昨年も毎度の如く音楽を聴く時間は殆んど通勤時間の往復の電車の中だけでした。家にいるときのゴロゴロ度は一昨年にも増して増大しています。
 一昨年同様に積極的に新しいアーチストを買い漁ることをしなかったため、お馴染みのアーチストとなってしまいました。特に、後半はジャズの新譜を殆ど買わなかったような気がします。
と言う事で、以下のアルバムが昨年発売の新譜の中でお気に入りの作品です。
 リストの順番は、購入順ですが、五人の女性ミュージシャンだけは最後の方に纏めてあります。

Salyu  会社の帰りに近所のタワーレコードに寄ったところ、入口正面の特等席といえる場所にディスプレイされていたのが、Salyu の二枚目にあたるこの作品。試聴機が置かれていたので先ずはどの様な歌い手なのか聞いて見ようと思ったのですが、あいにく先客が居て試聴中だったのです。店内をひと周りして戻ってきたところ同じ人がまだ試聴しておりました。ということで、もうひと周り。しかし、再び戻ってきてもまだ同じ人が,,,かれこれ10分以上試聴を続けているようです。
 この兄ちゃんが全曲聞き終わるまでは待てないぞ!と、気が短い私は名前しか知らなかった Salyu のアルバムを手にレジへ向かったのです。結局、今回は気長に待っていたとしても結果は同じであったようですね。
 ということで今年のヘビーローテーションの一枚となったアルバムでした。
Seamus Blake  この作品は、メンバーは異なれども、デビュー作の The Call に近い雰囲気をもった曲からスタート。思わず嬉しくなってきました。Seamus Blake は、1993年の初リーダー作において既に完成されたものを持っていたことには驚きです。メンバー何れも凄い演奏を行っているのですが、現時点では更に上手くなっているというのも凄すぎます。そして、このアルバムの後半は、リズムパターンを変えたりエレピを導入したりと変化球で攻めてきます。その攻め具合が、痒い処に丁度手が届く感じで実に心地よいのです。
 テナー好きの私にとっては Michael Brecker が亡くなったのは残念なことですが、Seamus Blake がいる限り、ひと安心できるのは紛れもない事実です。。
Michael Brecker  という事で Michael Brecker の最新作です。最新作と言うよりも遺作と言うのが正しいのですが...早く聞きたくもあり、これを聞いてしまったらもう新しい作品を聞くことが出来ないということで先送りしたいような気持ちもありました。
 やはり、追悼の意を込めて聞かねば、ということでネットで予約をしたのです。
 完治して再び以前のような活動を願っていたのでしょうが、病気の性格と適合ドナーが見つからない状況からある程度は覚悟をしていたのでしょう。娘さんからの骨髄移植でなんとか延命治療を行い、体調の良い頃を見計らって一気に創作活動を行ったような気がします。そんな Michael Brecker の音楽に対する心意気に感謝の気持ちで一杯です。
木畑晴哉  きばやんの愛称で親しまれているピアニストの木畑晴哉(きばたはるや)さんは、私が大阪に住んでおり色々なライブに足を運んでいた頃に、本格的に演奏を始めたピアニストです。
 何度か生演奏に接する機会はあったのですが、殆どが歌伴であったため本領発揮という感じではなかったと思います。いつかは木畑晴哉さんのグループを...と思っていたものの、私が転勤となり果たす事が出来ませんでした。
 木畑さんの活動のベースも東京に移り、これでようやくライブに行く事が出来るのではと期待しているのですが、中々スケジュールが合いません。そんな訳で先ずはCDからじっくりと聞こうではないかということで入手したもの。このアルバムはドラマーの清水勇博さんの上京の際にお願いして持ってきたもらったものです。
 木畑さんのオリジナルとスタンダードやミュージシャンのオリジナルチューンが程よく配置された選曲も素晴らしく、木畑さんの美しいピアノのサウンドを引き立てています。
 やはり、近々にライブに出向かないといけないようですね。
力武誠 R-BRO'S  第一回目の高槻ジャズ・ストリート。規模は小さく、手づくりの雰囲気は今より遥かに高いものでした。なんせ、阪急高槻市駅前の噴水広場は、線を引いただけの会場でしたからね。しかしながらゲストは日野皓正クインテットという豪華なものでした。予め発表されていたクインテットのメンバー。ドラムには日野元彦さんの名前があったのです。 当時、日野元彦さんは病床にあり、噂では「かなり悪いらしい」といったものや「もうすぐ活動を再開」と色々乱れ飛んでいる状況でした。現代劇場に並んでコンサートの開始を待つことに。ステージに登場したのは、日野元彦さんではなく、若いミュージシャンでした。 一曲目が終わり、日野皓正さんがメンバー紹介を行います。「ドラムは力武誠!彼がいてくれるので、これから先も安心です。」
 このときから、ずっと力武誠というドラマーには注目していたのですが、ようやくこのアルバムを購入することができました。
