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三木秀夫法律事務所
このページは最近話題になったニュースを題材にして、そこに関係する各種法令もしくは
判例などを解説したものです。事実関係は,報道された範囲を前提にしており、関係者の
いずれをも擁護したり非難する目的で記述したものではありません。もし、訂正その他の
ご意見感想をお持ちの方は、メールにてご一報くだされば幸いです。
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【お知らせ】
2009年12月から、このページは休止とさせていただきました。
同名での記事を、当事務所メールマガジンにて毎月発刊しています。
ご関心のある方は、そちらをご覧ください。

ニュース六法目次
ストーカー行為の疑いで判事を逮捕(2008年05月21日)ストーカー行為規制 
○20代女性に何度も合おうと誘う携帯メールを送り不安を覚えさせたとして、山梨県警は21日、ストーカー行為規制法違反の疑いで、宇都宮地裁判事のS容疑者を逮捕した。県警は「メールで被害者に義務のない面会を行うよう要求し、行動の自由が著しく害される不安を覚えさせており、ストーカー行為にあたる」としている。調べでは、S容疑者は山梨県内に住む女性に対する恋愛感情や、好意が満たされないことへの怨恨を充足させる目的で、2月19日から3月19日ごろにかけて十数回にわたり、女性の携帯電話に「今度、いつ会えるかなあ」「今、何をしているの」などのメールを送信した疑い。女性の名誉を害するメールも送っていたという。(2008.5.21 MSN産経ニュース 容疑者氏名はイニシャルに変更)

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○初めにこのニュースを聞いた時は、まさか、裁判官がそんなはずはない、という思いだった。たぶん、法曹だけでなく、世間一般が驚くニュースだろう。その後、任官時期を見ると、どうも私と司法修習同期であったようだし、相手の女性も裁判所職員だったというから、さらにびっくりした。

○同判事は4月1日付で宇都宮地裁、家裁の足利支部長に着任したが、同10日に今回の容疑で捜査対象になっていることが分かり、以降は自宅待機になったようで、23日には支部長職がはずれて同地裁判事となっている。今回の逮捕は、そういった意味で、約1ヶ月半前から裁判所内部では大問題化していたものと思う。まだ、容疑の段階であり、犯罪として確定したわけではないので、いい加減なことは言えないが、仮に容疑が本当だとしたならば、司法の信頼を大きく揺るがす事件である。山梨県警は、S容疑者が3月まで勤務していた甲府地、家裁都留支部を家宅捜索したようである。逮捕時の逮捕令状もそうだが、裁判所を対象とする家宅捜査令状も、別の裁判官が発令していることになるが、その心境はさすがに複雑なものであったろう。

○ただ、報道で見る限りは、逮捕容疑の事実は、2月中旬以降に自宅やインターネットカフェのパソコンから「今度いつ会える」「今何しているの」などのメールを十数回、裁判所職員の女性の携帯電話に送信していた疑いということであるが、経験からすると、その段階で事前警告することなく、いきなり逮捕するというのも若干の違和感がないではないただ、メールの内容は報道されたものだけなら何でもない内容であるが、内容が被害女性のプライバシーにも関わるものの場合は被害者保護のために公開はされない。たぶん、逮捕に至った最大の理由は、メールの内容がかなりひどいものだったのかもしれない。

○ストーカー行為規制法による事前警告をしなかったのには、他の要素もあったかもしれない。捜査が容疑者に突き当たったものの、その時点では匿名メールが来なくなっていたからという可能性もある。逮捕までに至ったのは、容疑者が被害者や捜査の動向を把握していたようであるから、証拠隠滅の恐れがあったとして行ったものと思うが、他の要因もあろう。裁判官という地位からして、これを緩く扱うと、同じ法曹である裁判所に対する検察・警察による遠慮があったとして批判されることを恐れて、より厳しく対処したのかもしれない。逆にいえば、司法に携わる者は、通常の人よりも襟を正すべきだということであろう。

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○なお、この文章を書いている25日の時点で、S容疑者はメールを送ったことは認めているが、「恋愛目的ではない」と容疑を否認しているとのことが報道されている。ストーカー行為規制法の違反に問うためには、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」が必要であり、恋愛目的の否定はこの犯罪自体の存在がないことを意味する。今後の捜査が気になるところである。もちろん、人権に配慮しながらの適正な捜査を望みたい。

