〜 麻生政権の選挙買収策? 〜 混迷・失態続きの定額給付金の白紙撤回を! |
2008年10月30日、麻生政権は、米国発の金融危機に対処するために「政治空白はつくれない」と、解散・総選挙の年内実施を見送る方針を表明。麻生政権への支持率が下がる一方のため、総選挙対策として打ち出されたのが「追加経済対策」でした。その目玉は、総額2兆円の「定額給付金」と地方への1兆円配分です。ところが、いずれも閣僚や与党幹部のてんでバラバラの発言が繰り返され、名称や配布基準をめぐって混乱が繰り返されました。
▼ 公明党抱え込みの追加経済対策
この定額給付金、当初は公明党からの提案で「定額減税」と言われ、2008年 8月29日にまとめられた与党の総合経済対策に盛り込まれました。納税者に同額の減税をおこなう定額減税は、1999年、国民にばらまいた地域振興券と似ています。当時、小渕恵三首相は、公明党との関係をつなぎとめるために導入を決めています。
今回も政権離れを始めた公明党の抱きこみ対策として盛り込まれ、「定額減税」から「定額給付金」と名称を変えましたが、支給対象をめぐっても大混乱。麻生首相は当初「全世帯について実施する」と明言。ところが配分方法をめぐって「高い所得世帯にお金を渡すのはバラマキといわれる」(与謝野馨経財相)と所得制限導入が浮上し、麻生首相は「(所得制限を設けても)全然いい」とあっさり前言を撤回。首相がブレれば閣僚もバラバラな発言を言いだす混迷・失態の連続でした。
この段階で、市町村長会から「所得制限を実施すれば時間がかかる」と批判が提起され、10日になって首相は「市区町村の窓口で所得を把握するには手間暇になる。自発的にやってもらうのが簡単だ」と、高額所得者に辞退を促す形で限定するのが望ましいとの考えを示しました。
▼ 自治体への丸投げと消費税増税
この「給付金」は一回限りの支給です。大きな問題は、3年後の消費税増税とセットで出されていることです。選挙対策で慌ててまとめた話で、経済効果など疑問です。世論調査でも、多くの国民が与党のバラマキと見ており、この給付金の支給で与党の支持が拡大されるような状況ではありません。
全世帯を給付対象とし、所得制限の設定は支給窓口となる各市区町村の判断にゆだねることを決めました。「選挙目当てのバラマキ」との批判をあび、閣内不一致の発言が繰り返される迷走の末、たどりついた先が、自治体に判断を丸投げしたのです。 麻生政権には、もはや統治能力がないことを天下に公表したのも同然です。政府・与党の方針によれば、所得制限を設けるかどうかは、市区町村が交付要領において決定すればよいことにしています。その際の下限は所得1,800万円(給与所得換算で2,074万円)とします。
さらに、支給をめぐって自治体で混乱が起きるのではないかとの批判が上がっています。麻生首相は「全然現場は混乱しない。各自治体が自分で決めるのだから、公平性については全然問題ない」とあきれた発言を繰り返しています。ところが、全国市長会の佐竹会長(秋田市長)は、12日の記者会見で、政府・与党の決定は「所得制限方式を事実上取らないということ」との認識を示し「制度設計抜きで勝手に所得制限をやれと言われてもそれは事実上無理だ」と反対を重ねて表明されています。
実施に向けては、所得制限以外でも財源問題や自治体との事務費負担など難題が山積しています。財源には、財政投融資特別会計の余剰金約2兆円を予定しているようですが、余剰金を使うためには特別会計法の改正が必要になります。第2次補正予算案と同時に関連法案を提出しても、年度内実施のためには2009年 2月までの衆院通過が必要になります。
▼ 公金を使った選挙買収策は、白紙撤回しかない!
これだけ多くの問題点を噴出させた大きな要因は、景気対策として真剣に検討されて提案されたものではなく、自民党離れを始めた公明党取り込みの政策であり、支持率低下を浮上させるための「公金を使った選挙買収」といわれる麻生政権の腐敗と末期的対応の産物であるからです。
選挙目当て、選挙買収について、朝日新聞の全国世論調査では「(必要な政策だと)思わない」が63%にものぼり、圧倒的な国民からひんしゅくをかっています。経済効果も期待できない、自治体も大きな迷惑、消費税増税との交換等々このような愚策、選挙買収策は、白紙撤回するしかありません。2兆円も出せる公金があるならば、小泉構造改革以降、毎年続けられてきた社会保障費2,200億円の削減をはじめとした生命と生活・雇用関連等々の削減を全面的に見直すときです。
2008.11.15 - 吉野 信次 -
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