解説役
連載小説『tEo』の主人公4人
ヴィンセント(Vin
from『FFVII』
ザックス(Xax
from『FFVII』
リオン(Lion
from『Tales of Destiny』
ブルー(Blue
from『SaGaFrontier』



プロファイル02-00
ハーディンとキャロを巡る『ベイグラントストーリー』
プロファイル02-01
キャロとハーディンの役割は?
プロファイル02-02
ハーディンにとってのキャロ
プロファイル02-03
キャロにとってのハーディン
プロファイル02-04
ハーディンにとっての歪曲王
プロファイル02-05
ハーディンの最期




    ――レアモンデ探索中の軌跡――
「戦闘を経験していないエージェントは足手まといなだけだ」
とアシュレイに同行を拒否され、キャロはレアモンデ入り口で侵入する彼を見送ったが、
直後に現れたシドニーに誘拐され、捕虜として以後はハーディンと行動する。

 そんな彼女もレアモンデの“魔”に触れ、感染することで「他人の心を読む」力を手に入れる。
彼女はもともと、シドニーたちが自分に危害を加えようとしなかったこともあって、
シドニー・ハーディン・ジョシュアの3人をまるで危機感を感じずに観察していた。
そこに突然、彼女の知的探求心を潤す強力な武器として備わったその能力は、
精神をガードする能力でシドニーより劣るハーディンの薄い壁を簡単に壊していく。
シドニーを信じるハーディンの信念を揺るがす言葉に、ハーディンは言う。
「ふん、馬鹿なことを。人間は誰だって嘘をつく。
 負の能力があろうが無かろうが嘘をつき、信じさせることは誰だってできる。そうだろ?」
――それに、あいつが俺に嘘をつくものか(キャロが読み取ったハーディンの本音)――
「あなたたちはグラン・グリモアを手に入れて何をするつもり?」
「・・・」
――・・・(幻影は現れない。明確な目的が無いのか、それともハーディンがガードしたからなのか?)――
「いいわ、行きましょう。でも、シドニーはあなたたちに何か隠しているわ」
 ハーディンはそれを無視し、移動を始めるための準備を始めた。

    ――大聖堂にて――

 結局、『グラン・グリモア』を得るための“鍵”が見つからぬまま、ハーディンとキャロ(とジョシュア)
儀式の場、大聖堂に到着し、シドニーを待つ。
 魔物を見せつけられここまで連れてこられたのに、平然としているジョシュア。
「・・・泣かないのね」
「公爵邸占拠事件のショックで、一時的に口がきけなくなっているんだ。
 ・・・お腹は空いてないか?(ジョシュアに歩み寄り、姿勢を下げる)
「随分と優しいのね・・・、・・・(ハーディンの心が見え始める)
――国家保安庁に属していた時のことだ。俺はある任務に関する極秘調査を受けていた。
 それは、敵国の反体制派へ武器を秘密裏に流すという極秘任務に対する調査だった。
 その武器の一部が先方に届いていないと言うのだ。
 武器を横流しして、闇ルートで捌いて小銭稼ぎをしている奴がいると。
 みんながやっていたことさ。犯人は俺だけじゃない。
 そんな時、やつらは俺に取引を持ちかけてきた。
 免責を保証する代わりに、仲間を売れとね――
 それが何年前の出来事かはわからない。
 キャロの能力によって現れたハーディンの幻影はうつむきながらひたすら語り続けた。
 歳の離れた弟がいたこと。病気で死が近かったこと。
――・・・金も、自由も欲しかった・・・――
 ハーディンは仲間を売った。だが取引はフェイクだった。ハーディンは囚われ、
自由の身になった頃には、既に弟は死んでいたという(おそらく保護者がいなくなっての餓死・衰弱死)
「あなたがメレンカンプに属しているのは、
 あなたに不正をはたらかせた社会への復讐なの?」
「! ・・・また俺の心を読んだのか!」
 詰め寄るハーディン。距離を取らず、そのまま対峙するキャロ。
「こんなことをしても、あなたの弟は帰ってこないわ!」
「黙れ! 貴様に何がわかる!」
「弱者のフリをしたって駄目!
 自分の弱さを誰かのせいにしては駄目よ!」
 ハーディンはキャロを殴ろうとするが、現れたギルデンスターンにより中絶させられる。

