2006年の復刻盤・発掘盤

 昨年発売された入手困難だった復刻盤や、新たに世の中に出てきた未発表の発掘盤を中心に選択しました。唯一山下洋輔さんのアルバムのみが、廃盤(裁判沙汰となり回収)で入手が困難だった中古盤です。
 殆どのアルバムが初めて聞くものであり、これまでに聞いたことがあったアルバムも実に久しぶりに聞くことができ、大きな感動をもらった作品です。

V.A.
(関西フォークの歴史)
大学の先輩から借りて録音したテープを繰り返し聞いていました。借りた時にレコードの収録時間に合うテープが無かったので、自分で半分くらいを選曲して録音をしました。大学を卒業してからテープを繰り返し聞いていて、何で全部録音しなかったんだろうと反省してました。
こんなレコードは再発されないだろうなと思っていたのですが、或る日 Amazon のサイトを見ると、avex と Amazon の共同企画でリリースされているではないですか。ビックリして、発注しようとすると、「ガーン!」予約限定発売で、既に締め切りではないですか。
もう2度と手に入ることは出来ないと思っていたのですが、今回見事にBOXセットとして再発されたのです。まぁ、捨てられた訳ではないのですが、「捨てる神あれば拾う神あり」といった心境です。
Linda Ronstadt Linda Ronstadt のキャピトル時代はリアルタイムでは聞いていませんでした。多くの人たちがそうであったように、アサイラムに移籍してから聞き始めたのです。
しかし、アサイラムへの移籍以降は次第にロック色が強くなっていたのです。ちょうど彼女のバックバンドをしていた面子が集まり結成したイーグルスも同じようにロック色を強めて行ったのは面白いですね。ただし、彼女の場合はスタンダードナンバーを歌う歌手に一気に転向したのには驚きました。彼女が最も彼女らしかった時代は、やはりカントリーテイストに溢れる初期の時代ではないでしょうか。
何度かの引越しで、ずっとダンボールから出ることがなかったキャピトル時代のLP。今回は4枚のアルバムを2枚組のCDに纏めての再発。ボーナストラックも収録されており、店頭で見つけたときには速攻で手にとっていました。
集団疎開 まさかこの様なアルバムまでもCD化されるとは思ってもいませんでした。このアルバムが作成された当時は、ジャズを聞いておらず、日本のジャズに興味を持ち出して色々と調べると集団疎開というユニットが存在して、八王子にあったお店でライブ盤を録音しているということが判りました。インターネットのような便利なものが無い時代は、雑誌の記事を隅から隅まで読んで情報を収集したものです。おそらく、明田川荘之さんの記事あたりでこのユニットを知ったはずです。
後に、森さんを除くメンバーに会う機会があり、開口一番にレコードを入手したいということを伝えました。残念ながら答えは何れも「無いよ。」というもの。完全に諦めていたのですが、なんとCDとして復刻されたのです。凄い!!!
田中武久 プチプチッというスクラッチノイズが堪りません。昔はこれが当たり前だったので、LP世代の私はさほど気になりません。大阪のセント・ジェームスを本拠地に活動するピアニストの田中武久さんのアルバムのCD化です。70年後半に自主制作でリリースされ、関西のファンの間で愛聴されてきた作品。マイナーレーベル故に当時のオリジナル・マスターが残っていたという奇跡は残念ながら無く、Top Rank という難波のお店にあったLPからトランスファーしたものです。大手のレーベルであれば、様々なテクノロジーを駆使してスクラッチノイズを可能な限り削減するところでしょうが、波形を色々といじるよりはそのままの方が好ましいかも。
私のLPも中古盤でノイズが多いので気にならないし、LPの劣化を気にしなくてもよくなりました。ノイズも計算して音楽が奏でられているのではないかと勘違いをしてしまいそうですが、ジャズほどスクラッチノイズが気にならない音楽は無いかもしれません。このトリオの凄さを生々しく感じさせる要素になっているようです。
宮沢昭 「昭和を代表するテナー奏者」宮沢昭さんは、どういう訳か縁が薄いのです。守安祥太郎さんのグループで活動。秋吉敏子さんのコージー・カルテットでは渡辺貞夫さんとフロントを担当。まさに日本を代表するテナー奏者といえます。しかし活動は断続的。そんな中、ピアノの佐藤允彦さんのトリオをバックに名盤を録音していくのです。しかし、再びジャズ界から遠ざかり、私がジャズを聞きだした頃は半ば引退状態だったのです。この作品「いわな」や「山女魚」は名盤であることは知っていましたが、入手困難な状態。学生時代には、先輩や友人に聞かせてもらったりジャズ喫茶で聞いたりと、宮沢昭さんの凄さは認識していましたが入手出来ませんでした。
