解説役
連載小説『tEo』の主人公4人
ヴィンセント(Vin
from『FFVII』
ザックス(Xax
from『FFVII』
リオン(Lion
from『Tales of Destiny』
ブルー(Blue
from『SaGaFrontier』




    ――プロローグ直後。公爵別邸――

(雨降りしきる夜景を窓外に、公爵がベッドへ腰から下を埋めている・・・濃青)
(ベッドの傍らには初老の使用人側近? 秘書?が2人、立っている・・・青緑)
(公爵に向き、片膝を突いて頭を垂れる男が1人。ローゼンクランツだ・・・濃赤)
「・・・では、鎮圧したのは王国騎士団ではなく、法王庁の者たちというのだな?」
「ギルデンスターン率いる聖印騎士団でございます」
「“クリムゾンブレイド”と呼ばれる法王直属の部隊です」
「ギルデンスターンらはシドニーを追って、すでにレアモンデに向かったとのことでございます」
「・・・ふむ。・・・だれぞ、聖印騎士団の甲冑を着用し、館に火をつけるように命じよ」
「! ・・・火・・・でございますか?」
「シドニーはワイバーンを用いたのだ。あれを見たものを生かしておくわけにはいくまい」
「しかし、人質に取られていた奥様らは・・・」
「構わぬ。火を放て!すべてを灰にするのだ!」
(雷鳴が響き渡る)
(命じられた側近は、怯えたように肩をすくめると、部屋から出て行く)
「・・・議会の動きは?」
「バレンディア治安維持騎士団<VKP>は重犯罪者処理班を投入しております」
「リスクブレイカーか・・・。厄介な連中がからんできおったな」
「いかがなさいます?」
「・・・レアモンデは貴様に任す。
 やつらを生かしてレアモンデから出すな。シドニーもクリムゾンブレイドも処分するのだ」
「議会は?」
「番犬どもはわしが何とかしよう・・・。これ以上、邪魔はさせん」
「ジョシュア様はどうされます?」
「・・・あれはわしの魂だ。死なせるわけにはいかん・・・」
「仰せのままに」
(ローゼンクランツが立ち上がり、一礼をしてから去る)
(自分以外の誰もいなくなった寝室を、雨音が支配する)
「・・・生きながら腐るとは我のことか」
 



公爵の虚像と実像

Xax
「いやー、久しぶりだなこのコーナーはよぉ」
Blue
「1年ぶりだからな」
Xax
「事情を知らん人は、そうだな・・・このサイトの『What's new?』のところを見てくれ。
 メルカバーの更新期間が、途中で1年くらいすっぽ抜けてるはずだ。
 この文書は、1年ぶりの再起動でアップされた文書なんだよ」
Lion
「小説もこのコンテンツも完全に凍結していたからな。
 リンクページは穴だらけの荒野と化し、掲示板には荒らしのメッセージまであったらしい」
Xax
「ああ、変なアルファベットが幾らか入力されてるカキコが幾つも並んでたな。
 迷惑する人間が居ないのに、あれ、後でリアクション見に来た犯人ガックリきてたぞ絶対」
Vin
「雑談はそこまでだ。本題に入るぞ。バルドルバ公爵とシドニーについて」
Blue
「上の会話文は、公爵邸占拠事件がクリムゾンブレイドによって強引に解決した後のものだな」
Xax
「公爵、何考えてるのか全然わかんねーよ、この部分だけ抜粋してもさ」
Lion
「妻はどうでもいいくせに、息子には拘るんだな。何故だ?」
Xax
「妻・・・って、権力者のだろ? てことは結構ヤな性格だったんじゃねぇかな」
Blue
「あり得る話だが、どうもしっくり来ないな。妻がどうでもいい存在だったのか、
