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三木秀夫法律事務所
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2009年12月から、このページは休止とさせていただきました。
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ご関心のある方は、そちらをご覧ください。

ニュース六法目次
詐欺被害金の返還手続施行(2008年06月21日)振り込め詐欺被害者救済
○振り込め詐欺でだまし取られた被害金を、返還する手続きを定めた「振り込め詐欺被害者救済法」が21日、施行された。被害相談にあたる弁護士らは新たな制度を歓迎する一方、「犯人側も何らかの対応を取る可能性がある」との指摘もあり、金融機関は警戒を強めている。同法は、警察などから通報を受けた金融機関が、詐欺に悪用された口座を凍結し、残金を被害に遭った範囲内で被害者に分配する仕組みを定めている。被害者は従来のように裁判に訴える必要はなく、負担軽減が期待されている。(2008年6月21日読売新聞)

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○振り込め詐欺の被害金を返還するための新法が2008年6月21日に施行された。新法の正式名称は「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」で、略称で「振り込め詐欺被害者救済法」とか「振り込め詐欺救済法」という。

○これまで、被害金を取り戻すためには犯罪グループなどを相手に裁判をする必要があったが、犯人の特定が難しく裁判での解決は難しかった。銀行側からしても、犯罪に利用したことが判明した場合、銀行はその口座を利用停止や強制解約にできるが、そこに残ったお金はなお口座名義人の権利があるため、被害者が裁判などに訴えて残金の帰属を確定させない限り、銀行は勝手に被害者に返金することができなかった。新制度では訴訟手続きが不要になったため、大きな前進と評価できる。これによって被害者救済が本格的に開始されたといえよう。

○ヤミ金対策の強化や本人確認法の施行もあって、被害者や警察などから連絡を受けた銀行などの金融機関は、犯罪に使われた口座を凍結している。預金保険機構がその犯罪口座をインターネットのホームページで公表し、被害者を確認して、それぞれの口座の残金を、被害額に応じて配分する。正確な数字はよくわからないが、伝え聞くところでは、少なくとも10万を超える口座に滞留している60億円以上が被害者に返還される見込みという。この法律は、今後、新たに発生した被害も返還対象とする。 
 
○問題点もある。預保機構は、専用のホームページに犯罪口座を掲載するそうだが、ネットに不慣れな高齢者の被害確認をどう手助けするかは大きな問題である。また、今後に発生する分については、仮に口座を凍結できても、その前に犯人が既に金を引き出していた場合は、この法律では対応ができない。今後は犯人もすぐに金を引き出すなどの対応をとってくることが考えられ、さらに金融機関や警察等は警戒を怠るべきでない。

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○実際に被害にあった時どのような手続をするのか。

@振り込め詐欺の被害にあったと気がついた時は、直ちに警察や振り込んだ銀行などに連絡し、振り込んだ先の預金口座の利用停止を求めることが第一歩。ここでモタモタしていては、振り込んだお金は引き出されてしまい、回収は極めて困難になるので、1秒でも早く連絡をするべきである。(ちなみに、同法では、被害者が振り込んだ口座から資金を移動した口座も手続きの対象に明記している。)

Aその後金融機関によって被害の状況の調査や、停止するに値する理由があるかの調査が行われ、犯罪に使われたことが分かった場合は、金融機関から預金保険機構へ公告要求が出される。

B預金保険機構は、金融機関から求めのあった内容の形式的審査を行い、 「預金等に係る債権の消滅手続」として、インターネットで被害金を返還する犯罪口座の番号や名義人などを、失権のための公告(犯罪利用口座について、残高に対する口座名義人の権利を失わせる手続)が行われる。これに60日以上の期間設定がなされる。最初の公告は7月16日、その後は月2回、原則として1日及び16日(休日の場合は翌営業日)に行う予定とのことである。

C預金債権の消滅公告に対して、その預金の名義人が申し立てをしない場合は、その預金に対する権利が失権し、被害者への被害金分配の義務が金融機関に生じる。

D権利が失われた犯罪利用口座について、被害者に対する被害金支払の手続が行われる。これに30日以上の申し出期間が設けられ、預金保険機構によって「被害回復分配金の支払手続」の開始に係る公告がなされる。(したがって、支払手続までには、少なくとも最初の公告日から90日以上の期間を要することとなる。)

