BackGround−02新バレンディア王国の憂状


――古代の魔術士――

 旧バレンディア以前の昔、存在するはずのない力“魔”を自在に操る魅惑の魔導師がいた。名をメレンカンプ。聖ヨクスが生まれるよりも遥か昔、宗教ではなく彼女の“魔”こそが万能の力として畏れられていた。彼女が「魔界」という世界から得たこの力は人を不死にさえ変えてしまえると伝承にはあったが、記録上、彼女が後の時代にも生存していた痕跡は無い。
 メレンカンプは特殊な下積み無しでも魔法を可能なものと変える魔道書『グリモア』を開発し、彼女の創造した城塞都市レアモンデの住人に分け与え、普及させていったという。
 彼女の死後、ヨクス教が国境と定められたバレンディアではメレンカンプは邪教の者として書物に名を残すのみとなったが、その産物である魔都レアモンデ、そして彼女の力の究極たる『グラン・グリモア』は人々の心を魅了し、時の権力者によって秘匿されながらもその捜索と究明は続けられてきた。彼女を否定しようとしたヨクス教徒たちは、メレンカンプの聖印を上下逆にした紋章を自らにとっての聖印『ホーリーウィン』として認定し、意に背く者たちの背に、異端の証として上下逆の『ホーリーウィン』を刻印し、『血塗れの罪』と呼んだ。だがかつてのメレンカンプ――レアモンデ支配者の背に、メレンカンプの聖印の逆位『ホーリーウィン』が既に刻まれていたことは、一体何を意味するのだろうか?
城塞都市レアモンデを創り出した偉大なる“魔”の支配者
メレンカンプ
――“魔”を呼び込む扉――

 メレンカンプは“魔”を駆使して魔都――城塞都市レアモンデを創出した。
後世の要塞よりも強固な城壁を誇る魔都は、日の光の傾きにその姿を七色に変えた。魔都にはメレンカンプに心酔した人々が移り住み、自然とメレンカンプと『グリモア』の加護を存分に受けて栄華を極めた。
 彼女の死後もレアモンデにはメレンカンプ教徒が生活していたが、25年前の大地震により、レアモンデはその歴史を永遠に閉ざしたという。
 後の歴史書にレアモンデの記述は無いが、“魔”の牧場として魂<ファントム>を放し飼いにされることでレアモンデは秘密裏に存在価値を長く持たされていた。ただし、新バレンディア王国創立より35年後、『グレイランド事件』の終幕にレアモンデは消滅することになる。
メレンカンプ究極の遺産
レアモンデ
――王権と信仰がせめぎ合う混沌たる秩序の国――

 新バレンディア王国には、最高権力を自称する人間が2人いる。
1人は「王国」の肩書きからも想像がつく通り、王都バルナインの国王。
もう1人は国教と認められているヨクス教の総本山に住まう法王バドゥイズムである。
国王は政権をバレンディア国家評議会(議会、元老院などとも呼ばれる)に委任しているため、実際には王権を主張する議会と神権を主張する法王庁との冷戦状態が数十年も続いている。
 議会の擁するバレンディア治安維持騎士団(VKP)と双璧を為す聖印騎士団クリムゾンブレイド。
この2大勢力は表立って戦乱を起こしはしないものの、水面下では今も確執が続いていた。
 だが、古代の魔導師の名を冠したカルト集団メレンカンプが議会側の有力者たるバルドルバ公爵の本邸を占拠し、仲間の釈放と法王の退陣を要求した時、レアモンデに潜むと伝えられる最高の魔道書『グラン・グリモア』の確保を目指してそれぞれが動き出した。まずは公爵邸に、カルト教団一掃を建前とした捜索の手を伸ばし、その手はそのままシドニーを追ってレアモンデへ。
 魔都を支配するバルドルバ公爵の死が近付く中、議会と法王庁はその“後継者”となるために必要だとされる“鍵”を探し、手掛かりとなるはずの不死者シドニーを追跡する。
法王庁からは、聖印騎士団クリムゾンブレイドの団長ロメオ=ギルデンスターンが。
議会からは、VKP重犯罪者処理班、通称リスクブリカーの最強の1人が。
果たして、“魔”を手にするのは議会か法王庁か。シドニーの目的は一体――?
 尚、バレンディアにおいては魔法やドラゴンはあくまで幻想の存在であり、実在はしないものだというのが常識観念である。そういった力を邪教の証とし、神の加護を説いて人々を操作する、それがこの国の宗教である。