候補者名簿は、磁気ディスクをもって調製することができる。
3  地方裁判所は、裁判員候補者について、死亡したことを知ったとき、第十三条に規定する者に該当しないと認めたとき、第十四条の規定により裁判員となることができない者であると認めたとき又は第十五条第一項各号に掲げる者に該当すると認めたときは、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判員候補者名簿から消除しなければならない。
4  市町村の選挙管理委員会は、第二十一条第一項の規定により選定した裁判員候補者の予定者について、死亡したこと又は衆議院議員の選挙権を有しなくなったことを知ったときは、前条の規定により裁判員候補者予定者名簿を送付した地方裁判所にその旨を通知しなければならない。ただし、当該裁判員候補者予定者名簿を送付した年の次年が経過したときは、この限りでない。
(裁判員候補者の補充の場合の措置)
第二十四条  地方裁判所は、第二十条第一項の規定により通知をした年の次年において、その年に必要な裁判員候補者を補充する必要があると認めたときは、最高裁判所規則で定めるところにより、速やかに、その補充する裁判員候補者の員数をその管轄区域内の市町村に割り当て、これを市町村の選挙管理委員会に通知しなければならない。
2  前三条の規定は、前項の場合に準用する。この場合において、第二十二条中「第二十条第一項の通知を受けた年の十月十五日までに」とあるのは「速やかに」と、前条第一項中「した裁判員候補者名簿」とあるのは「追加した裁判員候補者名簿」と、同条第四項ただし書中「送付した年の次年」とあるのは「送付した年」と読み替えるものとする。
(裁判員候補者への通知)
第二十五条  地方裁判所は、第二十三条第一項(前条第二項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による裁判員候補者名簿の調製をしたときは、当該裁判員候補者名簿に記載をされた者にその旨を通知しなければならない。
(呼び出すべき裁判員候補者の選定)
第二十六条  対象事件につき第一回の公判期日が定まったときは、裁判所は、必要な員数の補充裁判員を置く決定又は補充裁判員を置かない決定をしなければならない。
2  裁判所は、前項の決定をしたときは、審判に要すると見込まれる期間その他の事情を考慮して、呼び出すべき裁判員候補者の員数を定めなければならない。
3  地方裁判所は、裁判員候補者名簿に記載をされた裁判員候補者の中から前項の規定により定められた員数の呼び出すべき裁判員候補者をくじで選定しなければならない。ただし、裁判所の呼出しに応じて次条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者(第三十四条第七項の規定による不選任の決定があった者を除く。)については、その年において再度選定することはできない。
4  地方裁判所は、検察官及び弁護人に対し前項のくじに立ち会う機会を与えなければならない。
(裁判員候補者の呼出し)
第二十七条  裁判所は、裁判員及び補充裁判員の選任のための手続(以下「裁判員等選任手続」という。)を行う期日を定めて、前条第三項の規定により選定された裁判員候補者を呼び出さなければならない。ただし、裁判員等選任手続を行う期日から裁判員の職務が終了すると見込まれる日までの間(以下「職務従事予定期間」という。)において次の各号に掲げるいずれかの事由があると認められる裁判員候補者については、この限りでない。
一  第十三条に規定する者に該当しないこと。
二  第十四条の規定により裁判員となることができない者であること。
三  第十五条第一項各号若しくは第二項各号又は第十七条各号に掲げる者に該当すること。
四  第十六条の規定により裁判員となることについて辞退の申立てがあった裁判員候補者について同条各号に掲げる者に該当すること。
2  前項の呼出しは、呼出状の送達によってする。
3  呼出状には、出頭すべき日時、場所、呼出しに応じないときは過料に処せられることがある旨その他最高裁判所規則で定める事項を記載しなければならない。
4  裁判員等選任手続の期日と裁判員候補者に対する呼出状の送達との間には、最高裁判所規則で定める猶予期間を置かなければならない。
5  裁判所は、第一項の規定による呼出し後その出頭すべき日時までの間に、職務従事予定期間において同項各号に掲げるいずれかの事由があると認められるに至った裁判員候補者については、直ちにその呼出しを取り消さなければならない。
6  裁判所は、前項の規定により呼出しを取り消したときは、速やかに当該裁判員候補者にその旨を通知しなければならない。
(裁判員候補者の追加呼出し)
第二十八条  裁判所は、裁判員等選任手続において裁判員及び必要な員数の補充裁判員を選任するために必要があると認めるときは、追加して必要な員数の裁判員候補者を呼び出すことができる。
2  第二十六条第三項及び第四項並びに前条第一項ただし書及び第二項から第六項までの規定は、前項の場合に準用する。この場合において、第二十六条第三項中「前項の規定により定められた員数」とあるのは、「裁判所が必要と認めた員数」と読み替えるものとする。
(裁判員候補者の出頭義務、旅費等)
第二十九条  呼出しを受けた裁判員候補者は、裁判員等選任手続の期日に出頭しなければならない。