今回の Think!/DIW の再発を知ったときの喜びはとても大きいものでした。そして、購入し久しぶりに味わった名盤に対する喜びはさらに大きいものでした。
武田和命 このDVDは、ライブの関係者がホームビデオで撮影を行なったものと思われます。当然ながら、カメラは一台で、素人の撮影にありがちなズームやパン・チルトを頻繁に繰り返し、落ち着きの無い映像になっています。しかしながら、そんなことが全く気にならないほど感動を与えてくれる作品です。
山下洋輔トリオのメンバーとしてジャズ界に復帰した武田さん。私は、山下トリオと、この作品でピアノを弾いている渋谷さんのオーケストラで何度か生演奏に接しました。演奏は常に全開で手抜きをすることはまったくなく毎回充分に堪能できました。そんな当時の想いが、鮮明に蘇ってくる作品です。
山下洋輔トリオあたりは映像が残っていてもおかしくないと思います。誰かテレビ局の倉庫に入って当時の映像を見つけ出してくれないものでしょうか。
山下洋輔 1983年の夏を前にして山下トリオは林さんを加えたトリオ+1でヨーロッパのツアーに出ます。このCDはドイツのベルリンのステージを記録した演奏です。実はこのCDは山下さんの著書にも登場するいわくつきの作品なのです。ラジオ放送のみでオンエアという条件で契約したものが、山下さんへの打診もなくCDとして発売されたのです。最終的には訴訟にまで発展したそうで、一気に店頭から姿を消してしまったのです。完全に入手を諦めていた作品であったがために、店頭でこのCDに遭遇した時は思わず声をあげてしまいました。昨年の中古盤の発掘では No.1です。
途中、Strawberry Tune へとなだれ込むのですが、テーマのみで何と武田さんの Alone Together へと展開。フリージャズの中に突然現れる、おなじみのスタンダードを聞くと、Shepp の One For The Trane でのいそしぎを連想します。そして、その後に新たに異なる曲のテーマが現れるのですが、この曲はピカソでしょうか?
山下トリオの最後の姿を公式に捉えたハイデルベルグのライブ盤は是非ともCDして欲しいものです。お願いします、日本コロンビアさん。
Thelonious Monk Thelonious Monk の研究家として知られる Steve Lacy は、ステージでも良く Monk の曲を演奏していました。Globe Unity の来日ステージでも Lacy フィーチャリングで Evidence を演奏していました。しかし、共演となると意外と少なく1963年の年末に行なわれた Lincoln Center でのコンサートのライブ録音位でしょうか?私は、この作品未聴なのですが、Lacy はビッグバンドの一員でソロを取っていないとか。
そんな中で登場したのがこの作品です。あっと驚く作品をリリースしているRLR から発売で、色々なレアなセッションを集めた作品です。冒頭の5つのトラックが Lacy が参加したセッションで CBS Radio のエア・チェック。当時の Monk のレギュラーと思われるメンバーに Lacy が参加した形になっており、ソロもタップリ聞く事ができます。但し、5つのトラックのうち01.と03.はラジオのアナウンスメントで、実質3曲の収録です。さらに残念なのは、最終曲の Rhythm A Ning は、Rouse のソロが終わりかけの頃に、番組終了のアナウンスが被さってくるのです。バックで Lacy のソロが始まったことは確認できるのですが、そのままフェードアウト。う〜ん、残念。
Clifford Jordan ピアニストの Stanley Cowell が興したレーベル Strata East は、今風に言うのであればインディーズ・レーベルというのでしょうか。それ故にアルバムの版権はレーベルに帰属するのではなく、演奏家本人にあるようです。おそらく、トレードオフの条件としてレコーディングのセッションにたいしてギャラが支払われないというようなことがあったのではないでしょうか。良い演奏をレコードに残すことによって、印税が演奏家に支払われるということであれば、演奏のクオリティも上がり低予算でアルバムを作ることが出来るという理に叶ったシステムであると言えるでしょう。
ところが版権が演奏家本人にあるため、本人が了承しなければ再発もされないということになるのは当然のことです。Strata East からはセカンドプレスまで行なわれるものの、1972年の発売以降一切再発されることなく今日まで至っていた作品です。おそらく Clifford Jordan 本人が、このアルバム再発を望まず、遺族もその意思を受け継いでいたのでしょう。再発されない理由が「版権の関係」とされていたために、私はこの作品の入手を絶望視していました。私には高嶺の花であるオリジナル盤は購入できませんからね。
