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市民社会と論憲(NPO学会ニュースレター巻頭言)(2004.06)

「市民社会と論憲」                    

論憲
最近、論憲として日本国憲法の改正論議が盛んである。時代に合わせた議論がなされること自体は結構なことと思う。環境権や知る権利、プライバシー権などの新しい権利の明記もどんどん議論されるべきである。ただ、せっかく論憲するならば、未来を見据えたダイナミックな観点を持った21世紀の日本に必要な憲法を目指すべきであろう。

憲法による新しい価値の創造
昨今、NPOの社会的重要性が、少しずつではあるが認知され、多くの支援制度も定着し始めているが、まだ入り口でしかない。市民による活動をより活発化させるには、そのための制度的保障がもっと必要である。市民社会という言葉はこれまで憲法論の中で十分に議論されてきたとは思えないことから、この問題こそ新しい時代における論憲の対象と考えてよいのではなかろうか。
もともと憲法は、第一世代的な19世紀的リベラリズムの上に立ち、「国家の干渉からの市民的・政治的自由の保障」という、当時の新しい価値を体現した。その上で、さらに第二世代的な20世紀的福祉国家観に立って、「国家自身に最低限の生活保障を求める権利」、すなわち生存権などに代表される社会的・経済的権利という新しい価値も体現してきた。
これからの第三世代的な憲法としては、「積極的な自由」というより進んだ理念のもとで、多様な価値観のもとで生まれてくる民間セクターによる公益活動を社会全体で支える制度的保障にこそ、その新しい価値を求めていくべきではないかと考える。

NPOの役割
NPOの活動は観客的民主主義から主体的民主主義を生み出すという言葉に代表されるように、それ自身かなりアクティブな性格を有しており、単に国家との関係で受身の自由を行使しているだけではない。NPOは、官が関心を持たないか、もしくは距離を置こうとする社会的問題についても問題提起を行い、それによって草の根レベルからの世論を形成し、あるいは直接に政府に運動し、事案によっては地球規模の活動を通して国家意思自体に大きな影響を与えていく存在になりつつある。そこから生まれる「公益性」は、国家・NPO・個人のトライアングルから醸成されるものであり、その意味ではもはやNPOは公的な存在になりつつある。

積極的民主主義のために
現行憲法は第89条のように、どちらかといえばNPOに対して冷淡とも思われた。この際、個人が民間セクターを通して公益的な問題に関して自由にその能力を発揮していくための制度づくりを、民の意思を代表する国家の責務として憲法に位置づけてはいかがであろうか。そういう民間セクターの役割を明記することで、真の積極的民主主義が育つ気がする。少なくとも、現在進行しつつある公益法人制度改革においては、こういった視点からの議論が必要に思えてならない。(以上)

三木秀夫(弁護士)
2004年6月 



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