 ジョシュアが特別大切な存在だったのか・・・どちらかと訊かれればおそらく後者だろう」
Lion
「ジョシュアを特別扱いしたのは何故だ? 後継ぎだからでは、無いな。
 そういえばシドニーのことも、公爵はかつて随分大切にしていたと聞いたぞ」
Vin
「論点を絞ろう。この部分で扱うのは、公爵の内面だ。どんな人間だったのか。
 ジョシュアへの感情が強いのは事実だが、その一方で妻や使用人を皆殺しにしたのも公爵だ」
Lion
「“魔”の力なら、ジョシュアだって見ていたのにな」
Blue
「・・・なんだか、ジョシュアも殺すべきだと言っているように聞こえるぞ」
Lion
「世界の秩序を最優先するなら、それが正しいやり方だ。
 そもそも世界の平和を守るのに愛と正義は必要無い。要は甘いんだ」
Xax
「ぐはっ。きっつぅ・・・」
Vin
「そう、甘い。この場面で公爵は、初登場ながら既に矛盾を見せている。
 絆を否定する態度をとりながら、一方で肯定した」
Lion
「ローゼンクランツやギルデンスターンのように、常人離れした独特の倫理観があったか?」
Blue
「最後に自嘲しているようだが」
Vin
「公爵は、確かに独特の価値観を持っていたが、ローゼンクランツたちのように開き直っていない。
 むしろシドニーのように、割り切れない、踏み込み切れない部分に支配されていた」
Xax
「じぇすとーなの見解か? 今回は出すのが早いな。独占してないで見せろよ(手を伸ばす)」
Vin
「(離れる)」
Blue
「その境界線にいたのが、ジョシュアか」
Lion
「では、やはり公爵はジョシュアも殺すべきだと考えていたんだな」
Vin
「そうは言わない。妻たちも生かすべきだと考えていたのかもしれないからな」
Xax
「・・・じゃあ、結局わかんねぇんじゃねーかよ」
Vin
「公爵自身にもわかっていなかったことに、我々がそうそう確信を持てるはずもない。
 前のプロファイルに記した通り、シドニーは占拠事件前後に『魔都を公開して頂点に立て』と
 公爵に訴えている。これを拒絶した理由は確かに公爵にはあったのだが、
 拒絶したせいで、妻や使用人を殺さなければならなくなった」
Blue
「・・・そうだな。秘匿しようとするのは、あくまで公爵自身の拘りなわけか。
 魔都をひた隠しにすることを正しいと前提するなら妻らの死は冷徹な者にとっては必定だが・・・」
Lion
「家族を殺すほどに、魔都の秘匿が重要な事象なのかを決めかねていた公爵にとって、
 それは自分のエゴでしかないようにも思えたわけか」
Xax
「ちょっと飛躍し過ぎじゃねえの?
 そこまで深読みして欲しいって、製作スタッフは実際に思ってたかね?」
Blue
「制作途中でボツになったエピソードがわからずじまいだからな。憶測になるのは仕方ないさ」
Vin
「それでも、生きながら腐るのは我のことかと言っている以上、
 このシーンをもとに、公爵を道徳側か背徳側のどちらかに位置付けるのは誤りだ。
 エゴかもしれない信念のために他人を殺し、そうまでしておいて
 自分がどうしても嫌だと思う事態は防ごうとする。そんな自分を嘲ったのだろう。
 現実の板挟みにさえならなければ、この男も充分に誠実な男だったはずだ。
 そうでなければ、内省も自嘲もできるはずがないからな」
 


いずれ奴は“魔”に魂を喰われることだろう
Vin
「このパートでは、公爵が“魔”の使用を何故否定したかという疑問について解明する」
Xax
「あ、以前後回しにしたやつだな? 公爵の死生観が許さなかったって」
Blue
「公爵は何故そこまで“魔”を毛嫌いしたんだ?