この Clifford Jordan の In The World は大学の先輩に聞かせてもらったのですが、始めの印象は「やけに音が悪いなぁ」というものでした。しかし、その悪い音の中から次第に訴えてくるものがあったのです。まだ、ジャズ初心者であった私にも、これまで聞いてきたジャズとは全く異なった独特な雰囲気を持った作品であることは判りました。哀愁感漂う Vienna は、それ以来聞かずとも深く印象に残っていたのです。
John Surman 何年か前にもCDとして復刻されたようですが、その時は気が付かず買いそびれていました。まあ、アナログ盤を所有しているので、無理に購入する必要がなかったのも事実です。私が所有しているLPは、レーベルが DERAM のもので、ジャケットのデザインも異なっています。今回、英国の VOCALION より再発され、ようやくCDを入手出来ました。
このアルバムの最大の聞き所は、冒頭に収められた Galata Bridge ではないでしょうか。Galata Bridge とは、トルコのイスタンブールに架かる橋。アジアとヨーロッパに分かれるイスタンブールのヨーロッパ側の旧市街と新市街を結ぶ橋で金角湾に架かっているそうです。リズムセクションが設定した雰囲気にのって、先ずは John Surman のソロからスタートします。まるで後期の Coltrane のグループのようです。荘厳なソロに始まり、やがてフリーな世界へ突入。やがて出てくるアンサンブルにぶっ飛ぶのです。ほとんどユニゾンに近いアンサンブルですが、その迫力に背筋がゾクゾクッとしてしまいます。ソロはドラムの Alan Jackson に移り、ソロの途中で特徴的なビートを叩きだします。まるで日本の大太鼓の雰囲気です。それを受けての、 John Taylor と Mike Osborne のソロがこれまた凄いのです。John Taylor のアグレッシブなソロなんてそうそう聞けるものではないでしょうね。
Alan Skidmore John Surman の作品にも参加していたテナー奏者の Alan Skidmore のクインテットの作品で、Surman の作品と同じく DERAM 原盤で今回 VOCALION から再発されたものです。
リズムセクションの3人は、John Surman の How Many Clouds... にも参加していましたが、フロントのお相手は、フリューゲルホーン一本に絞って参加の Kenny Wheeler です。この Kenny Wheeler はジャズを聞きだした頃に購入した ECM の Deer Wan を気に入って良く聞いたものです。ここでも Kenny Wheeler が実に味わい深い演奏を行なっています。John Surman の作曲によるタイトル曲あたりは実に美しい作品。電化直前の Miles Davis クインテットの影響を受けた演奏といえるでしょうが、また彼らなりのオリジナリティも見受けられます。それ以外の曲でも演奏の幅をフリーにまで広げ実に素晴らしい作品で盛り沢山です。
豪華メンバーによるクインテット。中々聞くことが出来なかったブリティッシュ・ジャズの金字塔とも言えるこの作品。簡単に手に入るようになったということに感謝しなければいけませんね。
V.A. (Wildflowers) ジャズを聞きだして直ぐに興味を持ち出したアバンギャルドな世界。そのきっかけとなった作品がこのアルバムです。当時は5枚のLPとして発売されており、Randy Weston の演奏から始まるNo.3 を最初に購入しました。比較的ビートものの演奏が集まった作品でであり、ジャズの初心者である私もすんなりと入り込むことが出来たのです。No.3に収められたミュージシャンを足がかりに、アバンギャルドの世界にのめりこむのです。
この作品は、数年前にもCD化されたことがあり、大阪の今は無きLPコーナーの店頭で見かけたことがありましたが、結構高くてたがだせなかったはずです。今回は、3枚組みで3000円弱という価格のため速攻ゲットでした。
残念なのは、ハサミが入った作品も当時のまま。出来れば完全盤としてリリースして欲しいものですね。
これらの文章は、既発表のブログからも引用しています。(^^;)

アルバムの詳細を知りたい場合や購入したい人は、ア-チスト名やジャケットをクリックしてください。


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