E被害者は、この申し出期間内に、振込票など被害に遭ったことを証明する資料を付けて、金融機関に申請(被害回復分配金の申請)をする。申請がないと支払は受けられない。申請窓口は、振込んだ先の金融機関となり、対象となる犯罪利用口座の公告内容を確認して、振込先の金融機関へ、「申請書」「本人確認書類」「振り込みの事実を確認できる資料」などを持参して行う。(具体的な手続は、振込先金融機関に問い合わせること。) 

F振り込み先金融機関によって被害額分配の調査が行われ、支払がなされる。
犯人がその口座からすでにお金を引き出している場合は残ったお金を配分することになる。
被害者が一人で、かつ対象の犯罪利用口座に振り込まれた総額がその口座に滞留している場合、被害金は全額支払われる予定である。犯罪利用口座に滞留している残高が被害金の総額より少ない場合には、金融機関は口座残高を超えて被害金の支払を行うものではない。このうち、被害者が複数の場合には、被害者間で振込金額に応じ按分することとなる。このように、被害金全額の支払がない場合があるので、注意が必要である。

○なお、犯罪利用口座の残高が1,000円未満の場合は、支払手続の対象とはならない。(公告には対象預金等債権の額の記載がなされる。)

○預金保険機構による公告前でも、支払が受けられる場合があるので、被害にあった場合は、早めに名前、連絡先などを振込先の金融機関に連絡しておくべきである。 

○この法律で、実際に返還の請求(被害回復分配金の申請)は、正式には2008年10月頃より受付が始まる予定のようで、返金ができるようになるのは、今のところ、早くとも2008年12月頃以降となる見込みとのことである。

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○参考サイト

金融庁での説明 http://www.fsa.go.jp/policy/kyuusai/index.html

預金保険機構の公告 http://furikomesagi.dic.go.jp/
手続きの流れ図 http://furikomesagi.dic.go.jp/process.html
預金保険機構は「振り込め詐欺被害者救済法」の施行を受けて、施行日に、同詐欺で悪用された疑いのある預金口座の検索などができるホームページを開設した。すでに凍結されている口座情報なども掲載する。

全国銀行協会
ここでは被害者に金融機関への連絡を促すパンフレットなどで各行の取り組みを支援し、「番犬」のキャラクターを用いた金融犯罪注意喚起のサイトで、振り込め詐欺被害者救済法での救済手続きを解説している。

全銀協加盟銀行リンク

みずほ銀行 振り込め詐欺被害者救済法関連サイト 
三菱東京UFJ銀行 振り込め詐欺被害者救済法サイト 
三井住友銀行 振り込め詐欺被害者救済法サイト 
みずほ、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行などメガバンクは、施行日前から平日に電話窓口を開設していたが、施行日直後は日曜日でも臨時で開いた。今後、電話窓口人員を増やしたりなど窓口を拡充するほか、店頭のポスターや被害者への郵送物で周知徹底を図るようである。正しく、早く、被害金が戻ることを望みたい。

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○犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律
(平成十九年十二月二十一日法律第百三十三号)

 第一章 総則(第一条・第二条)
 第二章 預金口座等に係る取引の停止等の措置(第三条)
 第三章 預金等に係る債権の消滅手続(第四条―第七条)
 第四章 被害回復分配金の支払手続
  第一節 通則(第八条・第九条)
  第二節 手続の開始等(第十条・第十一条)
  第三節 支払の申請及び決定等(第十二条―第十五条)
  第四節 支払の実施等(第十六条・第十七条)
  第五節 手続の終了等(第十八条―第二十五条)
 第五章 預金保険機構の業務の特例等(第二十六条―第三十条)
 第六章 雑則(第三十一条―第四十二条)
 第七章 罰則(第四十三条―第四十五条)
 附則

