昨年は、日本のジャズの復刻が沢山あり、嬉しい反面、購入が追い付かない状態でした。未だ購入出来ていない気になるアルバムも沢山あります。ただ、これらの作品は SHM-CD や Blue-Spec CD であるにも関わらずリマスタリングがされていない中途半端なものであったのは残念です。
 また、不景気で収入が落ち込んでいるにも関わらずボックスセットを3セットも購入してしまいました。すこしは、老後の事を考えて貯蓄もしなければと、反省することしきりです。



So Quiet

廣木光一・渋谷毅



六弦堂
MG-001

J-Jazz
 ポロポロッと弾き始める渋谷毅さん。これまで聞いた渋谷さんのアルバムで最も渋谷さんらしい音色です。パルテノン多摩小ホールのピアノは渋谷さんに弾かれることを待っていたかの様にも思えます。そのピアノに絡むように爪弾かれる廣木光一さんのナイロンストリングスのギターの音色もとても美しく心地よいものです。
 アルバムのタイトルの如く、静かなバラード系の曲で進行していきます。完全に大人の世界のジャズです。難しいことは何もやっていなくて、ストレートにメロディを奏でているだけ。二人の持つオリジナリティが静かにぶつかり合いながら完全に二人の独特な世界が構築されているのです。
 このアルバムには、多くの言葉は必要ありません。それ程素晴らしい音楽が奏でられているということです。
 それにしても、前の持ち主は何故このような素晴らしいアルバムを手放してしまったのでしょうか?今頃になって後悔している筈です。きっと...


Tony Fruscella


Atlantic
AMCY-1184

Jazz
 1998年に紙ジャケとして発売されたものです。その当時は、まだ紙ジャケアレルギーを持っていて、あまりチェックをしていませんでした。そのため、このアルバムが再発された事を見逃していたのです。
 このアルバムが唯一のリーダー作となる Tony Fruscella ですが、1992年に15年ぶりに完全予約限定盤としてLPで復刻された時に、歓喜のあまりに飛び上がって喜んだ記憶があります。
 哀愁感漂うそのサウンドからトランペットの詩人と呼ばれているのですが、麻薬に溺れ活動期間が長かった割には録音が殆ど残されていない隠れた名手なのです。そして、40年代に活躍した Allen Eager の参加も貴重ではないでしょうか。Allen Eager は大好きなテナー奏者ですが、やはり Tony Fruscella と同様に録音が少ない名手です。Tadd Dameron のグループでのエアーチェック盤等を昔は良く聞いていました。


Alone, Alone And Alone

日野皓正



Takt
COCB-31012

J-Jazz
 見つけられそうで中々めぐり合う事が出来なかったのが、日野皓正さんのこのデビューアルバムです。アナログ盤でも初期の作品はかなり所有しているのですが、何故だかこの盤だけが抜けた状態なのです。
 色々な中古屋さんを探しても見つけることができなかったのですが、ある日散歩がてらに一駅歩いたのです。「おっ、こんなところにブックオフが有ったのか。」とさほど期待もせず中に入ったのです。
 やはり、一昔前のポップス中心の品揃えで、ジャズ手のひらを広げた位の幅もありませんでした。しかし、なんと長年探していたこのアルバムが有ったのです。しかも、僅か1000円という価格なのです。他の中古屋では、買取りの査定がしっかりしているので、この様な価格では無いはずです。一律の買取りによるブックオフ故に低価格で購入でき大満足です。ただ、ライナーノーツを見ると何度かCD化されているようで、それに気づかずにいたのは情けないですね。
 また、タイトル曲を日野皓正さんよりも先に Blue Mitchell が録音する事になったかという経緯がライナーノーツに記載されており、長年の疑問が解決してすっきりしました。


