エキュメニカル集会案内


日本エキュメニカル協会主催



エキュメニカル・ニュースレター 第6号
エキュメニカル・ニュース 第6号 2010年11月9日発行

    日本エキュメニカル協会 362-0073上尾市浅間台2-26-9`

講演『二っの福音は波濤を越えて一改革派・ピューリタン系諸教会の系譜とエキュメニ
ズム』を聞いて                        原敬子

(2009年11月13日金曜日午後7時より、協会主催秋の公開研究会を、信濃町のカトリック真生会館で開催し、司会は江藤直純師、講演は東京神学大学教授、棚村重行師で、そ
の後、活発な質疑応答が交わされた。).

「こんな体質の教会にダレがした?」一棚村重行師は、現代に生きるキリスト者なら誰
もが一度は眩くであろうこの問いに700頁を超える大著によって答えた勇気ある歴史
神学者である。恐らく眩く事なら誰でもできるだろう。しかし問いに答えるには大変な
労力と忍耐が必要である。また、師の緻密な実証研究の成果によってこれまでの諸説を
覆すことになり、思想界にあっては戦いも否めない。師ご自身も「自分は歴史神学者と・
して水をぶっかける役と宣言されたように、真の対話を求めて歴史の渦の中に無心で飛
び込まれたのであろう。師の真摯なお姿に圧倒された。2009年11月、『二つの福音は
波濤を越えて一十九世紀英米文明世界と「日本基督公会」運動および対抗運動』を同年
七月に出版されたばかりの東京神学大学の棚村重行教授をお迎えし、秋の公開研究会が
行われた。師の壮大なご研究をこの限られた紙面でご紹介することは到底できないし、
またその能力も持ち得ないが、小さなご報告として述べてみたい。

棚村師の立ち位置は、現在の教会の「古層」の部分にある。その「古層」のところに
は、「文明一世界史,一教会史」、つまり「マクロ(巨視的)一メゾ(中間的)一ミクロ(微視
的)複合的理論」という観点が横たわっている(本書p,21)。ここに降り立ち、実際に何が
起きたのか、宣教師は何を考えていたのか、彼らは何を日本にもたらし1日本の人々は
何を受容したのかを探る。舞台は十九世紀アメリカ合衆国に始まり、開国の産声を上げ
たばかりの日本へと渡っていく。

当時、アメリカ合衆国では「アメリカ型信仰復興運動」と、それへの「対抗運動」という二重の信仰の嵐が吹き荒れていた。西部開拓の前進と「第二次大覚醒運動」(1790年代一1830年代)、南北戦争後の「第三次大覚醒運動」(1870年代一1900年代)というリバイバル運動の興隆にあって、その周辺の各教派内で対抗派による巻き返しが発生していたというのである。

神学的な次元から見ると、「十九世紀アメリカにおける改革派一ピューリタン系諸教
派(長老派、会衆派、バプテスト派、改革派など)」の内部に、「旧派カルヴァン主義」
(信仰と行動は徹底的に神の無償の恩恵の果実=ネコ型の救済と倫理の神学)と「新派カ
ルヴァン主義」(信仰と行動は徹底的に神の神人協力的恩恵の果実ニコアラ型)救済と倫
理の神学)という二つの福音路線が存在していたということになる。棚村師の表現によ
れば、台風の嵐のような「二つの福音の二党派対立」の出現である。

こうして宣教師らは、二党派対立で、「呉越同舟」という状態のまま日本に上陸した
が、日本の宣教にあたっては、結局、教派をなくし協カー致運動を推し進めようとする
派と、教派主義に立ち戻ろうとする派との葛藤によって幕を開けることになる。
注目すべきは、1872年9.月の「第一回宣教師会議」にある第二決議「現地人教会の組
織化に関する決議」の「合同協約」にある「無教派合同路線」の明示である。以下引用
する。

「キリスト教会(基督公会The church of Christ)は彼(キリスト)にあって一つであり、プロテスタント教徒の間の諸教派の多様性は単なる偶然的なものにすぎない(but
accidents)が、それらは信仰者の生命的な一致には影響は与えないが、キリスト教世界
における、そして分裂の歴史が理解され得ない異教国においてはなお一層教会の一性
(The oneness of the Church)を曖昧にする。そして、私たちはプロテスタントの宣教師として、顕著な相違点から生じる悪(the evil arising from marked differences)をできる限り避けるために福音伝道における私たちの様式と方法の点で画一性
(uniformity)を確保したいと希求する(中略)」(本書P.340)。