 ハーディンはギルデンスターンの尋問を受ける。
肉体的な拷問ではなく、精神的な面を“魔”の力で圧迫する。続いて受けた強制暗示により、ハーディンは
目の前にシドニーがいるかのように誤認し、“鍵”の正式名称『血塗れの罪』を明かしてしまう。
ギルデンスターンは『血塗れの罪』をシドニーの入れ墨だと見抜き、シドニーがハーディンを親友と呼びながら
その一方で騙してもいた事実を明らかにする。
 ハーディンを剣で貫くギルデンスターン。
 そこにシドニーが現れた。
シドニーはハーディンたち3人を転移魔法でレアモンデから脱出させる。

 戦いの結末を知らないまま、震撼するレアモンデを遠方から眺めるキャロ。ジョシュアが手を引き、
傷から血を流すハーディンがそこには座っていた。
 キャロは何も言わない。ハーディンはそれを無言で見返し、口の端で笑った。
 ジョシュアが初めて喋る。ハーディンとの別れを嫌だと叫ぶ。ハーディンはそれを喜び、
「・・・怖い・・・思いをさせて・・・済まなかった・・・」
 ハーディンは消える。
 ジョシュアがキャロに泣きつき、それを支えながらキャロは、昇る朝日をレアモンデの向こうに見つめていた。



キャロとハーディンの役割は?

Xax
「この2人、結局物語の顛末とは無関係で終わってるけど、要はただの伏線キャラ?」
Blue
「恋愛担当じゃないか?
 ほら、ギルデンスターンとサマンサの結末があんなだったから、そういう
 利用・被利用の関係ではなくて、精神的な結び付きがあった恋人同士を描くのが目的だったのでは?」
Lion
「この2人は恋人とは少し違うだろう」
Xax
「じゃあ何よ」
Lion
「知るか。少なくとも、死に別れずに済んだとしても、この後恋人になったようには思えん」
Xax
「・・・ほほぉう?」
Lion
「(ムカッ)・・・なんだお前、その笑いは」
Xax
「ほほぉぅほぉぅ?」
Lion
「(ブチッ)なんのつもりだと訊いている!」
Xax
「おわっ、サーベル振り回すなって危ねぇな!」
Lion
「空襲剣!」
Vin
「・・・やめろ」
Xax
「ちょっとからかっただけだよ(ブスッ)・・・いってぇえええええええええええっ!!
Blue
「リオン! 本当に刺すことないだろう」
Lion
「ふん」
Vin
「2人の関係も後で確かにする必要があるだろうが、客観的なものも定めなければならない」
Lion
「・・・客観的な?」
Blue
「たとえば、ハーディンは、シドニーの腹心だったから、レアモンデに行ったんだったな?」
Lion
「そういう意味か。・・・なら、キャロ=メルローズはアシュレイをサポートするため?」
Xax
「それはレアモンデ入り口までだろ・・・イテテ
Blue
「ザックス、怪我は大丈夫なのか?」
Xax
「・・・よくわからん。後でBJ&Kに診てもらう」
Vin
「メルローズは、レアモンデ地下、ワイン貯蔵庫入り口でシドニーに捕まった」
Xax
「クリムゾンブレイドとか、他のどうでもいい連中は強制的に暗示をかけて自殺させてたじゃん。
 シドニーがアシュレイを殺さなかったのは興味を持ち始めてたからだろうけど、
 なんでキャロまで殺さなかったんだ?」
Lion
「人質の必要は・・・後になってみると、無いな」
Xax
「ハーディンも、なんでこんな女を連れてかなきゃなんねーんだ! って感じだったろーな」
Blue
「じぇすとーなの見解は?」
Vin
「仮説その1。
 後継者の儀式における生け贄候補」
Xax
「誰が後継者になるための?」
Vin
「明確ではない。この時点のシドニーはアシュレイを後継者にしようとは決めていなかったはずだが、
 だからといって自分が後継者になるためには誰を生け贄にするか決めねばならない」
Lion
「交流が深まれば、いつか魂が結びついて生け贄にできるかもしれない?」
Blue
「シドニーの心が迷い惑っていたことがうかがえるな」
Xax
「他の可能性は?」
Vin
「・・・他の機会にしよう」
Xax
「なんじゃそりゃあ!?」
Vin
「今になって思ったが、これらを仕組んだのは全てシドニーだ。
 シドニーが関係するプロファイルの時に明らかにした方がいいだろう」
Lion
「お前らしくないな。途中で方針を変えるなんて」
Vin
「私が企画をしているわけではない」
Xax
「『今になって思った』とか言ってるくせに」