2  裁判所の呼出しに応じて裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者には、最高裁判所規則で定めるところにより、旅費、日当及び宿泊料を支給する。
3  地方裁判所は、裁判所の呼出しに応じて裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者については、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判員候補者名簿から消除しなければならない。ただし、第三十四条第七項の規定による不選任の決定があった裁判員候補者については、この限りでない。
(質問票)
第三十条  裁判所は、裁判員等選任手続に先立ち、第二十六条第三項(第二十八条第二項において準用する場合を含む。)の規定により選定された裁判員候補者が、職務従事予定期間において、第十三条に規定する者に該当するかどうか、第十四条の規定により裁判員となることができない者でないかどうか、第十五条第一項各号若しくは第二項各号又は第十七条各号に掲げる者に該当しないかどうか及び第十六条各号に掲げる者に該当するかどうか並びに不公平な裁判をするおそれがないかどうかの判断に必要な質問をするため、質問票を用いることができる。
2  裁判員候補者は、裁判員等選任手続の期日の日前に質問票の送付を受けたときは、裁判所の指定に従い、当該質問票を返送し又は持参しなければならない。
3  裁判員候補者は、質問票に虚偽の記載をしてはならない。
4  前三項及び次条第二項に定めるもののほか、質問票の記載事項その他の質問票に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
(裁判員候補者に関する情報の開示)
第三十一条  裁判長(第二条第三項の決定があった場合は、裁判官。第三十九条を除き、以下この節において同じ。)は、裁判員等選任手続の期日の二日前までに、呼び出した裁判員候補者の氏名を記載した名簿を検察官及び弁護人に送付しなければならない。
2  裁判長は、裁判員等選任手続の期日の日に、裁判員等選任手続に先立ち、裁判員候補者が提出した質問票の写しを検察官及び弁護人に閲覧させなければならない。
(裁判員等選任手続の列席者等)
第三十二条  裁判員等選任手続は、裁判官及び裁判所書記官が列席し、かつ、検察官及び弁護人が出席して行うものとする。
2  裁判所は、必要と認めるときは、裁判員等選任手続に被告人を出席させることができる。
(裁判員等選任手続の方式)
第三十三条  裁判員等選任手続は、公開しない。
2  裁判員等選任手続の指揮は、裁判長が行う。
3  裁判員等選任手続は、次条第四項及び第三十六条第一項の規定による不選任の決定の請求が裁判員候補者の面前において行われないようにすることその他裁判員候補者の心情に十分配慮して、これを行わなければならない。
4  裁判所は、裁判員等選任手続の続行のため、新たな期日を定めることができる。この場合において、裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者に対し当該新たな期日を通知したときは、呼出状の送達があった場合と同一の効力を有する。
(裁判員候補者に対する質問等)
第三十四条  裁判員等選任手続において、裁判長は、裁判員候補者が、職務従事予定期間において、第十三条に規定する者に該当するかどうか、第十四条の規定により裁判員となることができない者でないかどうか、第十五条第一項各号若しくは第二項各号若しくは第十七条各号に掲げる者に該当しないかどうか若しくは第十六条の規定により裁判員となることについて辞退の申立てがある場合において同条各号に掲げる者に該当するかどうか又は不公平な裁判をするおそれがないかどうかの判断をするため、必要な質問をすることができる。
2  陪席の裁判官、検察官、被告人又は弁護人は、裁判長に対し、前項の判断をするために必要と思料する質問を裁判長が裁判員候補者に対してすることを求めることができる。この場合において、裁判長は、相当と認めるときは、裁判員候補者に対して、当該求めに係る質問をするものとする。
3  裁判員候補者は、前二項の質問に対して正当な理由なく陳述を拒み、又は虚偽の陳述をしてはならない。
4  裁判所は、裁判員候補者が、職務従事予定期間において、第十三条に規定する者に該当しないと認めたとき、第十四条の規定により裁判員となることができない者であると認めたとき又は第十五条第一項各号若しくは第二項各号若しくは第十七条各号に掲げる者に該当すると認めたときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、当該裁判員候補者について不選任の決定をしなければならない。裁判員候補者が不公平な裁判をするおそれがあると認めたときも、同様とする。
5  弁護人は、前項後段の場合において同項の請求をするに当たっては、被告人の明示した意思に反することはできない。
6  第四項の請求を却下する決定には、理由を付さなければならない。
7  裁判所は、第十六条の規定により裁判員となることについて辞退の申立てがあった裁判員候補者について、職務従事予定期間において同条各号に掲げる者に該当すると認めたときは、当該裁判員候補者について不選任の決定をしなければならない。