 濫用を慎むならともかく、使用すること自体を何故ああも頑なに拒んだんだ。
 “魔”を利用することは、そこまで危険な作業なのか?」
Lion
「少なくとも、それは確かなんだろう。
 シドニーが言ったな。ギルデンスターンがやがて“魔”の餌食になると。
 奴ほどの男でも制御を誤るくらい、魔都という力は御し難いものなんだ」
Xax
「じゃあ、公爵にも制御し切る自信がなかったってことなのか?」
Vin
「制御が難しいのは事実だ。しかし、それは技量の問題ではなく精神的な問題だ。
 それにこれはじぇすとーなの独断だが、例えギルデンスターンが“魔”を完全に制御できる
 器の持ち主であったとしても、公爵はそうすることを良しとは考えなかったはずだ。
 公爵は、魔都の消滅を望んでいた。何故だと思う」
Blue
「あってはならない力だと思ったんだろうな」
Vin
「何故、あってはならない力なんだ?」
Xax
「世界の秩序を乱す、とか。強過ぎる力はやがて人類全体を滅ぼす、とか」
Vin
「だが、かつて大魔術師メレンカンプは魔都の力を完全に制御し、
 人々に“魔”と密接に関わる秩序を提供していた」
Lion
「・・・だからなんなんだ?」
Vin
「“魔”とは、絶対存在してはならない力ではないということだ。
 “魔”に染まった上でも、人々は身を滅ぼさずに生きることができる。
 事実そういう時期が古代にあったことは、公爵にとっても知る事実だったはずだ」
Xax
「身を滅ぼさずに? ・・・おい、メレンカンプの頃の魔都文明は滅んでるじゃんかよ。
 あれ? ・・・あれ?」
Blue
「なんだ? ザックス」
Xax
「おかしいぞ」
Lion
「何が」
Xax
「だって、魔都の支配者は『完全なる不死』の持ち主なんだろ?
 じゃあなんで、アシュレイや公爵の時代に、メレンカンプは故人ってことになってるんだ?」
Lion
「! ・・・そういえば」
Xax
「不死者は死なないだろ? ゲーム中のギルデンスターンは、
 “魔”を御し切れてない不完全な継承者だから負けたってことになってるみたいだけど。
 メレンカンプが死んだ原因はなんなわけ?」
Blue
「待てよ・・・そう考えると、もう1つおかしいところが出てくるな。
 主が不死者となれるのであれば、何故魔都に『継承』『後継』のシステムが要るんだ?
Vin
「仮説その1。魔都支配者は外敵からのあらゆる力によって侵されることが無い代わりに、
 魔都支配者であるが故に、絶対に覆せない『寿命<タイムリミット>』が設定される。
 “魔”を魔界<異世界>の力と解釈するならば、それにアクセスすることには
 リスクもデメリットも付きまとうはずだ。この仮説が正しかった場合、
 シドニーへの献身が無かったとしても、公爵はいずれにせよ身を蝕まれて
 死んでいたことになる。『完全な不死』の実態は所詮ただの『無敵』。不死性ではないということだ」
Xax
「その2は?」
Vin
「仮説その2。魔都支配者の限界や制約故に逝ったのではなく、
 メレンカンプたち歴代の支配者らが自ら不死性を放棄した。あくまで自由意志」
Lion
「そんな馬鹿な! 全員が自殺したって言うのか!?」
Vin
「自殺ではない。魔都を他の誰かに託し、余生を送り、その果てに死んだという仮説だ」
Lion
「・・・それは同じことだ」
Blue
「他の可能性は?」
Vin
「仮説は以上だ」
Xax
「おいおい、そのどっちかかよ!