Masabumi Kikuchi
In Concert

菊地雅章



Universal
UCCJ-4071

J-Jazz
 この作品は「Jazz The Best 日本ジャズヒストリー」というシリーズで、SHM-CDによる初復刻です。
 当時の菊地雅章さんのグループは、ツインキーボードにツインドラムという変則セクステット。もう一人のキーボードは実弟の菊地雅洋さんが担当しています。
 Dancing Mist という曲は菊地雅章さんの代表曲といえる作品で、比較的単純なリフによる曲。跳ねるようなエレピのソロが印象的で、そこに鋭く切り込んでくる雅洋さんのオルガンが素晴らしいですね。
 一転 Yellow Carcass In The Blue は美しいバラードで、笠井紀美子さんも歌っていた曲です。哀愁感というか悲哀間が漂う曲。この曲を峰厚介さんはソプラノで歌い上げます。
 ところで、このコンサートの残りテイクって無いのでしょうか?2曲の出来が素晴らしいので、有ったら聞いて見たいものです。


End For The Beginning

菊地雅章



Universal
UCCJ-4076

J-Jazz
 こちらも同様に初復刻となるものです。この作品は、菊地雅章さんが活動の拠点をニューヨークへ移す直前にスタジオにで公開録音された作品です。アルバムのタイトルがそのものズバリ表していますね。
 ベースラインのオスティナートが特徴的な「驟雨」は、この作品が録音された前年に Gil Evans を招いて制作された「菊地雅章+ギル・エバンス」で演奏されていた曲。Gil Evans 盤に比べると激しさが増しており、にわか雨(=驟雨)の描写がより強くなっています。峰厚介さんのソプラノがとても良い感じでソロをとっており、菊地雅章さんのソロの後にエンディングで峰厚介さんに絡む宮田英夫さんのフルートも素晴らしくこの曲の聞き処となっています。それにしても菊地雅章さんのピアノは力強いですね。
 「禁煙」と書かれた所で、みんなでくつろいで煙草を吸っているというジャケットも面白いですね。


Out Of Chaos

峰厚介



East Wind
UCCJ-4080

J-Jazz
 峰厚介さんが初めてテナーサックス一本で真っ向勝負した作品です。峰厚介さんは当時、菊地雅章さんを追うような形でニューヨークへと赴いていたそうですが、そんな二人が一時帰国した際に録音されたのがこのアルバムです。
 岡田勉さんと日野元彦さんの好サポートもあって、最初から最後まで熱気に満ち溢れた演奏で、熱く燃え上がるような演奏で一切の妥協も見られません。間に挟まれた、峰厚介さんと菊地雅章さんのデュオで繰り広げられるバラード Little Abi も、気迫に満ち溢れた演奏です。峰厚介さんは、完全にテナーを自分のものとし、独自のスタイルを身に付けています。
 この作品に収められた Recollection という曲が、映画スウィングガールズで取り上げられているのですが、その事をネタにブログを書いたところ、上野樹里さんや貫地谷しほりさんをキーワードとして検索されたのか、アクセス数が一時的に増加しました。


Voices

Gary Peacock



SONY
SICP 20155

Jazz
 Gary Peacock は東洋の思想や禅の世界に興味を抱き1969年に密かに来日し、約2年に亘って日本に住んでいた時期がありました。初めの1年は京都に在住していたらしく、ベースを弾くのやめて精神面を見つめ直すことに勤しんだそうです。やがて住居を東京へと移した頃から演奏活動を再開し、日本のミュージシャンとの交流が始まったそうです。
 当然の事ながらレコーディングを目論むレコード会社が現れるわけで、当時設立されたばかりの CBS/SONY により制作されたのが Eastward と、この Voices という作品です。
 この作品は Eastward のトリオに、下半身が不随となった直後の富樫雅彦さんが加わったものです。富樫雅彦さんが加わることで、Eastward とは全く異なるアプローチの作品に仕上がっています。
 ふと想いうかべる事は、Gary Peacock が日本に長期滞在しなければ、そしてこの Voices というアルバムを制作していなければ、ECM の不朽の名作 Tales of Another も誕生しなかったかも知れないという事です。そうであれば Keith Jarrett のスタンダーズ・トリオも存在しえなかったかも知れません。