(異議の申立て)
第三十五条  前条第四項の請求を却下する決定に対しては、対象事件が係属する地方裁判所に異議の申立てをすることができる。
2  前項の異議の申立ては、当該裁判員候補者について第三十七条第一項又は第二項の規定により裁判員又は補充裁判員に選任する決定がされるまでに、原裁判所に対し、申立書を差し出し、又は裁判員等選任手続において口頭で申立ての趣旨及び理由を明らかにすることによりしなければならない。
3  第一項の異議の申立てを受けた地方裁判所は、合議体で決定をしなければならない。
4  第一項の異議の申立てに関しては、即時抗告に関する刑事訴訟法の規定を準用する。この場合において、同法第四百二十三条第二項中「受け取つた日から三日」とあるのは、「受け取り又は口頭による申立てがあつた時から二十四時間」と読み替えるものとする。
(理由を示さない不選任の請求)
第三十六条  検察官及び被告人は、裁判員候補者について、それぞれ、四人(第二条第三項の決定があった場合は、三人)を限度として理由を示さずに不選任の決定の請求(以下「理由を示さない不選任の請求」という。)をすることができる。
2  前項の規定にかかわらず、補充裁判員を置くときは、検察官及び被告人が理由を示さない不選任の請求をすることができる員数は、それぞれ、同項の員数にその選任すべき補充裁判員の員数が一人又は二人のときは一人、三人又は四人のときは二人、五人又は六人のときは三人を加えた員数とする。
3  理由を示さない不選任の請求があったときは、裁判所は、当該理由を示さない不選任の請求に係る裁判員候補者について不選任の決定をする。
4  刑事訴訟法第二十一条第二項の規定は、理由を示さない不選任の請求について準用する。
(選任決定)
第三十七条  裁判所は、くじその他の作為が加わらない方法として最高裁判所規則で定める方法に従い、裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者で不選任の決定がされなかったものから、第二条第二項に規定する員数(当該裁判員候補者の員数がこれに満たないときは、その員数)の裁判員を選任する決定をしなければならない。
2  裁判所は、補充裁判員を置くときは、前項の規定により裁判員を選任する決定をした後、同項に規定する方法に従い、その余の不選任の決定がされなかった裁判員候補者から、第二十六条第一項の規定により決定した員数(当該裁判員候補者の員数がこれに満たないときは、その員数)の補充裁判員を裁判員に選任されるべき順序を定めて選任する決定をしなければならない。
3  裁判所は、前二項の規定により裁判員又は補充裁判員に選任された者以外の不選任の決定がされなかった裁判員候補者については、不選任の決定をするものとする。
(裁判員が不足する場合の措置)
第三十八条  裁判所は、前条第一項の規定により選任された裁判員の員数が選任すべき裁判員の員数に満たないときは、不足する員数の裁判員を選任しなければならない。この場合において、裁判所は、併せて必要と認める員数の補充裁判員を選任することができる。
2  第二十六条(第一項を除く。)から前条までの規定は、前項の規定による裁判員及び補充裁判員の選任について準用する。この場合において、第三十六条第一項中「四人(第二条第三項の決定があった場合は、三人)」とあるのは「選任すべき裁判員の員数が一人又は二人のときは一人、三人又は四人のときは二人、五人又は六人のときは三人」と、前条第一項中「第二条第二項に規定する員数」とあるのは「選任すべき裁判員の員数」と読み替えるものとする。
(宣誓等)
第三十九条  裁判長は、裁判員及び補充裁判員に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判員及び補充裁判員の権限、義務その他必要な事項を説明するものとする。
2  裁判員及び補充裁判員は、最高裁判所規則で定めるところにより、法令に従い公平誠実にその職務を行うことを誓う旨の宣誓をしなければならない。
(最高裁判所規則への委任)
第四十条  第三十二条から前条までに定めるもののほか、裁判員等選任手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
    第三節 解任等
(請求による裁判員等の解任)
第四十一条  検察官、被告人又は弁護人は、裁判所に対し、次の各号のいずれかに該当することを理由として裁判員又は補充裁判員の解任を請求することができる。ただし、第七号に該当することを理由とする請求は、当該裁判員又は補充裁判員についてその選任の決定がされた後に知り、又は生じた原因を理由とするものに限る。
一  裁判員又は補充裁判員が、第三十九条第二項の宣誓をしないとき。
二  裁判員が、第五十二条若しくは第六十三条第一項に定める出頭義務又は第六十六条第二項に定める評議に出席する義務に違反し、引き続きその職務を行わせることが適当でないとき。
三  補充裁判員が、第五十二条に定める出頭義務に違反し、引き続きその職務を行わせることが適当でないとき。
四  裁判員が、第九条、第六十六条第四項若しくは第七十条第一項に定める義務又は第六十六条第二項に定める意見を述べる義務に違反し、引き続きその職務を行わせることが適当でないとき。