 ファーストアルバムの方もゲットしなければ!
林 栄一  この作品は、林さんのソロと多重録画によるもので、曲によって外山明さんが加わります。取り上げられている曲は、林さんのオリジナル作品に Free Improvisation という構成ですが、意外にも聞きやすい作品に仕上がっているのです。
 名曲 Naadam を取り上げているのは嬉しいですね。この曲は、Mazuru を録音する前には、"モンゴル"というタイトルでよく演奏していた曲です。当時もよく韓国民謡のアリランを引用していましたが、ここでも再び引用しています。
 その頃の林さんの曲は、本当に面白い曲が多かったのですが、その殆どが録音されていないのは残念です。"Au revoir, A bientot"や"回想"の様な後世に残るような名曲なのに何故か録音されていないのです。
高橋 知己  Elvin Jones に捧げた前作は、Coltrane のサウンドを継承した作品だと思われるのですが、機会が無かったのか何故か未聴なのです。続いてリリースされたこのアルバムも、John Coltrane に関連したもの。Coltrane がよく演奏していた My Favotite Things と、Coltrane のオリジナルを聞くことが出来ます。
 基本は Coltrane サウンドですが、ここでの知己さんの演奏は更に大きな展開を見せてくれています。アレンジも自分達に合わせたものを取り入れているのです。冒頭に演奏される Transition に収められた Dear Load なんて、アコギとのデュオでスタートするあたりは意表を突かれた感じです。
 しかし、最後に演奏される Peace On Earth は John Coltrane の演奏と雰囲気がとても似ているのです。やはり、Coltrane があっての知己さんということを感じます。
徳田 雄一郎  日頃から色々なミュージシャンのサイトにお邪魔しては行けそうなライブがないかチェックをしています。そしてスケジュール表のメンバーを見たり、リンクのページからそれまで知らなかったミュージシャンをチェックをしているのです。おそらく徳田さんのホームページへたどり着いたのは、かつて関西で活動されていたベーシストの中林薫平さんのブログを経由してだったと思います。
 徳田さんのサイトを訪れて先ず驚いたのは、ボストンの留学から帰国して演奏活動を行いながら会社を立ち上げるのです。自分がより良い環境で活動するのには必要と感じたのでしょう。そして、自分の作品をリリースするためにレーベルまでも立ち上げるのです。この行動力には脱帽ですね。その行動力そのままに、とにかく突っ走っている感じの演奏。この疾走感は実に気持ちが良いものですね。そして、ギターの鈴木さんが三線に持ち替えた沖縄テイストの曲が、チェンジ・オブ・ペースとなっているのです。
三宅 伸治  ギタリストでありボーカリストである三宅伸治さんの音楽活動20周年を記念してのアルバムです。普段から付き合いのあるミュージシャン達をゲストに迎えた豪華絢爛なアルバムは、2000年にリリースされた「music planet〜いいことがあるといいね」と同じ様な企画で、メンバーもダブる部分もあります。 三宅伸治さんをいつから聞いていたかは記憶が曖昧なのですが、はっきりと意識したのは忌野清志郎さんと坂本冬美さんとで始めたユニットの SMI だと思います。このユニットは細野晴臣さんの眼に留まり HIS というカタチに乗っ取られる(?)ことになるのです。
 三宅さんはジャンルを越えた他流試合は得意なようですね。 この様な作品は大好きなミュージシャンの違った面を見ることが出来たり、これまで知らなかったミュージシャンを聞くことが出来たりと色々と楽しめる作品となっています。それでいて三宅さんもしっかりと自己主張を行っているのです。
土岐 麻子  前作の Weekend Shuffle から約1年ぶりのリリースとなる作品は、新たにレコード会社を rhythm zone へ移籍してのリリースです。
 これまでは、ポップのカバーソングをジャズテイストで歌うというアルバムが多く、オリジナルチューン中心によるアルバムは Debut に続いて二作目となります。カバーソングを全く取り上げていない訳ではなく、江利チエミさんの歌で有名な COME ON A MY HOUSE なんかを取り上げています。
 そんな中で、「青空のかけら」はどっかで聞いた事があると思ったのですが、斉藤由貴さんがオリジナルだそうです。この曲は、土岐麻子さんが小学生の時に流行ったそうで、病気で学校を休んでいる時に聞いて元気をもらったそうです。ところが、ずっと譜割を間違えて覚えていたそうで、今回は間違った譜割のままレコーディングをしているそうです。
 ちなみに、この小学生の時の同級生がこのアルバムに参加している川口大輔さんだそうです
上原 ひろみ  お次は五枚まとめて一気に。昨年と同じパターンですね。
昨年も女性ミュージシャンの活躍が目立つ一年だったといえます。

