BackGround−03バレンディア治安維持騎士団に所属するエージェントたち



「俺がその応援だ」
「殺したのは騎士崩れの野党だ」
「人は自分に都合のいい嘘をつく・・・自分自身を救うために・・・か」

 重犯罪者を対象に単独で活動することを原則とした、通称リスクブレイカーでも最も優秀なエージェント。本来なら生還率30%とされる危険な任務の数々を、たった1人で完遂してきた。
 元・王都バルナイン近衛騎士団の一員。
愛する妻子を、ピクニックの最中に騎士崩れの野党に襲われ、失ったことがきっかけして、犯罪を憎むようになりリスクブレイカーに転任した。事件以後は、他人との交流を避けるようになり、最近では感情の変化を読み取ることは不可能。エージェント・メルローズにも「足手まといなだけだ」と言って同行を断っている。
 いつものように単身で公爵邸に侵入し、シドニーをボウガンで射る。だが――動脈の停止を確認したはずが、当然のように立ち上がり矢を抜き去ったシドニー。立ちはだかった手負いの竜<ワイバーン>を葬り、シドニーが公爵の息子を連れ去ったと思われるレアモンデへ向かった。
彼はエリートコースを経て現在の所属に至っており既存の戦闘能力はかなりのものだが、レアモンデの中でシドニーと再会した時以来、修得した憶えの無い謎の殺人技<バトルアビリティ>を使い始めている自分に言い表せない不安を感じ始めることになる。
 レアモンデへの唯一の侵入経路であるワイン貯蔵庫入り口までは、エージェン・メルローズと共にその消息が知られているが、そこで別行動をとった2人は、その後それぞれが消息を断ってしまう。
 その後のアシュレイについての公式記録は殆ど一切VKPには寄せられていないが、唯一、バルドルバ公爵の急逝直前にエージェント・ライオットが公爵別邸を訪れた記録から、殺害容疑がかけられることになった。
VKP重犯罪者処理班に属する、心を封じたエージェント
アシュレイ=ライオット

「過去を見つめぬ者に未来は無い」
「美辞麗句で未来を飾っても、地に足が付いていなければ進歩は無い」
「“魔”よ、去れ!」

 アシュレイの記憶を、シドニーは偽りのものだと言った。
愛する妻子を殺された悲憤からリスクブレイカーに転任したというのは偽りで、真実は違う。
彼は任務行動中に無関係の民間人一家を殺害し、自責の念から逃避するため、記憶の捏造をVKPに依頼したのだと、シドニーは断言した。
 体に染み込んでいる、修得した憶えの無い殺人技<バトルアビリティ>の存在がそれを裏付け、またローゼンクランツはその当時のアシュレイと知り合いだったと告白する。
アシュレイは己を信じられなくなり、気が付けば周囲の言葉を信じ初めていたが、最終決戦の最中、膨大な“魔”の波動に触れた際に、過去に惑わされない、確かな自分としての存在を見出し、真実の過去を確かめるという誘惑を敢えて否定し、迷うことなく“魔”との共存を否定し、祓った。
 城塞都市レアモンデを、“魔”を悪用する者には渡さないで欲しいというシドニーの願いに応え、最後には魔都支配者の“後継者”となって全ての“魔”を手中に収め、姿を消し放浪生活を送る。
 公爵別邸を訪れたのはアシュレイではなくシドニーだった。
親子の最期に訪れた和解の時と涙。それを見届けて、彼は人々の心に暗示をかけ、その場その場を切り抜ける日々に身を投じる。完全な力を得た彼は、誰にも存在を悟られること無く一生涯を全うするのだろうか。



「我々の管轄よ! 命令を無視するなんて!」
「・・・何をしているの?」
「シドニーはあなたに何かを隠しているわ」

 若くして宗教心理学と犯罪心理学の博士号を修め、VKPに入隊した女性。
情報分析班の彼女は重犯罪者処理班のアシュレイとは違うので直接の面識は無かったが、彼女の分析能力は若さに反して認められており、公爵邸占拠事件に投入され、アシュレイの支援を指示された。
 他人の心理に関心を寄せている際は自分の安否に対する懸念を失念してしまうほど知的好奇心が高いが、本来はとても聡明な女性で、同情心などの目先の感情に囚われずに相手の心の本質を掴むことのできる深い感情能力がある。
 公式情報において、彼女の消息もまた、レアモンデへの唯一の地下侵入路で途絶えている。レアモンデ侵入経路でアシュレイと別行動をとった直後、メレンカンプのシドニーに拉致されていたらしい。
実戦経験を持たない情報分析官の才女
キャロ=メルローズ