五  補充裁判員が、第十条第四項において準用する第九条に定める義務又は第七十条第一項に定める義務に違反し、引き続きその職務を行わせることが適当でないとき。
六  裁判員又は補充裁判員が、第十三条(第十九条において準用する場合を含む。)に規定する者に該当しないとき、第十四条(第十九条において準用する場合を含む。)の規定により裁判員若しくは補充裁判員となることができない者であるとき又は第十五条第一項各号若しくは第二項各号若しくは第十七条各号(これらの規定を第十九条において準用する場合を含む。)に掲げる者に該当するとき。
七  裁判員又は補充裁判員が、不公平な裁判をするおそれがあるとき。
八  裁判員又は補充裁判員が、裁判員候補者であったときに、質問票に虚偽の記載をし、又は裁判員等選任手続における質問に対して正当な理由なく陳述を拒み、若しくは虚偽の陳述をしていたことが明らかとなり、引き続きその職務を行わせることが適当でないとき。
九  裁判員又は補充裁判員が、公判廷において、裁判長が命じた事項に従わず又は暴言その他の不穏当な言動をすることによって公判手続の進行を妨げたとき。
2  裁判所は、前項の請求を受けたときは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に規定する決定をし、その余の場合には、構成裁判官の所属する地方裁判所に当該請求に係る事件を送付しなければならない。
一  請求に理由がないことが明らかなとき又は請求が前項ただし書の規定に違反してされたものであるとき 当該請求を却下する決定
二  前項第一号から第三号まで、第六号又は第九号に該当すると認めるとき 当該裁判員又は補充裁判員を解任する決定
3  前項の規定により事件の送付を受けた地方裁判所は、第一項各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該裁判員又は補充裁判員を解任する決定をする。
4  前項の地方裁判所による第一項の請求についての決定は、合議体でしなければならない。ただし、同項の請求を受けた裁判所の構成裁判官は、その決定に関与することはできない。
5  第一項の請求についての決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
6  第二項第二号又は第三項の規定により裁判員又は補充裁判員を解任する決定をするには、当該裁判員又は補充裁判員に陳述の機会を与えなければならない。ただし、第一項第一号から第三号まで又は第九号に該当することを理由として解任する決定をするときは、この限りでない。
7  第一項の請求を却下する決定には、理由を付さなければならない。
(異議の申立て)
第四十二条  前条第一項の請求を却下する決定に対しては、当該決定に関与した裁判官の所属する地方裁判所に異議の申立てをすることができる。
2  前項の異議の申立てを受けた地方裁判所は、合議体で決定をしなければならない。ただし、前条第一項の請求を受けた裁判所の構成裁判官は、当該異議の申立てがあった決定に関与していない場合であっても、その決定に関与することはできない。
3  第一項の異議の申立てに関しては、即時抗告に関する刑事訴訟法の規定を準用する。この場合において、同法第四百二十二条及び第四百二十三条第二項中「三日」とあるのは、「一日」と読み替えるものとする。
(職権による裁判員等の解任)
第四十三条  裁判所は、第四十一条第一項第一号から第三号まで、第六号又は第九号に該当すると認めるときは、職権で、裁判員又は補充裁判員を解任する決定をする。
2  裁判所が、第四十一条第一項第四号、第五号、第七号又は第八号に該当すると疑うに足りる相当な理由があると思料するときは、裁判長は、その所属する地方裁判所に対し、理由を付してその旨を通知するものとする。
3  前項の規定による通知を受けた地方裁判所は、第四十一条第一項第四号、第五号、第七号又は第八号に該当すると認めるときは、当該裁判員又は補充裁判員を解任する決定をする。
4  前項の決定は合議体でしなければならない。ただし、第二項の裁判所の構成裁判官は、その決定に関与することはできない。
5  第一項及び第三項の規定による決定については、第四十一条第五項及び第六項の規定を準用する。
(裁判員等の申立てによる解任)
第四十四条  裁判員又は補充裁判員は、裁判所に対し、その選任の決定がされた後に生じた第十六条第七号に規定する事由により裁判員又は補充裁判員の職務を行うことが困難であることを理由として辞任の申立てをすることができる。
2  裁判所は、前項の申立てを受けた場合において、その理由があると認めるときは、当該裁判員又は補充裁判員を解任する決定をしなければならない。
(補充裁判員の解任)
第四十五条  裁判所は、補充裁判員に引き続きその職務を行わせる必要がないと認めるときは、当該補充裁判員を解任する決定をすることができる。
(裁判員の追加選任)
第四十六条  裁判所は、第二条第一項の合議体を構成する裁判員の員数に不足が生じた場合において、補充裁判員があるときは、その補充裁判員の選任の決定において定められた順序に従い、補充裁判員を裁判員に選任する決定をするものとする。
2  前項の場合において、裁判員に選任すべき補充裁判員がないときは、裁判所は、不足する員数の裁判員を選任しなければならない。この場合においては、第三十八条の規定を準用する。
