昨年購入した新譜は、ジャンルに拘らずその多くが日本のミュージシャンでした。特にジャズは顕著であり、海外のアーチストの新譜は片手で足りるくらいしか購入していないと思います。関東へ引っ越してきて7年程ですが、昨年はライブハウスへも一番足を運んだこともあり、日本のジャズメンのアルバムを沢山購入したんだと思います。 選に漏れた作品でも素晴らしい作品が沢山あり、あまり日本のジャズミュージシャンの演奏を聞かないという方々にももっと聞いて頂きたいですね。

 今年は、偏らずに幅広く色々と聞いて行きたいと思います。もちろんライブへも出来るだけ足を運びたいと思っています。

 ちなみに、以下の作品は購入した順番に掲載しており、特に順位というものはありません。

Risk Factor
太田朱美


ewe EWCD 173

J-Jazz
 太田朱美さんは一昨年発売された関根敏行さんの「誕生」で素晴らしいフルートを聞かせてくれました。水谷浩章さんの Phonolite Ensemble では、Miya さんと共にフルートのセクションを担当していました。そのお二人が何れも水谷浩章さんのプロデュースによるアルバムをリリースされたのです。同じ楽器に同じプロデューサというのに、その方向性が全く違うのは面白いですね。
 Risk Factor (危険因子)というユニット名とは裏腹に、ラテンテイストのライト・フュージョン系の音楽です。たまに、混沌とした世界に突入するのはプロデューサの好みでしょうか?
 それにしても、太田朱美というフルート奏者は凄すぎです。
Like Someone In Love
南博


ewe EWCD 0120

J-Jazz
 南博さんは、どちらかというと Go There! を中心に聞いて来ましたが、ピアノトリオの作品を含めてオリジナル中心の作品であったのです。
 ところが、この作品はジャズメンのオリジナルを含めて有名な曲のオンパレード。ベタな曲がずらりと並んでいます。
 冒頭に My Foolish Heart を持ってくるあたりは、Bill Evans Trio を想いうかべてしまいます。アルバムは出だしの曲が肝心と言うことが見事に証明された作品です。この曲で一気に引き込まれてしまう作品です。
 ラストには、私の大好きな作曲家である Billy Strayhorn の Chelsea Bridge をもってくるところは心憎い演出です。聞き終わった後の余韻の心地よさは何とも言えないものです。
Superfly

Warner Music Japan
WPZL-30084/5

J-Pop
 ちょっと懐かしい雰囲気が漂う元気印ロックは、幅広い年齢層から支持を受けそうな感じです。ジャケットでの志帆さんのスタイリングもピッピーカルチャーの影響を受けたサイケな雰囲気。1969 という歌では、正に当時への憧れを歌っています。シャウトする歌声はカッコイイものがありますね。
 ギターのリフなんかもストーンズみたいなノリで、こちらも懐かしい感じでカッコイイですね。PVを見ると、多保さんはテレキャスターのハムバック仕様のギターを弾いており、Keith Richards からの影響を受けているみたいですね。
 ちなみにユニット名は、カーティス・メイフィールドの曲「Superfly」から来ているそうで、これはチョッと意外でした。
Kısmet
Öykü - Berk


WE PLAY

World(Turkish)
 フラメンコ系のギターに乗せて歌われる二人の歌声は、如何にもトルコらしいこぶしのまわったもの。スペインのフラメンコとは、少しばかり趣きが異なる雰囲気を漂わせています。元来のロマ系の音楽が、お互いに影響を受けて完成した音楽と言えるでしょう。
 初めに、このデュオに気づいたのは大阪・梅田のマルビルにあるタワーレコードでした。Rodrigo y Gabriela と同じ試聴器に入っていたのです。ちょっと値段が高かったので見送ったのですが、新宿のタワーレコードでも大々的にプロモーションをしていたのです。結局このときも見送ったのですが、近所のタワーレコードにも POP 付きでディスプレイされていたのを見て、最終的に購入してしまいました。初めに試聴した時から気に入っていたので、当然の如くお気に入りの一枚となりました。
Edelweiss
中村真 Piano Trio


ewe EWCD 0148

J-Jazz
 このトリオについて、中村真さん自身ののライナーノーツが的確に表現しています。
 メンバーである中村新太郎さんや小前賢吾さんが「好き放題に演奏してくれるわ」と奥さんに愚痴ったところ、奥さんからは「中村新太郎さんや小前賢吾さんに、どれほど好き放題に演奏させてもらっているか解っているのか?」という言葉が返ってきたそうです。そうです。「好き放題」というのがこのトリオの大きな特徴なのです。
 そして唯一存在するルールが「美しいか否か」ということだそうです。中村真さんが美しくない音を出したらメンバーに無視されるということ。その逆もありき。ルールを忠実に守ったトリオの演奏はとても美しいものなのです。
floating pupa
pupa