Last Performance
At Newport
July 2, 1966

John Coltrane



FreeFactory
063

Jazz
 John Coltrane の未発表作品となるもので、シールドフィルムに「PREVIOSLY UNISSUED!」とシールまで貼られていますが、これまで未発表であったのか真偽のほどは不明です。
 何れにしろ、凄い音源が出てきたのは確かです。
 黄金のカルテットからメンバーチェンジを行なって、Pharoah Sanders、Alice Coltrane、Rashid Ali というメンバーによりクインテットで再スタートを行なう Coltrane ですが、そのグループで出演した最後の Newport Jazz Festival での演奏のライブ盤で、来日直前の演奏なのです。
 McCoy Tyner から Alice Coltrane へのチェンジは音楽的にも大きく変化を見せており、完全に無調の世界で音楽が展開されています。
 冒頭を飾るお馴染みの My Favorite Things ですが、始まり方が少し不自然な点があります。実際にはこの前から演奏が行なわれていおり、それをカットしている様な感じなのです。もしかしたら Village Vanguard Again のように、Jimmy Garrison によるイントロダクションがあり、Cltrane が徐々にテーマを提示し始めてきちんとテーマを演奏したところから始まっているように編集を行なっているかもしれません。あくまでも憶測ですが...


Elvin Jones
Live At Lighthouse
(Complete)

Elvin Jones



Blue Note
TOCJ-6758-59

Jazz
 長らく入手困難な状態であったこの作品。2000年に紙ジャケによる、Rudy Van Gelder のリマスターシリーズで再発された際には、紙ジャケアレルギーの私も迷わず購入しました。紙ジャケの場合シールドフィルムを破る事が出来ない私は、2枚組みのCDの見開きを未だ見ていません。(アナログ盤を所有しているのでどの様なデザインは知っていました。)今回の再発は、Pケースによる発売でブックレットの間に解説が綴じられており、見開きが分かれたトホホな作りになっています。
 しかしながらこのアルバムはコンプリート盤として、再発されており、収録曲が6曲から12曲と一気に増えているのです。コアなファンは2枚に分かれて発売された米国盤を既に所有しているのか、それ程話題にはならなかったようです。それ故に限定盤での発売であるにも係わらず現時点でも入手可能のようです。お持ちで無い方はお急ぎください。
 この再発では、ライナーノーツがあるお二方の対談形式のものなのですが、Steve Grossman が、このセッションの後に Miles Davis のグループに参加するという間違った事を述べており、今頃恥ずかしい思いをしているのではないでしょうか。




碩一碩的流浪地圖

蕭賀碩



華納唱片
5051011982521

C-Pop
 掟破りですみません。本来ならば昨年中古で発掘したCDや再発された復刻盤が対象となるのですが、このアルバムが大変素晴らしいので紹介させてください。
 長らく華納唱片の専属ソングライターとして活動をしていて、遅まきながら30歳を前にしてデビューアルバムをリリースした蕭賀碩(デビー・シャオ)です。
 これまでに提供した作品の中には孫燕姿に提供した「流浪地圖」もあり、この曲が素晴らしい曲であったので、セルフカバーしている2007年にリリースされたデビューアルバムであるこの「碩一碩的流浪地圖」を購入したのです。しかも、試聴もせずに一気に彼女のアルバムを全て購入してしまいました。
 セルフプロデュースで作編曲や演奏も自ら務めており彼女の才能の高さか判ります。もちろん歌唱力もあり、何故これまでデビューしなかったか不思議なくらいです。
 このアルバムによって彼女は、台湾のグラミー賞(?)にあたる台湾金曲奨の新人奨を受賞したそうです。



Beatles (Long Card Box With Bonus Dvd)