(補充裁判員の追加選任)
第四十七条  裁判所は、補充裁判員を新たに置き、又は追加する必要があると認めるときは、必要と認める員数の補充裁判員を選任することができる。
2  裁判員の選任に関する第二十六条(第一項を除く。)から第三十五条まで及び第三十六条(第二項を除く。)の規定並びに第三十七条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による補充裁判員の選任について準用する。この場合において、第三十六条第一項中「四人(第二条第三項の決定があった場合は、三人)」とあるのは、「選任すべき補充裁判員の員数が一人又は二人のときは一人、三人又は四人のときは二人、五人又は六人のときは三人」と読み替えるものとする。
(裁判員等の任務の終了)
第四十八条  裁判員及び補充裁判員の任務は、次のいずれかに該当するときに終了する。
一  終局裁判を告知したとき。
二  第三条第一項又は第五条ただし書の決定により、第二条第一項の合議体が取り扱っている事件のすべてを一人の裁判官又は裁判官の合議体で取り扱うこととなったとき。
   第三章 裁判員の参加する裁判の手続
    第一節 公判準備及び公判手続
(公判前整理手続)
第四十九条  裁判所は、対象事件については、第一回の公判期日前に、これを公判前整理手続に付さなければならない。
(第一回の公判期日前の鑑定)
第五十条  裁判所は、第二条第一項の合議体で取り扱うべき事件につき、公判前整理手続において鑑定を行うことを決定した場合において、当該鑑定の結果の報告がなされるまでに相当の期間を要すると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、公判前整理手続において鑑定の手続(鑑定の経過及び結果の報告を除く。)を行う旨の決定(以下この条において「鑑定手続実施決定」という。)をすることができる。
2  鑑定手続実施決定をし、又は前項の請求を却下する決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
3  鑑定手続実施決定があった場合には、公判前整理手続において、鑑定の手続のうち、鑑定の経過及び結果の報告以外のものを行うことができる。
(裁判員の負担に対する配慮)
第五十一条  裁判官、検察官及び弁護人は、裁判員の負担が過重なものとならないようにしつつ、裁判員がその職責を十分に果たすことができるよう、審理を迅速で分かりやすいものとすることに努めなければならない。
(出頭義務)
第五十二条  裁判員及び補充裁判員は、裁判員の関与する判断をするための審理をすべき公判期日並びに公判準備において裁判所がする証人その他の者の尋問及び検証の日時及び場所に出頭しなければならない。
(公判期日等の通知)
第五十三条  前条の規定により裁判員及び補充裁判員が出頭しなければならない公判期日並びに公判準備において裁判所がする証人その他の者の尋問及び検証の日時及び場所は、あらかじめ、裁判員及び補充裁判員に通知しなければならない。
(開廷の要件)
第五十四条  裁判員の関与する判断をするための審理をすべき公判期日においては、公判廷は、裁判官、裁判員及び裁判所書記官が列席し、かつ、検察官が出席して開く。
2  前項の場合を除き、公判廷は、裁判官及び裁判所書記官が列席し、かつ、検察官が出席して開く。
(冒頭陳述に当たっての義務)
第五十五条  検察官が刑事訴訟法第二百九十六条の規定により証拠により証明すべき事実を明らかにするに当たっては、公判前整理手続における争点及び証拠の整理の結果に基づき、証拠との関係を具体的に明示しなければならない。被告人又は弁護人が同法三百十六条の三十の規定により証拠により証明すべき事実を明らかにする場合も、同様とする。
(証人等に対する尋問)
第五十六条  裁判所が証人その他の者を尋問する場合には、裁判員は、裁判長に告げて、裁判員の関与する判断に必要な事項について尋問することができる。
(裁判所外での証人尋問等)
第五十七条  裁判員の関与する判断に必要な事項について裁判所外で証人その他の者を尋問すべき場合において、構成裁判官にこれをさせるときは、裁判員及び補充裁判員はこれに立ち会うことができる。この尋問に立ち会った裁判員は、構成裁判官に告げて、証人その他の者を尋問することができる。
2  裁判員の関与する判断に必要な事項について公判廷外において検証をすべき場合において、構成裁判官にこれをさせるときも、前項前段と同様とする。
(被害者等に対する質問)
第五十八条  刑事訴訟法第二百九十二条の二第一項の規定により被害者又はその法定代理人(被害者が死亡した場合においては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹。以下この条において同じ。)が意見を陳述したときは、裁判員は、その陳述の後に、その趣旨を明確にするため、当該被害者又はその法定代理人に質問することができる。
(被告人に対する質問)
第五十九条  刑事訴訟法第三百十一条の規定により被告人が任意に供述をする場合には、裁判員は、裁判長に告げて、いつでも、裁判員の関与する判断に必要な事項について被告人の供述を求めることができる。
(裁判員等の審理立会い)
