「平清盛」第10回「義清散る」の感想

 大河ドラマ『平清盛』第10回「義清散る」が3月11日に放送されました。今回は見応えがありました。感想を個条書きにしておきたいと思います。

●待賢門院璋子の横顔が初めて見えた!

 待賢門院璋子(檀れい)は、前回、鳥羽上皇(三上博史)の皇子(近衛天皇)誕生祝賀会で佐藤義清(藤木直人)が崇徳天皇(井浦新)の歌を読んで座をめちゃめちゃにした際、「わからぬのじゃ…」「ただ法皇様の仰せのままに…」とうろたえていましたが、そんな璋子を義清は抱きしめてしまいました。

 今回は、義清がさらに璋子に言いより、璋子自身が自分の心の奥底に鳥羽上皇を思う気持ちがあることに気がつくにいたり、義清は璋子の首を絞めてしまいました。この狼藉を、内大臣・藤原頼長(山本耕史)に糺され、義清は出家することになります。

 その狼藉なのですが、頼長が義清を呼びつけて、鳥羽上皇の前で詰問しました。しかし、なんと、鳥羽上皇は、不問にしました。その場に駆けつけてきた璋子が、鳥羽上皇が不問にしたことを知ったときの横顔は、『平清盛』の中で初めて、璋子の感情が見えたと思いました。それまでは璋子は人形だったのですが、義清によって、空っぽな心の奥底に眠る「人を愛しく思う気持ち」を呼び覚まされたようです。

 ただ、感情が芽生えた璋子の横顔もよかったのですが、そのあと、鳥羽上皇が、璋子が聞いていることを知って(というか聞いているからこそ)、「とがめねばならぬことなど、何ひとつ起きておらん」「そなたが誰と何をしようと」…「心にさざ波一つたたぬゆえ」と告げます。鳥羽上皇の、のどにまでしわを張らせて震えながら告げるしぐさもすごかったのですが、鳥羽上皇の言葉を聞いた璋子の表情がよかった。直前の横顔は、まだ鳥羽上皇の心まではわからなくて「どうして」という気持ちのこもった顔でしたが、今回は、まさに、取り返しのつかないことになったことを知ってしまった表情でした。鳥羽上皇も、璋子も、迫真の演技! 三上博史はしぐさで、檀れいは表情で、魅せてくれました。

●堀河局(ほりかわのつぼね)の存在感がぐぐっとアップ

 璋子の女房・堀河局(りょう)が存在感を魅せてくれました!

 まず、鳥羽上皇が、璋子の元へ何者かの狼藉があったことを知り、心配して見舞いに来た場面。堀河局は、微妙なパワーバランスの上に成り立っているとはいえ、ときの最高権力者へ向かって、報告する気はないと断言します。「上皇はお逃げになりました。璋子様の空っぽの目から。今さら、お口出しは無用と存じます」。せりふもすごいのですが、堀河局の顔つきもすごかった。壇れいもよかったのですが、今回のりょうも良かった。

 さらに、堀河局は、ニセの文で呼び出した義清にも告げます。「救おうと思うのが、おこがましいのです」。確かに、璋子は上皇の后ですので、義清が近づいていい人物ではありません。そういった身分的な意味もあったのでしょうが、堀河局のはねつけるような口調と表情からは、国家権力の頂点では、恋だの歌だのにうかれている人間たちが近づいてはならないことが行われていると暗示させるすごみがありました。

●佐藤義清よ! お前は、やはり芸術家!

 今回の主役は、佐藤義清。よかったです。

 義清は璋子を救いたい、璋子を救えるのは自分だけだと思っていました。璋子の元へ義清を助けるように直訴にきた平清盛(松山ケンイチ)に、「あやつなりに待賢門院様をお救いしたいと心より考えてのことです」などと説明されてしまいましたが、義清は、そんな清盛のせりふで説明されてしまうほど器の小さい人物ではありませんでした。

「出家する」

 ある意味、現代を生きる私たちにとってはギャクにも聞こえてしまうこのせりふが、義清の口からでるとすごみが出ます。

 そして、義清が詠みます。

  身を捨つる人はまことに捨つるかは

   捨てぬ人をこそ捨つるなり

 この歌を詠む義清の声は、それまでに何度も放送されていた、美しく雅な義清の歌詠みとは次元が違いました。魂、命、人生、そういったものの全てを込めて、震えながら地声で詠むこの場面は、鳥肌が立ちました!

 でも、それ以上にしびれたのは、「今はこれまで」と言い置いた最後のひと言。歌を一首、詠み、よけいなことは言わず、そのまま去る、かっこよすぎです! ほんものの人生を生きる人間のすごみのようなものがにじみ出ていました。よかった!

  ***

 ストーリーとしては、今回は、得子(松雪泰子)が産んだ子が、藤原忠実(國村隼)の長男・関白藤原忠通(堀部圭亮)の娘(鳥羽上皇に入内して10年たつが子が産まれない)の養子をへて、3歳で即位(近衛天皇)しました。近衛天皇が即位したということは、崇徳天皇が退位して崇徳上皇になったということですが、そこは、はしょられていました。

 また、藤原頼長が、義清について、帝の歌を読んで帝の思いを知らしめるなど、武士のくせに「いけしゃあしゃあと、こざかしきこと」と、高階通憲(阿部サダヲ)の前で吐き捨てる場面がありました。保元の乱では、藤原頼長は崇徳上皇方として、後白河天皇方と敵対しますが、このせりふは、伏線のようにも思えます。

 いよいよ、保元の乱へ向けて、舞台が整い始めるのでしょうか。日曜の夜8時が、待ちきれません!

(2012年3月11日)




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