The Beatles



EMI UK
5099969944901

Rock
 ロックのアルバムも何百枚も所有しているのですが、何故だか The Rolling Stones と The Beatles のアルバムは一枚も所有していませんでした。The Rolling Stones は、コンサートにも行った事があるにも関わらずです。両グループのボックスセットがリリースされて、一気に解決したのです。ただし The Rolling Stones は、未だ全てを聞き終わっていません(爆)。それ故にセレクトからはずさせて頂きました。
 特に The Beatles は、以前より欲しいと思っていたのですが、聞きたい曲が色々なアルバムに散在しており、どのアルバムから購入してよいのか判らなかったのです。学生時代の友人と飲みに行った時もそのような事が話題になった事もありました。
 ボックスセットが発売されるという事を聞いて、これで悩みから開放されたのですが、しかもリマスターが施されているというオマケまで付いてきました。残念ながら、従来のマスタリングがどの様なものか解らないので、どの程度改善されているかは私には解りません。
 ただ、今までに知らなかった曲にも素晴らしい曲が沢山あり The Beatles の偉大さを改めて知った次第です。
 ちなみに、The Bealtes の曲で1番のお気に入りは、現段階では Here There And Everywhere ですかね。


民族の祭典

巻上公一 <ヒカシュー>


Bridge/EMI Music Japan
EGDS-44

J-Pop/歌謡曲
 この作品の復刻が1番嬉しいものです。一等賞!
 diskunion のメルマガで再発を知り、思わず大喜びしました。
 このアルバムは、学生時代か社会人になりたての頃にレンタルレコードを借りて物凄い衝撃を受けた作品です。ある意味 John Coltrane の至上の愛よりも衝撃を受けました。録音したカセットテープが擦り切れる程聞いたものです。どうして、その時にレコードを買わなかったがとずっと悔やんでいたのです。でも、当時はジャズのレコードを買うのがやっとの貧乏状態でしたからね。ちなみに今も貧乏ですが...(爆)
 巻上公一さんのボーカルは実に素晴らしく、昭和歌謡や童謡などに見事にフィットしているのです。このアルバムはプロデューサーの石坂敬一さんの発案によるものだそうですが、巻上公一さんの歌声が古い歌に合っていると見抜いたセンスは素晴らしいとしか言いようが有りません。



The Complete Columbia Album Collection

Miles Davis



Columbia/Legacy UK
No 01 – No 53

Jazz
 71枚組みというのを聞いたときは流石に驚きました。 大好きな Miles Davis 故に全てのアルバムを聞いてみたいというのは以前より思っていたことです。
 そのため米Columbia/Legacy の 75 Anniversary シリーズをコツコツと購入していたのです。ライナーノーツが充実しており、色々と新しい発見も出来るシリーズなのです。にも関わらず、思わず「ボチッ」とアマゾンでクリックしてしました。ポイントやアフィリエイトのクーポンがあったので、一枚あたり330円という価格で購入できました。
 ジャケットはしょぼい感じで、CDも取り出しにくいという欠点はありますが、330円では文句をつけようがありません。
 The Beatles の項で述べているように、The Rolling Stones のアルバムも全て聞けていない状態なのに、果して全71枚を聞く事が出来るのでしょうか?一日一枚聞いたとしても2ヶ月強の時間が要します。まだまだ聞いたのはほんの一部だけ。これから頑張って聞いて行きたいと思います。
 ところで、このボックスは、Miles Davis が米 Columbia に残したアルバムのコンプリートであり、全てのセッションを網羅したものではありません。いつの日にか、全てのセッションを網羅した本当のコンプリートボックスの発売も考えられます。そうなると何枚組みになるのか想像すら出来ません。
これらの文章は、既発表のブログからも引用しています。(^^;)

アルバムの詳細を知りたい場合や購入したい場合は、ア-チスト名やジャケットをクリックしてください。




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