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ストーカー行為規制法の正式名は、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」という。いわゆる桶川ストーカー殺人事件が契機となって制定された(2000年(平成12年)11月24日に施行)。

○2008年3月13日に報じられた時事通信の下記の記事「ストーカー被害1万3000件=2年連続増、「警告」最多−警察庁」から、最近の傾向がよく分かる。
「昨年1年間に全国の警察が認知したストーカー被害は前年比7.7%増の1万3463件で、2年連続で増加したことが13日、警察庁のまとめで分かった。ストーカー規制法に基づく警告は0.7%増の1384件で、2000年11月の同法施行後、最多。同法違反の検挙も32.2%増の242件で最も多く、同庁は「しつこい付きまといなど深刻なケースが増えている」としている。同法以外での検挙は10.0%増の718件。このうち傷害が113件で最も多く、器物損壊が110件、住居侵入が103件など。脅迫は85件、暴行が41件、殺人未遂が3件だった。」(2008年3月13日時事通信)

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ストーカー(stalker)という言葉は、特定の他者に対して執拗につきまとう行為を行なう人間を指し、その行為はストーカー行為あるいはストーキングと呼ばれる。ストーカー行為規制法では、「つきまとい等」と「ストーカー行為」を、定義を明確にして規制している。保護対象は女性に限られず、男性も本法によって保護される。

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「つきまとい等」とは
ストーカー行為規制法での「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう、と規定し(同法2条1項)、 何人も、「つきまとい等」をして、その相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせてはならない、としている(同法3条)。

@つきまとい・待ち伏せ・押しかけ
つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(住居等)の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること。 
A監視していると告げる行為
その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。(例:「今日は○○デパートでバッグを買っていたね」と、口頭・電話や電子メール等で告げたり、自転車の前カゴにメモを置いたりすることなど。)
B面会・交際要求
面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。 
C粗野又は乱暴な言動
著しく粗野又は乱暴な言動をすること。(例:大声で「この馬鹿おんな」と乱暴な言葉を発したり、自宅の前で車のクラクションを鳴らすことなど。)
D無言電話・連続電話FAX
電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ若しくはファクシミリ装置を用いて送信すること。 
E不快・嫌悪物の送付等
汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。 
F名誉侵害
その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。 
G性的羞恥心を害する行為
その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置くこと。(例:わいせつ写真を自宅に送ったり、電話や手紙などで「この売春女」などと卑劣な言葉を告げる行為など。)

○「ストーカー行為」とは
ストーカー規制法での「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、前述の「つきまとい等」を反復してすることをいう。
ただし、前述の「つきまとい等」の8行為類型のうち、@からCまでの行為(つきまとい・待ち伏せ・押しかけ、監視していると告げる行為、面会・交際要求、粗野又は乱暴な言動)については、「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合」のみ対象となる。

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○警告
警視総監若しくは道府県警察本部長又は警察署長(警察本部長等)は、「つきまとい等」の被害者から警告を求める旨の申出を受けた場合は、違反行為があり、かつ、さらにその行為を続ける恐れがあると認めたときは、行為者に対して、違反行為をしてはならない旨を警告することができる。(同法4条1項) 
この警告実施後は、約90%の者がその後の行為をやめているようである。しかし、仮に行為がいったん止まっても、油断をせずに定期的に警察等との連絡を行うことにより、さらなる被害の発生を防止する必要がある。

○仮の命令
警察本部長等は、警告(同法4条1項)の申出を受けた場合、つきまとい・待ち伏せ・押しかけ行為(同法2条1項1号行為)があり、かつ、当該行為者がその行為を継続する恐れがあると認めるとともに、申出者の身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害されることを防止するために緊急の必要があると認めるときは、聴聞又は弁明手続きをせずに、当該行為をしてはならない旨の命令(仮の命令)をすることができる。(同法6条)  この仮の命令の効力は15日間で、仮の命令後に、公安委員会は、15日以内に、相手方の意見聴取を行わなければならない。 

○禁止命令
公安委員会は、警告を受けた者が警告に従わずに、なお「つきまとい行為」をした場合において、さらに違反行為を続ける恐れがあるときは、聴聞をしたうえで、その違反行為の禁止と、防止するために必要な事項を命令することができる。(同法5条1項、2項) 

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○罰則
ストーカー行為そのものの罰則と、都道府県公安委員会の禁止命令への違反の罰則の2段となっている。