第一章 総則
(目的)
第一条  この法律は、預金口座等への振込みを利用して行われた詐欺等の犯罪行為により被害を受けた者に対する被害回復分配金の支払等のため、預金等に係る債権の消滅手続及び被害回復分配金の支払手続等を定め、もって当該犯罪行為により被害を受けた者の財産的被害の迅速な回復等に資することを目的とする。
(定義)
第二条  この法律において「金融機関」とは、次に掲げるものをいう。
一  銀行
二  信用金庫
三  信用金庫連合会
四  労働金庫
五  労働金庫連合会
六  信用協同組合
七  信用協同組合連合会
八  農業協同組合
九  農業協同組合連合会
十  漁業協同組合
十一  漁業協同組合連合会
十二  水産加工業協同組合
十三  水産加工業協同組合連合会
十四  農林中央金庫
十五  商工組合中央金庫
十五  株式会社商工組合中央金庫
2  この法律において「預金口座等」とは、預金口座又は貯金口座(金融機関により、預金口座又は貯金口座が犯罪行為に利用されたこと等を理由として、これらの口座に係る契約を解約しその資金を別段預金等により管理する措置がとられている場合におけるこれらの口座であったものを含む。)をいう。
3  この法律において「振込利用犯罪行為」とは、詐欺その他の人の財産を害する罪の犯罪行為であって、財産を得る方法としてその被害を受けた者からの預金口座等への振込みが利用されたものをいう。
4  この法律において「犯罪利用預金口座等」とは、次に掲げる預金口座等をいう。
一  振込利用犯罪行為において、前項に規定する振込みの振込先となった預金口座等
二  専ら前号に掲げる預金口座等に係る資金を移転する目的で利用された預金口座等であって、当該預金口座等に係る資金が同号の振込みに係る資金と実質的に同じであると認められるもの
5  この法律において「被害回復分配金」とは、第七条の規定により消滅した預金又は貯金(以下「預金等」という。)に係る債権の額に相当する額の金銭を原資として金融機関により支払われる金銭であって、振込利用犯罪行為により失われた財産の価額を基礎として第四章の規定によりその金額が算出されるものをいう。
   
第二章 預金口座等に係る取引の停止等の措置
第三条  金融機関は、当該金融機関の預金口座等について、捜査機関等から当該預金口座等の不正な利用に関する情報の提供があることその他の事情を勘案して犯罪利用預金口座等である疑いがあると認めるときは、当該預金口座等に係る取引の停止等の措置を適切に講ずるものとする。
2  金融機関は、前項の場合において、同項の預金口座等に係る取引の状況その他の事情を勘案して当該預金口座等に係る資金を移転する目的で利用された疑いがある他の金融機関の預金口座等があると認めるときは、当該他の金融機関に対して必要な情報を提供するものとする。
   