 先ずは、ロックファンからも支持されている上原ひろみさんから。
 元気娘と呼ばれる上原ひろみさんの四枚目のアルバムで、二枚目から共演をしている Tony Grey と Martin Valihora という凄腕サイドメンとのコンビネーションも最強のものとなりつつあります。このトリオに新たに加わる事ができるのは、一枚目のアルバムにゲスト参加していた FUZE 以外には考えられないでしょうね。音楽を聞いて鳥肌が立つことは滅多にあることでないのかも知れません。しかし、この作品は鳥肌物の一枚として素晴らしい作品の仲間入りは間違いナシです。
 前半は、上原ひろみさんのちょっとチープな感じがするシンセ (microKORG というアナログ・シンセのようです) のサウンドと FUZE のウネウネとした変態的なフレーズの対決モード。思わずニンマリとしてしまいます。後半になると、生ピアノとの美しい絡みも楽しむ事ができ、何だか得した気分になって来ます。

 次に、噂先行でようやくアルバムの発売の運びとなった安達久美さん。
 安達久美さんは、大阪の貝塚市の出身。私自身が関西に住んでいた期間が長いため、関西発のミュージシャンはどうしても気になるところです。
 お兄さんの影響で、ギターを手にしたのは11歳のとき。なんと、B.B.King や Buddy Guy のコピーからスタートしたそうです。小学校5年生の女の子がブルースを弾いていたと言うのには驚きですね。暫くの間は、ブルースやロックを追求していた彼女。ジャズ・フュージョン系の音楽に興味を持ちだしたのは、或る日 Scott Henderson の演奏を聞いてからだそうです。Scott Henderson がロスにある Musicians Institute で教えていることを知ると、高校の卒業と同時に留学してしまうという行動力にも驚きです。
 影響を受けた一人である Jimi Hendrix の Little Wing 以外はオリジナル曲で、Danjiri Funk なんて曲は如何にも泉州の出身らしいですね。
 ジャケットの写真を見ると、フェンダーのストラトを弾いているようですが、シングルコイルの特徴を活かしたクリアなトーンは心地よいですね。
 今後の活動が楽しみなギタリストが登場してくれました。これからもだんじりパワー全開で、暴れまくって欲しいですね。