○前者(ストーカー行為そのもの)は6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金となっている。親告罪で被害者の告訴がないと公訴は提起できない。(同法13条)

○後者(都道府県公安委員会が禁止命令を出したがこの命令に従わずストーカー行為等をした場合)には1年以下の懲役または100万円の以下の罰金(同法14条)で、このほか、禁止命令等に違反した者は、50万円以下の罰金(同法15条)となる。

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○援助活動
警察本部長等は、ストーカー行為等の被害者から援助を求める申出があったときは、被害を自ら防止するための教示のほか、弁護士の紹介や防犯アラームの貸し出しなど、国家公安委員会規則が定める必要な援助を行う。 警察本部長等は、この援助を行うに当たって、関係の行政機関や公私の団体と連携を図るよう努めなければならないとされている。 (同法7条)

○国、地方公共団体、関係事業者等の支援
国及び地方公共団体は、防止に関する啓発及び知識の普及、被害者に対する支援や防止活動等を行っているNPOへの活動支援に努めなければならない。関係事業者は、被害者の求めに応じて、被害防止のための措置に努めるものとされる。また、地域住民も、被害者に対する援助に努めるものとされている。 (同法8条)

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○適用上の注意
同法は、最後に、同法の適用に当たって国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して、他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならないとの注意を明記している。 (同法16条)

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○ストーカー行為等の規制等に関する法律
(平成十二年五月二十四日法律第八十一号)