Virgin TOCT-26573

J-Pop
 バンドの構想を行い、素晴らしいメンバーに声をかけたのはバンドの中心的な存在である高橋幸宏さんだそうです。賛同したメンバーの凄いこと。一国一城の主といっても良いメンバーなのです。
 個人的に嬉しいのは、やっぱ原田知世さんの参加ですね。彼女はアイドル系の女優としてデビューし、同時にリリースされた曲もアイドル路線の唄といってもいいものでした。しかしながら、次第に自分のアイデンティティを見つけ出し、素晴らしいシンガーに成長しているのです。このユニットも原田知世さん抜きには考えられないのです。
 様々なギターを変幻自在に操る高田漣さんの存在も忘れるわけにはいかないですね。一体何種類の楽器を操っているのでしょうか?同じくギタリストとして参加している高野寛さんも良い仕事しています。印象的なのはエレクトリック・シタールを効果的に用いているということです。二人はこのユニットのサウンドメイクに一役かっているということは言うまでもない事です。
UZU Records


Stop And Go
角脇真

UZU UD-002

うずまきパラダイム
Co.ffay

UZU UD-003

First Album
NO2

UZU UD-004

Graffiti
中林薫平

UZU UD-005

Karatets
川崎太一朗

UZU UD-006

J-Jazz
 2007年にドラマーの太田耕平さんによって立ち上げられた UZU Recors は、その年は Co.ffay の「うずねいろミュージアム一枚のみのリリースでした。2008年に入ると角脇真さんの「Stop And Go」をリリース。そして、夏になるとミニアルバムではあるのですが、一気に四作品をリリースしたのです。しかも、価格がお手ごろ価格。フルアルバムが2100円でミニアルバムが1050円というものです。この価格設定はインディーズならではのものでしょう。
 私が最初にこのレーベルに注目したのは、中林薫平さんの「Graffiti」をディスクユニオンの店頭で見つけたのです。やはり1050円という値段では思わず手にしてしまいます。 ミニアルバムも内容が素晴らしいので短いという印象はさほど受けません。

 若手が集まり録音されたこれらの作品は、現在の日本のジャズ界の最前線を捉らえたものと言えるものです。
 購入しやすい価格なので、一人でも沢山の方々に聞いて頂きたいものです。
Color Scheme
椿田薫


Newburry Street Music
NSM-J-1011

J-Jazz
 C.U.G.ジャズ・オーケストラのリードアルト奏者でありソリストで、名古屋を中心に活動する椿田薫さんのセカンドアルバムとなる作品です。
 このアルバムに注目したのは、後藤浩二さんのピアノもさることながら、テナーサックス奏者の浜崎航さんが参加しているということに他なりません。今、最も注目している浜崎航さんを経由して知った椿田薫さんも素晴らしいサックス奏者であったのです。
 二人はアルトとテナーと、楽器は異なります。しかし、二人の雰囲気は思いのほか似ているのです。スタイルは若干異なるのですが、ちょうど Lee Konitz と Warne Marsh の関係の様な感じなのです。まるで双子のような感じで絡みあうサックスは、まさに現代の Konitz ~ Marsh と言えるでしょう。
Parallax
西山瞳


Spice of Life
PBCM61032

J-Jazz
 西山瞳さんはこのグループについて「バンド」という表現をしています。この表現が実に的確であるように思うのです。西山さんの頭の中ではギタートリオを想定したような感覚で「バンド」のサウンドが繰り広げれられているそうです。これまでのアルバムに比較するとダイナミックな感じが強く感じられます。
 これまでのスウェーデンでの録音は、レギュラートリオ(当時はまだ "Parallax" と言う名前で活動していませんでした。)での演奏が完成の領域に達した録音を、スウェーデンに送って再現するような形で録音されていたのです。確かに、当時のグループでの演奏に近い感じがするのです。
 しかし、常に進化を遂げてきた "Parallax" のサウンドは、これまでのライブの演奏と比較しても大きく前進したサウンドなのです。
Still Crazy
水谷浩章 phonolite


ewe EWCD 0156

J-Jazz
 次第に編成を拡大してきた phonolite ですが、この作品ではトランペッターの Kasper Tranberg と3人のボーカリストがゲストとして参加しており、豪華な編成のグループとなっています。ボーカリストが参加ということで、これまでの作品とは趣きも異なったものとなっています。
 個人的には、アルバムの冒頭に登場する林夕紀子さんのボーカルがお気に入りです。とても雰囲気のある曲でジャジーな感じなのですが、Paul Simon の曲なんですね。
 それにしても心地よいアンサンブルですね。フルートを中心としたアンサンブルは、大好きな Finland のドラマー Edward Vesala のグループを想いうかべます。
First Standards
Juilliard Jazz All Stars


