| 政府・政党を動かした「年越し派遣村」が提起した課題 |
米国発の金融・経済危機によって、日本経済も大不況にたたき落とされるという未曾有な危機の中で新年を迎えました。「100年に一度と言われる危機」の中でグローバルな大企業は、これまでに溜め込んだ莫大な内部留保金を抱え込みながら、8万5千人をはるかに超える派遣・期間雇用などの非正規労働者を次々に解雇し、仕事も住まいも奪って路頭に放りだしています。
▼ 官邸を動かした「年越し派遣村」
「派遣切り」などで住まいや仕事を失った人たちを支援するため、2008年12月31日から2009年 1月 5日まで東京・日比谷公園において「年越し派遣村」が取り組まれました。派遣村への「入村」者は、「派遣村」実行委員会の予想をはるかに上回り約500名にもなりました。そのために、実行委員会は各政党に働きかけ、官邸を動かして、戦後の混乱期でもなかった生活困窮者に政府の施設を宿泊施設(厚労省の講堂)に提供するという歴史的な行動を実現させました。
「派遣村」に集まったうち250名を超える人々が生活保護の申請をし、数日のうちにアパートでの生活保護開始決定を得ることができました。ところが、この対応に対して「超法規的な特別扱い」であるとの誤解が一部に宣伝されだしています「派遣村」村民に対してなされた生活保護の運用は、生活保護法が本来予定する当然の内容であって「特別扱い」などではありません。
派遣村の村長・湯浅 誠さん(NPO法人自立生活サポートセンターもやい事務局長)は、2009年 1月13日、日比谷公園から移動した日本青年館での団結集会で「『派遣村』に集まったのは貧困状態に追い込まれた人のごく一部に過ぎない。全国に一時避難所を設置し、生活保護や緊急小口貸付資金などが受けられるようにすべきだ。企業が社会的責任を果たし、国が『派遣切り』をやめさせ、労働者派遣法を抜本的に改正すべきだ」と指摘しました。
▼ 「派遣村」こそ、国がやるものだ!
今こそ、労働者派遣法の抜本改正によって「派遣切り」そのものを規制し、脆弱な失業保険などのセーフティネットを充実させるときです。今、現に住まいを失った人々の生存を守る制度は現行法上、生活保護法しかない以上、同法の適正かつ積極的な活用によって生存を確保することが切実に求められています。まさに、生活保護の出番なのです。「住所」がなくても生活保護は利用できるのです。
この「派遣村」実行委員会の事務局を担った東京管理職ユニオン書記次長の千葉 茂さん(「市民自治をめざす1000人の会」の仲間)は、『朝日新聞』(2009/01/13)の「私の視点」に寄稿(「派遣村−支援と感心の高まりを実感」)して、最後に次のような提案をしています。「今回の大量契約解除は、労働者を人間として見ない企業が強行した『人災』だ。それを許したのは、規制緩和を進めた政府である。政府は、困窮している労働者のために、一刻も早く安い家賃で入居できる住宅を確保すべきだ。失業保険も、支給期間を延長するだけでなく、税金、社会保険料を支払えるように増額することが必要だ。再就職のための職業訓練を充実させることも急務だろう。『派遣村』に多くの支援・関心が寄せられたのは、労働行政に対する異議申し立ての表れだ。その意味を重く受け止めてほしい」と。
今こそ、労働組合と市民運動等が連携して、雇用の確保と人権を保障させるための企業と行政への働きかけが求められています。
2009.01.20 - 吉野 信次 -
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