ハーディンにとってのキャロ

Xax
「キャロが途中で開花させた、『相手の心を読む』能力って、すっげぇイヤだよな」
Blue
「他人が持つのも、自分が持つのも面倒ごとを生みそうだな」
Xax
「ハーディンも苛められてたっけか。可哀想にねえ」
Lion
「あれは、指摘されるまで自分の盲信の愚かしさ加減に気付いていなかったハーディンが悪い。
 自分も幹部とはいえ、組織を束ねているシドニーを疑うことを知らなかったんだからな」
Vin
「シドニーが公爵邸占拠事件を起こしたのは、ハーディンを納得させるためでもあった。
 ハーディンにとってシドニーの目的は、シドニー自身が魔都の支配者になることだった。
 公爵邸を占拠したのは『グラン・グリモア』の鍵を探すため、
 ジョシュアを誘拐したのは公爵の私兵が派遣されることを防ぐ人質として、
 レアモンデに逃げ帰ったのは、鍵があるとすればそこ以外にもはや考えられなかったため、と
 ハーディンの立場からすれば、シドニーの行動には一貫した目的がうかがえた」
Blue
「というか、これらはシドニーが独断で決定したことではなく、
 ハーディンとの2人で相談して決めたことだったかもしれないな。
 だからハーディンには、シドニーの行動に常に納得していたのかもしれない」
Xax
「っていうか、そういう風に暗示をかけて、納得させられてたのかもな」
Vin
「ハーディンは、シドニーの能力が桁外れであることを知りながらも、
 自分がそれに支配されているという可能性に思い当たることが無かった。
 だからキャロにその隙を突かれた時に、思いがけず動揺した」
Lion
「なんで気付かなかったんだ? それまで」
Vin
「可能性としては、疑問すら抱けないようにシドニーに暗示をかけられていたというのが第1」
Xax
「ちょっ、それはねぇだろ。
 シドニーの立場からはハーディンはちゃんとしたダチだったと思うぜ」
Lion
「だが、騙していた」
Xax
「・・・それは、まあ」
Blue
「他に可能性があるみたいな言い方だな」
Vin
「・・・」
Lion
「なんだ?」
Vin
「思い当たる節は無いか?
 どんな人間も、自分にとって都合の悪い事実からは目を背けたがる性質がある」
Xax
「じゃあ、ハーディンは薄々勘付いてたってのか?
 シドニーが自分に嘘をつくかもしれないと」
Blue
「キャロの能力を通してハーディンは、
 シドニーが自分に嘘をつくものかと言っていた。あれは本心だろう?」
Lion
「・・・なんでそう思った? ブルー」
Blue
「術士としての推測だ。
 たとえば『今は亡き弟』の想い出をキャロが知ったとき、
 ハーディンはジョシュアを弟と重ね見てはいたが直接過去を意識してはいなかった」
Xax
「それも、イヤなことから目を背けてるってことか?」
Blue
「おそらくな。だが、ハーディンが直接、自分の過去を思い浮かべていたではないにもかかわらず、
 キャロはハーディンの過去を、ハーディンの心から読み取ることができた。
 これは、キャロが透視しているのが『ハーディンの思考』ではなく、
 もっと深い深層の意思であることを意味している」
Xax
「・・・ほへー・・・すげぇな、術士ならではの感性ってやつか」
Lion
「じゃあ、やはりハーディンはシドニーのことを疑っていなかったということだな」
Vin
「いや、そうとは限らない。
 人は、薄々気付いてはいながら、敢えて意識の対象とせぬように、
 無意識を装って徹底して“知らないフリ”を決め込むことがある。
 催眠術などは、その効果を最大限に利用した商売だ。
 人は無意識のうちに、無意識を自分の意思で創り出す――それこそ無意識を装って」
Xax
「ぐはっ・・・ちょい待て、わけわかんねぇ」
Lion
「意識の表層に1度も現れないものがあるならそれが無意識だろう? なら」
Xax
「だから言うなって!!」
Blue
「とにかく、ハーディンにとって、能力に目醒めたキャロは
 自分の心の中の、一番向き合いたくない部分を顕わにしようとしてくる厭な存在だったわけだな」