M&I Music
MYCJ-30467

Jazz
 このアルバムは The Juilliard School で教壇に立っているミュージシャンと同校の出身のミュージシャンによって結成されたグループです。ジャズ科が設立された2001年から Juilliard Jazz All Stars として活動しているようですが、素晴らしいメンバーでの録音となっています。
 Ron Blake と Carl Allen は教授として教壇に立っていますが、それ以外のメンバーが The Juilliard School の卒業生です。トランペッターの Dominick Farinacci が知名度という点では最も高く、広く知られた存在です。
 そして、忘れてならないのが二人の日本人の参加です。ピアノの片倉真由子さんとベースの中村恭士さんは Dominick Farinacci のグループでも活躍中で、素晴らしい演奏を聞かせてくれます。
 ピアノはもう一人 Adam Birnbaum が参加していますが、片倉真由子さんのほうが男性的なピアノを聞かせてくれます。
Early Songs
Lage Lund


Criss Cross Jazz 1307

Jazz
 Criss Cross からのリリースということで、もう一人の話題のギタリスト Mike Moreno と同じレーベルからの作品になりました。この二人は微妙にカブっているところがあるのです。二人の Criss Cross の作品は何れもドラマーが Kendrick Scott という共通点がありますし、いずれも Marcus Strickland のグループでギターを弾いていたのです。
 このアルバムでは、その Marcus Strickland を相棒としてフロントに迎え、Criss Cross 一押しのピアニスト Danny Grissett を中心としたリズムセクションで、聞く前から期待が膨らみます。Danny Grissett も随分と話題になっていますが、私はこのアルバムで初体験です。期待通りの素晴らしいピアノを聞かせてくれており、Lage Lund を好サポートしています。
 Cole Porter のスタンダードに Denny Zeitlin と Bud Powell の楽曲を取り上げていますが、それ以外はすべて Lage Lund のオリジナル。オリジナル曲も聞き応え充分な曲で素晴らしいですね。作曲の能力も相当なものです。
13years
露崎春女 [Lyrico]


Sony Music Records
SRCL-6873-4

J-Pop
 Lyrico さんのブログを見ていたら、ある日閉鎖のお知らせが。暫くの間 Lyrico という名前で活動していたのですが、再び露崎春女という名前に戻して活動を再開をするということでした。装いもあらたに露崎春女さんとしてのブログも開始されました。
 オリジナル・アルバムとしては四年振りでしょうか?待ちに待った作品の登場です。この作品は二枚組みとなるもので、一枚目は新たに録音されたもの。そして二枚目は1995年に露崎春女としてデビューしてから Lyrico として活動していた2006年迄の作品を収録したベストアルバムとなっています。
 デビュー当時から圧倒的な歌唱力でその存在感を示していた露崎春女さんですが、改めて聞き返してみると常に進化を遂げているという感じです。一枚目の新録は13年の集大成ともいえる素晴らしいもの。その完成度の素晴らしさに圧倒されてしまいます。
Nightmare
大友孝彰


Jazz Lab. JLR0803

J-Jazz
 私が関西を離れて随分と年月が過ぎました。それでも、関西のジャズシーンは気になるために、ホームページをチェックしたり、帰省するたびにライブハウスへと足を運んだりしています。
 ホームページをチェックしていて、気になる存在となったのが、関西学院大学の学生ながら活動を行なっているピアニストの大友孝彰さんでした。ドラマーの清水勇博さんが渡米する前に最後に行なったギグの相手に選んだのが大友さんであったこともあり、CDの発売が待ちきれませんでした。ベースの波戸就明さんのブログをチェックすると、発売日前にも関わらず販売を行なっているとのことで、早速連絡を取って送ってもらいました。
 期待に違わず素晴らしいピアニストで、トリオとしての一体感も素晴らしいものです。さらに、大半を占めるオリジナルのクオリティも高く、これからの活動が楽しみなピアニストです。
Nation Of Multiverse

PRAVDA RCPP-003


Zero
佐藤恭子


Freakish FRFK-001

J-Jazz
 DJの小林径さん主宰のレーベルPRAVDAの第三弾となる作品は、アルト奏者の佐藤恭子さん率いる Nation Of Multiverse の作品です。
 佐藤さんは、ドラマーの太田耕平さんのユニット Co.ffay のデビュー作「うずねいろミュージアム」に於いても素晴らしい演奏を聞かせてくれており、気になるミュージシャンの一人だったのです。発売日の直後に近所のタワーレコードで見つけて速攻で購入したのです。
 オリジナル中心の構成ですが、冒頭に McCoy Tyner の African Village を持ってくるあたりは心憎いですね。参加メンバーも素晴らしく、三管編成のユニットのアレンジも面白い仕上がりになっています。

 そして、デビュー作となる「Zero」も発売当時から気になっていたのですが、インディーズということで店頭での入手が難しいために購入できずにいました。しかし、Nation Of Multiverse が素晴らしいために、慌てて通販で購入しました。これまでに録り貯めた3回のセッションを纏めた作品ですが2003年の録音では、話題のトランペッターの Christian Scott も参加しています。
これらの文章は、既発表のブログからも引用しています。(^^;)

アルバムの詳細を知りたい場合や購入したい場合は、ア-チスト名やジャケットをクリックしてください。



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