第三章 預金等に係る債権の消滅手続
(公告の求め)
第四条  金融機関は、当該金融機関の預金口座等について、次に掲げる事由その他の事情を勘案して犯罪利用預金口座等であると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、速やかに、当該預金口座等について現に取引の停止等の措置が講じられていない場合においては当該措置を講ずるとともに、主務省令で定めるところにより、預金保険機構に対し、当該預金口座等に係る預金等に係る債権について、主務省令で定める書類を添えて、当該債権の消滅手続の開始に係る公告をすることを求めなければならない。
一  捜査機関等から当該預金口座等の不正な利用に関する情報の提供があったこと。
二  前号の情報その他の情報に基づいて当該預金口座等に係る振込利用犯罪行為による被害の状況について行った調査の結果
三  金融機関が有する資料により知ることができる当該預金口座等の名義人の住所への連絡その他の方法による当該名義人の所在その他の状況について行った調査の結果
四  当該預金口座等に係る取引の状況
2  前項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。
一  前項に規定する預金口座等についてこれに係る預金等の払戻しを求める訴え(以下この章において「払戻しの訴え」という。)が提起されているとき又は当該預金等に係る債権について強制執行、仮差押え若しくは仮処分の手続その他主務省令で定める手続(以下この章において「強制執行等」という。)が行われているとき。
二  振込利用犯罪行為により被害を受けたと認められる者の状況その他の事情を勘案して、この法律に規定する手続を実施することが適当でないと認められる場合として、主務省令で定める場合に該当するとき。
3  金融機関は、第一項の預金口座等に係る取引の状況その他の事情を勘案して当該預金口座等に係る資金を移転する目的で利用されたと疑うに足りる相当な理由がある他の金融機関の預金口座等があると認めるときは、当該他の金融機関に対し、同項の預金口座等に係る主務省令で定める事項を通知しなければならない。
(公告等)
第五条  預金保険機構は、前条第一項の規定による求めがあったときは、遅滞なく、当該求めに係る書面又は同項に規定する主務省令で定める書類の内容に基づき、次に掲げる事項を公告しなければならない。
一  前条第一項の規定による求めに係る預金口座等(以下この章において「対象預金口座等」という。)に係る預金等に係る債権(以下この章において「対象預金等債権」という。)についてこの章の規定に基づく消滅手続が開始された旨
二  対象預金口座等に係る金融機関及びその店舗並びに預金等の種別及び口座番号
三  対象預金口座等の名義人の氏名又は名称
四  対象預金等債権の額
五  対象預金口座等に係る名義人その他の対象預金等債権に係る債権者による当該対象預金等債権についての金融機関への権利行使の届出又は払戻しの訴えの提起若しくは強制執行等(以下「権利行使の届出等」という。)に係る期間
六  前号の権利行使の届出の方法
七  払戻しの訴えの提起又は強制執行等に関し参考となるべき事項として主務省令で定めるもの(当該事項を公告することが困難である旨の金融機関の通知がある事項を除く。)
八  第五号に掲げる期間内に権利行使の届出等がないときは、対象預金等債権が消滅する旨
九  その他主務省令で定める事項
2  前項第五号に掲げる期間は、同項の規定による公告があった日の翌日から起算して六十日以上でなければならない。
3  預金保険機構は、前条第一項の規定による求めに係る書面又は同項に規定する主務省令で定める書類に形式上の不備があると認めるときは、金融機関に対し、相当の期間を定めて、その補正を求めることができる。
4  金融機関は、第一項第五号に掲げる期間内に対象預金口座等に係る振込利用犯罪行為により被害を受けた旨の申出をした者があるときは、その者に対し、被害回復分配金の支払の申請に関し利便を図るための措置を適切に講ずるものとする。
5  第一項から第三項までに規定するもののほか、第一項の規定による公告に関し必要な事項は、主務省令で定める。
(権利行使の届出等の通知等)
第六条  金融機関は、前条第一項第五号に掲げる期間内に権利行使の届出等があったときは、その旨を預金保険機構に通知しなければならない。
2  金融機関は、前条第一項第五号に掲げる期間内に対象預金口座等が犯罪利用預金口座等でないことが明らかになったときは、その旨を預金保険機構に通知しなければならない。
3  預金保険機構は、前二項の規定による通知を受けたときは、預金等に係る債権の消滅手続が終了した旨を公告しなければならない。
(預金等に係る債権の消滅)
第七条  対象預金等債権について、第五条第一項第五号に掲げる期間内に権利行使の届出等がなく、かつ、前条第二項の規定による通知がないときは、当該対象預金等債権は、消滅する。この場合において、預金保険機構は、その旨を公告しなければならない。
   