キャロにとってのハーディン〜歪曲王〜

Blue
「・・・キャロは、ハーディンを救おうとしていたんだろうな」
Xax
「苛めてたじゃん」
Lion
「あれは、シドニーを信用し過ぎているから批判しただけだろう。
 シドニーを信用するな、と警告したんだ」
Vin
「別に、シドニーを敵視していたわけではない」
Lion
「・・・なに?」
Vin
「・・・シドニーとハーディンの絆については別の機会にとっておくが、
 別にキャロは、2人を反目させようとしていたわけではない。
 キャロ=メルローズは、ハーディンに対して
 セラピストや、精神科医のような存在として接していた」
Xax
「精神科医ぃ?
 それって分裂病とか、異常になってる奴がかかるもんじゃ・・・」
Vin
「そうとは限らない。
 近年では鬱病といった心因性の疲労症をはじめ、
 自己確立に失敗した者の陥る境界例(青春期境界線症候群)など、
 精神分析・セラピーの対象が広がり続けている」
Lion
「だが、ハーディンにメンタルケアの類が必要だとは思わないぞ」
Blue
「・・・ブギーポップ・オーバードライブ」
Xax
「え?」
Blue
「電撃文庫の、そういう小説がある。
 『ブギーポップ・オーバードライブ〜歪曲王〜』というタイトルなんだが、
 その中に登場する“歪曲王”という能力者とキャロは、とても近い行動をとっていた」
Xax
「ああ、あれか。俺も知ってる」
Lion
「それは、どういう話なんだ」
Xax
「・・・説明は難しいな」
Blue
「人にはそれぞれ、心の中に“歪み”があるという。
 トラウマや、成し遂げられなかったという敗北感のようなものがな。
 人々は誰しも必ず歪みを持っている。
 だが、その歪みに自分から目を向ける者はいない。
 歪曲王は、人々を歪みの発生した時と場所に直面させて、
 心の中にある、置き去りにしたその歪みに決着をつけさせようとしたんだ」
Xax
「空間使いみたいな奴なんだよ、歪曲王は。
 現実と夢をごっちゃにして、相手の精神世界に入り込んだりって、すげー能力があってな、
 それを利用して、相手を過去の世界や夢の世界やらに導くんだ。
 ・・・でも、じゃあキャロは歪曲王と同じことをしようとしたのか?」
Blue
「多分な。彼女は宗教心理や犯罪心理など、
 視野が狭くなった人間についての洞察には深い造詣があった。
 だから、周りの人間との交流の取り方や、能力を通して見ることのできた本音などから、
 ハーディンの中にある“歪み”を、彼自身に指し示そうとしたんだ。
 まあ・・・少し、歪曲王よりはやり方が一方的な訴えで終わっていた感はあるがな。
 キャロにとっては、彼女はセラピーを望んでこない患者、といった存在だったんではないだろうか」



