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三木秀夫法律事務所
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ニュース六法目次
五菱会ヤミ金被害者へ支給手続(2008年08月07日)被害回復給付金支給
○巨大ヤミ金融業者グループ・山口組系旧五菱会の被害者への給付金支給手続きが先月25日に始まった。2002、03年ごろを中心に数万人以上が被害を受け、自殺者も多かった事件だ。しかし給付金を受け取れることに気が付かずに申請の機会を逃す人が多くなりそうで、被害者救済に当たってきた弁護士らは「心当たりの人は弁護士会に早く相談して」と呼び掛けている。
 
愛知県に住む六十歳前後のある夫婦は00年から03年にかけ、典型的なヤミ金融の被害に遭った。借りたのはほとんどが妻。その額は約80社から200万円以上。返済額は400万円を大幅に超えたが、返済金利が年数千%と超高金利だったため完済できず、暴力的な取り立てに苦しめられた。収入が乏しかった半面で家族に重い病人がいて借金地獄に陥った。妻は「勤務先にも取り立て電話を入れられて職を失った」と振り返る。ただ、夫婦はどの業者にいくら借りていくら返したかを記載したメモや当時の銀行通帳、業者から送られたダイレクトメールなどを保管していた。公表された五菱会系業者リストと照合する作業を続け、妻は「五社ぐらいの五菱会系業者に返済していたことがだいたい確認できました」と話す。
 
五菱会のトップは「ヤミ金の帝王」といわれた梶山進受刑者。組織犯罪処罰法や出資法の違反で有罪が確定している。グループ業者は数百で、ダイレクトメールや携帯電話などで勧誘。違法な超高金利の利息を取り、脅迫的に取り立てた。今回の被害救済手続きは、06年に施行された被害回復給付金支給法の適用第一号。東京地検が来年1月26日まで申請を受け付ける。給付金の原資は、五菱会の犯罪収益のうちスイス当局が没収した資金の半分で、約29億円。
 
五菱会系の業者や業者が使っていた振込先口座のリストは検察庁のホームページ(検察庁で検索)で確認できる。業者数は392。被害者である可能性が高い約3万5千人には、東京地検から通知文が届く。
 
各地の弁護士会が電話相談や説明会を開いたりしているが、弁護士らは「現実にこの手続きで給付金を受け取る人は一万人に届かないかもしれない」と悲観的だ。

第一に、被害救済が受けられることに気が付かない人が多い。正式な通知書の名は「外国譲与財産支給手続開始決定通知書」。これを受け取っても、被害者の多くは架空請求の文書だと勘違いしてしまいそうだという。五、六年前にヤミ金融被害に遭った人は、当時の記憶をできるだけよみがえらせ、手続きについても勉強し、申請の可能性を探るべきだろう。

五菱会系業者らに返済したことを証明できれば、被害回復給付金を受け取れる。だが、振込票という決定的な証拠を持っている人はごく少ない。多くの被害者らが持っているのは当時の銀行通帳なので、弁護士らは「通帳やヤミ金融関連のメモなどを、押し入れをひっくり返してでも探すべきだ」と強調する。銀行通帳は多くの銀行が有料でコピーさせてくれる。そして、心あたりの人は各地の弁護士会に相談するのが賢明。近く説明会を開く弁護士会もある。
(中日新聞 2008年8月7日 白井康彦)

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○ヤミ金による被害者に対する違法収益の分配手続きが始まった。東京地検はこの7月25日から、暴力団山口組系旧五菱会(ごりょうかい)のヤミ金融事件で、事件関係者によりスイス連邦の銀行に送金されて隠匿され、同国チューリッヒ州により没収されていた犯罪被害財産等のうち、本年5月23日に日本側に返還(譲与)された約29億1700万円を、被害者に分配する手続きを始めた。

上記事件については、アメリカ合衆国及び中華人民共和国香港特別行政区においても、事件関係者により隠匿された犯罪被害財産等の一部が没収されるなどしている(日本国へはまだ譲与されていない)。

○東京地検は、来年1月26日まで被害者からの申請を受け付け、審査を経て返還額を確定させるので、心当たりのある方は、すぐに申請や相談をしていただきたい。

○これは2006年(平成18年)に施行された「犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律」(略称「被害回復給付金支給法」)に基づく「外国譲与財産支給手続」で、没収された犯罪収益が被害者に返還されるのは初めてである。