「・・・泣かないのね」
「あなたがメレンカンプに属するのは、あなたに不正をはたらかせた社会への復讐なの?」
「弱者のフリをしたって駄目! 自分の弱さを誰かのせいにしては駄目よ!」

 彼女はレアモンデ入り口でアシュレイと別れた直後、シドニーに捕らわれた。
その後、誘拐されていたジョシュア=バルドルバと共にメレンカンプのNo.2:ハーディンに誘われレアモンデ中枢の大聖堂へと案内されていた――が、これは捕虜としてではなくむしろ安全な場所(自分で守ってやれる範囲)に置くための配慮と考えられる。
彼女は、レアモンデの“魔”をバルドルバ公爵の後継者として手中に収めるために鍵『血塗れの罪』を探していたハーディンたちの様子を、常に傍らで見つめ続ける。
 探索を兼ねた移動の途中、彼女は“魔”に感染したことで「相手の心理を読み取る」能力を開花させる。
その能力を持った彼女は、シドニーやハーディンの揺れ動く心情を知り、その隙間を埋めようとする。
 法王庁のギルデンスターンにハーディンは殺され、シドニーに間一髪で魔都の入り口に転移させられる。
崩壊する魔都から脱出した彼女を待っていたのは、ハーディンの死と、それを悲しむジョシュアだった。
亡き弟との時間を求めたハーディンの激情を叱咤した彼女の想いは、彼に届いたのだろうか――?



「馬鹿言え。ハイエナは用心深いんだぜ」
「俺を倒せるとでも? これでも元リスクブレイカーなんだぜ」
「宗教家なんてハナから汚れてるもんさ」

 オープニングで、バルドルバ公爵から魔都を目指した全ての者を抹消する指令を受けていた男。
アシュレイには、援護指令を受けて参じたリスクブレイカーだと自称し接触を試みるが交渉は決裂したままだった。
バルドルバ公爵と内通し、またリスクブレイカーの内情に詳しいことから議会とも無関係ではないはず。
またシドニーと法王庁の騎士団もローゼンクランツを知っているような言動を劇中で見せる。
 魔都レアモンデの調査を長く行っていたようであり、魔都に生息する生物の習性まで把握している他、「“魔”の干渉を無効化する」という特異能力を開花させ、法王庁にも臆することなく対等に接していた。また、シドニー以外に、物語冒頭の時点から古代魔導師メレンカンプの遺産、究極の魔道書『グラン・グリモア』の本質を掴んでいた人物でもある。おどけたような挙動に抜け目の無い野心を隠した、現実主義と個人主義をひけらかして生きる男。
誰よりも力に執着し誰とも相容れぬ志に己が全てを懸けた男
ジャン=ローゼンクランツ

「あんただって、俺というチャンスを利用していたんだろう? あんたにはまだ俺が必要なはずだ」
「だが俺は違う。利用して、のし上がってやる」
「俺が立派にお前の意志を継いでやる。さぁっ、儀式を! 俺を“後継者”に指名するんだ!」

 アシュレイが罪無き家族を殺した頃、ローゼンクランツは彼と同じチームだったという。国家権力のどす黒い部分を担い続けたチームには狂乱した者、自殺した者、またアシュレイのように記憶の捏造を希望した者もいた。
そんな中、狂うことなく自我を保ち続けることの出来た唯一の男がローゼンクランツだった。彼にとって他の人間はヒヨッコか青二才にしか見えない。彼は犠牲を払うことに躊躇の無い固有の美学を持っていた。特権階級に利用されるだけの人生を唾棄し、より強い力をチャンスを逃がさず手に入れ、トップにのし上がってみせる。
 調査の中で“魔”にその切り札としての可能性を見出し、VKPと袂を分かち、複数の権力に利用されるフリをしながら逆に利用し、レアモンデの全ての“魔”の後継者になろうとした。
 だが結局、彼はシドニーの“魔”の強さに圧倒され、無様に敗北してしまう。どんな泥水をすすっても最後勝利するという、獣の生存競争のような美学は、競争の末に敗北者としての最期を遂げることで惨めな負け犬と成り下がった。
もし彼が魔都の支配に成功したなら――誰よりもそれを歓喜し哄笑したはずだったのに。