〜 戦後史を画する審判 〜 問われる「脱成長」社会へのビジョンを! |
▼ 歴史的政権交代は、大転換への好機!
有権者・市民は自公政権を見限り、政権交代を選択しました。投票率が69.29%と前回より1.78ポイント高く、小選挙区制導入以来、最も高い投票率となりました。有権者の関心がいかに高かったかを示しています。
選挙結果は、政権与党の自民党が 300議席から119議席に激減。公明党さえ31議席から21議席に。さらに小選挙区で立候補した党幹部が全員落選。野党の民主党は115議席から309議席に躍進・大勝。共産党は9議席、社民党の7議席は現状維持。国民新党は1議席減の3議席に。無所属・その他が12議席から13議席(みんなの党5を含む)でした。マスコミが予想したように自公両党の大敗と民主党の一人勝ちでした。
私たちは、この戦後史を画する歴史的な政権交代を歓迎します。その理由は二つあります。
一つは、自民党政権が戦後長期間にわたって依拠し作り上げてきた業界と官僚を優先する中央集権的な利益誘導政治に対して、有権者・市民が明確にNO!を突きつけたことです。
二つは、有権者・市民が自らの投票行動で、政治を変えることができるという経験と実感を共有化したからです。これまでの「政治不信」「政治的無力感」を払拭し、有権者・市民が政治の主人公となる大きな一歩となったからです。
私たちは、この歴史的な政権交代を、日本の政治と社会を大胆に転換するための好機だと考えます。
▼ ビジョンなき民主党、マニフェストの限界
しかし政権交代は、歴史的な出来事ではあっても、そのきっかけにすぎないことも冷静に認識しておく必要があると思います。
民主党のマニフェストは、個々の政策においてはNGOの考え方や市民感覚を反映させており、支持できる内容が盛り込まれています。また、社会保障を普遍主義的に個人単位で構想する方向は支持できます。
しかし、基本理念とビジョンが定まっていないため、個々の政策の間に矛盾を抱えています。
たとえば、CO2の25%削減を打ち出しながら、同時にCO2排出を拡大させる高速道路の無料化や道路暫定税率の撤廃を掲げています。また、戸別農家所得補償政策を掲げつつ、農業を衰退させるアメリカとのFTAを推進しようとしています。さらにはマニフェストの目玉と位置づけられている子育て支援も、所得手当を拡充しても、保育サービスの拡充や長時間労働の解消には十分な対策が採られていません。
総じて民主党のマニフェストは、個人単位の普遍主義的な社会という妥当な方向をイメージしつつも、それが所得補償=個人へのバラマキという対策に終わっているのです。
また自民党と同じく経済成長の回復によって財源を得ることを想定としていることも問題です。つまり経済成長なくして民主党のマニフェストは成り立たないという限界を持っているからです。
▼ ローカルの市民政治勢力が果たす歴史的役割
 今から始まる4年(おそらく、解散しない)は、マニュフェスト実現という命題をかかえて民主党を軸にした政府が動きます。国の仕組みが混乱を伴いながら変化し続けるでしょう。
 私たち地域・地方から政治を変える取り組みを進めてきたローカルの市民政治勢力は、多くの市民活動に関与しながら、このマニュフェストの評価できない部分を、曖昧な部分を市民活動と共に世論に訴える政治活動・提言活動を進めることが求められてきます。
 その活動を通じて、地方での政治変革をなしとげる大きな条件が付け加わってきます。国は法律をつくる。この法律を作る段階で、これが自治体=現場に来る時どうなるか、論点を残しながら法律は成立していきます。半年から1年後の施行段階で、自治体に初めて登場します。この時、この不十分な法律を自治体の条例で補完しながら、3年後、5年後の法律改正に備える、あるいは早める、これは地方・自治体の側の役割となります。
 そのためには、国会議員の窓口、あるいは政策秘書勢力との連携による国の情報を絶えず実践的に吸収する人的ネットワークが必要となります。地域が国をコントロールする政治的回路の確保が求められます。
 それだけに、ローカルの市民政治勢力や市民活動の質的飛躍が求められます。私たちは、この歴史的役割を担っていく覚悟を持ちたいと思います。
▼ 脱成長・脱競争の持続可能な社会へ!
 この4年間の格闘を通じて、民主党のマニフェストの限界が多くの有権者・市民に明らかになるでしょう。
 私たちは、経済成長に依存して人々の持続可能な「暮らしの安心」は実現できないと確信し、新たなビジョンを有権者・市民に大胆に提案する活動が求められることでしょう。
 経済成長を実現するためには、グローバルな競争に勝ち抜かなければならず、格差の拡大、雇用の不安定化、長時間労働は避けられないこと。経済成長至上主義からの転換なくして、地球温暖化を防止し、気候変動による被害を食い止めることは不可能であること。そして財源なきバラマキ政策では将来世代に莫大な借金を残すことになる等々です。
 戦後史を画する政権交代は、競争型成長型社会からの大胆な転換の時代の始まりとなる可能性を持っていると思います。グローバルな競争に対して社会的連帯を、環境破壊の成長至上主義に対して循環型社会・持続可能社会を基本理念・ビジョンとして提起し、市民的共有を拡大するときです。
 民主党政権は、遅かれ早かれ人々の期待に応えることができなくなり、立ち往生する時期が訪れると思います。その時こそ、脱成長・持続可能な社会の基本理念・ビジョン、そう、私たちがこれまでも掲げてきたエコでスローでフェアな社会への魅力ある制度構想と政策を提案することができる政策力と政治力・組織力が問われます。市民派・みどり派の政治勢力は、着実に地方から政治を変えつつ、全国的な政治勢力として飛躍させいく絶好の機会到来が始まったと思います。
2009.09.01 - 吉野 信次 -
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