第四章 被害回復分配金の支払手続
第一節 通則
(被害回復分配金の支払)
第八条  金融機関は、前条の規定により消滅した預金等に係る債権(以下この章及び第三十七条第二項において「消滅預金等債権」という。)の額に相当する額の金銭を原資として、この章の定めるところにより、消滅預金等債権に係る預金口座等(以下この章において「対象預金口座等」という。)に係る振込利用犯罪行(対象預金口座等が第二条第四項第二号に掲げる預金口座等である場合にあっては、当該預金口座等に係る資金の移転元となった同項第一号に掲げる預金口座等に係る振込利用犯罪行為。以下この章において「対象犯罪行為」という。)により被害を受けた者(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)であってこれにより財産を失ったもの(以下この章において「対象被害者」という。)に対し、被害回復分配金を支払わなければならない。
2  金融機関は、対象被害者について相続その他の一般承継があったときは、この章の定めるところにより、その相続人その他の一般承継人に対し、被害回復分配金を支払わなければならない。
3  前二項の規定は、消滅預金等債権の額が千円未満である場合は、適用しない。この場合において、預金保険機構は、その旨を公告しなければならない。
(被害回復分配金の支払を受けることができない者)
第九条  前条の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する者は、被害回復分配金の支払を受けることができない。
一  対象犯罪行為により失われた財産の価額に相当する損害の全部について、そのてん補又は賠償がされた場合(当該対象犯罪行為により当該財産を失った対象被害者又はその一般承継人以外の者により当該てん補又は賠償がされた場合に限る。)における当該対象犯罪行為により当該財産を失った対象被害者又はその一般承継人
二  対象犯罪行為を実行した者若しくはこれに共犯として加功した者、当該対象犯罪行為に関連して不正な利益を得た者、当該対象犯罪行為により財産を失ったことについて自己に不法な原因がある者その他被害回復分配金の支払を受けることが社会通念上適切でない者又は対象被害者がこれらの者のいずれかに該当する場合におけるその一般承継人

第二節 手続の開始等
(公告の求め)
第十条  金融機関は、第七条の規定により預金等に係る債権が消滅したとき(第八条第三項に規定する場合を除く。)は、速やかに、主務省令で定めるところにより、預金保険機構に対し、その消滅に係る消滅預金等債権について、主務省令で定める書類を添えて、被害回復分配金の支払手続の開始に係る公告をすることを求めなければならない。
2  前項の規定は、対象預金口座等に係るすべての対象被害者又はその一般承継人が明らかであり、かつ、これらの対象被害者又はその一般承継人のすべてから被害回復分配金の支払を求める旨の申出があるときは、適用しない。この場合において、金融機関は、預金保険機構にその旨を通知しなければならない。
(公告等)
第十一条  預金保険機構は、前条第一項の規定による求めがあったときは、遅滞なく、当該求めに係る書面又は同項に規定する主務省令で定める書類の内容に基づき、次に掲げる事項を公告しなければならない。
一  前条第一項の規定による求めに係る消滅預金等債権についてこの章の規定に基づく被害回復分配金の支払手続が開始された旨
二  対象預金口座等(対象預金口座等が第二条第四項第二号に掲げる預金口座等である場合における当該対象預金口座等に係る資金の移転元となった同項第一号に掲げる預金口座等を含む。次号において同じ。)に係る金融機関及びその店舗並びに預金等の種別及び口座番号
三  対象預金口座等の名義人の氏名又は名称
四  消滅預金等債権の額
五  支払申請期間
六  被害回復分配金の支払の申請方法
七  被害回復分配金の支払の申請に関し参考となるべき事項として主務省令で定めるもの(当該事項を公告することが困難である旨の金融機関の通知がある事項を除く。)
八  その他主務省令で定める事項
2  前項第五号に掲げる支払申請期間(以下この章において単に「支払申請期間」という。)は、同項の規定による公告があった日の翌日から起算して三十日以上でなければならない。
3  預金保険機構は、前条第一項の規定による求めに係る書面又は同項に規定する主務省令で定める書類に形式上の不備があると認めるときは、金融機関に対し、相当の期間を定めて、その補正を求めることができる。
4  金融機関は、対象犯罪行為による被害を受けたことが疑われる者に対し被害回復分配金の支払手続の実施等について周知するため、必要な情報の提供その他の措置を適切に講ずるものとする。
5  第一項から第三項までに規定するもののほか、第一項の規定による公告に関し必要な事項は、主務省令で定める。