第六十条  裁判所は、裁判員の関与する判断をするための審理以外の審理についても、裁判員及び補充裁判員の立会いを許すことができる。
(公判手続の更新)
第六十一条  公判手続が開始された後新たに第二条第一項の合議体に加わった裁判員があるときは、公判手続を更新しなければならない。
2  前項の更新の手続は、新たに加わった裁判員が、争点及び取り調べた証拠を理解することができ、かつ、その負担が過重にならないようなものとしなければならない。
(自由心証主義)
第六十二条  裁判員の関与する判断に関しては、証拠の証明力は、それぞれの裁判官及び裁判員の自由な判断にゆだねる。
(判決の宣告等)
第六十三条  刑事訴訟法第三百三十三条の規定による刑の言渡しの判決、同法第三百三十四条の規定による刑の免除の判決及び同法第三百三十六条の規定による無罪の判決並びに少年法第五十五条の規定による家庭裁判所への移送の決定の宣告をする場合には、裁判員は公判期日に出頭しなければならない。ただし、裁判員が出頭しないことは、当該判決又は決定の宣告を妨げるものではない。
2  前項に規定する場合には、あらかじめ、裁判員に公判期日を通知しなければならない。
    第二節 刑事訴訟法等の適用に関する特例
(刑事訴訟法の適用に関する特例)
第六十四条  第二条第一項の合議体で事件が取り扱われる場合における刑事訴訟法の規定の適用については、次の表の上欄に掲げる同法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句とする。
第四十三条第四項、第六十九条、第七十六条第二項、第八十五条、第百八条第三項、第百二十五条第一項、第百六十三条第一項、第百六十九条、第二百七十八条の二第二項、第二百九十七条第二項、第三百十六条の十一合議体の構成員合議体の構成員である裁判官
第八十一条逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由逃亡し若しくは罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由又は裁判員若しくは補充裁判員に、面会、文書の送付その他の方法により接触すると疑うに足りる相当な理由
第八十九条第五号被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくはこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき、又は裁判員若しくは補充裁判員に、面会、文書の送付その他の方法により接触すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
第九十六条第一項第四号被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、若しくはこれらの者を畏怖させる行為をしたとき、又は裁判員若しくは補充裁判員に、面会、文書の送付その他の方法により接触したとき。
第百五十七条の二、第百五十七条の四第一項、第四百三十五条第七号ただし書裁判官裁判官、裁判員
第二百五十六条第六項裁判官裁判官又は裁判員
第三百四条第一項裁判長又は陪席の裁判官裁判長、陪席の裁判官又は裁判員
第三百十六条の十五第一項第二号裁判所又は裁判官裁判所、裁判官又は裁判官及び裁判員
第三百二十一条第二項裁判所若しくは裁判官裁判所、裁判官若しくは裁判官及び裁判員
第三百七十七条第一号法律に従つて判決裁判所を構成しなかつたこと。法律に従つて判決裁判所を構成しなかつたこと。ただし、裁判員の構成にのみ違法がある場合であつて、判決が裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成十六年法律第六十三号)第六条第一項に規定する裁判員の関与する判断を含まないものであるとき、又はその違法が裁判員が同法第十五条第一項各号若しくは第二項各号に掲げる者に該当することであるときは、この限りでない。
第四百三十五条第七号本文原判決に関与した裁判官原判決に関与した裁判官若しくは裁判員

(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の適用に関する特例)
第六十五条  第二条第一項の合議体で事件が取り扱われる場合における組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)第二十二条第四項の適用については、同項中「合議体の構成員」とあるのは、「合議体の構成員である裁判官」とする。
   第四章 評議
(評議)
第六十六条  第二条第一項の合議体における裁判員の関与する判断のための評議は、構成裁判官及び裁判員が行う。
2  裁判員は、前項の評議に出席し、意見を述べなければならない。
3  裁判長は、必要と認めるときは、第一項の評議において、裁判員に対し、構成裁判官の合議による法令の解釈に係る判断及び訴訟手続に関する判断を示さなければならない。
4  裁判員は、前項の判断が示された場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。