「合同協約」に、教派のまま留まることはその背景が理解され得ない異教国において教
会の一性を曖昧にし、それは「悪」であると明言されている。当時のエキュメニズム運
動は、二十世紀に現れた新約聖書の公同性に根拠づけられるエキュメニズムとは違って
いたし、とりわけ当時の一致運動を推進した「万国福音同盟会the Evangelical
Alliance)」は反カトリック、反ユニテリアニズム、反オックスフォードの「プロテスタ
ント・キリスト教徒の協カ一致運動」であった。それでも一致し、合同で宣教を試みよ
うとする彼らは、そもそも福音理解が合わない、政治的形態も合わないという会衆派、
長老派などの諸教派の間で「妥協の産物として、合同して「日本基督一致教会」(1877
年)という教派名を持たない、内実は非常に多様な福音理解と政治形態を持つ教会を創
設するに至ったのである。「合同協約」から「日本基督一致教会創立」までの五年間、
二党派対立は、アメリカン・ボードの「合同協約破棄」等、明らかな様相を呈しつつ、
また表面化しない次元において妥協と政治的葛藤を繰り返しながら進んでいった。

棚村師はこのような「古層」が後の日本基督教団の成立に大きな影響を与えていると
見る。単に「宗教団体法」という外圧だけが三十有余の諸教派の大合同を実現させたの
ではなく、各教派内に澱む「無教派合同路線」が日本基督教団の「大連合」を達成し、
「教派主義派」を圧倒したという。逆に言えば、聖餐論や教会論等の教義的な反省はそ
の古層には存在せず、合同のためには「歴史神学的」な大きな欠如を反省せざるを得な
い。従って、「公会に帰れ!」というスローガンはこの論点からは通用しない。歴史神
学的反省をもっと行う必要があるという結論にまで至る。

棚村師の講演の後、「多様性における一致」というキャッチフレーズがあるが、私は、
カトリック教会に属するキリスト者としてあまりにもこの言葉に甘えてはいないかと
自問自答を始めた。2008年は「ペトロ岐部と188人殉教者」を記念し十七世紀の信徒の
姿を思い起こしたが、四百年以上の時代の断絶というか、そこを自らの信仰共同体の古
層として捉えられているかと言えば少々疑問が残る。再宣教時代と言われる十九世紀以
降のカトリック教会における日本への宣教の実態に関して、私は正直に言ってほとんど
知らない。そのところに踏み込むためには、都市周辺の方々を歩き民衆に出会って回っ
た宣教師らの勇ましい話だけではなく、その実際と、彼らが出立した祖国ヨーロッパの
宗教的、政治的情勢、〈マクローメゾーミクロの複合的視点〉からの眺望が求められる
であろう。棚村師の講演に大きな刺激を受けた。さて、「こんな体質の教会にダレがし
た?」と眩くだけでなく、それに答える一歩をどこから始めていけばいいのだろうか。
「歴史神学的反省が急務である。長所も欠点も明らかにしながら、良いも悪いも見て、
主の赦しのもとに行く。そうして初めて真の対話ができる」。棚村師のこの最後の言葉
を深く味わい、自らの古層としての十九世紀へと沈んでいこう。

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講演「エディンバラ世界宣教会議2010年」を聞いて
(2010年6月17日<木>19時一20時30分会場日本基督教団信濃町教会)
                                石丸泰樹

エディンバラ世界宣教会議(1910.6.1〜23)を記念して開かれた、日本エキュメニカル
協会の公開研究会「エディンバラ2010」に出席できたことは、誠に幸いでした。「エ
ディンバラ2010」に出席された宮本憲先生(神戸松蔭女子学院大学准教授)が、帰国後の
お忙しい学務の中、貴重な時間を割いて下さり充実したご講演をしてくださった所講演
後、その夜の新幹線で神戸に戻られるというスケジュールの中で、よく準備されたご講
演と資料に心から感謝申し上げます。

ご講演の内容はキリスト新聞7月10日号に掲載された記事にわかりやすく要約され
ています。また日本エキュメニカル協会でCDに録音して下さったので、全内容を知る
ことができますので、個入的な感想を述べることをお許し下さい。
1910年の世界宣教会議の委員長を務めたJ.R,モットは世界教会運動の推進者であるだけでなく、学生運動の世界的指導者であり日本にも何度も来日されました。1880
年東京YMCA、1905年日本YWCA同盟が成立しましたが、これらを指導し励まされました。「みんなの者が一つとなるため(ヨハネ17:21)」の聖句は世界YMCAの共通の標語です。

また第二次大戦後、荒廃の申で新しく与えられた大阪クリスチャンセンターに集まっ
た14人の人々が朝の祈りの集いを始めました。朝祷会の発足です。今は海外も含め全国
200箇所以上の会場で超教派で、勿論カトリックも加わり(会場も提供して下さって)、
祈りの輪が広がっています。朝祷会の中心聖句もヨハネ17:21です。日本エキュメニカ
ル協会は2006年に「朝祷会全国連合」を顕彰されました。日本の教会、信徒、青年活
動が様々な形でエキュメニカルな活動の一端を担っている歴史的な意義を思いました。
「エディンバラ2010」は「共通の召命(テーマ)」として『神の支配のしるしであり、象
徴である教会は、聖霊の変革のカを通した神の愛の宣教に預かることによって、今日、
キリストを証しするよう招かれている』(宮本憲先生訳)を挙げ、これを9項目のテーマ
に分けてグループ討議し、最終日にまとめたということです。その一つに「6一神学教
育と養成」があります。1910年の会議では、キリスト教学校教育が強調されたが、今
回それは傍らに置かれ、神学教育中心に討議された、と報告されました。この件につい
て、講演後の質疑応答で、日本キリスト教団の大宮博牧師が、1910年前後に日本で優
たキリスト教主義学校、大学が創立され、目本の伝道に大きな支えとなったが、今日
においてもキリスト教学校の重要性に変わりはないこと、また日本におけるキリスト教
教育を構築せねばならないことが指摘されました。また、ルーテル神学校の江藤直純牧
師が「会議最終日に聖餐式が行われなかった」との報告について「今後、聖餐をどう扱
うのか」と質問された。宮本先生はこれに対して、今回の会議には「礼拝と宣教」のテ
ーマがなかったこと、これは大きな欠落であると思っていることを語られました。お二
人の先生のご指摘によって、今後の日本の教会の課題がはっきりと示されたと思いまし
た。
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「欧州エキュメニカル憲章2001」
                                                                      松山與志雄