 続いて、山中千尋さんです。
 これまでも、Fender Rhodes 的なサウンドを活かした曲がありましたが、この作品ではギンギンのキーボードサウンドやオルガン的なサウンドを導入しているのです。これ程までに大胆に取り入れているとは思っていませんでした。純粋なピアノトリオのサウンドを期待していた人たちは肩透かしを喰らうかもしれません。しかし、作品を重ねるごとに良くなっているのは確かです。色々な仕掛けを繰り広げてくれるこの作品は、色々と楽しめるものとなっています。
 一番驚いたのは、Chicago の Saturday In The Park と思われるイントロが飛び出したことです。ドラムがフィルインした途端に曲調が変わり、やがて Sing, Sing, Sing へと突入していくのです。
 そして更に驚いたのは、エレピでスタートする John Coltrane の Giant Steps です。いきなりアドリブからスタートするのですが、ベースラインを聞いても Giant Steps とは判断できないのです。突然、アコースティック・ピアノにチェンジするのですが、ここでようやく Giant Steps であることが判るのです。
 そして、Ellington ナンバーの I'm Gonna Go Fishin' には完敗です。どこから聞いても Ellington 的なイントロからスタートし、アドリブでも Ellington 的なソロを展開するのですが、気がつきゃ何時の間にか山中千尋節が炸裂しているのです。

 お次は海外から参入。(というか、上原ひろみさんや山中千尋さんも海外組ですな。)
 Seamus Blake の MySpace の「フレンド」に気になる写真が。スーパーマンのTシャツを着てベースをもった女性の写真があったのです。美人であったということ以上に小柄でベースが大きく見える事に驚いたのです。そのスーパーウーマンが Tal Wilkenfeld なのです。
 素晴らしいテクニックと作曲の才能にも長けており、この豪華メンバーによるセッションで出来が悪い筈がありません。ギターからベースへ転向して四年というのがジンジラレナイ!。(←ヒルマン監督風で)
 彼女のサイトでは、Jeff Beck のグループで演奏する様子を見る事が出来ます。このバンドは、昔聞いた Jeff Beck のグループより遥かに良いのでDVDの発売を期待したいですね。
 オーストラリアに生まれた彼女が、本格的に音楽活動をするために学校を辞めてアメリカに渡り、凄いメンバーを集めて自らアルバムを作成。この行動力には感服です。

 最後は、西山瞳さん。
 前作と同じメンバーのトリオによる演奏ですが、比較すると動的な面が強く感じられる演奏となっています。いきなり、パワー全開の Flood からスタートするのですが、今年聞いた二回のライブでもそうでした。レギュラートリオのベース奏者が坂崎拓也さんに替わり、随分と変化が出てきたようです。自ら作曲した曲を大切に扱い、普段のライブで作り上げた雰囲気をそのまま、スウェーデンのトリオに再現させた感じです。故に、初めて聞くCDなのに、随分と聞き込んだ感じがするアルバムなのです。
 オリジナル以外の選曲(武満さんの曲はライブでも演奏されているのを聞きました)も西山さんならではのものですね。
ライブも暫くの間は、このアルバムの曲が中心の選曲でしょうが、すぐに新しい曲中心のライブに変わるのでしょうか。そして、曲のイメージ通りに完成したところで次のレコーディングとなるのでしょう。
 あっ、でもその前に Glenn Miller Cafe でライブ録音したものがあるんですよね。
安達 久美
山中 千尋
Tal Wilkenfeld
西山 瞳
これらの文章は、既発表のブログから引用しています。(^^;)


アルバムの詳細を知りたい場合や購入したい場合は、ア-チスト名やジャケットをクリックしてください。


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