5  裁判長は、第一項の評議において、裁判員に対して必要な法令に関する説明を丁寧に行うとともに、評議を裁判員に分かりやすいものとなるように整理し、裁判員が発言する機会を十分に設けるなど、裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮しなければならない。
(評決)
第六十七条  前条第一項の評議における裁判員の関与する判断は、裁判所法第七十七条の規定にかかわらず、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。
2  刑の量定について意見が分かれ、その説が各々、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見にならないときは、その合議体の判断は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見になるまで、被告人に最も不利な意見の数を順次利益な意見の数に加え、その中で最も利益な意見による。
(構成裁判官による評議)
第六十八条  構成裁判官の合議によるべき判断のための評議は、構成裁判官のみが行う。
2  前項の評議については、裁判所法第七十五条第一項及び第二項前段、第七十六条並びに第七十七条の規定に従う。
3  構成裁判官は、その合議により、裁判員に第一項の評議の傍聴を許し、第六条第二項各号に掲げる判断について裁判員の意見を聴くことができる。
(補充裁判員の傍聴等)
第六十九条  補充裁判員は、構成裁判官及び裁判員が行う評議並びに構成裁判官のみが行う評議であって裁判員の傍聴が許されたものを傍聴することができる。
2  構成裁判官は、その合議により、補充裁判員の意見を聴くことができる。
(評議の秘密)
第七十条  構成裁判官及び裁判員が行う評議並びに構成裁判官のみが行う評議であって裁判員の傍聴が許されたものの経過並びにそれぞれの裁判官及び裁判員の意見並びにその多少の数(以下「評議の秘密」という。)については、これを漏らしてはならない。
2  前項の場合を除き、構成裁判官のみが行う評議については、裁判所法第七十五条第二項後段の規定に従う。
   第五章 裁判員等の保護のための措置
(不利益取扱いの禁止)
第七十一条  労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したことその他裁判員、補充裁判員若しくは裁判員候補者であること又はこれらの者であったことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
(裁判員等を特定するに足りる情報の取扱い)
第七十二条  何人も、裁判員、補充裁判員又は裁判員候補者若しくはその予定者の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならない。これらであった者の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報についても、本人がこれを公にすることに同意している場合を除き、同様とする。
(裁判員等に対する接触の規制)
第七十三条  何人も、被告事件に関し、当該被告事件の裁判員又は補充裁判員に接触してはならない。
2  何人も、裁判員又は補充裁判員が職務上知り得た秘密を知る目的で、裁判員又は補充裁判員の職にあった者に接触してはならない。
   第六章 雑則
(運用状況の公表)
第七十四条  最高裁判所は、毎年、対象事件の取扱状況、裁判員及び補充裁判員の選任状況その他この法律の実施状況に関する資料を公表するものとする。
(指定都市の区に対するこの法律の適用)
第七十五条  地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市においては、第二十条第一項並びに第二十一条第一項及び第二項、第二十二条並びに第二十三条第四項(これらの規定を第二十四条第二項において準用する場合を含む。)並びに第二十四条第一項の規定中市に関する規定は、区にこれを適用する。
(事務の区分)
第七十六条  第二十一条第一項及び第二項、第二十二条並びに第二十三条第四項(これらの規定を第二十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定により市町村が処理することとされている事務は、地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。
   第七章 罰則
(裁判員等に対する請託罪等)
第七十七条  法令の定める手続により行う場合を除き、裁判員又は補充裁判員に対し、その職務に関し、請託をした者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
2  法令の定める手続により行う場合を除き、被告事件の審判に影響を及ぼす目的で、裁判員又は補充裁判員に対し、事実の認定、刑の量定その他の裁判員として行う判断について意見を述べ又はこれについての情報を提供した者も、前項と同様とする。
(裁判員等に対する威迫罪)
第七十八条  被告事件に関し、当該被告事件の裁判員若しくは補充裁判員若しくはこれらの職にあった者又はその親族に対し、面会、文書の送付、電話をかけることその他のいかなる方法をもってするかを問わず、威迫の行為をした者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