日本エキュメニカル協会の歩みを振り返ってみると、昨年春の公開研究会から、
テーマは一貫して「キリスト教の多様性と一致」をめぐるものであった。キリスト教のこの「多様性と一致」の両者の有機的な関連をよく示しているものとして、2001年発
布された「欧州・エキュメニカル憲章」がある。

2001年4月22日にストラスブルクで、ヨーロッパ教会会議(CEC/プロテスタント)とヨーロッパ司教評議会(CCEE/ローマ・カトリック)が、これまで諸教会間に育まれたエキュメニカルな交わりをさらに継続し、これをいっそう発展させることを決議して、「エキュメニカル憲章(Charta Oecmenica)」を発布した。

前述のCECには、欧州の正統(オーソドックス)教会、プロテスタント教会、聖公会、古カトリック教会、単立教会のほとんどが所属し、これにCCEEのローマ・カトリック司教団が加わっているから、文字通り欧州の全キリスト教会が、エキュメニカル憲章の調印に参加していることになる。憲章は英文で8ページの簡潔な内容である。まず前文があり、次に三つの項目に分けられて、第一にエフェソの信徒への手紙4章3節一6節を引用して「私たちは、一っの公同の、使徒的教会を信じる」と告白し、欧州の諸教会が信仰の一致へと、ともに呼び出されているものとしている。

第二に「見える交わり」に向かって進む旅路の途上にある全欧州の諸教会は、ヨハネによる福音書13章35節に従って、互いに愛し合い、福音を一緒に宣教し、相互に出会い、一緒に行動し、一緒に祈ること、そのために誓約として「互いのために、そしてキリスト教の一致のために祈る」、「他の教会で実践されている礼拝や霊的生活の形式を知り、これに深く学ぶ」、「聖餐の交わりの達成を目標として活動する」、「対話を継続する」を挙げた。

第三に「ヨーロッパにたいする共通の責任」として「教会はヨーロッパ統合を支持し、その取り組みに参加する」、「諸民族、諸文明問の和解をはかる」、イ創造の保護」、「ユダヤ教との交わりの推進」「イスラム教との関係を開拓する」「他の宗教と世界観との出会いに努める」を掲げた。これで明らかなように、憲章は欧州キリスト教の多様性を、「見える一致」へと向かう旅路の過程として捉え、決してこの状態に満足せず、一致の目標を「聖餐の交わり」に置いて、これからもいっそう前進することを決議している。他方で全欧州キリスト教共同体が、諸民族、諸文明、諸宗教、とくにユダヤ教、イスラム教など、また異なった世界観との出会いに努め、多様性を特色とする全欧州の統合のために、これまで積み上げられてきたキリスト教の霊的遺産もまた、その推進力となると結んでいる。

以上「欧州エキュメニカル憲章」の内容を簡単にご紹介したが、日本のエキュメニカル運動の発展のためには、エキュメニカル憲章が明示しているような、運動のガイドラインが、今後必要となるであろう。

しかしそのためには、憲章がバーゼル(1989年)、グラーツ(1997年)の2回、全欧州エキュメニカル教会大会を開催するという、まことに地味で、忍耐を必要とする過程を経ての結果であることを認識すると、日本のエキュメニカル運動もまた同じ困難な道をこれから歩まなければならない。
また欧州共同体のように、アジア・アフリカ・太平洋の諸国が、ひとつの地域共同体として、今後形成され、統合され、真の平和と正義が確立するために、この地域のキリスト教会全体が一致協力してこれに貢献するものとならなければならないであろう。

以上


「予告」:エキュメニカル(教会一致促進運動)の日の集い2011年4月29日(休)午後1時開場・会場未定 

「会員申込」維持会費:年額千円
または賛助献金(額は定めない)は郵便払込口座00120-6-565755 名義・日本エキュメニカル協会にお振込みください。お申込の方には集会案内とニュースレターをお送りいたします。   

 主催:日本エキュメニカル協会
362-0073 上尾市浅間台2-26-9 電話・Fax:048-774-5327  理事長 松山與志雄



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