ハーディンにとっての歪曲王

Lion
「だとすると、ハーディンの“歪み”というのは2つあったのか?」
Blue
「そうなるな」
Xax
「え? なんで?」
Lion
「・・・」
Xax
「・・・なんだよ、その目は」
Blue
「お約束になりつつあるな」
Vin
「第1の歪みは、親友<シドニー>との絆を疑うことに対する不安と恐怖。
 もうひとつは、過去に失った弟への後悔」
Xax
「後悔?」
Blue
「あの時、弟を守ってやれていたら、という後悔だ。
 弟を死なせてしまったのは、たしかに政府の無配慮や役人の奸計もあっただろうが、
 半分は・・・やはり、ハーディン自身の責任だからな」
Lion
「ジョシュア=コリーン=バルドルバに対して異常に優しかったのは?」
Blue
「ジョシュアと、弟を心の中で重ね合わせていたからだ」
Xax
「弟にやってやれなかった色んな思いやりを、目の前のガキにしてやろうとしたんだな」
Vin
「・・・だが、それをキャロ=メルローズは否定した」
Xax
「それだよ。俺は納得いかねーんだよ、それが」
Lion
「何故だ」
Xax
「『こんなことをしても、あなたの弟は帰ってこない』なんてな、言われなくってもわかってんだよ。
 帰ってこないからこそ、せめて目の前の子供に優しくしようとしてるんじゃねえか。
 帰ってこないなんて言われても辛くなるだけなんだし、優しくしてること自体はいいことだ。
 なら、わざわざあんなこと言わなくたっていいじゃねえかよ」
Blue
「それは・・・」
Xax
「神羅カンパニー・・・俺の古巣には、昔死なせちまった友達のことを悔やんでて、
 その罪滅ぼしの為に、街の平和を守ろうとしてた奴だっていたんだぜ。
 それって、別に悪くもなんともないだろ?」
Lion
「・・・」
Vin
「だが、それこそがつまり“歪み”の実態だ」
Xax
「何がだよ!」
Vin
「ジョン=ハーディンは、シドニーの弟との時間を、自分の弟との時間と重ね合わせて考えただけでなく、
 それらを同一化したかのような錯覚を覚え・・・更にそれのみに留まらず、
 そんな自分に薄々気付きながら、敢えてその現実に気付かないふりをしていた。
 また、罪滅ぼしという概念も、彼女は望まなかったはずだ。
 同じ過ちを繰り返さないため、という意義だけでなく、
 自分の罪を打ち消そうとするかのような発想が、甘えでしかないと思えたに違いない」
Xax
「・・・厳しかねえか?」
Lion
「そういえば、キャロはハーディンの心を読んで、こうも言っていたな。
 ハーディンがメレンカンプに属するのは、奴に『不正をはたらかせた社会への復讐』だと。
 ひょっとして奴は、弟が死んだ責任を社会に転嫁させようとしていたのかもな」
Blue
「『みんながやっていたことさ。犯人は俺だけじゃない』・・・
 ・・・そんな自己の正当化が、歪みの証明なのか・・・」
Xax
「・・・なんだよ、みんなキャロの味方か?
 あいつは立派な被害者なんだぜ」
Vin
「たしかに被害者には違いないが、あの男は自分にも責があることから目を背けた逃避者でもあった。
 自分が被害者であるという事実の一面にしがみ付いて、
 弱者として都合のいい復讐を為そうとしていた。ザックス」
Xax
「な、なんだよ」
Vin
「ハーディンの思惑通り、シドニーが魔都レアモンデの後継者になっていたとして、
 その第1の部下であるハーディンが望むことはなんだと思う?」
Xax
「!」
Lion
「そうか、政府への復讐・・・!」
Vin
「『みんながやっていたこと』だからといって罪から逃れられるならば、
 政府の腐敗した政治も、皆が維持し続けている“流れ”を変えようとしなかっただけだ。
 社会を変えることは個人ではできない。変えようと流れから抜け出れば、
 己を取り巻く流れの前に四面楚歌を聞くことになる。
 自分や家族を被害に曝したくないから、ただ黙っていただけの役人たちは・・・悪か?」
Xax
「・・・」
Vin
「少なくとも、傷つけられることの痛みをハーディンは知っている。
 知っているにもかかわらずそれを人々に強いるというなら、
 それは奴を牢に閉じ込めた役人たちとなんら変わりないことになる。
 キャロはそこまで見通していた。
 だからこそ、自分が暴力を受けることも厭わずハーディンの前に立ったのだ。
 被害者である自分を演じるな、
 自分の弱さを誰かのせいにするな、
 自分の消えない罪から目を背けるな、と」
Lion
「PS『ゼノギアス』に、似たようなくだりがあったな」
Vin
「SQUARE社製のRPGは、『FF』など伝統を壊し続けるかのような悪評がつくことが多い。
 だが、自己の内面や、記憶と信仰、閉ざされた者の生き方など、扱うテーマには一貫した訴えがある。
 『FFVII』のクラウドから始まった“自分探し”はアシュレイへ、
 レッドXIIIの“偽りの自分”はシドニーへ。そして
 『ゼノギアス』のフェイの弱さを担当するのがキャロとハーディンなのだ」