第三節 支払の申請及び決定等
(支払の申請)
第十二条  被害回復分配金の支払を受けようとする者は、支払申請期間(第十条第二項の規定による通知があった場合においては、金融機関が定める相当の期間。以下同じ。)内に、主務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書に第一号及び第二号に掲げる事項を疎明するに足りる資料を添付して、対象預金口座等に係る金融機関に申請をしなければならない。
一  申請人が対象被害者又はその一般承継人であることの基礎となる事実
二  対象犯罪行為により失われた財産の価額
三  控除対象額(対象犯罪行為により失われた財産の価額に相当する損害について、そのてん補又は賠償がされた場合(当該対象犯罪行為により当該財産を失った対象被害者又はその一般承継人以外の者により当該てん補又は賠償がされた場合に限る。)における当該てん補額及び賠償額を合算した額をいう。以下同じ。)
四  その他主務省令で定める事項
2  前項の規定による申請をした対象被害者又はその一般承継人(以下この項において「対象被害者等」という。)について、当該申請に対する次条の規定による決定が行われるまでの間に一般承継があったときは、当該対象被害者等の一般承継人は、支払申請期間が経過した後であっても、当該一般承継があった日から六十日以内に限り、被害回復分配金の支払の申請をすることができる。この場合において、当該一般承継人は、主務省令で定めるところにより、前項に規定する申請書に同項第一号及び第二号に掲げる事項を疎明するに足りる資料を添付して、これを対象預金口座等に係る金融機関に提出しなければならない。
3  前二項の規定による申請は、対象犯罪行為に係る第二条第三項に規定する振込みの依頼をした金融機関を経由して、行うことができる。
(支払の決定)
第十三条  金融機関は、前条第一項の規定による申請があった場合において、支払申請期間が経過したときは、遅滞なく、同条第一項又は第二項に規定する申請書及び資料等に基づき、その申請人が被害回復分配金の支払を受けることができる者に該当するか否かの決定をしなければならない。同条第二項の規定による申請があった場合において、当該申請に係る一般承継があった日から六十日が経過したときも、同様とする。
2  金融機関は、被害回復分配金の支払を受けることができる者に該当する旨の決定(以下「支払該当者決定」という。)をするに当たっては、その犯罪被害額(対象犯罪行為により失われた財産の価額から控除対象額を控除した額をいう。以下同じ。)を定めなければならない。この場合において、支払該当者決定を受ける者で同一の対象被害者の一般承継人であるものが二人以上ある場合におけるその者に係る犯罪被害額は、当該対象被害者に係る対象犯罪行為により失われた財産の価額から控除対象額を控除した額を当該一般承継人の数で除して得た額とする。
3  前項後段に規定する場合において、当該支払該当者決定を受ける者のうちに各人が支払を受けるべき被害回復分配金の額の割合について合意をした者があるときは、同項後段の規定にかかわらず、当該合意をした者に係る犯罪被害額は、同項後段の規定により算出された額のうちこれらの者に係るものを合算した額に当該合意において定められた各人が支払を受けるべき被害回復分配金の額の割合を乗じて得た額とする。
4  前二項に定めるもののほか、犯罪被害額の認定の方法については、主務省令で定める。
(書面の送付等)
第十四条  金融機関は、前条の規定による決定を行ったときは、速やかに、その内容を記載した書面を申請人に送付しなければならない。
2  前項の規定にかかわらず、申請人の所在が知れないときその他同項の書面を送付することができないときは、金融機関において当該書面を保管し、いつでも申請人に交付すべき旨を明らかにする措置として主務省令で定める措置をとることをもって同項の規定による送付に代えることができる。
(決定表の作成等)
第十五条  金融機関は、第十三条の規定による決定を行ったときは、次に掲げる事項を記載した決定表を作成し、申請人の閲覧に供するため、これを主務省令で定める場所に備え置かなければならない。
一  支払該当者決定を受けた者の氏名又は名称及び当該支払該当者決定において定められた犯罪被害額(支払該当者決定を受けた者がないときは、その旨)
二  その他主務省令で定める事項
    