 その時代敵対してたヨクス教徒によって、敗北した可能性は?」
Vin
「ヨクス教徒によってバレンディアは建国された。
 魔都を上回る力をそんな昔のヨクス教徒が手にしていたというのならば、
 今更レアモンデを求めはしないだろう。仮にかつてのその力が失われていたとしても
 そちらの方を模索するはずだ」
Lion
「何代か後継が繰り返されるうちに、偶然ギルデンスターンのような未熟な後継者が現れて
 その代に魔都に住む別の人間によって斃された可能性は?」
Vin
「それは『何代か続いて』の部分に、お前の納得しない現象が起きているという前提の可能性だ」
Lion
「・・・」
Vin
「しかし、そういう事実は確かにあったのだろう。メレンカンプの頃の文明が今日まで
 続いていないということは、何処かで継承が途絶えたということだ。
 公爵がどういった経緯で魔都を継いだのかわからないので、詳細は不明だが」
Xax
「どっちにしろ、自分から不死性を放棄した奴がいた、っていう仮説なんだな」
Vin
「そうだ。少なくとも、メレンカンプはそうやって死んだ」
Lion
「その2つしか可能性が無いのならば、思索の余地は無い。間違い無く仮説1が真実だ」
Vin
「確かに、仮説1が正しかったとするなら、確かに不死性を求める人の性にも背かず、
 ひととおり問題の無い形で理屈が通る。
 しかし、結局仮説2と同じ議論が果てに待っているとも言える。そうは思わないか」
Lion
「どういう意味だ」
Blue
「わからないでもない。 継承者候補が、
 一時の無敵性のために魔都支配者になろうとするのは不毛な希望だと思う。
 魔都支配者の座は、栄光でもなんでもない。“魔”を管理し、魔都を賄う義務を負って、
 しかも“魔”の管理に身をすり減らしていく・・・これでは、支配者というよりはむしろ、生贄だ。
 歴代の継承者たちは、一体何を望んで、魔都を継いだんだ?」
 



魔都の矛盾
Blue
「仮説1が正しかった場合、後継者は自分の寿命が磨耗することを覚悟の上で
 レアモンデの“魔”の文化を民に恵むための生贄になってきたことになる。
 仮説2が正しかった場合、後継者は自分の命に拘泥しない者たちで
 やはり民に“魔”を提供する役目を十何年か担い、やがて放棄したことになる」
Xax
「なんとも静かな伝統だな。一体何がしたくてレアモンデを継いだんだ?
 レアモンデの力で、一気に世界征服! とか思う奴いなかったの?」
Lion
「いなかったはずはない。しかし、そういうローゼンクランツみたいな
 考えをする者は、あくまで少数派だったということだな」
Vin
「ここで、逆説的な答えが出てくる。
 『“魔”に対する野心も欲望も無しに、何故人は魔都を継ぐのか』という謎からな」
Xax
「どゆこと?」
Vin
「『そもそも“魔”に何かを求める、期待するような者には
  魔都レアモンデを継ぐ資格が無かった』のではないか」
Blue
「“魔”を望む者には“魔”を支配することはできない・・・シドニーの言葉だな」
Vin
「それも、公爵と同じ考えを持つに至った、公爵の思想を理解した
 シドニーの言葉でもある。つまり、公爵の言葉でもあるのだ」
Lion
「ところで、さっき言っていたな?
 たとえ“魔”を望む者に“魔”を御する力があったとしても、
 それがレアモンデを継ぐのは相応しくないと」
Vin
「独断だがな。じぇすとーな(メルカバー管理人)は、シドニーの言通り
 ギルデンスターンに“魔”をあまねく力が無かったのだろうと考えているが、
 じぇすとーなの論において、仮にギルデンスターンが、
 “魔”に対する野心と、“魔”を御し切る器を両立させていたとしても、
 やはり歴代の継承者たちにとってすれば、彼が魔都を継ぐのは分不相応なことなのだ。
 その実は、ブルーの言った通り、魔都支配者の座は栄光とは違うというところにある。
 また、自分の死を頑なに拒む者が魔都を継ぐ行為も、魔都を理解していない証。
 メレンカンプの地位は、やはり生贄に過ぎなかったのだ」
Blue
「魔都を継いだ者は、民に安定した“魔”の利益をもたらすために“働いた”ということか?」
Vin
「その意義・意図がなんだったのかはわからない。
 単純に民を幸福にしたかっただけなのかもしれないし、
 民に“魔”を与えることで、彼らに精神的な発展を期待したのかもしれない。