ハーディンの最期

Blue
「結局、キャロからすれば最悪の形で、彼は死んでしまったわけか。
 キャロの予言通り、シドニーは親友のはずのハーディンに嘘をついていたし・・・
 ジョシュアが、最後に声を聞かせてくれたのが、せめてもの償いか」
Lion
「『怖い思いをさせて済まなかった』という謝罪ができて、最後に歪みを消せたのがせめてもの・・・」
Vin
「・・・どうかな」
Lion
「ヴィンセント、何を言っている?」
Vin
「例えば、だ・・・ハーディンが死ぬ直前、ジョシュアには奴は謝罪の言葉を残した、
 だがキャロに対してはどうだ?」
Blue
「・・・たしか、黙って見つめあったような気が・・・
 キャロは切なげに死にゆくハーディンを見つめていたが、
 ハーディンはそれを見返して、口の端を曲げて笑ったな」
Lion
「自嘲的な笑みだったように思う。
 『ざまぁない、お前の予言した通りだったよ』とな」
Blue
「・・・」
Xax
「『脳みそ預けたみたいにシドニーを信じてた俺が馬鹿だったよ』ってか?」
Lion
「なんだ、僕が間違っていると言うのか」
Xax
「ブルーは、どう感じたんだ?」
Lion
「おい、僕を無視するな!」
Blue
「・・・私は、ハーディンがキャロに対しても『悪かったな』と謝罪しているように思えた。
 巻き込んでしまったこと、訴えをわかってやれなかったこと、
 自分自身を、見殺しにさせてしまったこと・・・“魔”に感染させて不完全な死を宿命づけてしまったこと」
Lion
「・・・」
Xax
「・・・そっか。そーいう考え方もあるんだな」
Lion
「・・・どういうことだ。何を考えている」
Xax
「俺はな、このハーディンの遺した沈黙と、そんときの表情に関しては、
 アシュレイの本当の過去がどれだったのか、ってのと同じくらい難しいもんがあるように思えたんだよ」
Lion
「・・・ザックスがまさかそんなことを言うとは」
Xax
「うるせぇ。で、ヴィンセント。お前からもなんか言え。
 どうせ『じぇすとーなの見解』ってのを持ってんだろ? 見せろよ(手を伸ばす)」
Vin
「(距離を取る)それは最後のまとめにとっておくが、
 個人的な意見として言わせてもらうと、
 先程のブルーの発言の延長上にある可能性を挙げることができる」
Blue
「私の?」
Vin
「言っただろう? 『見殺しにさせてしまったこと』への謝罪だと。
 キャロは、ハーディンの歪みを消せなかったこと、
 命を守れなかったことに関して罪悪感を感じていたかもしれない」
Lion
「かもしれない?」
Vin
「実際にどうだったかは問題ではない。
 キャロは座り込んだハーディンを憐れむように悲しむように見下ろしていた。
 その視線を、ハーディンが“そういう風に”解釈していたとしたら?
 ハーディンは、キャロの中に湧き上がり始めていた歪みを無意識に消そうとしていたかもしれない」
Xax
