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蛇にピアス/金原ひとみのあらすじと読書感想文

2012年7月15日 竹内みちまろ

蛇にピアス/金原ひとみのあらすじ


 18歳の「アマ」こと雨田和則から「スプリットタンって知ってる?」「君も、身体改造してみない?」と声を掛けられ、「両親健在で、家族関係には今のところ何も支障はない」という「ルイ」こと19歳の中沢ルイは、「たぶん、二十四、五くらい」の「シバ」こと柴田キヅキの店で、舌にピアスの穴を開けました。ピアスをじょじょに大きくして舌を割いていきます。

 ルイはアマの部屋で暮らすようになります。新宿に飲みに行ったときに、ルイに声を掛けてきた男を、アマが相手の歯が抜けるまで殴り続けました。ルイは、シバに、麒麟と龍の入れ墨を「エッチ一回」で背中に彫ってもらうことにしました。ルイは、入れ墨のためにシバの店に通い、そのたびにセックスをしました。しかし、瞳を描いたら飛んで行ってしまった「画龍点せい」の話を持ち出して、「龍と麒麟に目を入れないでほしいの」と告げました。

 入れ墨は四回の施術で完成。鏡に龍と麒麟を映して、「安心する。こいつらは、目がないから飛んでいく事すら出来ない」。しかし、ルイはアルコール依存の状態で、アマは元気のないルイをなぐさめようと無理にテンションを上げたり、話し続けたりしましたが、「何でだよ」と悔しそうに口にすることもありました。ルイは、アマの気持ちに応えてやりたいと思いますが、どうにもなりません。

 ルイはスポーツ新聞の記事で、新宿の路上で暴力団員が撲殺され、警察が入れ墨をしている容疑者を追っていることを知りました。シバのもとに警察が来て、入れ墨を入れた客のリストの提出を要求してきました。アマはアルバイトに出たまま戻らず、ルイは、シバにアマのことを話しました。

 横須賀で拷問を受けたアマの死体が見つかりました。ルイは、医者から、「このまま痩せていったら死にますよ」と言われます。舌の痛みはおさまってきましたが、さらなる拡張を行う気が起きません。ルイは、「私自身が命を持つために」、入れ墨の龍と麒麟に目を入れました。「大丈夫。アマを殺したのがシバさんであっても、アマを犯したのがシバさんであっても、大丈夫」

蛇にピアスの読書感想文


 『蛇にピアス』は読み終えて、文学の力を感じました。

 主人公のキャラクターという点で言えば、結構、典型的だと思いました。ルイが、家族連れが多い商店街で、子どもにぶつかり、その子の母親がルイの顔を見てそ知らぬふりをする様子を見て、「こんな世界にいたくないと、強く思った。とことん、暗い世界で身を燃やしたい、とも思った」という場面がありました。また、アマを失ってから、「普通のカップルならあるはずの会話」がまったくなかったことに気が付いて、「アマは、私の0Gを見たら何て言うだろうか。すごいじゃん、そう言って笑ってくれるはずだ。もうちょっとだね、そう言うはずだ。きっと、喜んでくれる」と心の中で呼びかけたり、「私はただの一般人で構わない。ただ、とにかく陽の光の届かない、アンダーグラウンドの住人でいたい。子供の笑い声や愛のセレナーデが届かない場所はないのだろうか」と求めたりする場面もありました。

 また、「私も今、外見で判断される事を望んでいる。陽が差さない場所がこの世にないのなら自分自身を影にしてしまう方法はないかと、模索している」と自分自身を冷めた目で分析してしまう性格もありがちで、「私はこの意味のない身体改造とやらに、一体何を見出そうとしているんだろう」と「私」を探す姿も目立ちました。

 しかし、クライマックスでは、そのような現象が一気に吹き飛んでしまいます。

 入れ墨をしたときはその理由がわかりませんでしたが、麒麟と龍に瞳を入れる時は、「命を持つため」と確認しています。入れ墨をしたときは入れ墨をする理由がわらない「私」を、もうひとりの私がどこか冷めた目で見ているのですが、「命を持つため」と確信する「私」にぶれはありません。確信する自分をさめた目で見つめてしまうもうひとりの「私」に存在の余地を残さないとでもいうようなエネルギーを感じます。また、なぜ「大丈夫」なのかは、誰にも説明できません。しかし、それでも、「大丈夫」といいきる「私」には、理屈では説明のできない説得力を持っていました。

 『蛇にピアス』は、読み終えて、言葉の力でも、感性や、発想や、ひらめきの力でもなく、文学の力を感じました。


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