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君の膵臓をたべたい/住野よるのあらすじと読書感想文

2017年1月15日 竹内みちまろ

 「君の膵臓(すいぞう)をたべたい」は、「僕」こと志賀春樹の一人称で語られる物語です。人と極力関わらず、友だちもおらず、クラスでは暗いヤツと思われている「僕」は、大きな病院に盲腸の手術後の抜糸に行ったときに、「共病文庫」とマジックで手書きされた日記帳をロビーのソファの上に見つけます。

 「共病文庫」の1ページ目は「20××年 11月 23日」と記されており「本日から、共病文庫と名付けたこれに日々の想いや行動を書いていこうと思う」という文から始まっており、日記の筆者である「私」が膵臓の病気を罹っていることや、あと数年で死ぬことなどが記されていました。

 「僕」は余命を宣告された誰かの日記であることに気が付き本を閉じましたが、クラスメイトの山内桜良から「それ、私のなんだ」などと声を掛けられます。

 「共病文庫」に書かれていた内容の深刻さを知ってしまっていた「僕」は、「……冗談でしょ?」と尋ねますが、桜良は「うわははっ」と笑い、「私は膵臓が使えなくなって、あとちょっとで死にます、うん」などと、内容の深刻さからは考えられない明るさで答えました。

 桜良は「皆には内緒にしているから、クラスで言わないでね」と言い置き、そのまま病院の奥に行ってしまいました。が、翌日、桜良は廊下ですれ違った「僕」に声を掛け、クラスで「僕」だけが担当していた図書委員会の空席に名乗りをあげました。

 桜良は、テレビ番組で、昔の人はどこか悪いところがあると他の動物のその部分を食べ、そうすれば病気が治ると信じていたことを知り、学校の図書室の書庫で、「僕」に、「だから私は、君の膵臓を食べたい」と告げます。

 「僕」は桜良に誘われて焼き肉やスイーツを食べにいくようになります。その様子をクラスメイトに見られても、桜良は気にする様子がなく、むしろ楽しんでいるようでもありました。

 「僕」がクラスの人気者で男子生徒から告白もされる桜良につきまとっているという噂が流れますが、「僕」はそれまで通り、人との関わりを避け続けます。桜良はそんな「僕」を泊まりで行く旅行に連れ出しました。……

 「君の膵臓をたべたい」は、読み終えて、作者の人間に対する温かいまなざしのようなものを感じました。

 「君の膵臓をたべたい」のストーリーは、桜良の死後、「共病文庫」を読んで、「僕」が桜良の心を知るという形で展開します。

 桜良と付き合っている間も、桜良が背中から抱き付いて来て「恋人でも、好きな人でもない男の子と、いけないことをする」などとささやいてきたときに、その後の会話も含めて「僕」は、理由が分からない怒りを感じて桜良をベッドに押し倒したり、桜良からクラスメイトから陰口を言われるのは「君がちゃんと皆と話さないからだよ」と声を掛けられたり、桜良から「きっと誰かと心を通わせること。そのものを指して、生きるって呼ぶんだよ」と告げられて鳥肌が立ったりしていました。

 でも、「僕」は、桜良が死んでからはじめて、桜良はずっと「僕」が気になっていたことや、桜良が「僕」のことを「彼はやっぱり、自分と戦ってる」と書いていたことや、余命が半年縮んで「僕」から「何かあったのか」と尋ねられた時に本当は泣きそうになっていたことや、桜良が本当に「僕」のことを好きだったことや、「僕」から必要とされて嬉しかったことなどを知りました。

 桜良は、「共病文庫」に「僕」宛の遺書を書いていました。桜良は「私が君みたいだったら、もっと誰にも迷惑をかけず、悲しみを君や家族にふりまいたりすることなく、自分のためだけに、自分だけの魅力を持って、自分の責任で生きられたんじゃないかって」、「君は人との関わりじゃなくて、自分を見つめて魅力を作り出してた」、「私も、自分だけの魅力を持ちたかった」などと記していました。

 桜良が意図していたのかどうかは分かりませんが、桜良は、残された時間を使って、自分の殻に閉じこもって前に進めなくなっている「僕」を、「僕」が今いる場所から前に向かって歩き出せるように背中を押したのではないかと感じました。

 桜良の遺書を読んだ「僕」は、今のままではダメだと気が付きます。「僕」自身も気が付いたように、誰が見ても「僕」は今のままではどうにもならないように見えました。

 しかし、桜良は、自分の死後に「僕」に親友の恭子と仲良くしてほしいとは書きましたが、桜良は、今のままではどうにもならない「僕」のことを一切否定せず、全肯定していました。

 「君の膵臓をたべたい」は、桜良の命の物語であると同時に、このままではどうにもならない「僕」が今いる場所から一歩前に踏み出す物語だと思いました。そして、桜良のこのままではどうにもならない「僕」に向けたまなざしは、限りなく温かいです。そんな桜良のまなざしは、作者の「僕」に向けたまなざしなのかもしれないと思いました。



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