(目的)
第一条  この法律は、ストーカー行為を処罰する等ストーカー行為等について必要な規制を行うとともに、その相手方に対する援助の措置等を定めることにより、個人の身体、自由及び名誉に対する危害の発生を防止し、あわせて国民の生活の安全と平穏に資することを目的とする。 
(定義)
第二条  この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
一  つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること。
二  その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
三  面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
四  著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
五  電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ若しくはファクシミリ装置を用いて送信すること。
六  汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
七  その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
八  その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置くこと。
2  この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(前項第一号から第四号までに掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすることをいう。
(つきまとい等をして不安を覚えさせることの禁止)
第三条  何人も、つきまとい等をして、その相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせてはならない。
(警告)
第四条  警視総監若しくは道府県警察本部長又は警察署長(以下「警察本部長等」という。)は、つきまとい等をされたとして当該つきまとい等に係る警告を求める旨の申出を受けた場合において、当該申出に係る前条の規定に違反する行為があり、かつ、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときは、当該行為をした者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、更に反復して当該行為をしてはならない旨を警告することができる。
2  一の警察本部長等が前項の規定による警告(以下「警告」という。)をした場合には、他の警察本部長等は、当該警告を受けた者に対し、当該警告に係る前条の規定に違反する行為について警告又は第六条第一項の規定による命令をすることができない。
3  警察本部長等は、警告をしたときは、速やかに、当該警告の内容及び日時その他当該警告に関する事項で国家公安委員会規則で定めるものを都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)に報告しなければならない。
4  前三項に定めるもののほか、第一項の申出の受理及び警告の実施に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。
(禁止命令等)
第五条  公安委員会は、警告を受けた者が当該警告に従わずに当該警告に係る第三条の規定に違反する行為をした場合において、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときは、当該行為をした者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、次に掲げる事項を命ずることができる。
一  更に反復して当該行為をしてはならないこと。
二  更に反復して当該行為が行われることを防止するために必要な事項
2  公安委員会は、前項の規定による命令(以下「禁止命令等」という。)をしようとするときは、行政手続法 (平成五年法律第八十八号)第十三条第一項 の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
3  前二項に定めるもののほか、禁止命令等の実施に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。
(仮の命令)
第六条  警察本部長等は、第四条第一項の申出を受けた場合において、当該申出に係る第三条の規定に違反する行為(第二条第一項第一号に掲げる行為に係るものに限る。)があり、かつ、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるとともに、当該申出をした者の身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害されることを防止するために緊急の必要があると認めるときは、当該行為をした者に対し、行政手続法第十三条第一項 の規定にかかわらず、聴聞又は弁明の機会の付与を行わないで、国家公安委員会規則で定めるところにより、更に反復して当該行為をしてはならない旨を命ずることができる。
2  一の警察本部長等が前項の規定による命令(以下「仮の命令」という。)をした場合には、他の警察本部長等は、当該仮の命令を受けた者に対し、当該仮の命令に係る第三条の規定に違反する行為について警告又は仮の命令をすることができない。
3  仮の命令の効力は、仮の命令をした日から起算して十五日とする。
4  警察本部長等は、仮の命令をしたときは、直ちに、当該仮の命令の内容及び日時その他当該仮の命令に関する事項で国家公安委員会規則で定めるものを公安委員会に報告しなければならない。
5  公安委員会は、前項の規定による報告を受けたときは、当該報告に係る仮の命令があった日から起算して十五日以内に、意見の聴取を行わなければならない。
6  行政手続法第三章第二節 (第二十八条を除く。)の規定は、公安委員会が前項の規定による意見の聴取(以下「意見の聴取」という。)を行う場合について準用する。この場合において、同法第十五条第一項 中「聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて」とあるのは、「速やかに」と読み替えるほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。
7  公安委員会は、仮の命令に係る第三条の規定に違反する行為がある場合において、意見の聴取の結果、当該仮の命令が不当でないと認めるときは、行政手続法第十三条第一項 の規定及び前条第二項の規定にかかわらず、聴聞を行わないで禁止命令等をすることができる。
8  前項の規定により禁止命令等をしたときは、仮の命令は、その効力を失う。
9  公安委員会は、第七項に規定する場合を除き、意見の聴取を行った後直ちに、仮の命令の効力を失わせなければならない。
10  仮の命令を受けた者の所在が不明であるため第六項において準用する行政手続法第十五条第三項 の規定により意見の聴取の通知を行った場合の当該仮の命令の効力は、第三項の規定にかかわらず、当該仮の命令に係る意見の聴取の期日までとする。
11  前各項に定めるもののほか、仮の命令及び意見の聴取の実施に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。
(警察本部長等の援助等)
第七条  警察本部長等は、ストーカー行為又は第三条の規定に違反する行為(以下「ストーカー行為等」という。)の相手方から当該ストーカー行為等に係る被害を自ら防止するための援助を受けたい旨の申出があり、その申出を相当と認めるときは、当該相手方に対し、当該ストーカー行為等に係る被害を自ら防止するための措置の教示その他国家公安委員会規則で定める必要な援助を行うものとする。
2  警察本部長等は、前項の援助を行うに当たっては、関係行政機関又は関係のある公私の団体と緊密な連携を図るよう努めなければならない。
3  警察本部長等は、第一項に定めるもののほか、ストーカー行為等に係る被害を防止するための措置を講ずるよう努めなければならない。
4  第一項及び第二項に定めるもののほか、第一項の申出の受理及び援助の実施に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。
(国、地方公共団体、関係事業者等の支援)
第八条  国及び地方公共団体は、ストーカー行為等の防止に関する啓発及び知識の普及、ストーカー行為等の相手方に対する支援並びにストーカー行為等の防止に関する活動等を行っている民間の自主的な組織活動の支援に努めなければならない。
2  ストーカー行為等に係る役務の提供を行った関係事業者は、当該ストーカー行為等の相手方からの求めに応じて、当該ストーカー行為等が行われることを防止するための措置を講ずること等に努めるものとする。
3  ストーカー行為等が行われている場合には、当該ストーカー行為等が行われている地域の住民は、当該ストーカー行為等の相手方に対する援助に努めるものとする。
(報告徴収等)
第九条  警察本部長等は、警告又は仮の命令をするために必要があると認めるときは、その必要な限度において、第四条第一項の申出に係る第三条の規定に違反する行為をしたと認められる者その他の関係者に対し、報告若しくは資料の提出を求め、又は警察職員に当該行為をしたと認められる者その他の関係者に質問させることができる。
2  公安委員会は、禁止命令等をするために必要があると認めるときは、その必要な限度において、警告若しくは仮の命令を受けた者その他の関係者に対し、報告若しくは資料の提出を求め、又は警察職員に警告若しくは仮の命令を受けた者その他の関係者に質問させることができる。

(罰則)
第十三条  ストーカー行為をした者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2  前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第十四条  禁止命令等(第五条第一項第一号に係るものに限る。以下同じ。)に違反してストーカー行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2  前項に規定するもののほか、禁止命令等に違反してつきまとい等をすることにより、ストーカー行為をした者も、同項と同様とする。
第十五条  前条に規定するもののほか、禁止命令等に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。
(適用上の注意)
第十六条  この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない。
                                            弁護士 三木秀夫

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