「つまり、『お前のせいじゃねえよ、気にすんな』ってことか。
 そういえば、どうしようもなかったとはいえ、ハーディンが弟を死なせちまったのと
 シチュエーションが似てる・・・? いや、似てねえか。気のせいだな」
Lion
「全然違う」
Blue
「そうだ・・・ザックスはどう思ってたんだ?」
Xax
「おっ・・・待ってましたぜ」
Lion
「嬉しそうだな」
Xax
「何しろ、ハーディンを誉められる唯一のポイントだからな。
 お前ら、ハーディンがキャロの言葉を、ある程度理解したと思ってるみたいだな?
 リオンの仮説なんかじゃ、まるっきり肯定してるし」
Blue
「違うのか?
 私の考えでも、キャロの訴えはハーディンに通じたと思ってるが」
Xax
「ああ。弟の方はともかくとして・・・っていうかそっちはジョシュアが担当だしな。
 シドニーへの盲信ってことに関しては、ハーディンはキャロの言い分を最後まで突っぱねてたね。
 『ふん、馬鹿なことを。人は誰だって嘘をつく。
  負の力があろうが無かろうが、嘘をつき、信じさせることは誰にだってできる』ってな。
 たしかにシドニーは嘘をついてたが、掌で踊らされてたってのではないわけよ。
 そのことに関しては、『俺たちは一体なんのために・・・』の続きが見つかり次第、
 すぐに無かったことにできるんだよ。親友だからな」
Vin
「読者諸君に一応補足しておくが、今の『俺たちは一体なんの為に・・・』というのは、
 ギルデンスターンに指された後、シドニーが助けに来た時にハーディンが漏らした言葉だ。
 後日公開予定の『シドニーとハーディン』に載せることを考えて、ここでは割愛している」
Xax
「そ。んで、その時に、シドニー転移の術『デルタ・エクセス』で逃がそうとするけど、
 ハーディンはこう言ったんだ。憶えてるか?」
Blue
「『公爵を・・・親父さんを助けたかったんだな?』」
Xax
「そうだよ! それが、シドニーがハーディンを騙してた理由なんだ。
 ハーディンは、結局シドニーを信じることにしたんだ。
 最期に見せた、あの笑顔は謝罪でも景気づけでもない。
 『悪いな。結局、俺はシドニーを信じることにしたよ』って意味なんだよ」
Lion
「・・・そうなのか?」
Xax
「・・・リオン、お前、単に俺の言葉だから信用してないだけじゃねえだろな」
Lion
「な、なんだと!?」
Vin
「別にザックスの案が正解というわけではないだろう。
 だが、この『ベイグラントストーリー』は、製作スタッフにとっては
 『人はそれぞれ、情報を自分にとって都合のいいように解釈しようとする』という想いが中心にある。
 キャロの訴えが正しいものであったのか、それはハーディンに伝わったのか、
 ハーディンはそれを本来の意味で理解したのか、その訴えを肯定したのか否定したのか。
 これらは全て、『アシュレイとシドニー』でも述べた通り、ユーザーそれぞれが判断することだ」