2  被告事件に関し、当該被告事件の裁判員候補者又はその親族に対し、面会、文書の送付、電話をかけることその他のいかなる方法をもってするかを問わず、威迫の行為をした者も、前項と同様とする。
(裁判員等による秘密漏示罪)
第七十九条  裁判員又は補充裁判員が、評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2  裁判員又は補充裁判員の職にあった者が次の各号のいずれかに該当するときも、前項と同様とする。
一  職務上知り得た秘密(評議の秘密を除く。)を漏らしたとき。
二  評議の秘密のうち構成裁判官及び裁判員が行う評議又は構成裁判官のみが行う評議であって裁判員の傍聴が許されたもののそれぞれの裁判官若しくは裁判員の意見又はその多少の数を漏らしたとき。
三  財産上の利益その他の利益を得る目的で、評議の秘密(前号に規定するものを除く。)を漏らしたとき。
3  前項第三号の場合を除き、裁判員又は補充裁判員の職にあった者が、評議の秘密(同項第二号に規定するものを除く。)を漏らしたときは、五十万円以下の罰金に処する。
4  裁判員又は補充裁判員が、構成裁判官又はその被告事件の他の裁判員若しくは補充裁判員以外の者に対し、当該被告事件において認定すべきであると考える事実若しくは量定すべきであると考える刑を述べたとき、又は当該被告事件において裁判所により認定されると考える事実若しくは量定されると考える刑を述べたときも、第一項と同様とする。
5  裁判員又は補充裁判員の職にあった者が、構成裁判官であった者又はその被告事件の他の裁判員若しくは補充裁判員の職にあった者以外の者に対し、当該被告事件の裁判所による事実の認定又は刑の量定の当否を述べたときも、第一項と同様とする。
(裁判員の氏名等漏示罪)
第八十条  検察官若しくは弁護人若しくはこれらの職にあった者又は被告人若しくは被告人であった者が、正当な理由がなく、被告事件の裁判員候補者の氏名、裁判員候補者が第三十条に規定する質問票に記載した内容又は裁判員等選任手続における裁判員候補者の陳述の内容を漏らしたときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(裁判員候補者による虚偽記載罪等)
第八十一条  裁判員候補者が、第三十条に規定する質問票に虚偽の記載をして裁判所に提出し、又は裁判員等選任手続における質問に対して虚偽の陳述をしたときは、五十万円以下の罰金に処する。
(裁判員候補者の虚偽記載等に対する過料)
第八十二条  裁判員候補者が、第三十条第三項又は第三十四条第三項(これらの規定を第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含む。)及び第四十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、質問票に虚偽の記載をし、又は裁判員等選任手続における質問に対して正当な理由なく陳述を拒み、若しくは虚偽の陳述をしたときは、裁判所は、決定で、三十万円以下の過料に処する。
(裁判員候補者の不出頭等に対する過料)
第八十三条  次の各号のいずれかに当たる場合には、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
一  呼出しを受けた裁判員候補者が、第二十九条第一項(第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含む。)及び第四十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、正当な理由がなく出頭しないとき。
二  裁判員又は補充裁判員が、正当な理由がなく第三十九条第二項の宣誓を拒んだとき。
三  裁判員又は補充裁判員が、第五十二条の規定に違反して、正当な理由がなく、公判期日又は公判準備において裁判所がする証人その他の者の尋問若しくは検証の日時及び場所に出頭しないとき。
四  裁判員が、第六十三条第一項の規定に違反して、正当な理由がなく、公判期日に出頭しないとき。
(即時抗告)
第八十四条  前二条の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

   附 則 抄
(施行期日)
第一条  この法律は、公布の日から起算して五年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一  次条及び附則第三条の規定 公布の日
二  第二十条から第二十三条まで、第二十五条、第七十一条、第七十二条、第七十五条、第七十六条及び附則第五条の規定 公布の日から起算して四年六月を超えない範囲内において政令で定める日
三  第十七条第九号の規定(審査補助員に係る部分に限る。) 刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成十六年法律第六十二号)附則第一条第二号に定める日又はこの法律の施行の日のいずれか遅い日
(以下略)
                                            弁護士 三木秀夫

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