 人が生きる秩序の姿に変革を、新たな段階を期待したのかもしれない。
 だが少なくとも、自分が魔都を使って、世界を掌握するためではないし
 民に“魔”を使った労働を課し、特殊な税のようなものを徴収しようとしたわけでもない。
 力は、あくまで分け与えたもの。分譲したもの。
 “魔”を得た民に何かを期待するくらいなら、自分でやる方が確実なのだ」
 



今在る現を肯定する
Vin
「このあたりで、論点をシドニーとバルドルバ公爵に戻したいところだが
 その前にもう1つ確認しておきたい。
 じぇすとーなの考える、『“魔”を求める行為自体の卑小さ』だ」
Xax
「魔都の性質とはなんの関係も無く、ってことだな」
Vin
「じぇすとーなは先のパートに述べたように、魔都を継ぐ者の資格を考えている。
 しかしそれとは別に、公爵がシドニーに、真に理解して欲しいと思っていたもの、
 そして物語の終盤で実際にシドニーが理解したものは、
 魔都の性質とは無関係な、“魔”を望むまいとする高潔さだったと考えている」
Blue
「“魔”に何かを期待するのが、未熟だというわけだな?」
Lion
「僕には良くわからないが。
 手に入るかもしれない力があるんなら、手を伸ばして何が悪い。
 その力があれば、今できないことができるようになるんだ。欲して当然だろう」
Xax
「ん〜、その点においちゃ、俺もリオンに同意見かな。
 弱いよりは強い方がいいじゃん。できないよりできる方がいいのも当たり前だし」
Vin
「強く在ろうとすることは悪くない。だが、自分の外にある力を求めることに問題がある。
 外に何かを求めることは、1つは今の自分にそれが無いという自白であり、
 1つはそれが無い現状の自分では駄目だという弱音でもある。
 例えばローゼンクランツだ。奴が自分の心の餓かつえを癒すためには
 レアモンデの力が必要――そう本人は言った。しかしそれを得ずして、
 誰も攻撃・支配・蹂躙せずして、心の餓えを癒すことが、本当にできなかったか。
 アシュレイは、奴同様肥やし代わりに使われた過去を持ちつつも、
 せっかく手に入れたレアモンデの力を個人的な復讐に使おうとはしなかった。
 ハーディンは、ローゼンクランツと同じように復讐を企てたこともあったが、
 シドニーやキャロやジョシュアと共に過ごした記憶の果てに、
 私怨を棄てて静かな死を享受することができた。
 ローゼンクランツにも、そういう可能性があった。
 にもかかわらず、あの男はそういう内面的・内省的な可能性には目を向けず
 外面的なレアモンデの可能性に拘り続けた。それは奴の未熟だったと言える。
 そんな奴を、シドニーは見下すような目で見ていた。
 結局は現状を享受する器を持たなかっただけの男を見下ろす自分の目。
 それが、世間一般の貪欲な者たちを見るときの父の目でもあるとシドニーは理解し、
 “魔”を目前にしてもそれで何かをしようという発想を持たなかったアシュレイに、
 真にレアモンデを継ぐに相応しいだけの器があるのだと考えた」
Lion
「・・・」
Vin
「公爵は、おそらくそういった可能性の存在を、シドニーに理解して欲しかったのだ。
 だが、それは父の危篤という現状を前にして、その死を受け容れろという意味でもあった」
Blue
「だから、シドニーは納得できなかったのか?」
Vin
「違う。受け容れる受け容れない以前の問題だ。
 理解することの残酷さを知っていたから、公爵はそのテーマをシドニーの眼前に
 突き付けることができなかった。だがそのせいで、シドニーの主張をただ否定するだけ、
 根本理由は説明できないという彼の心情とは裏腹な事態を招いてしまった。
 うわべの理屈だけを並べられたシドニーは父に反抗し、独断で動く。
 しかしそれでも、シドニー自身自分の希望をどう認識すればいいのかわからず
 ハーディンを欺きながらの妙な逃避行を行う羽目になったのだ」
Xax
「擦れ違いだったんだな。なんか、一般家庭にもありそうなヤツの喩えみたいだ」
Blue
「それでもシドニーはギルデンスターンたちと関わるうちに、公爵の言えなかったことが
 ニュアンス程度には理解できるようになったんだな」
Vin
「その事実は――おそらく魔都の気配が落ち着いたことで公爵も察したことだろう。
 野心に穢れていない誰かが魔都を継いだという事実は、公爵に安堵をもたらした。