第四節 支払の実施等
(支払の実施等)
第十六条  金融機関は、すべての申請に対する第十三条の規定による決定を行ったときは、遅滞なく、支払該当者決定を受けた者に対し、被害回復分配金を支払わなければならない。
2  前項の規定により支払う被害回復分配金の額は、支払該当者決定により定めた犯罪被害額の総額(以下この項において「総被害額」という。)が消滅預金等債権の額を超えるときは、この額に当該支払該当者決定を受けた者に係る犯罪被害額の総被害額に対する割合を乗じて得た額(その額に一円未満の端数があるときは、これを切り捨てた額)とし、その他のときは、当該犯罪被害額とする。
3  金融機関は、第一項の規定により支払う被害回復分配金の額を決定表に記載し、その旨を預金保険機構に通知しなければならない。
4  預金保険機構は、前項の規定による通知を受けたときは、第一項の規定により支払う被害回復分配金の額を金融機関が決定表に記載した旨を公告しなければならない。
(支払該当者決定後の一般承継人に対する被害回復分配金の支払)
第十七条  金融機関は、支払該当者決定が行われた者について一般承継があった場合において、その者に支払うべき被害回復分配金でまだ支払っていないものがあるときは、その者の一般承継人であって当該一般承継があった日から六十日以内に届出をしたものに対し、未払の被害回復分配金を支払わなければならない。この場合において、当該一般承継人は、主務省令で定めるところにより、届出書を金融機関に提出しなければならない。
2  前項の規定により届出をした一般承継人が二人以上ある場合における当該一般承継人に支払う被害回復分配金の額は、同項に規定する未払の被害回復分配金の額を当該一般承継人の数で除して得た額(その額に一円未満の端数があるときは、これを切り捨てた額)とする。ただし、当該一般承継人のうちに各人が支払を受けるべき被害回復分配金の額の割合について合意をした者があるときは、当該合意をした者に支払う被害回復分配金の額は、この項本文の規定により算出された額のうちこれらの者に係るものを合算した額に当該合意において定められた各人が支払を受けるべき被害回復分配金の額の割合を乗じて得た額(その額に一円未満の端数があるときは、これを切り捨てた額)とする。
    
第五節 手続の終了等
(公告)
第十八条  金融機関は、次の各号のいずれかに該当するときは、速やかに、預金保険機構に対し、被害回復分配金の支払手続の終了に係る公告をすることを求めなければならない。
一  第十二条第一項又は第二項の規定による申請がないとき。
二  第十二条第一項又は第二項の規定による申請のすべてについて第十三条の規定による決定があった場合において、支払該当者決定を受けた者がないとき。
三  前節又は第二十二条第二項の規定により支払うべき被害回復分配金のすべてについて、同節の規定によりこれを支払い、又は同項に規定する措置をとったとき。
四  対象預金口座等が犯罪利用預金口座等でないことが明らかになったとき。
2  預金保険機構は、前項の規定による求めがあったときは、遅滞なく、被害回復分配金の支払手続が終了した旨を公告しなければならない。
(預金保険機構への納付)
第十九条  金融機関は、第八条第三項又は前条第二項の規定による公告があった場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、当該各号に定める額に相当する額の金銭を、預金保険機構に納付しなければならない。
一  第八条第三項の規定による公告があったとき又は前条第二項の規定による公告があった場合において被害回復分配金の支払を行わなかったとき。 消滅預金等債権の額
二  前条第二項の規定による公告があった場合において、当該公告に係る対象預金口座等について支払った被害回復分配金の額の合計額が消滅預金等債権の額に満たないとき。 消滅預金等債権の額から当該被害回復分配金の額の合計額を控除した額
(犯罪被害者等の支援の充実等)
第二十条  預金保険機構は、前条(第二十四条第三項の規定によりその例によることとされる場合を含む。)の規定により金銭の納付を受けたときは、当該納付を受けた金銭の額から当該金銭の額に第二十五条第四項の規定による支払に要する費用の額を考慮して主務省令で定める割合を乗じて得た額を控除した額の金銭を、主務省令で定めるところにより、犯罪被害者等の支援の充実のために支出するものとする。
2  預金保険機構は、前項の主務省令で定める割合を乗じて得た額の金銭について、その全部又は一部が第二十五条第四項の規定による支払のため必要がなくなったときは、前項の主務省令で定めるところにより、これを犯罪被害者等の支援の充実のために支出するものとする。
(以下略)
                                            弁護士 三木秀夫

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