対象者は1988年(平成元年)から2003年(平成15年)8月までに旧五菱会傘下のヤミ金融で被害を受けた人。同地検が把握している被害者約3万4000人に直接通知するほか、官報や検察庁のホームページで返還金申請の呼びかけを始めている。

○外国譲与財産支給手続開始決定及び被害回復事務管理人選任公告

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○申請手続の概要
1 申請期間
  平成20年7月25日(金)〜平成21年1月26日(月)まで
2 持参又は郵送による提出窓口(申請に関する問い合わせ先)
  五菱会事件被害回復センター
  〒100−0013 東京都千代田区霞が関一丁目1番1号 中央合同庁舎6号館B棟1階
  電話番号03−3595−1201
3 窓口の受付時間(持参提出の場合)
  午前9時30分〜午後0時まで、午後1時〜午後5時まで
  (土曜日,日曜日及び祝日等の休日を除く。)
4 提出書類
  ・申請書及び被害状況別紙(必要事項を記載)
  ・疎明資料(被害を受けたことや被害額を示す資料のコピー,運転免許証のコピーなど)

○申請書や被害状況別紙の記載方法・疎明資料の詳細、Q&A等については、法務省や検察庁のホームページで入手できる。
   申請書・・・・・・被害回復給付金申請書  記載例
   被害状況別紙・・・被害状況別紙 記載要領・記載例
   被害回復給付金支給制度Q&A

○対象となるヤミ金業者リスト
http://www.kensatsu.go.jp/kakuchou/tokyo/oshirase/goryoukai/1.pdf

ヤミ金貸付回収に使用された振込口座リスト
http://www.kensatsu.go.jp/kakuchou/tokyo/oshirase/goryoukai/2.pdf

○申請書,被害状況別紙等は最寄りの検察庁でも受け取ることができる。

○代理申請について
申請は弁護士を代理人としてすることもできる(法定代理人及び弁護士以外は申請の代理人にはなれない)ので、申請に関し分からないことがある場合には、最寄りの弁護士会や当事務所にご相談されることを勧める。申請に関する一般的な問い合わせは、全国の地方検察庁でも受け付けている。

○大阪弁護士会でも、過去にヤミ金被害にあって今回被害回復手続きに関する通知を受け取られた方や過去にヤミ金被害に遭い、その被害が旧五菱会のグループによりヤミ金被害にあったのかもしれない被害者の方々に対し、今回の被害回復手続きに関する説明会を下記の要領で開催する。
  日時  平成20年8月11日(月)
       午後6時〜午後8時(開場 午後5時30分)
  場所  大阪市北区西天満1丁目12番5号 大阪弁護士会館2階ホール
  問合せ 06−6364−4653(自動応答対応)

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○なお、これに便乗した架空請求が心配されている。東京地方検察庁や五菱会事件被害回復センター、被害回復事務管理人などを名乗る連絡には注意する必要がある。

この手続では、申請人や申請希望者に何らかの現金の支払を請求することは一切ない。この手続における申請書類の提出は、上記の「五菱会事件被害回復センター」でのみ受け付けていて、そこの住所・電話番号は上記のもの以外にはない。もし、本物かどうか等、気になる場合は、必ず弁護士、弁護士会、検察庁、消費者センター等に問いわせることが必要だ。

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被害回復給付金支給法の制定背景
今回の金は、指定暴力団山口組旧五菱会系のヤミ金融グループによるマネーロンダリング(資金洗浄)事件で、グループ最高責任者であった梶山進被告が、ヤミ金被害者から吸い上げた金員をスイスの銀行口座に送金して隠していたのを、2003年(平成15年)12月、スイス・チューリヒ州当局が口座を凍結し、その後没収した約51億円の一部である。その返還を日本が求め、スイス当局と返還に向けた協議を続けていた。

その結果、両国政府は財産の返還でほぼ合意し、スイスでは没収財産の一部を犯罪が実際に行われた外国に分配できる法律を施行したのを受けて、日本で被害者への分配制度の整備ができ次第、返還が実現する見通しとなった。

従来の日本の法律では、こういった財産が返還されたとしても国庫に入れるだけで、全く被害者に戻らないため、日本でも被害者への返還を定めた法的整備を行った。その上でこの5月にスイスから一部が返還され、今回の被害者への返還手続きに至ったものである。

資金洗浄目的で外国送金され没収された犯罪収益が、2国間交渉で日本に返還されたのは初めてである。没収された犯罪収益が国の関与により被害者に分配されるのも、今回が初のケースとなる。
                                            弁護士 三木秀夫

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