 いや、安堵ではないな。幸福、でもない。――至福・・・――安らぎ・・・そう、福音だ」
Blue
「そして、2人は共に逝ったというわけか。
 歴代の継承者たちも、それに近い心理状態で安らかに死んでいったのかもな」
Xax
「ちょっと待て。“魔”に関わった者の死は『不完全な死』じゃないのか?」
Vin
「消滅するときの輝き方が違うので、じぇすとーなはそうではないと思っている。
 『不完全な死』の宿命など、歴代の継承が途絶えてから後の不完全な管理下でのみ
 生み出される、不完全燃焼の老廃物のようなものだと。
 アシュレイの背中に刺青が入った瞬間から、“魔”に染まった不死者の魂は
 皆等しく消滅した。『不完全な死』の宿命から民を解放し、『完全な死』へ導くのも
 メレンカンプの構成したレアモンデ――『グラン・グリモア』システムの重要な根幹だと」
Xax
「・・・なんか、攻略本『VangantStory−ULTIMANIA』に載ってた小説の設定と
 違うんじゃねえの? あの小説では、管理者は『不完全な死』に陥った魂を取り込んで
 そいつら全員に安寧を与えるとかなんとかが仕事だって書いてあったけど?」
Vin
「どちらもそれぞれ解釈の1つだな。
 しかしじぇすとーなに言わせれば、自分の論の方が精度が高いのだそうだ。
 攻略本の設定だと、メレンカンプの代の魂たちが彼女を含めて全員――」
Xax
「あーわかったわかった。もうウンチクは沢山だぜ。
 もう謎解きする箇所は全部消化したろ? だったらこれでお開きにしようぜ」
Lion
「・・・」
Blue
「どうした、リオン。さっきから黙っているな」
Lion
「・・・僕は納得しない。力は有るべきものだ。より上を目指して何が悪い。
 内面的な力なんて自己満足の領域だろう。
 精神的にどんなに強くなって、いざ実際に敵が目の前に出ればなんの役にも立たない。
 ローゼンクランツもギルデンスターンもそうだった。
 シドニーだって、結局魂だけアシュレイに公爵のところまで運んでもらったが、
 要はギルデンスターンに負けたんだろう。それが限界だ。アシュレイが
 ギルデンスターンに勝ったのも、ただ強かったからだ。より力があったから、勝った」
Blue
「・・・間違ったことじゃないけどな。
 しかし、何を優先するかは人によって違うだろう?
 『死ぬわけにいかない』『生きる』を最優先する者にはそうだろうが、
 例えば『無駄死にをしない』を最優先する者なら、命よりも意義を求めるものだ」
Lion
「力を否定するとか、死を享受するとか、そういうのは
 力を手にできなかったか、手にするわけにいかなかった連中の言い訳だ。
 自分の中にあるジレンマを消そうとして、後になってから自分を納得させようとして・・・」
Xax
「でもメレンカンプは、仮説1と2のどっちが正解
 だったとしても、自分の死を予約するような道を選んだと言えなくもないし。
 まあ彼女が何を望んでたかなんて、わかるわけないけどな?
 それでも、後からの言い訳じゃなくて、最初から力や不死性を欲する姿勢を
 放棄してたぜ?」
Lion
「・・・ザックス。お前、さっき力は強い方がいいと言っていたじゃないか」
Vin
「リオンの言っていることももっともだ。不死を求めたことの無い人間などいないだろうし、
 ならば、不死を否定できるどんな人間も、長い目で見ればその論理が
 『手に入らなかった者の言い訳』でしかない。そう、リオンの主張は正しい。
 しかし、力を否定する者の方が、
 時としてより広くを見渡せる視点の持ち主であるのも事実だ――時としてはな。
 アシュレイは第1段階のギルデンスターンを倒した後に、
 新たな後継者として特例に“魔”に選ばれ、誘惑を受けた。
 しかしアシュレイはそれを否定し、魔都を征し、支配者となった。
 この男に欺瞞は無かった。欺瞞無き現実肯定というものは存在する。
 それに関しては、『ゼノサーガ』コンテンツでニーチェ哲学を説明する予定だから
 そこでまた挙げることになるだろう。そこで更に詳細に軌跡を辿る」
Xax
「・・・って、おい!?
 てことは、俺らがゲームのプロファイルするのはこのゲームが最後じゃないわけ?」
Vin
「未定だ。じぇすとーな自身が説明するかもしれないし、我々が担うかもしれない。
 どちらにもメリットとデメリットがあるからな」